もし野球にも経営学にも興味のない男が『もしドラ』を読んだら

ベタな展開も悪くはない。でも、もうひと工夫あれば、感動できた。

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(もしドラ)を知らぬ人はいないだろう。「ベストセラーにロクな本はない」。そう考えるぎゃふん工房としては、なかなか手が出せない代物だった。だが、そろそろ機が熟したと考え、たまたま電子書籍版を見つけたので読んでみた。

あれ? 意外といいんじゃないかしら?

[意外と1]一粒で二度おいしい

今さらだが、この作品は〈高校野球=小説〉と〈ドラッカー=ビジネス書〉という、まったくジャンルの異なる2つをくっつけたもの。「アイディアとは異質なものの組み合わせである」という星新一氏のメソッドをそのまま実践したような本だ。

実際、小説としても、ビジネス書としても楽しめる。これはなかなか興味深い。

[意外と2]自分でもなんだかできそうな気がしてくる

ドラッカーの『マネジメント』を教科書に、主人公が次々と目的を達成していく。これも小気味よい。

そして、なんだか読んでいる自分も偉業を成し遂げることができそうな気がする。そんな錯覚を覚えるのも、快感だったりする。

[意外と3]過ぎ去った青春を再び

なんとも青臭い展開になっていくが、意外と受け入れられる。若いって素晴らしい。素直にそう思える。

なんとなくわかったベストセラーの理由

以上は、なんか皮肉っぽく聞こえるかもしれないが、いちおう本心である。買って損をした、という気はしなかった。「箸にも棒にもかからない作品」ではないと思う。

ただ、上記の[意外と]は美点ではあるが、それはそのまま欠点になり得る。

「一粒で二度おいしい」は、裏を返せば、どっちつかずだ。「自分でもできそうな気がする」のは、それだけ安直だということ。「過ぎ去った青春を再び」といっても、今となっては、あまりに展開がベタすぎる。

だから、たとえばAmazonのレビューなどでも、賛否両論だ。それはとてもよくわかる。

個人的には野球にも経営学にも興味はない。ぶっちゃけ、野球は「世の中に嫌いなものベスト3」に入る(1位はカラオケ、2位が野球、3位がカイワレダイコンである)。

「このくだらないスポーツが、世界で一番嫌いなの。この面白くないスポーツを、心の底から憎んでいるの。大嫌いなのよ。反吐が出るの」

そんな主人公みなみちゃんと同じだ(もっとも、これがどこまで彼女の本心かはわからないが)。

ただ、私のような人間だからこそ、楽しめたともいえる。野球好き、経営学好きだと、また違った感想を抱くのだと思う。

また、一冊の本として考えた場合、やけにあっさりしているという印象がある。それは内容であったり、文体であったり。自分が好むのはもっと「濃い」ものだ。

しかし、この「あっさり感」こそが、ベストセラーの条件だったりする。「濃い」本は往々にして売れない。

その意味では、出版界ピラミッドの底辺で、本造りに携わる者としては、学ぶべき点も多い。

いち読者としては、〈高校野球=小説〉と〈ドラッカー=ビジネス書〉を組み合わせるというアイディアはいいと思う。あとはそれぞれの要素がもっと「濃い」ものであれば、手放しで称賛できた。

ベタな展開も悪くはない。でも、もうひと工夫あれば、感動できた。汚れちまった心には響かなかったんだよなあ。あと一歩なんだけどなあ。

そこが惜しい作品というのが結論になる。

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