『死霊のはらわた ライジング』で暴れまくる〈死霊〉の真の目的とは?【ポッドキャスト+テキスト】

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死霊のはらわた ライジング』は、目新しい仕掛けがあるわけではない。巷にあふれる怪物(モンスター)パニックモノの類型だ。でも、異様におもしろい。最後まで目が離せないのはなぜ? 本作に秘められた恐怖のカラクリとは? 8分間であなたのホラー体験は深化する。

[ネタバレなし。映画を観る前でも安心です]

『死霊のはらわた ライジング』は、とても愉快でたのしく、十分に堪能できた。しかし、なぜ本作をたのしめたのかは不思議だ。

というのは、オリジナルの『死霊のはらわた』(サム=ライミ監督/1981年)以来、この類いの作品はゴマンとつくられており、私も網羅的に観てはいないものの、イヤというほど親しんでいる。

本作も、やっていることがそれほど画期的というわけではない。悪霊だか死霊だかが甦り、人間に取り憑いて、しっちゃかめっちゃかになる、というシリーズの基本を踏襲している。

にもかかわらず、私が満足できたのはなぜか? 今回はその分析をしたい。

「〈死霊のはらわた〉らしさ」とは何か?

結論からいえば、おそらく「〈死霊のはらわた〉らしさ」といったものが作品にまぶされていることが理由だ。

では「〈死霊のはらわた〉らしさ」とは何なのか?

本作にはたとえば、(ネタバレは避けるが)オマージュのような場面や小道具などが登場する。 〈死霊のはらわた〉シリーズを観ている人がニヤリとするカットがところどころに見受けられる。ファン向けの要素があちこちにちりばめられているわけだ。

それらも重要なエッセンスではあると思うのだが、「〈死霊のはらわた〉らしさ」とは、もっと本質的な別の何かではないか。

ポイントは、ヤツら(死霊・悪霊)はいったい何がしたいのか? ということ。

〈死霊のはらわた〉シリーズでは、(先述のとおり)登場人物が死霊に取り憑かれ、おぞましい姿に変わって、主人公たちを襲ってくる。

でも、これはよくよく考えると滑稽だ。

取り憑かれた人から見れば、「仲間になれてよかった」「もう襲われない」「もう怖くない」と、必ずしも悪いことではないからだ。

ここが〈死霊のはらわた〉シリーズとほかの作品との違いなのではないか。

死霊どもはほかの異形たちとは一味ちがう

「いや、『遊星からの物体X』とか、ゾンビ映画も『仲間が異形に変わって襲ってくる』のは同じだぞ」という反論もあるかもしれない。

だが、〈死霊のはらわた〉シリーズの死霊たちは、物体Xやゾンビとはちょっと違うのではないかと考えている。

物体Xとかゾンビは、言ってみれば〈生存本能〉によって襲ってきている。つまり、彼ら・彼女らには「悪気がない」。

一方、〈死霊のはらわた〉の死霊には「悪気がある」のだ。

死霊どもが抱く「悪気」の正体

では、「悪気」とは何か?

ウロ覚えなのだが、1981年版『死霊のはらわた』と、この『ライジング』には、死霊が主人公たちに向かって、「おまえの魂がうんぬん」などと言うシーンがある(2013年のリメイク版は記憶にないが、言っていたような気がする)。

つまり、死霊たちは人間に恐怖や苦痛を与えることによって「魂を汚す」というような目的があるのではないか?(ただし、劇中で詳細が語られることはないが)。

魂を汚されるのは誰か? もちろん、主人公だ。

さらに、この考えを進めていくと、私たち鑑賞者は、主人公を通して物語世界を体感しているわけだから、つまり鑑賞者である私たちの魂がヤツらによって「汚される」ということになる。

そう思いながら振り返ってみると、死霊に取り憑かれた“人”がカメラ目線でセリフを言う場面に注目したい。死霊はすなわち、鑑賞者である私たちに語りかけていると考えることができる。

そう思うと、背筋がちょっと寒くなってこないだろうか。

それこそが「〈死霊のはらわた〉らしさ」であり、おもしろさ/恐ろしさの源泉なのだ。

ぎゃふん工房(米田政行)

瑞乃書房株式会社 代表取締役。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。収益を目的とせず、趣味の活動を行なう際に〈ぎゃふん工房〉の名前を付けている。

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〈ぎゃふん工房〉は瑞乃書房株式会社 代表取締役 米田政行のプライベートブランドです。このサイトでは、さまざまなジャンルの作品をレビューしていきます。

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