けなす人がひとりもいない──といっても過言ではない『アンチャーテッド』シリーズ。名実ともにゲームの頂点に立つ作品だ。
では、最新作のシリーズ第4弾『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』の出来栄えはどうだったのか。われわれゲーマーの期待に応えているのかいないのか。分析してみよう。
もくじ
ようするに何も変わっちゃいない
プレイを始めてみると、やるべきことがこれまでのシリーズとほとんど変わっていないことに気づく。
まわりを見渡し足場になりそうな場所を見つけてよじ登る。敵と遭遇したら射撃して撃退する。先に進めなくなったらヒントを頼りに仕掛けを作動させ活路を開く。
そんなふうに、過去の作品をプレイしている者なら何も言われなくても勝手に体が動いてしまう(主人公ネイトを動かしてしまう)。
マンネリ。そう。悪く言えばマンネリだ。
ここでズバリ断言しよう。本作に何かしらの新機軸を求めているのなら、それは肩透かしに終わる。革新的なシステム、全く新しいプレイ感覚。そういったものを期待している人はこのソフトを買わないほうがいいかもしれない。
原始的な快楽が味わえる
変わらないのは悪いことなのか? いや、なぜ制作者は変えなかったのか? その答えは簡単で、いじる必要がなかったから。『アンチャーテッド』シリーズのシステムはすでに究極のカタチとして完成されているからだ。
では、その完成されたシステムがわれわれプレイヤーに与えるものとは?
それは、アクションをプレイしたときに得られる原始的な快楽だ。
主人公ネイトの挙動は、現実世界に即したものではない。たとえば、高い足場から思い切ってジャンプする。現実であればどんな超人もとうてい届かない距離であっても、かろうじて飛び移れる。その緊張感と安堵感のバランス。
そういった「原始的な快楽」こそ、本シリーズのもっとも重要な部分であり、おろそかにしてはいけない要素だ。システムをいたずらに変えれば大切なものを失うかもしれない。制作者はその点を十分に心得ていたというわけだ。
ちょっとした違いを楽しむ
とはいえ、目新しいものがないのなら、本作をプレイする価値はどこにあるのか? そんな疑問も浮かんでこよう。
先に、過去のシリーズとやるべきことが「ほとんど変わっていない」と書いた。ほとんど──ちょっとは違いがあるのだ。
おもなものを挙げよう。
乗り物を操る
まず、車やボートを操縦できるようになった。過去作でもトラックやジープに乗り移りバトルをするシーンはあった。しかし、本作では探索の手段として用いる。だから、じっくりと風景を楽しみながら乗り物を操ることができる。これがなかなか楽しい。
ロープを引っ掛ける
また、ロープを引っ掛けるアクションが加わった。これまでもロープや鎖に捕まって移動する局面はあった。だが、それらはあらかじめ設置されているものだった。
本作は、しかるべき場所、しかるべきタイミングでみずからロープを投げなければならない。遠くの足場に渡るとき、斜面を滑落しているとき。あるいは大きな箱や荷台を手繰り寄せるとき。やり損なえばゲームオーバー。うまくいけば爽快。その部分でもアクションとしての快楽が提供されているのだ。
戦闘はスニークが基本
敵に悟られないよう忍び寄り致命傷を与える──。そんなスニーク・アクションは過去作にもあったが、あくまで限定的なものだった。
本作はむしろスニークが基本となる。敵に見つかりそうになればアイコンが出て対処を余儀なくされる。
もちろん、隠れずに射撃してもいい。ヘマをやり発見されたらそうせざるを得ない。だが、難易度が一気に上がってしまう。一回のトライで突破するのは簡単ではない。やはりスニークを主体とするのが、制作者の意図した遊び方なのだ。
なじみの仲間とともに冒険ができる至福
じつをいうと、これまで述べてきたことはどうでもいい──というより、本作に関してはそれらは本質ではない気がする。『アンチャーテッド』シリーズなら、いろいろ工夫が施されているのはあたりまえではないか。あえて分析するまでもない。そう思うのだ。
では、本作の本質とは? それは「なじみの仲間とともに冒険ができる至福」だ。
盟友サリーや妻のエレナといった、ネイトにもプレイヤーにもなじみ深い仲間と冒険をする。そこから得られる幸福感はシリーズを重ねてきたからこそ味わえるものだ。
サムは本作から登場する新しいキャラクターだが、ネイトの実の兄だ。ネイトとの関係は深い。ただ、われわれプレイヤーには赤の他人だ。
だから──。
プレイヤーとサムとの絆が深まるように、サムとネイトの子ども時代を舞台に、ちょっとしたアドベンチャーを楽しむステージが用意してある。それらはいわば回想シーンだから、正直「早く現在に戻らないかな」という想いが頭をよぎることもある。その意味では、バランスが悪いのかもしれない。だが、プレイヤーとサムが人間関係を築くためには必要だったのだ。
どんな大冒険も終わってしまえば虚しい
繰り返しになるが、本作は魅力的な世界で、好ましい仲間と一緒に、爽快なアクションと胸が躍る探検を満喫するゲームだ。完成度は完璧で欠点は見当たらない。
「欠点」ではなく残念な点をあえて挙げるなら、楽しい時間はすぐに終わってしまう、ということ。
本シリーズの制作者は親切心の塊なので、何度かゲームオーバーになることはあっても、行き詰まることはないよう細心の注意を払っている。時間を少しかければ、いずれはゴールまでたどりつけるようにしている。
何度もトライアル・アンド・エラーを余儀なくされるゲームもあるが、『アンチャーテッド』シリーズは、それとは真逆の思想で作られている。
だから、クリアしたあと、満足感のあと寂しさに襲われてしまう。
贅沢。まさに贅沢な悩みだ。寂しさこそが幸福。そう頭を切り替えて、今後のゲーム・ライフを充実させていきたい。
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