『バイオハザード6』には賛否両論があるが、ここでは各シナリオのどの部分に注目して遊べば楽しいか。その点を解説していく。本作の購入を迷っている人は、ぜひ参考にしてほしい。
もくじ
『6』は過去作品の集大成
本作には、当初3つのシナリオが用意されている。プレイキャラクターを変えて物語を楽しむことが可能だ。そして、それぞれのテイストは、過去作品を踏襲したものになっている。
具体的には、「レオン編」が『1』~『3』、「クリス編」が『5』、「ジェイク編」が『コード:ベロニカ』『4』に対応している。
つまり、『6』はシリーズの集大成となっているわけだ。
そして、それぞれのシナリオを楽しむためにテーマを設定するとしたら、
- レオン編 → サバイバルホラー
- クリス編 → ミリタリーホラー
- ジェイク編 → いちゃいちゃホラー
となる。
日常と隣り合わせの悪夢を描く「レオン編」
「レオン編」では、シリーズとしては久しぶりに〈ゾンビ〉が登場。これが『4』や『5』とは異なる恐怖感を演出している。
そもそもホラーゲームにおける〈ゾンビ〉がもたらす恐怖とは何か?
限りなく人に近い存在であり、決して人ではないモノ。彼らがもたらすのは、日常と隣り合わせの恐怖。もっといえば、日常が悪夢へと変わっていく臨場感だ。
「レオン編」のシナリオでは、平和だった街が一変し地獄へと変わっていく。レオンたちは、その真っただ中へ放り込まれる。だから、ステージには、生きた人間と、死んだ人間(=ゾンビ)が同居する。
政府のエージェントとして、生き残った人間を救わなければならないという切迫感。しかしその努力が報われず、次々と人々が犠牲になっていく絶望感。この2つを堪能できるのが「レオン編」の醍醐味といえる。
だから、闇雲にゾンビを撃退していく必要はない。脇をすり抜けるられるのなら、なるべくそうしたい。なぜなら、数時間前までは彼らも人間だったのだから。
『1』~『3』において、われわれがラクーンシティで体験した悲劇。それをこのシナリオで再び味わえるわけだ。
異形のモノたちとの戦争を体験できる「クリス編」
一方、「クリス編」では、おぞましい姿の異形のモノたちが、敵意むき出しでプレイヤーに襲いかかる。だから、強力な武器で立ち向かわなければならない。
そこで体験できるのは非日常そのもの。つまり、戦争だ。
もちろん、テロや武力衝突は現実の世界でも起こっている。しかし、“平和な国”に住むわれわれにとっては、怪物たちを銃で撃っていくのは、ある種のファンタジーなのだ。
『6』では、無邪気にヒーローになれるわけではない。しかし、部隊のリーダーとして男の心意気を見せることはできる。
このシナリオでは、ためらうことなく銃をバンバンぶっ放していこう。というより、そうしなければ、即ゲームオーバーになってしまう。
シェリーの“成長ぶり”をじっくりと堪能する「ジェイク編」
ラクーンシティでゾンビの魔の手から救い出した少女シェリー。今や立派な大人の女へと変貌を遂げた。『4』のアシュリーとは異なり、武器を手に勇敢に戦ってくれるのがいい。ちなみに、なぜか(いや必然的に)本作の“お色気”担当でもある。彼女は本作に華を添える存在だ。
「日常と隣り合わせの悪夢」でも「怪物たちと戦争するファンタジー」でもない。このシナリオで堪能すべきは、“彼女の成長ぶり”だ。われわれに縁のあるキャラクターだけに、一緒に行動できるというだけで感慨もひとしおというわけだ。
「おまえら、いい加減にしろよ。乳繰り合っている場合か!」と思わず突っ込みたくなるのは“いちゃいちゃホラー”ならでは。
本作において、スーパーヒーローはクリスではなく、このジェイクなのだ。“父親”の遺伝子を受け継いだその超人ぶりを満喫したい。
華麗な身のこなしで爽快感を楽しむ「●●●編」
上記3つの物語を“読み終わる”と、4番目のシナリオが現れる(プレイキャラクターが誰かは上の動画でバレバレだが、いちおう伏せ字にしておこう)。
このシナリオは、「レオン編」と「クリス編」を合わせたようなテイストになっている。つまり、日常と隣り合わせの恐怖に震えながら、バケモノどもに弾を叩き込む快楽を味わえる。
それに加えて、独特のワイヤーアクションを楽しめるのがこのシナリオの特徴だ。
入り組んだビルの合間を華麗に抜けていくのは、映画『スパイダーマン』のような爽快さを覚える。
たとえば、走行するバスの屋根の上という限定空間の戦闘。間合いを詰められたところで、ワイヤーを看板に引っ掛け、すっと相手の背後に回り込んで攻撃する。そんな、レオンやクリスとはまったく異なるスタイリッシュな戦いができるのだ。
ただ、そういったアクションを活用する場面が実際はあまりない(「移動」には何度も使うが「戦闘」では1回のみ)。これが残念なところだ。宙を舞ったときに望める夜景が美しいだけに、非常に惜しい。
本作の“遊び”の部分はどうか?
あってもなくてもよかった〈QTE〉
ムービー中に表示されるボタンを押すことでアクションを起こし、危機を回避する「QTE(クイック・タイム・イベント)」。『4』や『5』にも採用されているシステムだ。
個人的にはあってもいいが、本作のような代物ならなくてもよかった、というのが正直なところ。
QTEは『アンチャーテッド』などでも取り入れられている。そこでは失敗しても窮地に陥るだけで、直ちにゲームオーバーになるわけではない。つまり、挽回の可能性を残している。結果的にゲームオーバーになってもプレイヤーが納得できるよう工夫されているわけだ。逆に、成功すれば気持ちがいい。いわば、足し算のシステムだ。
それに対して本作は、成功すれば通常の進行。失敗すれば即ゲームオーバー。つまり、引き算のシステムになっている。こういうところに作り込みの甘さを感じてしまう。たとえば、失敗した場合には、通常より難易度の高いシークエンスに移行させる。そうやって巧みにペナルティを受けるよう仕向ける。ゲームオーバーまでにワンクッションあれば、プレイヤーが理不尽さを感じることはなかったはずなのだが。
気にしなければ気にならない〈カメラ視点〉
初見プレイ中は、ネタバレによって興が殺がれることは避けたい。だから、私はなるべく情報を集めないようにしている。そのため、カメラの挙動に批判が集まっていることをこの記事を書くまで知らなかった。つまり、カメラ視点の“不具合”に気がつかなかったのだ。
おそらく私の感覚はきわめて特殊ではあろう。でも「気にしなければ気にならない」という意見もあることは覚えておいてほしい。
最近、視点が調整できる修正パッチが配信された。より遊びやすくはなっているはずだ。
〈武器の強化〉はあってもよかった
武器のパワーアップは、個人的には正直めんどくさい。「武器の強化がない代わりに別の要素で楽しんでほしい」というのが制作者の意図であれば、それはそれで受け入れたい。
とはいえ本作では、その肝心の「別の要素」が見当たらない。「スキルを上げる」という仕組みはある。でも、それは本質的には「武器の強化」の代わりではない。
『4』や『5』に採用されているシステムなのだから、その正統な続編でわざわざ外すこともなかったのでは?
新機軸を打ち出せなかったのは残念
個人的には、FPS・TPSは『アンチャーテッド』シリーズ、『レジスタンス』シリーズ、『デッドスペース』シリーズぐらいしか知らない。それでも、「あ、これはアレのパクリではないか」と思い当たることがしばしばあった。
FPS・TPSのフォーマットに「バイオ」の世界観を乗っけただけ。どうしてもそうなってしまう。
これは本作に限った話ではないかもしれない。FPS・TPSというジャンル自体の問題とも考えられる。
しかし、ほかの作品ならともかく、『バイオハザード』シリーズといえば、時代の最先端を疾走していたゲームであったはずだ。
それが『5』あたりからは、時代の後追いをするだけになってしまった。
そのことが直ちにゲームのクォリティを下げるわけではない。けれども、古参のバイオ・プレイヤーとしては、少し寂しい気もする。
シリーズのファンならやっておきたい作品
以上は、あくまでシナリオモードを1周しただけの評価だ。オンラインなど、ほかの要素も加味すれば、また印象が変わってくるかもしれない。とりあえず現時点ではそこまでやりこんでいない。
冒頭で述べたように、本作は過去作品を踏襲したものになっている。だから、シリーズのいちファンとして純粋に楽しめた。もちろん、クソゲーなどではない。
今後のアップデートによって、遊びにくいところは、どんどん改善されていくはずだ。
ゲームの評価はプレイする人によって変わる。ゲームはプレイヤー次第で傑作にも駄作にもなり得る。みなさんにも一度プレイしてもらいたいと思う。
今後も、本作のもっとちがった楽しみ方を見つけたら、ブログの記事として報告していきたい。
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