西野カナ『Love Collection』に2時間ドップリ溺れてわかったこと

「今度アルバムが出たら買おう」と思っているアーティストが何人かいて、その筆頭がこの西野カナだった。ベストアルバム『Love Collection -pink-』『Love Collection -mint-』の2枚が同時発売。DVD付き。とりあえず、DVD(各60分、合計120分)にドップリ浸かって見えてきた、西野カナの魅力について語ってみよう。

【音楽】透き通る綺麗な音色

今回のアルバムを買うまで個人的に抱いていた西野カナのイメージは、「Believe」や「GO FOR IT!!」に象徴される「アップチューン」な曲だった──と、「アップチューン」って言葉の意味もわからずに使ってみたが、ようするにテンポの速い曲、しっとりと聴かせるのではなく、体がウズウズして踊り出してしまいそうな曲、って感じだった。

しかし、「Believe」や「GO FOR IT!!」のような曲(『pink』『mint』のそれぞれ1曲目に収録されている曲)はじつは例外で、ほとんどがまさしく「しっとりと聴かせる」曲だったのだ。

しかも、ベストアルバムといえば、ひとつひとつがどんなに名曲であっても、「寄せ集め感」「ごった煮感」からは逃れられないものだが、今回のアルバムに関しては、一貫した世界観・音楽性で統一されている。

ワインを口のなかで転がしてその芳潤さを愉しむかのように、耳から脳に〈音〉が抜ける感触を愉しむ。伴奏はもちろん、西野カナの声質に透明感があり綺麗だからこそ、体感できる魅力だ。

【ビデオ】セピア色の哀愁ただよう映像

先に述べた「Believe」や「GO FOR IT!!」は、彩色の強いポップな色遣いの映像になっている。西野カナ本人のメイクも濃い。だから、押し出しの強い、気丈な女のイメージがあった。

ところが、別の曲のビデオに移った途端、はっきりいって面食らう。それまでの気の強さは薄れ、はかなげな女の姿がそこに現れる。

映像がセピア色の哀愁ただよう色調で統一されている点で、先に述べたアルバムの統一感と符合する。

歌詞が表現する世界観を若人わこうどたちが“演技”によって再現するのだが、これに西野カナは参加していない。本人はあくまで歌っている姿を見せるだけだ。だからこそ、歌の神通力が保たれる。

まさに目と耳で愉しむビターな感覚。これが堪能できるビデオクリップはそう多くない。

【歌詞】何も確定しない、したくない

「なに愛だの恋だのほざいているのだ。ほかに考えることはないのか?」──などと、フツーのおじさんなら思っちゃうだろう(いや、その前にこんなアルバム買わないか)。いちおうこちらはガールズ・ラブ小説を書いている身だから、かぎりなく二十代の女性に近いオトコと言うこともできるが(いや、それはキモいか)、とにかく限界があろう。

正直、ガールズ・ポップの歌詞なんてどうでもいいのだ。昭和生まれのオッサンが“共感”できるはずがない。もともと邦楽の歌詞は重視していない。〈音〉がよければそれでいいという立場だ。

そもそも“共感”が必要だろうか?

歌詞に耳を傾けていると、「〜かな?」という疑問形の問いかけがときどき頭に引っかかる。つまり、断定しない。断定したくない。そんな若者の苦悩がしのばれる。

そこに想いをはせれば、「がんばれよ」と応援したくなる。“共感”ではなく“応援”。そんな楽しみかたがあってもいいのではないか。

つまり、西野カナの「カナ」は「かな?」という意味が込められているのだ──なんていう発想自体が昭和生まれのおじさんカナ? っていうことで今回はまとまりました。

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