『岸辺露伴は動かない』……ってなぜ先生ばかりがスピンオフ?

ジョジョ

岸辺露伴が活躍する短編集。作者はもちろん『ジョジョ』の荒木飛呂彦先生です。

岸辺露伴をご存知の方は多いかと思いますが、念のため知らない人のために説明すると、『ジョジョの奇妙な冒険 第4部』に出てくる漫画家でスタンド使いです。「スタンド使い」は「特殊な能力の持ち主」ぐらいに理解しておけばいいでしょう。

『岸辺露伴は動かない』は、露伴先生が活躍する『ジョジョ』のスピンオフ作品集というわけです。

『ジョジョ』の好きな人には、もちろんお薦めできます。それは「なじみのあるキャラクターが登場するから」という理由だけではありません。また、『ジョジョ』本編とは独立した作品としてストーリーが完結しているので、『ジョジョ』を知らない人も楽しめます。

なぜ露伴先生ばかりがスピンオフ?

短編の内容をご紹介するのは、ネタバレの恐れがあるので、ここでは、ある疑問を考えてみたいと思います。

すなわち──。

〈なぜ『ジョジョ』のスピンオフ作品の主人公は岸辺露伴先生ばかりなのか?〉

もちろん、作者の荒木先生にとって、露伴先生が作品にしやすいからでしょう。実際、魅力的なキャラクターですし、短編を読んでみても、しっくりきていることは確かです。

でも、第4部のキャラクターでいえば、『ジョジョ』本編の主人公・東方仗助でも話は成り立ちそうです。

それなのに、露伴先生が主人公の短編集ばかりが描かれている。

なぜなのか?

その疑問を解明するには、『岸辺露伴は動かない』という作品集の魅力を読み解く必要がありそうです。

敵はスタンド使いではない

自分なりに答えを考えてみました。

〈『岸辺露伴は動かない』に登場する敵はスタンド使いではない〉

これこそが、この短編集の魅力であり、主人公が岸辺露伴でなければならない理由なのではないか。

言うまでもなく『ジョジョ』本編では、主人公たちが戦うのは敵スタンド使いです。したがって、『ジョジョ』の世界観に慣れ親しんでいる人は、スタンドのルールを知っているし、スタンド使い同士の攻防にも感情移入できます。でも、初心者が、『ジョジョ』本編のどれかひとつのエピソードをほいっと取り出して読んでみても、なかなかついていけないのではないでしょうか(そもそも1話完結ではありませんし)。

しかし、この短編集では、スタンド能力の応酬は描かれません。岸辺露伴の相手はスタンド使いではないからです。『ジョジョ』をよく知らない人にもオススメできる理由はここにあります。

では、敵がスタンド使いでないとしたらなんなのか──というところが、この短編集の重要ポイントなのです。

なるほどこれは露伴先生でなければ

そして、敵がスタンド使いでなく、じつは●●●であるならば、なるほど『ジョジョ』の主人公もしくはそれに近いキャラクターでは、物語が成り立たないことがわかります。

ものすごく乱暴な表現をすれば、露伴先生は「正義の味方」ではなく「悪の味方」に近い存在です(もちろん、『ジョジョ』は勧善懲悪の物語ではないので、そんな単純な二元論ではないのですが)。

〈なるほどこれは露伴先生でなければならないな〉

そう腑に落ちます。

今回は奥歯にモノがはさまった言い方しかできず恐縮ですが、ぜひ『岸辺露伴は動かない』を読んで、納得していただければと思います。

[2016年5月2日 追記]

この『岸辺露伴は動かない』がアニメ化されるそうです。

ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

フリーランスのライター・編集者。インタビューや取材を中心とした記事の執筆や書籍制作を手がけており、映画監督・ミュージシャン・声優・アイドル・アナウンサーなど、さまざまな分野の〈人〉へインタビュー経験を持つ。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。収益を目的とせず、趣味の活動を行なう際に〈ぎゃふん工房〉の名前を付けている。

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