〈幾原邦彦展〉で人生を早くすりつぶさないと。がうがう

アニメ

『少女革命ウテナ』『輪るピングドラム』『ユリ熊嵐』『さらざんまい』と、独創的な世界を炸裂させる幾原邦彦監督の展覧会〈幾原邦彦展 ~僕たちをつなげる欲望と革命の生存戦略~〉が東京ソラマチにて開かれている(終了しました)。

イベントの概要と会場で感じたことをメモしておこう。

幾原監督のキャリアを振り返る

幾原邦彦展

本展覧会では、アニメ作品の演出・監督としての約30年にわたるキャリアを振り返っていく

それぞれの作品にこめた想いを記したコトバが展示され、創作メモや原画、セル画、背景など、アニメをカタチづくる素材の数々を間近で観察できる。

展示スペースはキーワードごとに区分けされており、それを手がかりに作品の理解を深めることもできるだろう。

また、物販コーナーでは限定アイテムも販売。こちらもファンは要注目といえる*1

*1:当ブログは図録のみを購入。

幾原作品は理性ではなく感性でとらえる

幾原邦彦展

幾原監督の作品は、一見しただけで意味を理解するのは難しい。物語は難解であり、意味あり気なセリフ、描写、モチーフがそこかしこに見られる。当ブログも作品の魅力を100%堪能したとは言い難い。

では、作品を徹底的に分析し、伏線などを考察していけば、なにかしら見えてくるのだろうか? 答えはノー。おそらくロジカルにとらえようとすればするほど、よけいにわからなくなる

幾原監督作品は、あくまでエモーションナル(感情的)にとらえなければいけないのだ。一見、謎めいた物語も、核心はごくシンプルなのだと思う。それを理性ではなく感性で受け止めればいい。

だから、感性で展示物を眺めてみれば、たとえば作画監督に対して幾原監督が出した修正の指示も、その理由がわかってくる気がする。「なぜこの服?」「なぜこのポーズ?」「なぜこの色とカタチ?」「なぜこの演技?」。理屈じゃない。論理的じゃない。でも、それが正解なのだ、と。

作品をとおして〈世界〉と、〈他人〉とつながる

幾原邦彦展

幾原監督作品の最大の特長は、時代意識が反映されていること——と本展覧会の趣旨が説明されており、もちろん当ブログにも異論はない。社会で話題になった大きな事件、天災、テクノロジーなど、幾原監督がそれぞれの時代において社会に蔓延する“空気”から着想を得ていることはまちがいない。

ただ、それは作品がいわゆる〈社会性〉を持つのとはまた異なる。作品を通して社会に対して異議申し立て、告発、批評を行なっているわけではない。

幾原作品は、観る者に対し「自分はどう感じた?」を問うているにすぎない。

感性によって〈自分〉のなかに取り込まれた〈作品〉は、〈自分〉と〈社会〉をつなげる役目を果たす。〈社会〉とは〈自分〉や〈他人〉が集まってカタチづくられているモノだ。

つまり、幾原作品が描いているのは、〈自分〉と〈社会〉のつながりであり、〈自分〉と〈他人〉とのつながり

その視点からあらためて作品を観直す必要がある。そうすることではじめて〈幾原作品〉は自分の血となり肉となる。

すなわち、今後の人生の「欲望と革命の生存戦略」に役立てるのだ*2

*2:こちらのリトルマガジンでは、『少女革命ウテナ』のセリフを人生に活かす方法について触れている。

幾原邦彦展 ~僕たちをつなげる欲望と革命の生存戦略~
開催日時……2019年4月27日(土)〜2019年5月6日(月・振休) 10:00~17:00
会場……東京ソラマチ スペース634(東京都墨田区)
料金(当日券)……2,200円 限定グッズ付当日券:3,700円
〈幾原邦彦展 ~僕たちをつなげる欲望と革命の生存戦略~〉公式サイト https://ikuniten.com

ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

フリーランスのライター・編集者。インタビューや取材を中心とした記事の執筆や書籍制作を手がけており、映画監督・ミュージシャン・声優・アイドル・アナウンサーなど、さまざまな分野の〈人〉へインタビュー経験を持つ。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。収益を目的とせず、趣味の活動を行なう際に〈ぎゃふん工房〉の名前を付けている。

関連記事

オススメ記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

〈ぎゃふん工房〉はフリーランス ライター・米田政行のユニット〈Gyahun工房〉のプライベートブランドです。このサイトでは、さまざまなジャンルの作品をレビューしていきます。

好評シリーズ

最近の記事 おすすめ記事 特集記事
  1. 『このテープもってないですか?』の恐ろしさがあなたにわかりますか?

  2. [〈社会契約論〉に対抗する死刑否定論]〈死〉がわからないから死刑を科せない

  3. [死刑否定論者が構築する死刑肯定論]自分が裁くなら死刑は正しい

  4. 神田神保町〈猫の本棚〉で ぎゃふん工房のZINEを販売!

  5. 「世界を革命する力を!」という言葉はこれからの人生のキャッチフレーズだ

  6. PR

    ぎゃふん工房のニュースレターはいかがでしょう?

  7. 私たちはいつのまにかまちがった考えかたを身につけていた

  8. 〈考える〉ことで新しい価値を見出せば自分の人生を救済する

  9. 『天使の街』10周年! サイトリニューアル&新作制作開始

  10. 哲学者・池田晶子先生から「人生を考えるヒント」をいただく

  11. 僕のつくるZINEがAIに乗っとられた日

  12. 関連サイト

    リトルマガジン(ZINE)『Gyahun(ぎゃふん)』好評発売中!

  1. 〈好き〉を極め〈仕事〉にできる文章術【著者インタビュー・Jini(ジニ)さん】

  2. 哲学者・池田晶子先生から「人生を考えるヒント」をいただく

  3. 『進撃の巨人』の〈世界感〉ではなく〈世界観〉を僕たちの共有財産に

  4. 関連サイト

    人生を彩るオススメの〈アニソン〉をぎゃふん工房がレビュー!

  5. つい聴き惚れてしまう…至高のアニソン・ボーカル鑑賞

  6. ゲーム実況姉妹がカフェを開いちゃった理由【インタビュー:鼻炎姉妹】

  1. 仕事で成果が上がる! 『ジョジョ(第4部)』の名言20選

  2. 名作アニメがヒント! 知的になれない人の3つの生存戦略

  3. 会社に行きたくないときに効く!『ジョジョ(第3部)』の名言10選

  4. 関連サイト

    ぎゃふん工房の専用SNSサーバーでプチレビューを発信

  5. おすすめ5大ホラーゲームシリーズの最後のひとつが決まらない

  6. J-pop好きが選ぶ洋楽初心者にオススメのアーティスト10選

TOP