『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その2]特報2と特報3

エヴァ考察

2019年7月19日、劇場やスマホアプリで『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の「特報」第2弾(特報2)が公開された(20日にはYouTubeにもアップ)

先日のアバンと同様に、貴重な情報が得られたと同時に多くの謎も残された。

今回も、当ブログが提唱する〈メタフィクション(仮想現実)〉説を前提に、「特報2」の映像を読み解いてみよう。

例によって、過去の考察をまだお読みでない方はまずはそちらをご覧ください。

 icon-arrow-down 下図は当ブログの〈メタフィクション〉説を端的に表わしたもの。『シン・エヴァ』はゲンドウが「虚構A」から「虚構B」への突破を試みる物語——というのが当ブログの仮説である。

[2019年8月9日追記]「特報2.5」が公開された。基本的な内容は変わらないが、夏休み中の子どもに向けて、各カットの長さを少しずつ延ばし視認性が高められているという。「来年6月公開」の旨のテロップも追加。また「エヴァンゲリオン改8号機γ(ガンマ)」のカットも加わっている。

[2020年6月1日追記]「特報2’」が公開された。「2」との違いは、最後に公開日を告知した部分が「近日公開」に差し替えられている点。

[2020年10月24日追記]「特報3」の考察を追加しました。

[2020年12月27日追記]12月24日に「本予告」が公開されました。

[2021年1月16日追記]1月14日に公開延期が発表されました。

[2021年1月24日追記]1月22日に「TV SPOT 15秒」が公開されました。

[2021年2月26日追記]公開日が3月8日に決定しました。

[2021年2月26日追記]『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『Q :3.333』版予告・改2【公式】が公開されました。

本記事は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開前に書かれたもので、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序/破/Q』のネタバレが含まれています。また、コメント欄にて『シン・エヴァ』本編の内容に触れている場合がありますので、あらかじめご了承ください。本編鑑賞後の感想はこちら→『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[レビュー編]なるべくネタバレなし感想と暫定的答え合わせ

『シン・エヴァ』特報2を考察

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

それでは「特報2」で気になる部分をピックアップしながら、ざっくりと考察を加えていこう。

2号機と「インフィニティのなり損ない」らしきモノ

まずは、2号機らしきエヴァと、『Q』に登場した「インフィニティのなり損ない」とおぼしきモノの大群が映し出される。このあとのヴンダーが飛行するカットと考え合わせると、〈ガフの扉〉付近の様子と推測できる。

〈ガフの扉〉が開いているということは、〈ファイナルインパクト〉が起こっているのであり、『Q』ラストの『シン・エヴァ』の予告どおりに展開しているわけだ。予告の時点では〈ファイナルインパクト〉が阻止されて発生しないことも考えられたが、その可能性はとりあえずないようだ。

2号機は落下しているように見える。というより、空中を飛行するような能力は持ち合わせていないと思われるので、重力によって2号機は〈ガフの扉〉へ飛び込んでいるようだ。2号機は〈ガフの扉〉の上側にいることになる。

もしかすると、2号機は「帰還する」つもりはないのかもしれない。つまり、特攻。このあとマリが手を振る場面があるが、2号機を操るのはマリで死ぬつもりなのだ……と思わせておいて、じつはちがう——という展開を当ブログは期待している。

[2019年7月27日追記]2号機に乗るのはアスカ――というのが観る側の考察、いや願望だろう。

ここでとくに注目したいのは、「インフィニティのなり損ない」の大群は、あたりを漂っているだけで、2号機を攻撃していないこと。もちろん、2号機も応戦していない。となると、武器を携えた2号機の攻撃目標は別にあると考えられる。

過去の考察をもとにすれば目標は〈ゼーレ〉だ。しかし、やはり過去の考察で述べたとおり、この時点ではヴィレは〈メタフィクション〉の存在を知らないと思われる。つまり、ネルフ(ゲンドウ)と〈ゼーレ〉の思惑について、違いはないと考えているはずだ。攻撃目標は、〈ネルフ+ゼーレ〉ということになる。

しかしながら、ゲンドウとヴィレの利益は最終的に一致する、というのが当ブログの見方だ。この矛盾をどう解消するか? のちほどこの謎解きにチャレンジしてみたい

放浪中とおぼしきアスカたち

〈コア化〉した街を彷徨さまよっているとおぼしきアスカたちも見える。『Q』のラスト直後の様子だろう。

「アバン」では、ヴィレはアスカたちを見失ったような発言があったが、このシーンを見ると簡単に見つけられそうなのだが……。時系列としては「アバン」よりもかなり前の出来事なのだろうか。

アスカたちの先にあるのは「黒き月」のようにも見える。3人は「黒き月」を目指しているのか?

のちに、ポータブル・プレーヤーを手にしたシンジの姿が映るシーンもある。プレーヤーはアヤナミレイが『Q』のラストで拾ったものだろう(拾うところは描かれていない)

このときシンジのいる場所はどこなのか? これも気になる点のひとつだ。

ヴンダー、〈ガフの扉〉へ

ヴンダーが〈ガフの扉〉の上を飛行する場面もある。先の2号機と同じシーンだ。

当ブログの仮説をもとにすればヴンダーは〈ガフの扉〉へ突進、〈扉〉の向こう側へ行こうとしていると考えられる。もちろん、〈扉〉を抜けた先にあるのは〈ゼーレ〉の世界(虚構B)だ。

ヴンダーはもともと〈ゼーレ〉の乗り物であり、「神殺しの力」を持つモノ。この時点におけるミサトたちの意図はわからないが、最終的にはその力を使って〈ゼーレ〉と対峙することになるはずだ。

ここで気になるのは、ヴンダーやまわりの戦艦に例の“ヒモ”がついていない点。単にこのシーンは未完成で、これから描き足されるのかもしれない。そうでないとすると、どこかのタイミングで“ヒモ”がはずれるのだろうか。つまり、“ヒモ”は〈虚構B〉の世界からヴンダーを拘束していた。それが解けたから、〈ガフの扉〉へ飛び込むことが可能になった——ということかもしれない。

冬月とユイ(?)

なにかに苦悩しているとおぼしき女性の横顔のアップと、その向こうに冬月と思われる姿。冬月の表情は見えないが、かなり深刻な場面であることはまちがいない。

女性は、おそらくはユイだろう(レイの可能性もあるが)*1。順当に考えれば、これは過去の出来事だろうが、当ブログの仮説をもとにすれば、現在進行形の場面であっても不自然ではない。

*1:[2019年7月21日追記]他サイトで指摘されていたが、ユイとは髪の色が異なるので、レイの可能性のほうが高い。ただし、当ブログの説を前提とすると、依然としてユイだと考えることは可能である。

いずれにしても、冬月とユイは抜き差しならない状況にあるにちがいない。いったいなにが起こっているのか?

冬月とユイの2人が深刻な表情にならざるを得ない事態。2人を結びつけるもの。それはゲンドウだ。これについても、のちほど考察してみたい

〈槍〉の刺さった第13号機

『Q』に登場した制御装置に横たわる第13号機とおぼきエヴァ。コアには2本の〈槍〉が刺さっている。

どんな目的で〈槍〉を第13号機に刺しているのか? 過去の考察をふまえれば、2本の〈槍〉が刺さっていることから、第13号機の機能を増幅させているのだろう。〈槍〉は単独で使えば機能を停止させるが、2本をセットで使えば逆の働きをする(過去の考察では「合体させる」としたが、その必要はなさそうだ)

〈槍〉を刺している理由は、これはもう〈ファイナルインパクト〉を起こすためとしか考えられない。ただし、問題点もある。これもあとで考察する

[2019年8月3日追記]ゲンドウが意図しているのは、厳密には〈ガフの扉〉を開くことであって〈インパクト〉を起こすことそのものではない。したがって、〈槍〉を合体させる必要はないのかもしれない。

[2019年8月8日追記]コメント欄にて、「2本の〈槍〉は『Q』で刺したもの」とのご指摘をいただきました。たしかにそう考えるのが自然であろう。

カヲルとシンジ

カヲルがシンジに話しかけている場面もある。

『Q』で退場したはずのカヲルがシレっと復活して登場している。考えられる可能性は3つ。

まずは、やはりこの場面が過去の回想という可能性。しかし、このようなシチュエーションは新劇場版にも旧劇場版にも見当たらない。もちろん、描かれていなかっただけで、こういう状況が過去にあったことも考えられなくもない。

次に、シンジの見ている夢、もしくは精神世界のような場所での出来事である可能性。旧劇場版でも、亡きモノにされたはずのカヲルが〈サードインパクト〉の発動とともにシンジの心の世界に登場したから、この可能性も十分にある。

3つめの可能性として、回想でもシンジの精神世界でもなく、“現実”の世界でカヲルが登場することもあり得る。そもそもカヲルは〈メタフィクション〉の人物であり、『シン・エヴァ』で復活することは想定の範囲内ともいえる。

また、当ブログの説を前提としなくても、たとえば『序』において、カヲルの眠っていた棺桶がいくつも置かれていたから、カヲルの再登場はあまり驚きに値しないだろう(その場合、『序』『破』『Q』のカヲルとは別人ということになるが)

問題は、シンジと会話をしている場所だ。ここはいったいどこなのだろう?

背景の印象から〈コア化〉していない場所だと考えられる。『Q』でアスカの言う「リリンが近付ける所」であり、予告でミサトの言う「たどり着いた場所」なのかもしれない。

シンジ「ミサトさんやサクラさんの言うとおり、ぼくはエヴァに乗っちゃいけなかったんだ。ぼくがエヴァに乗らなければ、こんなことにはならかった。あのとき、カヲルくんもぼくを必死に止めてくれたのに……」

カヲル「きみがエヴァに乗るかどうかは問題じゃない。大切なのは、きみ自身が決断すること。決断することをおそれないことさ」

などという会話を交わしているのだろうか?

シーン番号から『シン・エヴァ』の展開を予測

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

「特報2」では、「Sn299 C001」といったテロップがところどころに挿入されている。

おそらく「Sn」は「シーン」、「C」は「カット」という意味だと思われる。つまり、それぞれの場面が『シン・エヴァ』のどのシーン・カットに相当するかを表わしているのだろう。

まずは、「特報2」のシーン番号とそれぞれの場面を確認してみよう。

  • Sn299 C001 2号機と「インフィニティのなり損ない」
  • Sn002 C018 放浪中のアスカたち
  • Sn054 C010 アヤナミレイの悩んだような顔のアップ
  • Sn299 C001A 〈ガフの扉〉に飛び込む2号機
  • Sn002 C010 〈コア化〉した街をさまよう3人
  • Sn299 C002 飛行するヴンター
  • Sn299 C003 〈ガフの扉〉に突入しようとしているヴンター
  • Sn143 C003 冬月とユイ
  • Sn105 C002 〈槍〉の刺さった第13号機(アップ)
  • Sn105 C001 〈槍〉の刺さった第13号機(引き)
  • Sn134 C017 手を振るマリ
  • Sn109 C002 プレイヤーを手にするシンジ
  • Sn115 C003 ミサトとリツコの会話
  • Sn136 C003 シンジとカヲル

ところで、『エヴァ』の旧劇場版(テレビ版)では、シーンの時系列を入れ替えたり、意図的に飛ばしたり、1話をまるまる過去の回想に費やしたりする演出が見られた。それに対して、新劇場版は一部の例外を除いて時系列どおりにシーンが並べられている。時間に対してトリッキーな演出はほどこされていない(当ブログが「ループ」説などに消極的なのはそのためだ)

ということは、『シン・エヴァ』も起こった出来事の順番に物語が展開すると考えられる。上記の場面をシーン番号順に並べ替えてみよう。

  • Sn002 C010 〈コア化〉した街をさまよう3人
  • Sn002 C018 放浪中のアスカたち
  • Sn054 C010 アヤナミレイの悩んだような顔のアップ
  • Sn105 C001 〈槍〉の刺さった第13号機(引き)
  • Sn105 C002 〈槍〉の刺さった第13号機(アップ)
  • Sn109 C002 プレイヤーを手にするシンジ
  • Sn115 C003 ミサトとリツコの会話
  • Sn134 C017 手を振るマリ
  • Sn136 C003 シンジとカヲル
  • Sn143 C003 冬月とユイ
  • Sn299 C001 2号機と「インフィニティのなり損ない」
  • Sn299 C001A 〈ガフの扉〉に飛び込む2号機
  • Sn299 C002 飛行するヴンター
  • Sn299 C003 〈ガフの扉〉に突入しようとしているヴンター

過去の作品(『序』『破』『Q』)において「カット」は映画の最初から終わりまで連番でつけられており、なおかつ今回のように「シーン」という区分けはされてない。したがって、たとえば「Sn299」が映画全体のどのくらいのところにあたるのかは不明だ。

「Bパートのラストで〈ファイナルインパクト〉が発動する」という当ブログの予想と、先のライブで緒方恵美氏が「半分ぐらい出来ている」と発言したことから考えると、「Sn299」は映画の中盤かもしれない。

Aパートで、放浪するシンジたち3人がヴィレに合流。AパートからBパートにかけて、人間ドラマや過去の種明かしなどがある。Bパートの終盤で〈インパクト〉が発生。ヴィレと2号機が〈ガフの扉〉に突入——ざっと、そんな流れになりそうだ。

もちろん、問題点もある。「〈コア化〉した街をさまようアスカたち」のシーンは「Sn002」となっている。先日公開された「アバン」がこの前にあるとすれば、「アバン」は「Sn001」になるはず。すると、ひとつひとつのシーンの尺が10分以上になってしまう。いくらなんでも長すぎる。

あくまで先日の「アバン」はライブ用であり、本編では「アバン1」と「アバン2」が入れ替わるのかもしれない。そう考えると、「ヴィレがアスカたちを見失っている」と解釈した場合に生じる問題が解決する。

あるいは、そもそもシーン番号を表わすテロップそのものが「特報2」の演出にすぎず、フェイクなのかもしれない。

さらにいえば、先に「『シン・エヴァ』も起こった出来事の順番に物語が展開すると考えられる」と述べたが、その保証もまったくないのだ。むしろ、この「特報2」のように、テロップで(「その2年前」など)シーンの時間が表示され、時系列はシャッフルされて展開する可能性も考えておいたほうがよさそうだ。

『シン・エヴァ』はゲンドウの自己犠牲の物語?

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

過去の考察でも述べたようにゲンドウは〈インパクト〉を起こすための材料を持っていない(ように思える)。2本の〈槍〉と〈第13号機〉は手にしていても、それだけでは足りない。たとえば、〈トリガー〉が不足している(なお、この〈槍〉がどこから出てきたのかは、別の記事であらためて検討する)

ここで、無茶は承知で、ある妄想を披露してみたい。

じつはゲンドウ自身がその足りない“材料”になるつもりなのでは? 〈ネブカドネザルの鍵〉によってそれが可能になっている、とも考えられる。

ユイが初号機に対して行なったのと同じように、ゲンドウも第13号機に「ダイレクトエントリー」するのではなかろうか。

 icon-arrow-circle-down 『Q』では過去にユイが初号機にエントリーした様子が描かれている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

つまり、〈ファイナルインパクト〉はゲンドウの自己犠牲によって実現するのかもしれないのだ。

それを裏づけるように、『Q』では冬月がこんな発言をしている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

だから今
碇は自分の願いをかなえるために
あらゆる犠牲を払っている
自分の魂もだ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

「特報2」の深刻そうな冬月とユイの表情は、ゲンドウの「犠牲」に対するものではないだろうか。

さらに、「ゲンドウの自己犠牲」をキーワードにすると、別の真実も見えてくる。

ゲンドウと〈ゼーレ〉の思惑は異なっている。これは劇中の描写からまちがいない。そして、(ここからは当ブログの想像だが)その真実をヴィレの連中は知らない——というよりも、ゲンドウが意図的に自分と〈ゼーレ〉を区別させないようにしているのだ。なぜか? 「神殺しの力」(ヴンダー)を持つヴィレに自分たちを攻撃させるため。それによって自分自身とともに〈ゼーレ〉を倒してもらうためである。

「諦観された神殺し」(『Q』のゲンドウの発言)の「諦観」とは、「あきらめる(行動するのを止める)」ことではなく、過去の考察でも述べたように「物事の本質をはっきりと見きわめること」だ。それはすなわち「この世界が仮想現実である」ことを知るという意味。「諦観された神殺し」とは、ようするに〈ゼーレ〉の打倒なのだ

ゲンドウは旧劇場版と同様に、“罰”をみずから受けるカタチで退場してしまうのか? それともミサトたちの手によって救済されるのか? そこが『シン・エヴァ』の見どころのひとつになりそうだ。

「特報3」をちょっち考察

2020年10月16日、「特報3」が公開された。やはり貴重な情報を得られたと同時に謎もより深まった。ここでは当ブログが気になった3つの場面について少しばかり考察を加えたい。

ミサトはなにを見つめている?

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

コンピューターのような機械を見つめるミサトが映し出される。じつは当ブログは「これこそ〈仮想現実〉説を裏づける証拠だ!」と直観した。このコンピューターが『ヱヴァ』の世界をつくっていたのだ! ……と早合点してしまったのだが、よくよく考えるとおかしいことに気づく。

当ブログの〈メタフィクション〉説では、〈仮想現実〉をつくっているコンピューターは虚構Bに存在しなければならない。このミサトのいる場所が虚構Bだと仮定すると、ミサトが虚構Aにいるときとおなじ姿で立っているのは不自然なのだ。

となると、このコンピューターとおぼしきモノはなにかといえば、『エヴァ』をよく観ている人なら、「MAGI」を連想すべきだろう。

「MAGIだとすると、ここはネルフ本部なのか!?」と思ってしまうところでもあるが、じつはヴンダーにMAGIが搭載されているようなのだ(『Q』においてヴンダーの壁面に「MAGI」の文字を確認できるらしい)

順当に考えて、やはりこれはMAGIの可能性がもっとも高いだろう。

ただ、なぜミサトがMAGIを見つめているのか。なぜその場面をわざわざ「特報」で流しているのか。いままで誰もがその存在を忘れかけていた「MAGI」が、『シン・エヴァ』では重要な役割を果たすのかもしれない。

[2020年12月27日追記]12月24日に公開された「本予告」には、ミサトが見つめているのと同じようなモノが大量に登場する。となると、やはりこれはMAGIではない可能性が浮上する。「大量にある」ということから想像すると、ここに人類ひとりひとりのデータが格納されており、ミサトが見つめていたのは加持のそれなのかもしれない。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

“黒き月”がなぜ作動している?

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

いわゆる“黒き月”(=劇中にはまだ登場せず、画コンテで確認できる用語)が作動を始めているような場面も見られる。

手前にある富士山とおぼしき山は何だ? と疑問に思ったが、『Q』をあらためて確認すると、フォースインパクトが中断した際、“黒き月”はたしかにこの富士山らしき山を巻きこむようにして落下している

つまり、この場面はその続きということになる。

気になるのは空が青いことだ。『Q』の描写では、“黒き月”はインパクトが起こることで(自動的に)作動しているように思える。空が青いということは、まだインパクトが起こっていないと考えられるが、にもかかわらず“黒き月”が動いているのはどういうことなのか?

謎の多い“黒き月”(当ブログも謎の解明はお手上げとしている)は、『シン・エヴァ』で言及されない可能性もあると踏んでいたのだが、なんらかの役割は果たすようだ。

この“黒き月”の謎が解ければ、“空白の14年間”の解明にもつながる。『シン・エヴァ』の描写に注目したいところだ。

〈ガフの扉〉に飛びこんだ先にあるものは?

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

アスカとマリの乗るエヴァが〈ガフの扉〉に飛びこむ様子も確認できる。「特報2」の考察で

ヴンダーは〈ガフの扉〉へ突進、〈扉〉の向こう側へ行こうとしている

と述べたが、ヴンダーだけでなくエヴァも特攻することはまちがいないようだ。

さらに、必然的に〈ガフの扉〉の向こう側が描かれることも確実だ(まさか、〈ガフの扉〉に突入した瞬間に「魂のルフラン」が流れるわけではあるまい)

〈ガフの扉〉の向こう側になにがあるか。そこが『シン・エヴァ』の最大のポイントとなるわけだが、当ブログは〈メタフィクション〉の世界だと想像しているのは、これまで述べたとおり。人によっては、〈パラレルワールド〉(旧劇場版やマンガ版の世界)、〈ループ〉(『序』『破』の世界)などを想定することも可能だろう。

気になるのは、あきらかにミサト率いるヴィレは、〈ガフの扉〉に飛びこむことを目的としているようにしか思えない点だ。『Q』では、インパクトを阻止しよう(〈ガフの扉〉を閉じよう)と奮闘していたはずだ。この矛盾はなんなのか。

ゲンドウにとってもヴィレにとっても〈ガフの扉〉を開くことは必要だと考えざるをえない。

『Q』ではシンジとアスカがこんなやりとりをする。

シンジ「エヴァ乗って世界を変えるんだ」
アスカ「…ガキが」「だったら 乗るな!」

アスカのセリフは、シンジの行動が、シンジの思惑どおりの結果につながらないことを表わしている(そして実際にそうなった)

アスカは、世界を修復する手段が別にあることを示唆していたのではないだろうか。

つまり、その手段こそが〈ガフの扉〉の向こう側にいくことなのではないか。

ただし、その場合、当ブログの持論に重要な問題が生じる。

当ブログは、ミサトやアスカたちはそこが〈仮想現実〉であることを知らないと想像していた。しかし、明確な意志を持って〈ガフの扉〉に向かっているとなると、じつは自分たちのいるところがハリボテの世界であることを認識しているのではないか? そう考えざるをえない気もする。

そうすると、ヴィレの目的はゲンドウの目的と一致することになる。しかし、お互いにそのことを知らないのではないか(もしかすると、ゲンドウは気づいているのかもしれないが)

ゲンドウの意図については別のところでも述べているが、ゲンドウとヴィレの目的が一致しているからこそ、最終的に〈ゲンドウ+ヴィレ VS ゼーレ〉の戦いになることをあらためて期待したい。

 icon-arrow-circle-down 次の考察はこちら。

ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

フリーランスのライター・編集者。インタビューや取材を中心とした記事の執筆や書籍制作を手がけており、映画監督・ミュージシャン・声優・アイドル・アナウンサーなど、さまざまな分野の〈人〉へインタビュー経験を持つ。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。収益を目的とせず、趣味の活動を行なう際に〈ぎゃふん工房〉の名前を付けている。

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コメント

    • 匿名
    • 2019.08.08 12:20pm

    2本の槍は、Qで13号機が自分で刺した2本では?
    特報2のカヲル&シンジのシーンは、エヴァ展にあったヴンダー内部のアスカとマリに部屋に似ています。

    • 13号機の槍は、たしかにそう解釈するのが自然ですね。難しく考えてすぎてしまいました。

      カヲルとシンジのシーンについても、貴重な情報ありがとうございました!

    • 匿名
    • 2019.08.19 4:07pm

    ピアノ線状のものは、ヴンダーに搭乗する長良の立体式操舵(特に重力制御)により上下方向に加速度が生じた際のみ発生します。
    普通に水平方向に飛行している時は可視化されません。一部例外的なシーンがありますが

    • なるほど。ヴンダーは重力を自由に制御できるような、そんなオーバーテクノロジーを持っているのかもしれませんね。それは思い至りませんでした。

      貴重な情報、ありがとうございました!

    • まー
    • 2019.09.23 11:58pm

    なんか自分が作った仮説を意地でも正しいことにするためにへりくつこねるのはやめましょ
    シンはQから地続きの物語 虚構A 虚構Bになんてわかれてないのは明白

    まだシンがまったくつくられてないときなら自由な創造で許されるけどあそこまでQのすぐあとの話をされてまだ「別の世界の話だ論」を続けるのは無理ある Qの続編 それがシン・エヴァですよ もちろん終わり方で多重構造にしたりする可能性はあるけどされではここの仮説とはまるで違うってことだ 広げた風呂敷 しまえないのはわかるがあきらめ時ですよ

    • ちょっと誤解なさっているようなのですが、こちらの記事でも

      巷では「『シン・エヴァ』は『破』の続き(『Q』はパラレルワールド)」との説もささやかれていたが、ふつうに『Q』のつづきの物語であることがわかった

      と書いております。〈物語〉としては『シン』は『Q』の続きで、〈世界〉が虚構Aと虚構Bに分かれている。『シン』は虚構Aから虚構Bへ行くお話になる、ということです(両者が別々の物語として展開すると考えているわけではありません)。『マトリックス』『宇宙船レッド・ドワーフ号』『ループ』、エヴァ旧劇場版などを想像していただければ、ご理解いただきやすいかと思います。

      したがいまして、おっしゃるとおり「終わり方で多重構造にしたりする可能性はある」と考えているわけです。まー様と私の考えはじつは一致しているのではないかとも想像しています。

    • とみー
    • 2020.10.26 12:38pm

    こちらのブログに強い信憑性を抱いている者です。
    まだまだ謎の多い特報3にまで言及して頂き感謝しております。
    私もこのブログを参考に「ゼーレが外の世界に存在する」説を推しています。
    特報3で流れたコーラスのみの予告テーマが個人的には気になりました。
    コーラスのみの曲は最近では歌の出だしが多い印象ですが演出としては
    曲の中盤、間奏のような、最後の盛り上がりである「動」にむけての「静」と考えられます。
    つまり私の予想では予告に描かれていない「ガフの扉突破後」も本編で描き切ってくれると予想しています。
    薄い根拠ではありますがとにかくシンエヴァが楽しみでなりませんね。

    • 考察をご覧いただきありがとうございます。

      コーラスのテーマは特報の演出だとは思いますが、なんだか示唆的でもありますね。

      おそらくこれまで特報で流れた映像は本編の半分ぐらいのところまでで、〈ガフの扉〉を突破したあとの映像は意図的に隠されていると想像しています。

      いずれにしても完成した作品を観るのが楽しみですね。

      今後ともよろしくお願いします。

ぎゃふん工房(米田政行)

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〈ぎゃふん工房〉はフリーランス ライター・米田政行のユニット〈Gyahun工房〉のプライベートブランドです。このサイトでは、さまざまなジャンルの作品をレビューしていきます。

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