『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の謎を本気で解明する[その5]あれから14年たってるってことよ

空白の14年間になにがあったのか?

『新劇場版』の謎解きも、いよいよ最終段階……いや「概括の段階」に入った。

いまだに解いていない大きな謎は、『破』から『Q』に至る14年の間になにがあったか、そして『シン・エヴァンゲリオン劇場版』はどういう内容になるか、ということだ。

とはいうものの、これらの謎を解くための材料はほとんどなく、解明するといっても妄想に近いものになる。

『ヱヴァ』においては、謎解きは必ずしも“正解”である必要はない。それぞれの心のなかにある〈真実〉に近づければいいのだ。

では、始めよう。『ヱヴァ』をより深く味わうための最後の考察を。

空白の14年間の謎を解く

『破』から『Q』に至る間に14年が経過している。その事実は自明であるが、念のため確認しておこう。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

あれから
14年たってるってことよ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

〈サードインパクト〉はゲンドウの実験だった

では、14年の間になにがあったのかを探るために、『破』のラストで起こったことを検証してみよう。

碇ゲンドウの目的は虚構世界からの脱出であり、そのために必要なのが〈インパクト〉であった。

ただし、『破』の段階では、ゲンドウは計画を最後まで進めるつもりはなかったようだ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

ああ 我々の計画に
たどりつくまで あと少しだ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

ここでは、〈初号機〉を覚醒することだけが目的だったのだろう。ネルフ型のエヴァは搭乗者の意志を読みとる機能を持っている。その機能を使って〈ガフの扉〉を開けるかどうか。ゲンドウはそれを試したのではないか。その試行錯誤が『Q』におけるゲンドウの企みにつながっていると考えられる。

〈ゼーレ〉は先手を打ってカヲル遣わした

『破』の終盤、カヲルがプラグスーツを身につけ、〈エヴァンゲリオンMark.06〉に乗りこもうとする様子が描かれている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

時が来たね

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

このとき、いよいよ〈ゼーレ〉の計画が発動したと考えられる。注意すべきなのは、これは〈初号機〉の覚醒する前ということだ。

〈ゼーレ〉はゲンドウたちの企みに気づいていた。だから、あらかじめ手を打ち、カヲルを遣わしたわけだ。

さて、〈ゼーレ〉の計画とはすなわち〈人類補完計画〉だが、その手順はどんなものだったのか? 

〈カシウス〉を手にした〈Mark.06〉がセントラルドグマに降下し、〈リリス〉の〈ロンギヌス〉を抜く。〈ロンギヌス〉と〈カシウス〉で〈人類補完計画〉を発動。そんな段取りだったのでは?

ただ、〈ゼーレ〉にも誤算があった。予想より早く、〈初号機〉が覚醒してしまったのだ。〈ゼーレ〉の望まない〈サードインパクト〉が発生したため、それを阻止するために、〈カシウス〉を使わざるをえなくなってしまったわけだ。

カヲルはゲンドウに協力するつもりだった

『Q』において、カヲルはいつの間にかネルフ本部にいた。これも小さい疑問だ。

『破』の終盤、〈Mark.06〉に搭乗していたとき、おそらくカヲルは〈ゼーレ〉の意向に逆らうつもりだった可能性が高い。

根拠となるセリフを見てみよう。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

今度こそ君だけは
幸せにしてみせるよ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

〈ゼーレ〉の意向に従って計画を実行すれば人類は滅亡するのだから、シンジを幸せにすることにはならないだろう。

では、具体的になにをしようとしていたのか。まったくの不明で想像するしかないが、もしかしてカヲルはネルフ(ゲンドウ)に協力するつもりだったのかもしれない。あるいは、協力するフリをして、チャンスを待つつもりだったか。そう考えると、『Q』でカヲルがネルフ本部にいたことの説明がつけやすい。

そもそも〈カシウス〉を〈初号機〉の覚醒を止めるために使った時点で、〈ゼーレ〉の計画は中止せざるをえなかっただろう。そうなると、カヲルが〈Mark.06〉に乗っている理由も、とりあえずは失われたはずだ。だから、カヲルはいったんは〈Mark.06〉から降りたのではないか。

カヲルのことは、ゲンドウでさえこのときまで知らなかったはずだ。あまつさえ、ネルフにとってカヲルは意味不明の存在にちがいない。

しかし、なんらかの方法でカヲルが〈使徒〉であることがわかった。そこで、安全のために〈DSSチョーカー〉を首に付けたのではないだろうか。

▼〈DSSチョーカー〉について、カヲルはこう語る。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

もともとは僕を怖れたリリンが
作ったモノだからね

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

〈Mark.06〉はゲンドウが改造した

さて、セントラルドグマには「リリスの結界」が張られ、14年前の状態がそのまま保存されていたらしい。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

もうすぐリリスの結界だ
メインシャフトを
完全にふさいでいて
この14年間
誰の侵入も許していない

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

セントラルドグマが『破』の直後の様子をそのまま留めているのであれば、14年前になにがあったのかを探る大きなヒントになる。

セントラドグマには〈Mark.06〉が残されていた。この点についてカヲルは次のように説明している。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

(シンジ)
ん? あれはエヴァ?

(カヲル)
自律型に改造され
リリンに利用された機体の
成れの果てさ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

さて、「自律型に改造」は、いつ行なわれたのだろうか。ゲンドウですら直前までその存在を知らなかった〈Mark.06〉を、ネルフのスタッフがわずかな時間で改造できたとは考えにくい。『破』のラストでカヲルが月から降下してきたときから、短く見積もって数日、普通に考えれば数か月はかかるのではないだろうか。

ということは、〈Mark.06〉を「自律型に改造」した目的は、使徒襲来などの切迫した状況に対応するためではないと考えられる。事前に準備された計画を実行するために行なわれたはずだ。

ところで、カヲルの「リリンに利用された」「成れの果て」という表現には、揶揄的なニュアンスが含まれているように思う。つまり、〈Mark.06〉の使われかたはカヲルの望むものではなかったということだ。

カヲルの望まない使われたかたとは? 

『Q』でカヲルはネルフの〈フォースインパクト〉を防ごうとしていたことから類推すると、〈Mark.06〉が〈サードインパクト〉を起こすために使われることは望んでいなかっただろう。逆に、〈Mark.06〉が〈サードインパクト〉を阻止するために使われたのなら、「〈サードインパクト〉を止めるために奮闘した機体さ」などと表現するのではないだろうか。

ようするに、結果的には

〈Mark.06〉は〈サードインパクト〉を起こすために使われた

ということになる。

では、〈サードインパクト〉を起こしたのはだれか? これはもうゲンドウしかあり得ない(ゲンドウの目的は〈インパクト〉を起こすことである)。したがって、「自律型に改造」したのもゲンドウ(ネルフ)ということになる。

ちなみに、〈ゼーレ〉が〈Mark.06〉を改造した可能性はあるだろうか? そもそも〈Mark.06〉は〈ゼーレ〉の造った機体なのだから、わざわざ「改造」する必要はない。最初から「自律型」で造っておけばよいからだ。やはりゲンドウが改造したと考えるほうが自然だ。カヲルの「リリンに利用された」という表現にも符合する。

槍はアスカが刺した

〈Mark.06〉には槍が刺さっていた。これも確認しよう。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

この槍はだれが刺したのだろうか? 〈Mark.06〉がみずから刺しているようにも、何者かに刺された槍を抜こうとしているようにも見える。

シンジが〈エヴァンゲリオン第13号機〉で槍を抜いたとき、〈Mark.06〉が活動を始めている。その様子を見て式波・アスカ・ラングレーはこう叫ぶ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

まずいっ!
第12の使徒がまだ生き残ってる

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

このセリフから〈Mark.06〉は14年前にすでに〈使徒〉だったと考えられる。また、〈Mark.06〉が動き出した直後に「生きている」と判断していることから、アスカはすでに〈使徒〉と化した〈Mark.06〉と戦った経験があると思われる。

となると、〈Mark.06〉に槍を刺したのはアスカである可能性が高い。もしかすると、このとき真希波・マリ・イラストリアスも参戦していたかもしれない。アスカが〈Mark.06〉に、マリが〈リリス〉にそれぞれ槍を刺したと考えても矛盾は生じない。

『破』のラストの時点では稼動できるエヴァは存在しなかったが、数か月もあれば、機体を修復することはできただろう。もちろん、アスカも復活したわけだ。

ただし、〈リリスの結界〉の存在は気になるところだ。〈結界〉がいつ張られたのかは不明だが、おそらく槍が刺さった直後だろう。遠距離から槍をとうてきすれば、〈結界〉のなかにアスカたちが閉じこめられることはないはずだ。

〈Mark.06〉が使徒になったのはバグ

〈Mark.06〉が第12の使徒になっていたのは、だれかの意図によるものだろうか?

〈Mark.06〉が〈使徒〉になることで得をする人物や組織は存在するだろうか。

もっとも可能性のありそうなのはゲンドウだが、さすがにエヴァを〈使徒〉にするような芸当は無理だと思われる(カヲルを〈使徒〉にするのとは意味が異なる)。

〈使徒〉とはコンピューターのバグであり、〈Mark.06〉が〈使徒〉になったのも想定外だったと考えられる。3号機と同様に、気づいたら〈使徒〉と化していたのではないだろうか。

槍が2本とも〈ロンギヌス〉だったのは勘違い

セントラルドグマにあった槍は2本とも〈ロンギヌス〉だった。そのため、カヲルの思惑ははずれることになった。

では、いつすり替わったのだろうか? 

セントラドグマは〈リリスの結果〉によって封印されていた。14年前から『Q』の時点までの間に、だれかがすり替えたとは考えにくい。さすがのゲンドウもそこまでは無理だろう。

となると、最初から槍は2本とも〈ロンギヌス〉だったと考えられる。

だから、問題は「いつすり替わったのか?」ではなく、「なぜカヲルはセントラドグマの槍が〈カシウス〉と〈ロンギヌス〉だと誤解していたのか?」ということになる。

あらためてこの問題を解いていこう。

ヒントとなるのは、先に見たカヲルのセリフだ。〈Mark.06〉についてこう説明している。

自律型に改造され

なぜ、これが謎を解く鍵となるのか?

ここで、〈カシウス〉と〈ロンギヌス〉の使われかたをおさらいしよう。

〈カシウス〉は、〈初号機〉の活動を止めるために使われている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

一方、〈ロンギヌス〉は〈リリス〉の活動を止めている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
©カラー・GAINAX

また〈第13号機〉の活動を停止させるのにも〈ロンギヌス〉は使われている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

〈カシウス〉も〈ロンギヌス〉も、エヴァなどの活動を停止させる働きを持つが、両者には微妙にちがいがある。

それはなにか?

〈Mark.06〉は、ゼーレ型のエヴァだ。〈リリス〉はエヴァではないが、システムの創造者たる〈ゼーレ〉と関係の深い存在といってよいだろう。〈第13号機〉は、ゼーレ・ネルフのハイブリッド型。そして、〈初号機〉はネルフ型のエヴァだと結論づけた。

以上をふまえると、

〈カシウス〉はネルフ型エヴァに有効

〈ロンギヌス〉はゼーレ型エヴァに有効

と考えられるのだ。

もうおわかりだろう。

〈Mark.06〉は、本来はゼーレ型だから、その活動を止めるためには〈ロンギヌス〉が使われるはずだった。しかし、「自律型に改造され」たことでネルフ型になった。だから、〈ロンギヌス〉ではなく〈カシウス〉を刺したにちがいない——と、カヲルは誤解したのではないだろうか?

〈Mark.06〉がほんとうにネルフ型になっているかは不明だが、いずれにしても実際に使われたのは〈ロンギヌス〉だった。その事実をカヲルは知らなかったのだ(ゲンドウが嘘の事実をカヲルに告げていた可能性もある)。

だから、『Q』の悲劇が起こってしまったわけだ。

セントラルドグマで〈インフィニティ〉が生み出された

『Q』では、エヴァの形をした巨大な物体の残骸が街のあちこちに見られた。シンジたちがネルフ本部からセントラルドグマに降りてゆく際、シャフトに群がるようにしてへばりつくエヴァの形をしたモノが描かれた。これをカヲルは次のように表現している。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

ああ 全て
インフィニティのなり損ないたちだ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

街にある残骸も「なり損ない」なのか、それともいちおうは〈インフィニティ〉の完成形であるのかは不明だ。いずれにせよ、〈サードインパクト〉が起こったときに〈インフィニティ〉が発生したと思われる。

14年前、この〈インフィニティ〉と人類の壮絶な戦いが行なわれた。ネルフ本部に残る破壊の跡がそれを物語っている。

では、〈インフィニティ〉と交戦したのはだれか? 〈ネルフ〉以外に武力を持つ組織として国連軍が考えられる。セントラルドグマの〈リリスの結界〉のなかに、国連軍の兵器の残骸が確認できる。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

では、鈴原トウジや相田ケンスケ、洞木ヒカルなど、一般の人々はどうなったのだろうか。

先に考察したように、『破』のラストに起きた〈ニアサードインパクト〉から〈サードインパクト〉まで数か月の猶予がある。トウジたちは、街の人たちとともに避難した可能性もある(余談だが、旧劇場版では〈サードインパクト〉の前にシンジのクラスメイトは疎開している)。

14年前、シンジは負の感情を増幅した

空白の14年間でもっとも重要な問題は、シンジはなにをしたのか、ということだ。

ヴィレのメンバーたちがシンジに冷たく接するのも、14年前のシンジのふるまいに原因があると思われるからだ。

カヲルの言葉を信じるなら、『破』のラストの〈ニアサードインパクト〉から、『Q』の冒頭で回収されるまで、シンジは〈初号機〉のなかに取りこまれていたらしい。ふつうに考えれば、シンジは14年もの間、なにもしていない(なにもできなかった)ことになる。

▼カヲルのセリフはそのことを裏づけている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

君が初号機と
同化している間に起こった——
サードインパクトの結果だよ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

しかしながら、ヴィレのメンバーが強く非難せざるを得ないような“行動”をシンジはした——そう考えなければつじつまが合わない。

「〈初号機〉と同化」した状態でシンジはなにができたのか。〈初号機〉を動かしてなにかしたのか? おそらくちがうだろう。

ここで思い出したいのが〈初号機〉の機能だ。搭乗者の想いを読みとることができる。この「想い」とは、本人が自覚しているものとは限らない。意識していないもの、深層心理にあるようなものまで読みとってしまうのではないか。

『破』のラスト、〈初号機〉が覚醒する直前にシンジは何と言っていたか。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

僕がどうなったっていい
世界がどうなったっていい
だけど綾波は…
せめて綾波だけは
絶対 助ける!

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

もちろん、シンジの本意は「綾波を助ける」ことであって、ほんとうに「世界がどうなったっていい」とは思っていなかっただろう。

だが、〈初号機〉はその負の感情ともいうべき想いも読みとってしまった

この点は、おそらくヴィレのメンバーたちには周知の事実なのだろう。赤城リツコはシンジの首に付けた〈DSSチョーカー〉についてこう説明する。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

エヴァの搭乗時
自己の感情に飲み込まれ
覚醒リスクを抑えられない事態に
達した場合
あなたの一命をもって
せき止めるということです

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

シンジが「自己の感情に飲み込まれる」ことで〈初号機〉は「覚醒」し、〈インパクト〉が起こってしまうわけだ。

以上をふまえると、〈サードインパクト〉がどのように起こったか。次のような想像ができる。

ゲンドウによって自律型に改造された〈Mark.06〉がセントラルドグマに降下していく。

青葉「〈エヴァMark.06〉の起動を確認!」

ミサト「なんですって!? いったいだれが……まさか……碇指令?」

リツコ「おそらく目標は〈リリス〉ね」

ミサト「碇指令は〈サードインパクト〉を起こすつもりなの?」

リツコ「だけど、〈サードインパクト〉には〈トリガー〉が必要。〈初号機〉が……」

ミサト「シンジくん……?」

リツコ「でも、彼……止めようとするかしら? 世界の破滅を……」

〈カシウス〉が刺さり、行動を停止している〈初号機〉。その前にゲンドウが立っている。

ゲンドウ「さあ、シンジ。約束の時だ。ともにユイのもとにゆこう」

〈初号機〉が再び覚醒。胸に刺さった〈カシウス〉を抜こうとする。

マヤ「やめて! シンジくん! あなたはこんなこと望んでいないはずよ!」

〈ガフの扉〉が開き、世界が崩壊しはじめる。〈サードインパクト〉の続きが始まったのだ。

アスカ「バカガキ……」

ミサト「いいアスカ、必ず〈Mark.06〉を阻止するのよ!」

アスカ「ミサトも病みあがりに軽く言ってくれちゃって……コネメガネ! 援護射撃たのむわよっ!」

マリ「合点、承知!」

アスカやマリが行動を始めるのと同時に、ネルフ(ゲンドウ)と国連軍との戦闘も展開したのだろう。

このときミサトたちは、すでにヴィレあるいはその前身の組織に身を置き、国連軍と共闘したと考えられる。

国連軍やミサトたちが戦った相手は、ゲンドウというより〈インフィニティ〉だったというべきだろう。

ところで、『Q』において、槍を抜こうとしたシンジに対し、アスカがこう叫ぶ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

ガキシンジ また
サードインパクトを起こすつもり?

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

〈リリス〉に刺さった槍を抜くことで〈インパクト〉が起こるということは、〈リリス〉に〈ロンギヌス〉を刺したことで、〈サードインパクト〉が中断したと考えられる。同時に〈インフィニティ〉も活動を停止したのだろう。〈使徒〉と化した〈Mark.06〉も〈ロンギヌス〉によって仕留められた(実際は殲滅していなかったわけだが)。

最終的に、アスカやマリによって〈リリス〉の首は切り落とされ、〈リリス〉は活動を一時停止。

〈インパクト〉の〈トリガー〉になりうる〈初号機〉は封印され、ミサトたちの手によって宇宙に放出された。

空白の14年間に、そんな出来事があったと想像できる。

『シン・エヴァ』で〈ファイナルインパクト〉が起こる

ここで、完結編となる『シン・エヴァ』の内容がどうなるか……いや、どうあるべきかを検討してみよう。

アヤナミレイの争奪戦が起こる?

『Q』のラストに流れる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の予告では〈ファイナルインパクト〉という言葉が登場することから、ゲンドウが〈インパクト〉を起こすのはほぼ確実だろう。

ただ、どうやって起こすのかは想像できない。

〈インパクト〉には、それを起こすもの(システムを制御できるもの)と〈トリガー〉が必要だ。ゲンドウは、いずれも持っていないように思われる。

新しいエヴァ〈14号機〉が造られ、それが〈インパクト〉を起こすのかもしれないが、それでは『Q』と同じ展開でおもしろくない。

また、〈インパクト〉には〈魂〉を持つ者が必要だが、ゲンドウのもとにはその資格のある人物がいない(ように思える)。『Q』で「魂の場所」が変わりつつあるアヤナミレイがその役目を果たすのかもしれない。もしかしたら、『シン・エヴァ』はこのアヤナミレイの争奪戦が展開されるのではないか……。

さらに想像を膨らませれば、『Q』で〈リリス〉が失われているため、〈トリガー〉や〈魂〉は不要で、ゲンドウの持つ〈ネブカドネザルの鍵〉だけでシステムを制御できる可能性もある。その場合、ゲンドウは手持ちの道具だけで〈ファイナルインパクト〉を発動することができるのかもしれない。

ミサトvsゲンドウの戦いが描かれる

『Q』の展開をふまえると、ヴィレ(ミサト)vsネルフ(ゲンドウ)の戦いが展開することはまちがいない。

そもそもミサトたちはなにを目指しているかといえば、〈インパクト〉を阻止しようとしているのは確実。世界は『序』『破』とくらべて一変してしまったが、いまの世界を維持しようとしているのだ。

ここで『破』において、アスカが3号機に乗る前にミサトがかけた言葉に注目したい。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

この世界は
あなたの知らない面白いことで——
満ち満ちているわよ
たのしみなさい

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

ミサトは、「自分だけでなく、世界に目を向け、それがどんなものであっても肯定する・受け入れる」という価値観を持っているのだろう。これは制作陣の世界観・人生観を表わしているようにも思える。変わり果てた世界を安易に変えようとしたシンジとは対照的だ。

ミサトの考えかたやふるまいは、『新劇場版』のテーマにつながるものといってよい。

ミサトとゲンドウが手を組み〈ゼーレ〉と戦う

ところで、ここで視点を変えてみたい。

ミサトは、この世界を破滅させようとしているゲンドウや〈ゼーレ〉の企みはなんとしても阻止しなければならない。これは容易に想像できる。

しかしながら――。

『新劇場版』で描かれている世界はすべてコンピューターによるシミュレーション」だが、『Q』の時点でも、この“真実”をミサトたちは知らない可能性が高いのだ。〈ゼーレ〉がメタフィクションの存在であることは知るよしもないだろう。

さらに、ゲンドウが〈ゼーレ〉と対立していることも把握していないと思われる。劇中の人物でゲンドウの真意を知っているのは、おそらく冬月だけだからだ。

ゲンドウは〈ゼーレ〉の計画を止めようとしているのだから、その部分において、じつはゲンドウとミサトたちは利害が一致しているのだ。

これが『シン・エヴァ』でどう消化されていくのか、注目したいところだ。

さらに、『Q』においては、ミサトの「神殺し」という表現にも注意したい。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

神殺しの力
見極めるだけよ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

「神殺し」とは、〈ゼーレ〉がこの世界に手出しができないようにすることで、これはゲンドウの目的そのものだ。ここでも「じつはミサトたちと利害は一致している」ことがわかる。

興味深いのは、『Q』においてゲンドウと冬月が交わした会話だ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

(ゲンドウ)
ゼーレのシナリオを
我々で書き換える
あらゆる存在は
そのための道具にすぎん

(冬月)
お前の生き様を見せても
息子のためにはならんとするか
私はそうは思わんがな

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

このやりとりを深読みすると、「ゲンドウがシンジに自分の真意を打ちあければ理解を得られるはずだ」と冬月は考えているように思える。つまり、ゲンドウの目的はシンジの利益にもかなっているということだ。

シンジの利益とは、つまり元凶を取り除くこと=〈ゼーレ〉の排除だと考えても不自然ではない。

そう考えると、『シン・エヴァ』は、前半でネルフ(ゲンドウ)vsヴィレ(ミサト)の対立が描かれるが、後半はネルフとヴィレが共闘、共通の敵である〈ゼーレ〉を倒す――ここまでくると妄想そのものだが、そんな展開もありえるのではないかと期待してしまう。

『シン・エヴァ』でゲンドウは虚構から脱出する

〈インパクト〉とは、システムのシミュレーション世界(=『序』『破』『Q』)から脱出するために〈ガフの扉〉を開くことだ。〈インパクト〉が成功すれば、ゲンドウは〈ゼーレ〉のいる世界に行くことになる。

『シン・エヴァ』でこのゲンドウの企みが成功するかどうかは不明だが、もし成功したとしたらどういう展開になるのだろうか? やはりまったくの妄想になるが、興味本位で考察してみよう。

参考にしたいのが、考察の[その2]でも取りあげた『宇宙船レッド・ドワーフ号』だ。

シリーズ9「地球にもどって もっと変!?」三部作では、主人公たちは虚構世界から現実世界への突破を試みる。

▼現実世界への道を開いているところ。『ヱヴァ』で言う〈ガフの扉〉だ。

『宇宙船レッド・ドワーフ号』

『宇宙船レッド・ドワーフ号』
©UK Gold Service 2012

現実世界にやってくると、自分たちはフィクションの世界の住人だったことがわかる。

▼主人公たちの活躍はDVDにおさめられていた。

『宇宙船レッド・ドワーフ号』

『宇宙船レッド・ドワーフ号』
©UK Gold Service 2012

主人公たちのふるまいは、すべて脚本家のシナリオどおりだった。

▼物語はタイプライターで創られていた。『ヱヴァ』の〈死海文書〉もこういったものかもしれない。

『宇宙船レッド・ドワーフ号』

『宇宙船レッド・ドワーフ号』
©UK Gold Service 2012

〈ファイナルインパクト〉が成功し、登場人物たちが現実世界にやってくると、『序』『破』『Q』がまるごと虚構の世界だったことを知る——『シン・エヴァ』はそんなストーリーになるのではないか?

ただ、『宇宙船レッド・ドワーフ号』のように、シンジが『序』『破』『Q』のDVDを手に取り「なんだよこれ!?」のような展開だと、コメディになってしまう。それはそれでアリだとは思うものの、『ヱヴァ』のテイストとは大きく異なるし、われわれの期待するものではない。

『序』『破』『Q』をシミュレーションしている巨大なコンピューターをシンジが発見する――といった描写になるのかもしれない。

さて、『宇宙船レッド・ドワーフ号』の場合、虚構は300万年後の世界、現実は21世紀の世界になっている。つまり、両者はまったく次元の異なる世界として描かれている。

『シン・エヴァ』が『序』『破』『Q』と「次元の異なる世界」だとすると、『シン・エヴァ』はどのように表現されるのだろうか? いくつかの仮説を立ててみた。

【仮説1】『シン・エヴァ』は『シン・ゴジラ』のような実写

『序』『破』『Q』がアニメ、『シン・エヴァ』が実写となれば、両者が「次元の異なる世界」であることを端的に表現できる。今回の考察が『シン・ゴジラ』と『ヱヴァン新劇場版』との関連性を探るところから始まったことを考えると、このような展開も導き出せる。

アニメ作品のなかに実写が登場するのは、旧劇場版へのセルフ・オマージュのような意味合いも持つ。だから、十分にありうる。

【仮説2】『シン・エヴァ』は『序』『破』『Q』と異なるスタッフで創られるアニメ

『シン・エヴァ』はやはりアニメではあるが『序』『破』『Q』と「次元の異なる世界」であることを表現するために、別のスタッフで制作される可能性もある。つまり作風を変えるということだ。スタッフといっても、監督陣までは変えなくても、キャラクターデザインやアニメーターなどが異なれば、別のテイストのアニメになり、次元のちがいが表わせるだろう。

『Q』の冒頭は、『破』のラストから14年間も経っていた、という展開でわれわれの意表を突いた。『シン・エヴァ』でも、なにかしらびっくりするような表現がなされることは期待できるだろう。

〈人類補完計画〉もうひとつの仮説

さて、ここからは、謎解きとして成り立っていないことを自覚したうえで、あえて持論を述べてみたい。ここで提唱するのは、次の仮説だ。

〈リリス〉はユイのアバター(分身)である

白い巨人〈アダムス〉は〈ゼーレ〉のアバターだ。〈ゼーレ〉のメンバーが『ヱヴァ』の世界(システム)で活動するためのもの――この点はすでに考察した。

〈リリス〉も〈アダムス〉と同じように「白い巨人」であり、人智を超えた存在といえる。だとすると、〈リリス〉も〈ゼーレ〉のアバターではないかと想像する。

そこで――。

〈リリス〉はユイのアバターである

と、大胆な仮説を立ててみたい。

ただし、この仮説は誤りであることがすでに明白だ。『Q』の画コンテでは、発令所にある〈リリス〉のものとおぼしき首は「巨大な白色化したレイ」となっている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』
(株式会社カラー)

しかし、画コンテは制作の初期段階で作られるものだ。「巨大な白色化したレイ」というのは、あくまで便宜的な設定かもしれない。

実際、ゲンドウは〈リリス〉の首に対して「ユイ」への想いをつぶやいている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

最後の契約の時が来る
もうすぐ会えるな… ユイ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

また、『ヱヴァ』の世界においては、ユイとレイの顔は同じと考えても問題ないはずだ。

そもそも「巨大なレイ」がどこからわいてきたのか想像もできない。

いささか苦しいのは承知のうえで論を進めていきたい。

では、「〈リリス〉=ユイのアバター」と考えると、なにが見えてくるか。

まず、『ヱヴァ』の世界にアバターがあるということは、〈ゼーレ〉と同様、ユイは虚構の外の人間ということになる(余談ながら、旧劇場版では、ユイは〈ゼーレ〉の一員である)。

そして、〈リリス〉は『ヱヴァ』の世界を制御している(していた)存在だ。ということは、ユイこそがこの世界を制御している人物だと考えられる。

といっても、大げさなものではなく、世界(システム)の外の世界ではコンピューターを操作しているオペレーターのようなものだろう。『ヱヴァ』の世界では、伊吹マヤのポジションだ。ただ、マヤよりはもうちょっと地位は高く、ユイはシステムを設計・開発した人物かもしれない(マヤというより、リツコの立場というべきか)。

ここで、疑問に思うかたもいるかもしれない。

――ユイはシンジの母親なのだから、ゲンドウなどと同じ、シミュレーションのなかの人間のはず。

劇中の描写を確認しよう。

▼『ヱヴァ』の世界の人間と一緒に写真に写っている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

▼『破』で、ゲンドウとレイが食事をしているシーンで、レイの姿にユイが重なる。ユイとゲンドウが『ヱヴァ』の世界で会話を交わしていたことを示している。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

▼ユイはみずからが実験台となって初号機のなかに取りこまれていく。これも『ヱヴァ』の世界で起こった出来事だと思われる。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

以上の描写から、ユイが『ヱヴァ』の世界、つまりシミューレーションのなかの人間として存在していたことはまちがいない。

そう。つまり、ユイはシステムの内と外の両方に肉体が存在している、ただひとりの人物なのだ(ただし、厳密にいえば、『ヱヴァ』の世界の肉体はあくまでデータ上の存在だが)。

先に見たゲンドウの「もうすぐ会える」というセリフは、「(シミュレーションではなく)現実世界のユイに会える」という意味なのではないだろうか。

では、ユイは『ヱヴァ』の世界(シミュレーションのなか)でなにをしているのだろうか?

〈ゼーレ〉はシステムの復旧のため、ゲンドウを中心とする〈ネルフ〉を道具として使っている

かりにユイも〈ゼーレ〉の一員だとすると、ユイはシステムの内部で〈ゼーレ〉の計画を実行していることになる。

ただ、この考えかたを採るのはやや抵抗がある。ユイは、本質的にミサトやシンジたちと真っ向から利益が対立する人物になってしまうからだ。言わば、ゲンドウよりも“悪人”ということになる。これは、『エヴァ』の世界観にそぐわない気がする。

ユイは〈ゼーレ〉のメンバーではない、もしくは〈ゼーレ〉のメンバーではあるが、主流派とは意見を異にしている――そんなふうに無理矢理こじつければ、問題はいちおう解決する。

もともとありえない想定をしているので真偽をはっきりさせることは不可能だ。ならば、ここではより受けいれやすい考えかたを採用しよう。

虚構の外の世界はすでに描かれていた

『新劇場版』の虚構構造の図を三たび掲げてみる。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の虚構の構造

先の考察では、上図の〈虚構B〉の世界は「まだ登場していない」と述べた。

だが、じつはもうすでにわれわれはBの世界を目にしているとしたら……? そんな仮定のもと妄想を膨らませてみよう。

いつ、どこでBの世界が描かれていただろうか?

勘のよいかたはお気づきかもしれない。そう。『Q』と同時に公開され、DVD/Blu-rayにも一緒に収録されている『巨神兵東京に現わる 劇場版』だ。

もちろん、これが『ヱヴァ』とはまるで関係ない作品であることは承知している。だから、これから述べることが妄想であることも自覚している。あくまで「こう考えたら楽しい」という遊びだ。

話を続ける。

〈巨神兵〉は「人の形をした巨体」という意味でエヴァに似ている。これはだれしも思うところだろう。

▼『Q』の前に上映されるため、嫌でも『ヱヴァ』との関連を連想してしまう。

『巨神兵、東京に現わる』

『巨神兵東京に現わる 劇場版』
©2012二馬力・G

『新劇場版』において、エヴァに似た「人の形をした巨体」をわれわれは目にしたはずだ。

そう。〈インフィニティ〉だ。

『巨神兵』において、あの巨人がいつ、どこから、どのように出現したかは描かれていない。

『新劇場版』の虚構Aの世界で生み出された〈インフィニティ〉が、虚構Bの世界で〈巨神兵〉となって現れた――そう考えられないだろうか。

〈ゼーレ〉は、みずからの世界(虚構B)を破滅させるために、『ヱヴァ』の世界(虚構A)で〈インフィニティ〉を創り出したのではないか。

〈人類補完計画〉とは、虚構Bの人類を滅亡させることなのだ。

と言いたいところだが――。

これだと、ユイが世界の破壊に手を貸していることになる。その可能性はゼロでないにしても、先に述べたように、ユイの人物像にそぐわない(もちろん、ユイは〈ゼーレ〉には与しないと考えれば、この問題は解決するが)。

では、じつは〈インフィニティ〉は〈巨神兵〉ではなく、〈巨神兵〉に対抗するための武力と考えればどうだろう?

〈ゼーレ〉は、自分たちの住む世界の破滅を阻止するために、『ヱヴァ』の世界で必死になって〈インフィニティ〉を創り出した――そう想像することもできる。

ここで、思い出したいのは『巨神兵』のモノローグだ。あの声にみなさんは聞きおぼえはないだろうか?

あれは、ユイの声ではなかったか……?

モノローグの女性の年齢や職業は不明だが、20代前半の、たとえば学生ではないかと想像する。だとすると、『ヱヴァ』のユイと『巨神兵』の女性とで、人物像はかなり異なる。

もちろん、虚構Aと虚構Bは文字どおり次元がちがうのだから、人物像が異なるのはむしろ当然かもしれないが、『巨神兵』の女性が「世界の破滅を阻止するために」奮闘するような女性には思えない。

そこで――。

今回の『ヱヴァ』の謎解きは、巷にあふれる〈パラレルワールド〉説、〈マルチエンディング〉説の検証と否定から始まったことを思い出したい。

ここで、あえて〈パラレルワールド〉説や〈マルチエンディング〉説を採用することにしたい。それは虚構Aではなく、虚構Bの世界においてだ。

すなわち――。

『巨神兵』で描かれるのは、世界の破滅。つまり、バッドエンディグだ。しかし、『シン・エヴァ』では、真のエンディング(虚構Bの世界が〈巨神兵〉に滅ぼされない結末)が展開する――そんな想像ができるのだ。

遊び感覚でパラレルワールドを創る藤子・F・不二雄「創世日記」

ここで参考になるSF作品を紹介しよう。藤子・F・不二雄先生による「創世日記」だ。

主人公は謎めいた男から、「天地創造システム」と呼ばれる玩具を手に入れる。それは、宇宙を創造するシミューレーションゲームだった。主人公が玩具を起動すると、銀河系が創られ、地球が誕生。大気や大地も生み出されていく。

「創世日記」

藤子・F・不二雄「創世日記」(『藤子・F・不二雄 SF全短篇 第2巻 みどりの守り神』所収)

以下、「創世日記」のネタバレがあります(青字の部分)。

宇宙に生命が誕生するのは、無に等しい確率。偶然に頼っていては、宇宙が終わるまで生命が生まれる見込みはない。そこで、無数のパラレルワールドを作り、ばらまいた。主人公が手にした玩具はそのひとつだった。それはシミューレーションではなく、主人公が暮らすこの宇宙の現実そのものだったのだ。

『ヱヴァ』というシミューレーションの世界は、「創世日記」の玩具と同じようなものだった。ユイは遊び感覚とか、あるいは学生の自由研究で『ヱヴァ』の世界をいじっている――そう考えると、ユイが『巨神兵』の世界で何の知識も持たないウブな学生だとしても、「世界の破滅を阻止する」といった大それたことをやってのけても不思議ではないわけだ。

この謎だけはどうしても解けない

ここまで、些末なことはともかく、『新劇場版』の本質的な謎については無理矢理にでも決着をつけてきたつもりだ。

しかし、どんなに考えをめぐらせても、何のアイディアも浮かばない“謎”がある。それらを挙げてみよう。

『Q』に登場する謎の2つの物体

以下の物体の正体については、ヒントすらなく、当ブログにはお手上げだ。

まず、シンジが変わり果てた世界を目撃した際、宙に浮かんでいた球体。〈サードインパクト〉においてなんらかの役割を果たしたことはまちがいないが……。

▼ここから〈インフィニティ〉が生み出されたのだろうか?

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

▼画コンテには「穴だらけで中身がコア状になっている月」とある。上空に浮かんでいた月なのか、それとは別のものなのか……。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』
(株式会社カラー)

そして、〈フォースインパクト〉の際、地下からせり上がってきた物体。これも大きな謎。

▼この物体について、だれも説明してくれない。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

▼画コンテ集では、「黒き月」となっている。ここから〈インフィニティ〉が放出されているらしい(上の「月」からではなかったようだ)。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』
(株式会社カラー)

いずれも、〈サードインパクト〉や〈フォースインパクト〉でなんらかの役割を果たした物体であることを考えると、『シン・エヴァ』で描かれるはずの〈ファイルインパクト〉においても、なにかしらの動きを見せるのではないかと予想する。

ただ、その詳細までが語られるかどうはわからない(なにも説明されない可能性もかなり高い)。

ゲンドウと冬月が語る〈使徒〉の正体

『序』において、劇場公開時には存在しなかったセリフが、DVD/Blu-rayの1.11バージョンで追加されている。 第4の使徒が襲来したとき、ゲンドウと冬月が交わした会話だ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

(冬月)
第4の使徒
たいした自己復元能力だな

(ゲンドウ)
単独で完結している準完全生物だ
当然だよ

(冬月)
生命の実を食べたモノたちか

(ゲンドウ)
ああ 知恵の実を食べた我々を
滅ぼすための存在だ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
©カラー・GAINAX

「生命の実」という表現はカヲルも口にする。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

だから 自らを人工的に
進化させるための儀式を起こした
生命の実を与えた新たな生命体を
作り出すためにね

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

また、「知恵の実」という表現は、ゲンドウが〈ゼーレ〉に向かって言うセリフに登場する。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

あなた方も魂の形を変えたとはいえ
知恵の実を与えられた生命体だ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

ここでは、「知恵の実を与えられた生命体」とは〈ゼーレ〉のことだ。

以上をふまえると、次のことがわかる。

〈生命の実〉を与えられたモノ → 〈使徒〉 〈インフィニティ〉

〈知恵の実〉を与えられたモノ → リリン(人類) 〈ゼーレ〉

〈使徒〉とはコンピューターのバグのことだが、もしかすると、〈インフィニティ〉を造ろうとして失敗し、その結果として生み出されたのが〈使徒〉なのかもしれない。

〈使徒〉のこの設定が、『シン・エヴァ』にどこまで生かされるか不明だ。おそらくは顧みられることもないだろうが、いちおう淡い希望は持っておこう。

『破』で加持が口にする言葉

『破』において、シンジが加持の畑仕事を手伝っているとき、加持が非常に気になるセリフを残している。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

葛城を 守ってくれ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

漫然と観ていると、聴きのがしてしまいそうな些細なセリフだが、よくよく考えると、かなり謎めいた言葉だ。

ミサトはシンジの上官であり保護者なのだから、単純に考えれば、むしろシンジのほうがミサトに守られる立場だ。

シンジが〈使徒〉を倒すことで世界の破滅は免れるから、結果的にミサトを守ることにはなる。そのことを加持は言っているのだろうか?

その可能性もある。だが、『新劇場版』は、シンジが大人になり、ミサトとの関係性が変わっていく様子を描く作品であることを考えると、加持のこのセリフは、もっと深い意味を持っているように感じる。

もしかすると、シンジが「ガキ」のままでいることで世界が破滅してしまうことを予言しているのかもしれない。あるいは、ひょっとして、じつは加持こそがメタフィクションの人物である、などといったこともありうるのだ。

『新劇場版』は『Q』で完結してもよい

じつは『新劇場版』の物語は『Q』で一段落している。〈ゼーレ〉はこの世界を放棄し、ゲンドウの企みも表向きは打ちくだかれている。ミサトたちの希望は現状維持だから、〈ゼーレ〉やゲンドウがコトを起こさないのであれば、それに対抗する必要はない。

ようするに、極論を言えば、『新劇場版』は『序』『破』『Q』で終わっても問題ないということだ。かりになんらかの事情で『シン・エヴァン』が制作中止に陥ったとしても、『新劇場版』の作品として価値が損なわれることはない。

しかし、朗報がある。現在、『シン・エヴァ』の制作が進められているという。

いま、制作プロセスのどのあたりなのかは不明。よって公開もいつになるかはわからない。だが、いつかは完結編を拝める日が来ることは、ほぼまちがいない。

今回おこなった謎解きの答え合わせができるのを楽しみに待ちながら、ここでいったん考察を終えることにしよう。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の謎を本気で解明する[その4]ちょっとは世間を知りニャ!

ほんとにあった!呪いのビデオ【ほんとにあった!呪いのビデオ】おわかりいただける最恐映像42選[随時更新]

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