アニメ「ジョジョ」はなぜおもしろいか? 遅ればせレビュー

ジョジョ

忙しい日常を送っているとき、ふと頭をよぎることがある。「自分は大切な何かを忘れているのではないか?」。私の場合、それは「アニメ『ジョジョ』を見ること」だった。

見逃していた。そのことに最近気がついた。

連載開始当初からの原作のファンであり、そのアニメ化を誰よりも心待ちにしていたのに。なぜだ!? なぜ忘れていた? 一生の不覚ッ。

遅ればせながら、先日から視聴を開始した。そして、DVDも買った。

今回はアニメ版「ジョジョの奇妙な冒険」をレビューする。そんな後ろ髪引かれる思いで──。

[ひとつ]アニメなのに“ヘブンズ・ドアー”

アバンタイトル(プロローグシーン)から、いきなり物語は佳境に突入。スタッフクレジットが表示される間も、ストーリーはぐいぐい進む。

このような手法は「ジョジョ」独自のものではない。ないが、従来のアニメの枠から逸脱しているのは確か。

そして、ほかのアニメと比較すると、なんとなく全体的に“軽さ”が漂う。

「ジョジョ」は、1980年代に連載が開始されたマンガ。つまり、“濃い”時代の作品だ。だから、本来なら、原作の持ち味を忠実に再現するならば、重厚感が必要なはずなのだ。

にもかかわらず、アニメは軽い。

“大人の事情”を鑑みるならば、予算の都合とか人手の問題とか、いろいろ邪推できる。

だが、しかし──。

この全編を覆う“ペラペラ感”が、かえって効果を上げている。

つまり、コミックを読んでいる。そんな感覚に限りなく近いのだ。

シーンの一部は、止め絵に擬音の描き文字をあしらうなど、このチープ感を逆手に取った工夫が光っている。

アニメなのに、ペラペラ。まさにヘブンズ・ドアーってわけだ。

[ふたつ]制作陣の“オーバードライブ”

先に、アニメは軽いと述べた。その原因は、予算とか人手の問題ではないかと邪推した。

しかし、それを補うかのように、制作者陣の魂は熱い。いや、熱すぎるッ。

まず主題歌からして気合いの入り方が尋常ではない。

主題歌「ジョジョ〜その血の運命(さだめ)〜」の作曲は田中公平氏。まさに超ド急、真正面からのアニソンである。そして、編曲は大谷幸氏。あの「平成ガメラ」の大谷氏だ。

さらに、特筆すべきは声優陣の演技。「いつもの150%の力でやってください」。録音監督からそんな発注を受けているのではないかと想像する。

だから、全編に絶叫、悲鳴、雄叫びがこだまする。

まさに、制作陣の“波紋疾走”。

じじいは……決して逆上するなと言った……しかし……それは……無理ってもんだッ!

こんなことを見せられて熱くならねえヤツはいねえッ!

[みっつ]観ているほうも“燃えつきるほどヒート!!”

夜中、寝る前にちょこっと視聴──。そんな真似はできない、この作品に限っては。

全力疾走するストーリーと150%の力を出し切る声優陣。

視聴する側にも相当な気合いが必要だ。でないと、吹き飛ばされる。

そして、観ている間に、いつしかアドレナリンが分泌される。それが心地よい。

アニメ「ジョジョ」はなぜおもしろいか?の答えはそこにある。

[よっつ]いつも神回 そこにシビれる!あこがれるゥ!

一生の不覚に気づき、最初に観たのが第2部のエシディシ戦だった。神回だった。つねにこうなのか、それとも今回だけおもしろかったのか。そこが疑問だったが、DVDを観て、いつも神回だったことがわかった。

だから、迷わず予約した。今週発売のDVD第2巻を、だ。←いや、そこはBlu-rayを買えよ。

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米田政行(Gyahun工房)

米田政行(Gyahun工房)

フリーランスのライター・編集者。インタビューや取材を中心とした記事の執筆や書籍制作を手がけており、映画監督・ミュージシャン・声優・アイドル・アナウンサーなど、さまざまな分野の〈人〉へインタビュー経験を持つ。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。

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