あなたも私も『下流老人』になる

「下流老人」という言葉を知っているだろうか? 「普通に暮らすことができない “下流”の生活を強いられている老人を意味する造語」だ。つまり、社会の落伍者、人生の負け組……。

そういう境遇にある人をしたいのではない。40代独身の貧乏男である当ブログは、将来は確実に「下流老人」だし、これを読んでいるあなたもそうなるかもしれない。藤田孝典『下流老人』を読むと、そう言いたくなるのだ。

今回は、みなさんをどうもくさせるために──いや、みずからの生還のヒントを探るために、本書のエッセンスを抽出していく。

「下流」に堕ちるのは自業自得ではない

若いころほうとうを繰り返し、悦楽に溺れ散財し、らくな生活を送ってきた。そんな“クズ人間”が人生の最終局面で地獄に堕ちる、ということであれば納得がいく。そういう人を社会が救済すべきかどうかはさておき、筋は通る。自業自得であるとも言える。

だが、「下流老人」は必ずしもそうじゃない。

下流老人は社会が生み出すものであり、あらかじめ生まれることが決まっているものなのだ。

ところで、当ブログは〈人生は宝くじ論〉を採用している。

たとえば、同じ程度の能力を持ち、同じように行動している2人の人間がいる、一方は幸福を手に入れ、もう一方は不幸になっている。この差はなぜ生じるのか? それはズバリ〈運〉。ひとりは「アタリ」を引き、もうひとりは「ハズレ」を引いた。そんな理論だ。

「努力なんてムダ」。そう言いたいのではない。努力は必要だ。「宝くじは買わなきゃ当たらない」のと同じ意味で。

自分でも気に入らない理論だが、これに反論する理屈がいまのところ思い浮かばない。世の中の不条理、不都合、理不尽を見るたび、〈人生は宝くじ論〉を実感せざるをえない。

「下流老人」が、本書の言うように、社会の歪みから生み出されるものならば、自業自得ではない。ハズレくじを引いてしまっただけなのだ。

あなたも私も「下流老人」になる

ハズレくじを引くように、運次第で「下流老人」になるのならば、あなたもそうなる可能性がある。

一般に高給取りとされる銀行員であっても、いくつかの問題を契機に下流化してしまうのだ。絶対に大丈夫と言える人は、日本社会において、どれほどいるだろうか。

「お金は幸せで買えないけど、幸せはお金で買える」というのも当ブログが採用しているセオリーだが、たくさん金を稼いでいることが人生を盤石にするとは限らない。まして今の日本では、ギリギリの生活を送っている人がほとんどだろう。それだけ「下流老人」の予備軍は多いということだ。

わたしたちのもとに相談に来る人々は、特別変わっている人ではない。多くは元サラリーマンなど一般的な労働者だ。なかには会社の役員や公務員もいる。職業に関係なく下流化しているところに問題の深刻さがあると言ってもいいだろう。無計画で放蕩な暮らしをしていた人々ばかりが下流老人になっているわけでは、決してない。

あなたは「自分はそうならない」と胸を張って言えるだろうか?

「下流老人」として生き抜くには?

では、どうすればいいのか? 「下流老人」にならない方法、「下流老人」になっても生き抜く方法。それらを見出すのは2つの理由で簡単ではない。

ひとつは、この超高齢化社会が前人未到の領域であること。人類がまだ経験したことのないの事態。だから、誰も最適な解がわからない。

もうひとつは、人の置かれている状況が千差万別であること。既婚・未婚、収入の多寡、家族との関係性など多種多様で、類型化するのが難しい。「こういうケースにはこう対応する」というモデルがなかなか作れない。

だったら、手をこまぬいているしかないのか。まさに運を天にまかせるしかないのか。

有効な解決策は見つかっていないが、生還のヒントは本書に書かれている。

じつはわたしが知っている貧困高齢者にも、幸せな人はたくさんいる。不幸せな人との違いは明らかに「人間関係」にある。

つまり、経済的には困窮していても、まわりと良好な人間関係が築けていれば、精神的に孤独は感じないし、いざというときは、お互いに助け合うこともできるわけだ。

わたしが相談支援の現場で常に実感するのは、「人間関係の貧富の差」が幸福度を決定するということだ。

逆にいえば、「下流老人」は、他人とのつながりが乏しい、あるいはゼロだから、地獄なのだ。

したがって、いま我々がすべきことは、他人とのネットワークづくりということになる。

ただし、これも簡単にはいかない。誰もが他人とそんな関係を持てるわけではない。だからこそ、不幸な「下流老人」が生まれているのだ。

ちなみに、結婚してパートナーを作ったり、子どもを持ったりしても問題の解決にならない。本書によれば、家族がいても「下流老人」になる人は存在する。

いまだ有効な解決策は見つかっていない。少なくとも本書には書いていない。だが、策が存在しないわけではないはずだ。まだ見えていないだけだ。

これからの人生はそれを探す旅となるのだろう。

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