『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のトムの走り方がヘンって感想

映画

『ミッション:インポッシブル』もシリーズ4作目となるが、今なお高いクォリティを保ち続けているのは素晴らしい。本作も文句なく他人にオススメできる。

そしてなによりも──。

トム・クルーズの走り方が印象に残る映画であった。しかもそれこそがこの作品のキモであったのだ。

[トム1]三幕形式のわかりやすい物語展開

バカのひとつ覚えで恐縮だが、この作品の脚本も、例によって「三幕形式」になっている。

物語を大きく3つに分割し、それぞれに山場を作る。こうするとクライマックスが3つできることになり、3つめのそれが映画全体のクライマックスになっている。過去のハリウッド映画の傑作はほぼこの「三幕」形式で書かれている。

主人公のイーサン・ハントは「世界を股にかける男」なので、さまざまな国でミッションをこなす。つまり、国が変われば「幕」が変わったということで、物語展開がじつに把握しやすい。

ふつうは気づく必要のない要素ではあるが、物語に入り込むためには大切なポイントだ。

[トム2]びっくりどっきりメカ

「わくわくするようなスパイグッズ」といえば、どちらかというと「007」シリーズの専売特許の気もするが、この作品に登場する道具の数々に胸が躍らずにはいられない。

とくに高層ビルの窓に張りつく手袋は、「ちょっと調子が悪い」ので「もしかすると落っこっちゃうかも」という微妙な設定もあいまって、スリル満点だ。

[トム3]そしてトムの走り

何よりも主役のイーサンの走るシーンが妙に印象に残る。

これまでのシリーズでも走っているシーンはあった気もするが、そんな感想は抱かなかった。

つまり、この作品で注目すべきは、俳優が醸し出す存在感・肉体感である。

上で述べた「メカのわくわく感」とは、それを使っている主人公と観客との一体感によって生み出されている。

「トムの走り方がヘン」というのは、ターゲットを追いかけるシーンで、カメラが主人公に肉薄しているからこそ覚える感覚なのだ。

CGが多用されている映画だけれども、それよりもやはり役者の演技や存在感こそが心に届く。そういうことなのではないか。

本作はよい意味で絵に描いたようなハリウッド映画で間口が広い。観る人を選ばず、老若男女が楽しめる傑作だ。

ぜひ一度ご覧いただきたい。

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米田政行(Gyahun工房)

米田政行(Gyahun工房)

フリーランスのライター・編集者。インタビューや取材を中心とした記事の執筆や書籍制作を手がけており、映画監督・ミュージシャン・声優・アイドル・アナウンサーなど、さまざまな分野の〈人〉へインタビュー経験を持つ。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。

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