僕は毎年、年賀状代わりにリトルマガジン(ZINE)の『Gyahun』を発行している。最新号の特集は「コトバテラピー」だ。
“ふつうの人々”は〈癒やし〉をどこに求めるか。自分の愛する人、飼っているペット。お酒や甘味、スパなどでストレスや疲れを解消する人もいるだろう。
ここで提案するのは〈コトバ〉だ。それも通俗作品で見つけたそれ。
映画・小説・アニメ・音楽のなかにも名フレーズが眠っている。〈コトバ〉で癒やされ人生が拓けることもある。今回は、そんな〈コトバテラピー〉の世界にご案内しよう。
通俗的な作品にこそ人生のヒントがある
アメリカとかの偉い大学の先生が書いたような哲学書から人生のヒントをもらえることはもちろんあるだろう。日本の著名な小説家の作品に心を揺さぶられ人生への向き合いかたが変わるといったことも当然ありえる。ふつうの思考の持ち主であれば、そんな名作から得られた名文・名言を集めて本をつくるはずだ。そのほうがより多くの人に読まれ、その人の人生や生活を少しでも良くすることに貢献できる。
しかしながら、すでにお気づきのとおり—お気づきでないならこの機会にお気づきいただきたいのだが——あいにく僕はそんな器量を持ち合わせていない。そもそもそんな“高尚な”名著を読んでいない。読んだとしても気の利いたコメントはできそうもない。だから、「より多くの人」の人生の役に立つようふるまうなど、ちょっとできない相談だ。
そこで、僕ならできる、僕にしかできないことはないか。それを探してみる。ふだん名著や名作には触れていないが、巷でたのしまれている映画や小説やアニメなどには僕も親しんでいる。そんな作品から人生のヒントを見つけることはできないだろうか——と書いたところで、自分がカマトトぶっていることに気がついた。これまでも、俗っぽい映画や小説やアニメなどから、“人生のヒント”らしきものを見つけてきた……いや、見つけた気になっていたではないか。あまつさえ、リトルマガジン(ZINE)としてカタチにしてきてもいる。ならば、今回もおなじことをやるのみ。まともなオトナなら見向きもしないような作品から、あえて人生を彩る名言・名セリフを拾ってこようではないか。べつに法や倫理に反することじゃない。だれからも文句を言われる筋合いはない。読みてぇヤツだけかかってこい!
勘違いしないでほしい。劣等感や絶望感から自暴自棄になっているわけではない。じつは、通俗的な作品にこそ人生のヒント、すなわち真実が隠されている。これが僕の信念なのだ。アメリカの学者は僕のように日本社会の底辺でいているシケ男の実態など知らない。学者は、現代社会に生きる人々に普遍的にあてはまる理論をとなえているかもしれないが、“ふつうの人々”の枠からはずれてしまった者には救いにならない。だからこそ、通俗作品に癒やしを求める。日常のなかにこそ人生のヒントが隠されており、それを見つけることが真の幸福である。それが、リトルマガジンづくりを通して得られた真実だからだ。
あなたがふつうの人でも、あるいは「枠からはずれてしまった者」だとしても、今回の特集が少しでも人生を彩ることに貢献できれば幸いだ。
『Gyahun⑯ コトバテラピー』は、〈猫の本棚〉または〈ぎゃふん工房ショップ〉でお買い求めいただけます。
PDF版をご覧ください。 『Gyahun⑯』試し読み版をご用意しました。<をタップ(クリック)するか画像をスワイプするとページをめくれます(PCの方は全画面表示でお読みいただくのがおすすめです)。うまく表示されない場合は
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