いまのKARAは見納めかもしれないから彼女たちの魅力を書いておく

音楽

一部の報道でKARAの解散が報じられた。のちに、ギュリ、スンヨン、ハラは続投が決定、ニコルは事務所との契約解除にともない脱退、ジヨンの進退は来年4月までに決まるといった情報が流れている。

現時点では、今後のKARAがどのようになっていくのか予断を許さない状況ではあるが、もしかするといまのKARAは見納めかもしれない。ってことで、今回は彼女たちの魅力、KARAのたしなみかたをまとめておこう。

すべてが計算し尽くされデザインされている

KARAのやっていることは、とくに独創的というわけではない。ガールズ・ポップ、ボーカル&ダンスグループの枠でとらえられる。絵に描いたような存在といってもいい。だから、とりたてて「特徴」といったのものは挙げづらい。

しかし、ビジュアル、サウンドなど、ひとつひとつの要素の完成度がとてつもなく高い。すべて計算し尽くされ、デザインされている。言葉で表現するのは難しいが(それゆえこんなブログ記事を書いているのがもどかしいのだが)、その魅力は実際に目で見、耳で聞いてもらえば、一目瞭然。

それでもKARAの見どころを、今回は「スピードショック! ビジュアルショック! サウンドショック!」で説明してみよう。

[スピードショック!]整形どころかCGかと勘違いする身体能力

KARAに対して、ネット上で整形だとかそうじゃないとか書かれることがある。しかし、整形どころかじつはCGではないのか!?と思わせるほど、身体能力が高い。

少し前の作品だが、多くの人が知っていると思われる「ミスター」を見てみよう。

あまりに自然に、楽しそうに踊っているので、そこまで考えがおよぶことはないのだが、「30歳になってこれを踊れって言われたらどうしよう?」というメンバーのおののきからもわかるとおり、この振り付けには高度な身体能力が要求される。

だから、KARAって生きた人間ではなく、CGで描かれたヴァーチャルな存在なのではないか。ついそう思ってしまうわけだ。

振り付けがもっとも魅力的に見えるよう衣装がデザインされ、隊形(扇形)が組まれている。この曲をCDで音だけを聴いてみたことがあるのだが、なんか物足りなかった。やはり、ビジュアルとサウンドの融合こそがKARAの真骨頂なのだ。

[ビジュアルショック!]音楽を聴くことを忘れさせる小芝居

先にKARAを「ボーカル&ダンスグループ」と表現したが、ビデオクリップでは、表情やしぐさで物語を見せる小芝居をしている作品も多い。

たとえば、「ウインターマジック」では、「クリスマスイヴ、愛しい人を待ちわびる女」を演じている。これが楽曲の作品世界を深めていることは言うまでもない。

ビデオクリップ自体が短編映画を観ているようで、曲を聴くのを忘れてしまう(だから、小芝居の出来が良すぎるのも痛しかゆしではある)。

[サウンドショック!]ギュリ姉さんが真ん中に来たら要注意

KARAの楽曲の良さ。こればかりは実際に音を聴いていただくほかはないのだが、ひとつだけKARAの卓越性を指摘しておきたい。それはギュリ姉さんの「高音攻撃」だ。

ギュリ姉さんが画面のセンターにきたら、この攻撃が始まる恐れがある。だから、身構えなければならない。

たとえば、「LUPIN」では、高音攻撃がクライマックスにくる。

しかし、「Go Goサマー」では、(われわれの防御体制をあざ笑うかのように)冒頭からいきなり高音攻撃が繰り出される。だからかわせなかった。完全にノックアウトされてしまった。

このギュリ姉さんの歌唱力を見るだけでも、見た目だけで世の中を渡っているグループではないことがわかる。

じつはKARAは解散するほうがいい!?

ここまで読んでいただければ、当ブログはKARAのファンであることがおわかりいただけるだろう。旧ブログでも記事をアップしている。

KARA『KARA BEST CLIPS』──感謝する。その暴力的な愛おしさに

KARA『KARAコレクション』──誰が一番とか決める必要はないでしょ

にもかかわらず「解散するほうがいい」などと、暴言ともとられかねない主張をするのはなぜか。

それは、KARAは今が最高潮、完成度100%だと考えられるからだ。過去の作品は越えられない(同等ではあっても)。そのジレンマはつきまとう。

それでいい、という考え方ももちろんある。マンネリズムが必ずしも悪いわけではない。これまでどおり、高質な作品を世に送り出すことはできよう。それはそれで歓迎しよう。

しかし、「花は散り際がもっとも美しい」ともいう。解散を前提にすることで、最高の美が現れるかもしれない。それをぜひ堪能したいという“魔の誘惑”にかられるわけだ。

とはいえ──。

「今が最高潮」という持論にも、本音をいえば、自信がない。

少し前まで、個人的には「LUPIN」がKARAの最高傑作であると考えていた。

ところが、その「LUPIN」を越えるものが現れた。

まさに、「スピード、ビジュアル、サウンド」が三位一体となった完全体。これこそがKARAの絶頂ではないかと思わせる。

そして、一度あったのだから、二度目もあるのではないか。「エレクトリックボーイ」を越えるものが現れる日が。

そんな舌の根も乾かぬうちから──。

もはや、過去作を越えるとか越えないとかどうでもよくなるような出来栄え。とくにニコル氏の表情やふるまいは印象に残る。

これからも続く ハッピーデイズ!
ありがとう また会う日まで

 まさに今回の騒ぎを予告するかのような楽曲である。

[追記]ニコル本人はtwitterで「事務所との再契約とは関係なく、私はKARAのメンバーとして活動することを約束します」としている。

[追記2 2013.11.1]ニコルの意思に関わらず、脱退の線が濃厚になった。

[追記3 2014.1.14]1月16日付けで脱退することが正式に発表された。

[追記4 2016.01.31]2016年1月15日をもって、ギュリ、スンヨン、ハラの所属事務所との専属契約が終了した。

[追記5 2020.01.18]2019年11月24日、ク=ハラさんが28歳の若さで亡くなりました。卓越したパフォーマンスに感謝の意と敬意を表しつつ、心よりご冥福をお祈りいたします。

赤根夕樹

赤根夕樹

ミュージックビデオ評論家(自称)。このサイトでは音楽系のレビューを担当。洋楽・邦楽・アニソンと、さまざまなジャンルの音楽をつまみ食いしている。名前の由来は夜見野レイの小説『天使のしるし』の主人公・赤根夕子から。

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コメント

    • 音楽仕事人
    • 2016.01.31 6:42pm

    「KARAの楽曲の良さ」--そうなんですよ、自分でもPOPSをやってきた私ですが、不躾にも、2014年末までKARAの楽曲をほとんど全く知りませんでした。ところが、2014年12月半ば、KPOPのMVをまとめて鑑賞する機会があり、すごく多くののグループの中で
    KARAのほとんどすべての楽曲が超メロディアスであることがわかって、本当に驚きました。もちろん、少女時代や2NE1等、巷でしばしば<大御所>扱いされるグループも鑑賞しましたが、軒並み楽曲はイマイチ。(ボーカルは<オペラ歌手かのようにうまい>とは言えましょうが、楽曲との共鳴がまたイマイチ。)
     KARAだけは、名曲級だけで30曲を超えます。5人KARAの ”Rock U” から始まって、”Pretty Girl” ”Honey” ”Wanna”
    ”Mister” ”Lupin” ”Jumping” ”Step” ”Strawberry” ”Love Is” ”SOS” ”Pandora” ”Winter Magic” ”Bye Bye Happy Days”
    ”Runaway” ”Damaged Lady” ”Thank You Summer Love” ”Mamma Mia” ”Summergic” ”Cupid” ………… まだまだ名曲が一杯あるわけです。この名曲の多さは、あのブリティッシュ・ロックの雄 Duran Duran をも超えて、まるでビートルズのような感じです。
    --1960年代Beatles、70年代Queen、80年代Duran Duran、90年代Oasis、2000年代以降はKARA、とノミネートできます。

    • 私は専門的なことはわからないので、感覚的に「良い」と思ったことを書いているだけですが、
      なるほど、お詳しい方からはそう聴こえるのですね。勉強になります。
      KARAは残念ながら活動終了となってしまうわけですが、いずれ何らかのカタチで復活してほしいですね。
      このたびはコメントありがとうございました。

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