7年ぶりのシングル。彼女の復帰を永らく待ち望んでいた。いや、待ち望んでいた自分に気がついた。
「夢やぶれて」は、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の劇中歌。つまり、彼女自身の歌ではなく借り物だ。
したがって、詞や曲ではなく、彼女という存在そのものが“メッセージ”となる。
ミュージックビデオで歌う姿には、鬼気迫るものがあった。夜叉。鬼。阿修羅──。そんな形容が似つかわしいほど凄みがあった。
歌い方と表情のみで「夢やぶれて」を表現する。
夢は悪夢に
狼の牙が
望み引き裂き 夢喰いちぎり
詞や曲こそ借り物ではあるが、彼女自身の言葉として聴く者の心に届く。
だから。
まるごとを受け止めていられない。そんな度量はない。こちらの心も引き裂かれてしまう。
なぜなら、みずからも「夢やぶれ」た者だから。もう夢も希望も未来もある若者ではないから。
そこで。
「夢やぶれて」は、2曲目の「I’m proud」とセットで聞かなければならない。
声にならなくても想いが時には伝わらなくても
笑顔も泣き顔も全てみんな
かならずあなたに知ってもらうの… I’m proud
引き裂かれた心は、「I’m proud」で癒される。闇の中に一条の光が差す。
それこそが、この復帰シングル『夢やぶれて -I DREAMED A DREAM-」に秘められた彼女からの“メッセージ”だったのだ。
コメント