みなさんは著者の武論尊氏をご存知でしょうか? ぼくらの世代なら知らない人はいないはずなのでこれは愚問なのですが、ピンとこない人は「お前はもう死んでいる?」を聞けば、もうおわかりでしょう?
そう。本書は『北斗の拳』を生み出した著者が、マンガ原作者の極意を書いた本というわけです。
ただ、武論尊氏の名前と「原作屋稼業」というタイトルに惹かれて、内容をたしかめずに買ってしまったのですが、じつは氏の自伝ではなく、あくまでも事実を元にしたフィクションになっています(あべし!)。
「我が生涯後悔することだらけ!」のオレは自伝を書くほど立派な人間じゃないし、こんなオッサンの自分語りなんかみんなには迷惑なだけだろう。
いやいやご謙遜を。その「自分語り」を拝聴したいのです──とは個人的には思うものの、〈本〉を商品として考えるなら、これで正しかったのかもしれません。
「バカヤロー、オレに書けるんだ、そんなモン誰にだって書けるさ。売れる売れないは結果に過ぎん。ま、ハッキリ言って運だ」
「でもな、そうやって“オレはまだ60%しか使ってねえ、100%のオレはもっとすげえんだ”って思い込ませているうち、その60%の自分が現実になっていくんだな、これが」
装いこそ青春小説ではありますが、小説を書いている身としては、胸に突き刺さる言葉があちこちにちりばめられた〈人生指南書〉の趣もあります。
“創作者”とか“クリエイター”をめざす人には一読をおすすめしたい本です。
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