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『貞子vs伽椰子』は白石晃士監督のオレたちに対する警告だった

ホラー

貞子と伽倻子が対決? ンなことはどーでもいいんだよ。くだらない──。普通ならそんな映画に食指は動かない。そう。普通なら。だが、監督が白石晃士となれば別。期待できる。必ずやらかしてくれる、、、、、、、、はずだ。

「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ」。予告編でもっとも印象に残るこのセリフに胸を躍らせながら映画館に足を運ぶ人も多いだろう。オレもそのひとりだった。

しかし──。

貞子と伽椰子の戦いを前に高みの見物をきめようと映画館のイスに座ると後悔する。

なぜなら、本作『貞子vs伽椰子』は白石監督のオレたちに対する警告なのだから。

『リング』『呪怨』をしっかりリスペクト

『貞子vs伽椰子』

〈呪いのビデオ〉を観てしまった女子大生と、〈呪われた家〉の向かいに引っ越してきた女子高生。物語はその2つのエピソードが交互に進んでいく。それぞれが貞子と伽倻子の呪いにかかってしまうというわけだ。

おなじみの〈白石ワールド〉が炸裂するのかと思いきや、意外に伝統的なジャパニーズ・ホラーのたたずまいを保ったまま、映画は進行していく。

いまでは貞子も伽倻子も愛すべきキャラクターと化してしまっているが、本作ではけっしてイロモノとしては登場しない。往年の『リング』『呪怨』を観たときに覚えた恐怖感。これをそのまま甦らせている。2つの名作に対する白石監督の敬意が感じられる。

ただ、過去作と同じことをやっていたら恐怖は同じレベルにはならない。つまり、当時の恐怖感を再現しているということは、恐怖演出はむしろパワーアップしているということだ。

個人的には、『エクソシスト』『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』といった、1970~80年代のアメリカ製ホラーの息吹を感じた。

ほんとうの恐怖は映画館を出たあとにやってくる

『貞子vs伽椰子』

物語の中盤、最強の霊能力者が登場するあたりから、さらに映画は盛り上がりを見せていく。

貞子を手玉にとったり、俊雄くんに石を投げて撃退したりと、霊能力者のふるまいは、いよいよ〈白石ワールド〉が始まるのかと期待を高めるのだが……。

ラストでは、観客たちはとんでもない恐怖を味わい、ぼうぜんしつして劇場を出ることになる。映画は終わった。もう恐がる必要はないはずなのに。

本作『貞子vs伽椰子』の結末は、貞子と伽椰子の呪いは●●●●●●●●●●●●●●●●、ということを意味する。

*ネタバレを防ぐため伏せ字にしました。下記のリンク先にて●●●部分を記しています。ぜひ作品鑑賞後にご覧ください。

「『貞子vs伽椰子』は白石監督のオレたちに対する警鐘だった」のネタバレページ

恐怖と絶望、そして登場人物たちに対する哀れみの情で、これを書いている今も震えがとまらない。

これは白石監督のオレたちに対する警告だった

『貞子vs伽椰子』

思えば、オレたちははしゃぎすぎた。貞子や伽椰子をオモチャにしすぎた。そもそも仕掛けたのは映画会社のほうだが、それに軽々しく乗ってしまった。

本作の結末は、『リング』や『呪怨』を知っていれば十分に納得できる。奇をてらってはいない。オレたちも心のどこかで予想はしていたものだ。しかし、無意識に目をそらしていたのだ。

「貞子と伽椰子はそんなに甘くないぞ」

これはまさに白石監督からの警告……いや、ちがう。本作を観て感じる恐怖と戦慄は、まさに貞子と伽椰子がオレたちにかけた〈呪い〉だったのだ。

©2016「貞子vs伽椰子」製作委員会

夜見野レイ

夜見野レイ

このサイトでは、ホラー作品のレビューを担当。幼いころ、テレビで最初に観た映画がホラー作品だったことから無類のホラー好きに。ガールズラブ&心霊学園ホラー小説『天使の街』シリーズをセルフパブリッシングで執筆。ライターとしては、清水崇・鶴田法男・一瀬隆重・落合正幸・木原浩勝の各氏にインタビュー経験を持つ(名義は「米田政行」)。

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