酒井順子さんはぼくの好きな書き手のひとりなので、その名を見かけたら、つい手に取ってしまいます。
本作は、酒井さんがセーラー服、自衛隊、宝塚、巫女なんかの格好をするというもの。まあ、とどのつまり「コスプレ」です。
といっても、その“コスプレ”をしたグラビア写真が載っているわけではなく(実際に着たという「証拠写真」は巻末に掲載)、それぞれの衣装の〈真実〉に迫る内容となっています。
そもそも軍服だったというハードな出自を持つ上半身に、ちょっと風が吹けばすぐにめくりあがるプリーツスカートの下半身という、組み合せの妙。胸のスカーフは、女学生の清純さや貞操といったものを守るために結ばれているようなものでありながら、ちょっとひっぱればすぐに解けてしまいそうなものでもある。そしてキリッとした紺と白の配色なのに、胸の部分だけが無防備だったり、腹がチラ見えしたり……と、もしそれがテクニックだとしたら功名すぎると言ってもいいでしょう。
いや〜、こんな露骨なこと、ぼくみたいなオッサンが書いたらただの変態だしキモイだけですが、有名な女性ライターが書いた文だと、「ふむふむ」とうなずきながら、安心して読んでいけるのがポイントです──いや、おっさんだと、そもそもセーラー服を着ることすら難しい(やってやれないことはないけど、意味が違ってしまう)。
もちろん、こんなふうに、ことごとく“エロ”い分析をしているのでなく、それぞれの職業について、衣装の着方のほか、心構えや業務上のテクニックなども語られており、“職業覗き見”的なおもしろさもあるわけです。
酒井さんの著作が好きな人はもちろん、そうでない人もぜひ一度ご覧いただきたい一冊です。
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