島田裕巳『プア充』に納得できる点できない点

パートナーがいない人はどうするのか?

 お金をもっていないほうが幸せ!?

島田裕巳氏といえば、地下鉄サリン事件のときに非難にさらされ、“人間サンドバッグ”状態にされていた宗教学者というイメージしかなかったのですが、この本はとても楽しめました。

本書『プア充』でいいたいことはただひとつ。

そもそもたいしてお金をもっていないプア充のほうが、人生において喜びや楽しさ、快楽を感じやすく、幸せな気持ちになりやすいことは間違いない。

これを全編にわたり、さまざまな視点から説明している本というわけです。

これからお金はいらない?

人生における幸福度は、持っているお金の多寡に比例しない──というのは非常に納得できる話です。だから、ほぼこの本の主張には賛成できます。「プア充」の考え方に完全に与することができれば、この先の人生はバラ色といえます。

実際、いま自分はお金持ちではないので、この生き方をぜひ採用していきたいのですが、素朴な疑問もあります。

お金を持っていなくても(いや、持っていないほうが)幸せであると感じるためには、

社会全体が豊かだから、たいしたお金がなくても生きていける国なんだよ

という前提があります。

でも、そんな社会がこれからもずっと続くのか。そうでないとしたら、やっぱりお金は必要なのではないか? などという疑問が頭をもたげるのです。

パートナーの必要性はわかるけど……

人生におけるパートナーを持つことの大切さ。これも理解できます。本書でも

お金がない人こそ、結婚すべきなんだよ

と述べています。

たしかに、人生におけるパートナーの重要性は、とくにこれからの時代はますます高まっていくでしょう。この『プア充』だけでなく、同じようなことを説く本はいっぱいあります。

でも、そんな本を読むたび、理屈としては納得する一方で、反論も浮かびます。結婚したくてもできない人はどうするのか? というこれまた単純な疑問です。結婚したいと思っている人のすべてが夢を叶えられるわけではない。それは論じるまでもありません。となると、パートナーがいない人はどうするのか?

その疑問に対して、説得力のある答えを提示した本は見たことがありません。もちろん、個人の感情レベルで「ひとりのほうが気楽」という意見を目にすることはありますが、社会科学的な観点で分析し、説得力を持たせたものにはまだ出会えていないのです。

小説仕立てで読みやすい

ところで、著者が宗教学者なので、とっつきにくい本なのかな?と誤解されそうですが、じつは“現代の若者”を主人公にした小説仕立てになっています。主人公が学生時代に所属していたゼミの島崎教授から、「プア充」の理念を教わる、という体裁になっています。

だから、持論を声高に主張するのではなく、若い主人公の目を通して理論が語られるので、すうっと頭に入ってきます。これはなかなかうまい工夫だと思います。

メディアで有名になった後、ちょっとした事件に巻き込まれちまってね、今度はさんざんマスコミに叩かれた……

もちろん、このセリフを口にする島崎教授は、著者がモデルであることは言うまでもないでしょう。

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