2月6日に発売された鈴木亜美のミニアルバム『Snow Ring』を買った。鈴木亜美を聞いたのは、1999年の『SA』以来、実に14年ぶりとなる。
ずっと鈴木亜美を追っていたわけじゃない。全盛期に、安室奈美恵や華原朋美なんかといっしょに、コムロファミリーのひとりとして注目しただけだ。
だから、その意味ではニワカ。似非ファン。一見さん。でも、鈴木亜美の名前だけでCDを買ったのだから、単なるミーハーじゃない。その意味では「ニワカ」じゃない。
そんなワシがこの作品の魅力を語っていく。
[みりょく1]音楽に年齢が追いついてきた
今から考えると、当時は無理をしていた。背伸びをしていたのかもしれない。
14年前といえば、まだ10代。日本のポップス界では、この年齢で活躍することは珍しくはない。というより普通だ。しかし、それはアイドルとしてであって、アーティストではない。少なくとも世間はそう見る。
だから、当時は優れた歌い手ではなく、見た目だけで世の中を渡っていこうと企む小娘。それが本質だったのではないか。
もちろん、コムロファミリーだから売れる。注目はされる。でも、どこか無理があったのだ。
では、今はどうだろう。
ワシは「音楽に年齢が追いついた」と見る。
そのことがわかるのは、『Snow Ring』のDVDに収録されている「29th Aniversary Live」を見たときだ。
ステージに登場したのは、アラサー女。「劣化している」なんて声もネットでは見かけたけど、ワシはそうは思わない。いや、もちろん年齢を重ねた分、昔と同じではない。でも、「劣化」ではない。それは「円熟味を増した」ということ。
悪い意味での「小娘感」が払拭され、安定感・貫禄は増している。これが、見ているほうの安心感につながる。
すべてを委ねて、歌を、音を聞くことに集中できる。ステージのパフォーマンスを堪能することだけを考えていればいい。そんな信頼感。
この境地は、アラサー女だからこそ到達できたといえる。
[みりょく2]「押し」と「引き」を覚えた
小娘時代も、アイドルではあるが、かわいこぶってはいなかった。悪く言えば、生意気、よく言えば、アグレッシブだった。
当時は、「押し」しかなかった。攻撃的だった。でも、小娘だったから腕力はなく、だから、見ているほうも受け止めることができた。
年齢を重ねるごとに攻撃力を増してくる。アラサー女ともなれば破壊力は抜群だ。
しかし。
ときに「引く」。今の鈴木亜美にはそれがある。若いころにはなかったこの「引き」によって「惹かれる」。
これが、「29th Aniversary Live」を見て、もっとも意外で、うれしい発見であった。
[みりょく3]新曲は木漏れ日のよう
そうは言っても、ライブ映像は、観客をトランス状態(興奮状態)にもっていくのが目的だから、「押し」は強く、攻撃的だ。
しかし、CDのほうに収録された新曲はどうだろう?
寒い冬に差し込む暖かい日差し。木漏れ日のようなやさしさ。そんな「癒し」を感じる楽曲になっている。
その類の歌を歌う人というのは珍しくない。日本にもたくさんいる。けれど、「あの鈴木亜美が」ってところに意味がある。
さっきから「アラサー女」などと、女性の年齢に焦点を当てて、失礼だったかもしれない。でも、ここではけっして悪い意味ではないことは、おわかりいただけるはずだ。
つまり、年齢を重ねたということは、経験を積んだということ。
レコード会社の移籍やごたごたに興味はない。アーティストは作品がすべてだ。
とはいえ、ちょっと鈴木亜美のこれまでの経緯をリサーチすると、新曲も深みを増すような気がする。
〈不屈の精神〉〈逆境からの脱出〉。そんな言葉が似つかわしい女になった。
[おまけ]12年前のレビューを掲載
それではここで、12年前(2001年)に書いたレビューを載せておこう。掲載したのは『ぎゃふん』創刊号だ。
ちょっとかわいいからって許さんぞ
「鈴木あみは、かわいい~」。これは認めよう。しかし、これならば同じ顔の村田和美の方が「高級感」がある分、あみよりずっといいし、大人の色気もある。じゃあ本職の歌手業の方はどうか。作曲・プロデュースは小室哲哉。さすがに一時期の勢いは衰え、CD売り上げ上位を総ナメなどということはないが、じっくりと噛みしめるのではなく、その場その瞬間にたしなむ音楽としてなら、本物の力量を見せてくれる。また、アルバム『SA』では、珍しく久保こーじがかんばっていて、「ボクのしあわせ」は、味のある楽曲に仕上がっていてよい。シメの部分の「ボークのしあわせ~」は、ともすると思わずグッとくるところだが、残念なことに歌っているのが鈴木あみというのが最大の失敗。なんともシマリのないものになってしまっているのだ。アイドルなら歌が下手でも許される、という時代は終わっているのですぞ。猛省を。
褒めてるんだか、けなしてるんだかわからんが、すんません、生意気だったのは自分でした。猛省しました。
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