品川ヒロシの『Zアイランド』にホラーマニアが驚いた

品川祐といえば、「おしゃべりクソ野郎」(©有吉弘行)という言葉に象徴されるように、バラエティ番組で自分をむりやり前へ前へ押し出そうとするタイプの芸人だ。

Zアイランド』は、そんな品川祐が「映画監督・品川ヒロシ」としてメガホンをとった作品。

過去の作品には食指が動かなかったが、本作はゾンビ映画だ。当ブログはホラー好きだし、ゾンビモノには一家言持っている。

だから、 ゾンビをダシにして「映画監督である品川」「アーティストである自分」を前面に出すような映画だったらタダじゃおかないぞ!と息巻いて鑑賞を始めたのだが……。

なんということだ!

傑作。

これはオススメゾンビ映画のリストに加えることを真剣に検討せねばならない傑作。まさに予想とは180度ちがう出来栄えだった。

そんな本作の魅力を探っていこう。

素材の持ち味を最大限引き出した

本作の魅力を分析するのに参考になる資料がある。まずは下の映像をご覧いただこう。

SCANDAL 「少女S」/ Syoujo S ‐Music Video

これは、当ブログの音楽人生を変えたガールズ・バンドSCANDALのミュージックビデオだ。何を隠そう、品川ヒロシが監督したものなのだ。

SCANDALのほかのビデオとくらべて突出した個性があるわけではない。卒なくこなしているという印象だ。

しかし、彼女たちのパフォーマンスの躍動感を的確にとらえているし、カメラワークや編集の呼吸感が楽曲の魅力を引き立ている。つまり、ミュージックビデオとしては手堅い作りと言える。

ここでは、バラエティ番組のように「品川」を前面に出すことはしていない。言われなければ、品川が監督していることにも気づかないであろう。

「そんなの当たり前じゃないか。あくまでSCANDALのビデオなんだから」。そうお思いのかたもいよう。ところが、これが意外に「当たり前」じゃないのである。

もうひとつ、参考映像をご覧いただこう。

あえて説明は不要かと思うが、紀里谷和明が監督した宇多田ヒカルのミュージックビデオだ。

上のSCANDALのビデオと観くらべてみて、どうだろう? 品川とは異なり「紀里谷和明」が前面に出ていないだろうか? (そもそも宇多田ヒカルより先に紀里谷和明のクレジットが表示される)。

いちおう断っておけば、作品として悪いと言いたいわけじゃない。表現はなんでもありだから、こんなミュージックビデオがあってもよかろう。当ブログも映像作品としては評価する。

ここで問題なのは、監督がミュージックビデオの主役より前へ出ようとするそのセンスが何をもたらすかだ。

ご存知のとおり、紀里谷監督は劇場用映画『CASSHERN』を撮っている。その仕上がりは無残なものだった。すべてを監督のせいにするのは酷とはいえ、裏方ではなく表舞台に立ってスポットライトを浴びようとする紀里谷の感性に、いくばくかの原因を求めることはできないか。

『Zアイランド』は『CASSHERN』とはまるでちがう。監督・品川ヒロシは表にまったく出てこない。ほんとうにあくまでも裏方に徹している。紀里谷監督とくらべることで、品川の卓越性がよくわかる。

ゾンビ映画の基本をしっかりおさえた

『Zアイランド』

ゾンビ映画はとにもかくにも「怖い」ことが重要だ。ゾンビものにはコメディタッチの作品も多いが、当ブログは好まない。やはりホラーとして恐怖度の高い作品を評価したい。

『Zアイランド』では、ウィルスか何かで人々がバケモノと化し、ゾンビに襲われた者もまたゾンビになる。まさに絵に描いたようなゾンビ。品川はバカみたいに基本に忠実にバケモノを造形している。そこに特異な設定は加えていない。

じわじわと死人に……いや〈死〉に追い詰められる恐怖。基本に忠実だからこそ、本作から感じる恐怖もまた本格的なものになっている。

“混ぜちゃいけない洗剤”感を出した

『Zアイランド』

本作の縦軸を〈ゾンビ〉とすれば、横軸は〈ヤクザ〉だ。

〈ゾンビ〉の部分をオーソドックスにしているぶん、品川は〈ヤクザ〉のほうで遊んでいる。

哀川翔、鶴見辰吾といったヤクザ俳優を中心に据え、木村祐一、千鳥の大悟、野性爆弾の川島など、品川と同じよしもと芸人を脇に配置。この脇役たちがじつによく働いている。

彼らがバラエティ番組で見せる破天荒なふるまいを、そのまま〈ゾンビ〉映画に持ち込むことで、妙な相乗効果を上げている。映画にコミカルな成分をまぶしつつ、物語としてのダイナミズムもプラスする。まさに、塩素系漂白剤と酸性の洗剤を混ぜることで発生する“毒ガス”が映画に躍動感を与えているのだ。

ドラマに一本の芯を通した

『Zアイランド』

とはいっても、洗剤を混ぜるだけでは映画はハチャメチャになるだけだ。“毒ガス”は時間とともに拡散してしまう。

そこで品川は物語に1本の芯を通した。エピソードという“団子”がバラバラにならぬよう串を刺した。

刑務所暮らしで離れて暮らしていた娘に、父親である元ヤクザが会いに行く。これが物語の主軸となる。ベタではあるが、地に足のついた話を展開することで、映画のたたずまいがビシッと締まるものになった。

本作の脚本は品川によるものだが、ストーリーテラーとしての実力も持ち合わせているようだ。

このような本格派・正統派のゾンビ映画を作れる監督がいるなら、日本映画の未来はけっして暗くはない。

[文中敬称略]

©2015「Zアイランド」製作委員会

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