「会社に行きたくない」。そう思ったときは、心が疲れているのかもしれない。
仕事が辛いと思っているのに、我慢に我慢を重ね、限界を越えてしまい、心身を壊す──ボクにはそんな経験がある。今では少し回復したけど、危なくなったときは『ジョジョの奇妙な冒険』のセリフを思い出すことにしている。
そんなボクが“心のサプリメント”にしている『ジョジョ』の名言を紹介する。今回は、現在テレビアニメが放映中の第3部(スターダストクルセイダース)のセリフに限定して選んでみた。
みなさんも心に響くものを見つけていただければ幸いだ。
なお、作品を知らない人にも役立つように、セリフが登場する場面の簡単な説明を加えている。
もくじ
パート1●疲れた心を回復させ苦しさを乗り越えるセリフ
まずは、心が沈んでいるとき、さらに落ち込んでしまわないよう、自分を踏みとどまらせるセリフを挙げていこう。
【1】「逃げる」
主人公の承太郎がロープウェイの中で敵に襲われる。相手の弱点が見出せないし、狭い空間では実力を発揮できない。そう判断した承太郎が敵に向けて放ったセリフ。
ジョースター家には伝統的な戦いの発想法があってな…………
ひとつだけのこされた戦法があったぜ
それは!
『逃げる』
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
逃げるのは悪いことではない
心が辛いとき、もっとも効果的な対処法は「逃げる」こと。これはボク自身が実体験から学んだことだ。
今は、精神的な限界を感じたら早々に根を上げ、会社を休んだり、早退したりすることにしている。しかし、以前は「しばらく我慢すれば乗り越えられる」「今日、この仕事を終わらせないと、納期に間に合わない」などと自分を言い聞かせていた。
自分が地獄の淵をさまよって得られた教訓はこうだ。人の精神はじつにもろい。そして、仕事は意外になんとかなる。
じつは「逃げる」ことは「逃げない」ことより難しい。一時的でも、仕事を放棄することにはちがいないからだ。多少辛くても、そのまま仕事を続けるほうが楽だと錯覚してしまう。でも、再起不能になってからでは遅いのだ。
ここは『ジャンプ』のヒーローに学ぼう。取り返しのつかないことになる前に「逃げる」決断をしたい。
【2】「短所がすなわち長所になる」
スタンドとは、特殊な能力を持った自分の分身のこと。インドで遭遇した敵のスタンドは、サイズも小さく力も弱い。その代わり、本体(スタンド使い)から距離が離れていても操作が可能だった(通常は不可能)。敵がみずからの能力を説明しながら言う。
物事というのは短所がすなわち長所になる
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
短所も長所も自分が決める
心が沈んでいるとき、思考はマイナス方向に向かう。「自分には取り柄がない」「生きている価値がない」。そんな想いが頭をかけめぐる。会社に行く気が失せるのはそんなときだ。
しかし、自分の取り柄や価値は、自分自身が決めるもの。他人ではない。自分が短所と思っているものは、じつは長所かもしれない。仕事が遅いのは、ていねいに取り組んでいるから。口べたなのは、よく考えて発言しようとしているから──そう発想を切り替えることにしている。
このスタンド使いのように、短所はじつは長所だと考え、それをうまく生かす方法を見つける。どうせあれこれ考えるなら、そこに労力を割いたほうがいい。
【3】「楽しみが倍増したってワクワクした笑いさ」
【2】の最弱スタンドが仲間の頭の中に侵入。仲間が人質にとられた格好になり、承太郎は手出しができない。敵にさんざん好き勝手にふるまわれたあと、不敵な笑みを浮かべながら承太郎が言う。
楽しみの笑いさ
これですごーく楽しみが倍増したってワクワクした笑いさ
テメーへのお仕置きターイムがやってくる楽しみがな
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
嫌なことは続かない
楽しいことと嫌なことには波がある。嫌だなと思っていることは永久には続かない。反対に、楽しいこともずっと味わえるわけではない。「楽しい」と思っていても、しばらくすると感覚が麻痺してしまい、楽しさを感じられなくなってしまうからだ。
むしろ、嫌なことが続いたあとのほうが、ちょっとしたことを幸せに感じることできる。
ボク自身の例を挙げよう。あるとき、多忙な日々が続き、部屋を掃除する時間と気力がなくなってしまった。1か月ぶりに部屋をキレイにしたときは、それだけでかなりの満足感を得られた。
「【嫌なこと】のあとに【楽しいこと】が待っている」と思えればいいのだけど、心が弱っているときは、逆に「【楽しいこと】のあとに【嫌なこと】が待っている」と考えてしまう。金曜日は週末のことにだけ思いをめぐらせればいいのに、心が疲れていると、なぜか2日飛ばして週明けの月曜日に意識が向いてしまう。より悪いほうに焦点を当ててしまうのだ。
そんなときは「楽しい週末のあとは、嫌な月曜日が待っている。でも5日耐えればまた週末がやってくる」というようにもっていく。バカバカしいようだけど、メンタルの不調には、こうした自己暗示が意外に功を奏するのだ。
【4】「おもしろくなってきたぜ」
物語の終盤、敵のボス・DIO(ディオ)との対戦。相手の攻撃方法がわからず、勝機も見えず、まさに絶体絶命のなか、承太郎が口にしたセリフ。
野郎…おもしろくなってきたぜ…
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 15 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
ときには強がりも有効
このとき承太郎はなぜこんなセリフを言ったのか。この段階で勝算があったとは思えない。承太郎には似合わない表現だけれども、これは〈強がり〉だったのでは? といっても、根拠のない〈強がり〉ではない。ある種の自信があったことも事実だと思う。つまり、きちんと対処すれば、必ず突破口は開ける、と。
ボクは、仕事で難題に直面し、尻込みしそうになったら、心の中で「野郎…おもしろくなってきたぜ」と唱えることにしている。「嫌だな嫌だな」と思いながら仕事を先延ばしにし、どんどんハードルが上がっていく。そんな事態こそ避けなければならない。
しかるべきタイミングで実力を出したいとき、承太郎のこのセリフは真価を発揮する。
【5】「こんな苦しい時こそ冷静に対処すれば必ず勝機はつかめるはずじゃッ!」
ここでの相手は太陽のスタンド。砂漠のド真ん中で、承太郎たちは灼熱の地獄に苦しめられる。地面に穴を開け、いったん避難するが、気温はどんどん上昇していく。やがて仲間たちが不気味な笑い声を上げはじめ、承太郎の祖父ジョセフが叱咤激励する。
気をしっかりもてッ!
こんな苦しい時こそ冷静に対処すれば必ず勝機はつかめるはずじゃッ!
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
勝機を見つけるため一呼吸おく
ここでは、もっとも冷静でなかったのはジョセフだったというオチがつく。ほかの仲間が見つけられた勝機をジョセフは見逃したのだ。
ボクにも、やるべき仕事が3つも4つも同時多発的に発生し、絶体絶命の状況に陥るときがある。自分には無理だ。とうていこなせそうもない──そんな危機的状況でも、深呼吸し、間合いを取ることで打開策は見えてくる。たとえば、作業の優先順位を冷静に見きわめ、段取りを工夫する。案ずるより産むが易し。意外に乗り切れるものだ。
もちろん、手に負えないこともある。その場合はためらわず上司に相談する。それも有効策のひとつ。ジョセフのように、焦りのあまり勝機を見逃すことが問題なのだ。
パート2●やる気を育て自分を幸せにするセリフ
ここからは、沈んだ気分をなんとか浮上させ、モチベーションを回復させたあと、積極的に活動できるようになるセリフを紹介。自分の人生を幸せなものにするために、少しでも前へ進むのだ。
【6】「これが私の『スタンド』の能力」
最終目的地であるDIO(ディオ)の館にたどり着いた一行。新手のスタンド使いの策により、建物の地下に引きずり込まれてしまう。そこで待ち構えていた敵が自分の能力を説明する。
私の趣味は人形を作ることです
そして本物の人間の魂をこの人形に宿らせたのです
バラしてしまいますが
これが私の「スタンド」の能力
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
自分の能力を存分に活用する
「スタンド」とは、登場人物たちが持つ特殊能力のことだけど、それぞれの個性や特技と解釈することもできる。ほかの人は持っていない性質であり、自分自身を助けるものだ。
ボクたちも、自分が持っている能力を「スタンド」と呼ぼう。彼らは戦いのためにスタンドを使うが、ボクたちは仕事のため、ひいては人生を充実させるために能力を活用したい。
ボクの場合は、ブログや電子書籍の「文を書くこと」だろうか。べつにすぐに成果に結びつかなくていい。「これが私の『スタンド』の能力」。そう胸を張って言える〈自分の持ち味〉は何か。それを知ることから始めよう。
【7】「一番よりナンバーツー」
自分の相棒がすでに倒されていることに気づかず、主人公たちを挑発する敵スタンド使い。相棒の助けを借りられないことを知った敵が、逃走しながら心の中でつぶやく。
おれは誰かとコンビを組んではじめて実力を発揮するタイプだからな……
「一番よりNo.2!」
これがホル・ホースの人生哲学
モンクあっか!
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
ナンバーツーの良い点に着目する
誰でも「ナンバーワン」になることを夢見たことぐらいあるはず。いや、他人から「一番になれ」とけしかけられた。そんな経験ならあるかもしれない。
しかし、そういうプレッシャーは、今のボクたちの弱った心にとって、とてもよろしくない。だったら、「ナンバーワン」など目指さなければいい。
ここで「ナンバーツー」のメリットに着目したい。それは、組織の中で影響力がある割には責任が少ないこと。だから、自由にふるまえる。なにか問題があったら、本来の責任者(ナンバーワン)に矢面に立ってもらえばいい。べつに責任をなすりつけるわけではなく、組織というものの仕組みを活用するだけだ。
もちろん、自分の「実力を発揮する」ことが大切だ。それを前提とするなら、ナンバーワンだろうが、ナンバーツーだろうがたいした問題ではない。
【8】「精神的動揺による操作ミスは決してない!と思っていただこうッ!」
敵スタンド使いとテレビゲームで対戦することになる。スタンドの能力により、ゲームに負ければ魂が奪われてしまう。そんなプレッシャーのなか、花京院が心の中で言う。
二度とあの時のみじめな花京院には絶対に戻らないッ!
だからこのゲームでこの花京院典明に精神的動揺による操作ミスは決してない!と思っていただこうッ!
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 13(ジャンプコミックスDIGITAL)]
自分に言い聞かせる
この花京院の勇ましいセリフは、実際に口に出したわけではなく、心の中で発せられている点に注意したい。つまり、相手を挑発するカタチを取りながら、じつは自分自身に言い聞かせている。
花京院の場合は戦いの最中なので、敵に向けて言ってもいいのかもしれない。しかし、ボクたちの日常生活でこんな挑戦的な言葉を放つ場面はないだろう。
そう。この花京院と同じように、自分を鼓舞するために、心の中で自身を挑発するのだ。
「精神的動揺による操作ミスは決してない」とは、裏を返せば、今は「精神的動揺による操作ミス」をしがちな局面であり、なおかつそれが許されないことを意味している。
この花京院を見習って、ここぞという局面で自分自身を挑発し、自己暗示にかけてみよう。
【9】「船員全員にこの手をためすつもりでいただけのこと」
一行は船に乗って目的地を目指す。船が出発すると早速スタンドによる攻撃。敵が船員のひとりに化けているようだが、誰かはわからない。しかし、承太郎がニセモノを一発で見抜く。どうやって見分けたのかという質問に答えて言う。
「承太郎なぜ船長があやしいとわかった?」
「いやぜんぜん思わなかったぜ
だが…………船員全員にこの手をためすつもりでいただけのこと………だぜ」
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
地道な作業の積み重ねが生きる
承太郎が一発で敵スタンドを見つけたのは、ただの偶然。ここで注目すべきは、船員全員を調べるつもりだったことだ。
このとき、すでにスタンドの攻撃を受けている。一刻も早く敵を見つけなければならない。そんななか、承太郎は、地道だが確実なやりかたでこの難関を突破しようとした。それが生きた。
ボクたちも、仕事に取り組むとき、一見遠回りに見えても確実な方法をとるべきだ。結果的に時間がかかっても、成果を出すことができるはずだ。
【10】「人は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる」
ついに宿敵DIO(ディオ)と対面。余裕の表われか、DIOは悠然と持論を述べはじめる。
名声を手に入れたり人を支配したり金もうけをするのも安心のためだ
結婚したり友人をつくったりするのも安心するためだ
人のために役立つだとか愛と平和のためにだとか
すべて自分を安心させるためだ
安心を求める事こそ人間の目的だ
[出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 カラー版 15 (ジャンプコミックスDIGITAL)]
安心を求める方法はなんでもいい
このDIOのセリフには、一瞬うなずいてしまいそうだ。たしかに、一理ある。でもこれは、敵スタンド使いのボスで、不老不死の男が吐いている。ここでいう「人間」に自分のことは含まれていない。人間の価値観を嘲笑うニュアンスが感じられる。
その点を頭に入れたうえで、もう一度DIOのこの言葉に耳を傾けてみる。じつは「安心を求める事こそ人間の目的だ」というのは真実かもしれない。人間を辞めた男のセリフだからこそ、鋭く本質を突いている気がする。
問題は、どうやって安心を得るかだ。
DIOが例として挙げた「名声を手に入れたり人を支配したり金もうけをする」「結婚して友人をつくったりする」のも、たしかにひとつの方法だ。一般的な考えではある。
でも、安心を得る方法はなんでもいいのではないか。大切なのは、それを自分で決めることだ。他人や社会から「これで安心が得られる」と方法を押しつけられる。それを警戒しなければならない。
なぜなら、価値観や人生観、感受性は人によってさまざまだから、誰かに押しつけられた方法では安心を得られないかもしれない。それでは本末転倒だ。
もし、いま自分が安心を得られているなら、当面の目的は果たしている。それをこれからも保ち続けるのか、別の方法を探すのかは、時間をかけて考えればいい。
本格的な心の不調は専門家に相談
ここで紹介した名言が効果を発揮するのは、あくまで軽く心の調子が悪い場合だ。マイナスの気分が何日も続いたり、体の疲労をともなったりするときは、本格的に心の病気を患っている恐れがある(個人的な経験だと、心の不調は、まず体調に表われる)。そうなると、自力では治せない。早めに専門家に助けを求めよう。
いずれにしても、メンタルの状態にはつねに注意を払う必要がある。軽い心の落ち込みなら、今回紹介した『ジョジョ』の名言が役に立つ。
「会社に行きたくない」という思いがわいてきたら、ぜひ試してほしい。
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS
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