ウルトラマンタロウ『ウルトラマンの愛した日本』に対する疑問

タロウには異星人の目から「日本」を語ってほしかった。

1960年代に地球に初めてやってきたときから現在に至るまで、ずっと日本を守り続けてきたウルトラマン。大阪万博、石油危機、公害、登校拒否……と、日本の社会の盛衰を知る異星人のひとりであるウルトラマンタロウによる著書です。

本書は、ウルトラ兄弟の活躍を思い出しながら、同時に、その時代における日本の状況を解説するという内容になっています。

どのような歴史を経て今の日本という社会がつくられてきたのか。もちろん、学校で習ったり、本やテレビで観たり、あるいは実際に体験したりして、すで知っていることではありますが、あらためて振りかえることで、現代を考え直すよいきっかけになるとは思います。

タロウでよかったのか?

ただ、この本を開く前から疑問がありました。

〈なぜタロウなのか?〉

もっと適任者はいなかったのだろうか? 私もあっちの星のことに詳しくはありませんが、たとえば、モロボシ・ダン(ウルトラセブン)とかのほうがよかったのでは?

たしかに、ウルトラマンたちの熱い戦いと、日本の時代状況を重ね合わせるという着眼点は興味深いのですが、しかしふたつが必ずしもリンクしているわけではなく、「だから、なんなの?」と思ってしまうのも事実です。

タロウもずっと日本にいたわけではなく、この本で述べていることのほとんどは、「アーカイブで観た」とのこと。

それでは、知識の吸収の仕方が私たちと大差なく、わざわざ上目線で「日本」を語っていただく必要はない。そう思ってしまいます。

藤子・F・不二雄「征地球論」のように

著者がウルトラマンタロウ、つまり地球人でないと聞いて期待したのは、藤子・F・不二雄「征地球論」のような内容でした。

この作品は、地球の征服を目論む異星人が、人間についていろいろ調べていくうちに、わけがわからなくなっていく、というお話です。

Sei tikyuu ron 01

Sei tikyuu ron 02

異星人というまさしく〈客観的〉な目から私たちの社会・文化を見るとどう見えるのか。そんな興味深い議論が展開していきます。藤子・F・不二雄による傑作のひとつです。

タロウも、私たちと同じ視点ではなく、異星人の目から「日本」を語ってほしかったという気がします。

ともすると、内容がイデオロギーというか“政治色”を帯びてしまう危険性もあるのですが、そのほうがおもしろいし、著者がウルトラマンであれば、誰も文句は言わないでしょう。

……ついでに言えば、私が生まれた時代のウルトラマンはタロウではなく、レオとアストラなんだよね。

タロウも嫌いではないけど、ほかのウルトラマンが書いていたらもっと違っていたかも(あるいは、書くのはタロウで、誰かに知恵を貸してもらってもよかったのでは?)。そこが残念なポイントです。

『翻訳がつくる日本語』で「女言葉」がよくわかるわ

え?ベッキーって歌手だったの?と思って『3shine!』を聴いた

関連記事

  1. 『かーそる』

    電子雑誌『かーそる』とは良い名前をつけたもんだ

    『かーそる』は、セルフ・パブリッシングの電子雑誌だ。同誌の「創刊にあたって…

  2. 下流老人

    あなたも私も『下流老人』になる

    「下流老人」という言葉を知っているだろうか? 「普通に暮らすことができない …

  3. 『翻訳がつくる日本語』で「女言葉」がよくわかるわ…

    現代の日本で「○○だわ」「△△のよね」という話し方をする女性や、「やあ、●●…

  4. 『ゲームの父・横井軍平伝』で遊びの原点を思い出そ…

    横井軍平。功績の大きさに関わらず、その名はほとんど知られていません。ですが、…

  5. 鈴木輝一郎『新・何がなんでも作家になりたい!』の…

    セルフ・パブリッシングで小説を書いている者として、勉強のために『新・何がなん…

  6. 藤井太洋『Gene Mapper -full b…

    セルフ・パブリッシングの電子書籍である藤井太洋『Gene Mapper -c…

  7. 『ぎゃふん9』パート1

    精神的に向上心のあるものも 人生はくじ引きだ

    〈人生はくじ引き〉と言うと、「自分の努力不足を運の悪さのせいにするな」「そ…

  8. 【敵情視察】狗界ゴウ『緑眼魔女の事件簿 テロリズ…

    近未来の中国を舞台に、国連治安維持局の特殊捜査官が特殊能力を駆使し奮闘する─…

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

ぎゃふん工房とは……?

Gyahun工房のアイコン

〈ぎゃふん工房〉は、フリーランス ライター ユニット〈Gyahun工房〉のプライベートブランドです。

このサイトは、収益を目的とせず、みなさんといっしょにさまざまなジャンルの作品を楽しむために制作しています。

プロフィール

このサイトのコンテンツは無料でお楽しみいただけますが、もし内容がお気に召しましたら、下のボタンより“コーヒー代”のご寄付をお願いします。

『天使の街』ミュージックビデオ

最近の記事

PAGE TOP