黒沢清+蓮實重彦『東京から 現代アメリカ映画談義』のピンボケ感

黒沢清と蓮實重彦の“師弟対談”で、まあこれほどの映画のプロ(いいかえれば「映画マニア」)が語っているのだから、さぞかし難解な内容なんだろうと思っていたら、わりとすんなりと読み進めることができました。副題にあるように、イーストウッド、スピルバーグ、タランティーノの映画が好きな人であれば気軽に楽しめる本です。

ただ、やはり“映画マニア”の本だけあって、私にはついていけないところもありました。

たとえば、タランティーノの『ジャッキー・ブラウン』について述べた部分。

蓮實 さきほど、タランティーノの過去の時間のインサートがかなり思いつきでいい加減だと言いましたけど、『ジャッキー・ブラウン』の現金すりかえ事件なども、並行的に起こる事件の時刻を画面に表示しないと、見ているだけでは前後関係がわからなくなってしまう。

というふうにタランティーノの欠点をふたりで語り合っていきます。ところが──。

蓮實 ただ、私はいろいろと文句を言いつつもいまだにタランティーノのファンなんです(笑)。スピルバーグも腰を据えて見ているけれど、ファンだとは言えない。タランティーノだと、実は『ジャッキー・ブラウン』が非常に好きなんです。

なんだよ先生、結局好きなんじゃないかよ! ……と、思わずツッコミを入れてたくなってしまい、なかなか文章に集中できないということがありました。

まあ、そこは“映画のプロ”だから、ただ「好き」と言っているだけでは「キモイ」のかもしれません。

この記事のタイトルの「ピンボケ感」というのは、著者の先生たちと読者である私とがシンクロできない部分があった、というだけで、もちろん、この本の内容を酷評したものではないことは、いちおう最後にお断りしておきます。

『オブリビオン』は雰囲気を愉しむ映画でした

『岸辺露伴は動かない』……ってなぜ先生ばかりがスピンオフ?

関連記事

  1. テレビ朝日版『ダイ・ハード』を越える洋画の吹き替…

    「洋画の吹き替え版のベストを選ぶとしたら?」と聞かれたら、迷うことなく「テレ…

  2. 大橋巨泉『「第二の人生」これが正解!』はほんとに…

    大橋巨泉さんは、1990年に「セミリタリア宣言」をし、今は一線から身を引いて…

  3. 『テッド』はギャグがわからなくても楽しめるという…

    劇場公開時、予告編を観たとき、華麗にスルーしてしまった。クマのぬいぐるみが言…

  4. 伊藤計劃『虐殺器官』がSFでも戦争モノでもなかっ…

    大量虐殺を誘発するという謎の“器官”。その鍵を握る人物を追って、アメリカ軍大…

  5. 『クラウド アトラス』はひとには勧めるけど自分は…

    19世紀から24世紀の500年にわたり、6つのエピソードが展開する大作。みな…

  6. 『ゲーム・レジスタンス』表紙

    『ゲーム・レジスタンス』で想い出す原田さんとのた…

    『ユーズド・ゲームズ』『ゲーム批評』『CONTINUE』『ゲームサイド』とい…

  7. クリエイターの仕事術はサラリーマンも使えるかもし…

    押井守、宮崎駿、庵野秀明、黒沢清。海外からの評価も高いアニメ・映画監督たち。…

  8. ebook-horror-movie

    電子書籍『このホラーは映画はなぜおもしろいのか?…

    このブログの記事を中心に、ホラー映画のレビューをまとめた電子書籍を作りました…

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

このサイトは……?

映画・音楽・ゲーム・本など、いろいろなジャンルの作品をみなさんといっしょに楽しむ〈ネタバレなし〉ブログです。フリーランス・ライターのユニット〈Gyahun工房〉が趣味を全開にしてお届けしています。

Gyahun工房のバナー

おすすめの記事

  1. 日本のホラー
  2. 『ひぐらしブレイクアウト!』
PAGE TOP