中島美嘉・三代目J Soul Brothers・HKT48……最新ミュージックビデオの映像美に浸る

〈色〉〈光〉〈異世界〉という3つの視点から、ミュージックビデオの映像美の魅力に迫ってみよう。

ミュージックビデオは、撮影機材やVFXなどの発達とともに、その表現力を進化させてきた。

では、最新の技術を用いた作品では、どのような世界が表現されているのか?

今回は〈色〉〈光〉〈異世界〉という3つの視点から、その映像美の魅力に迫ってみよう。

〈色〉の意味を考える

まずは、ミュージックビデオで表現される〈〉に着目してみよう。

その場に存在したはずの〈色〉は、完成した映像では、カメラや照明、撮影後の加工によって別のモノへと変えられている。そこに演出家のどのような意図が反映されているのか。それを探っていけば、作品はさらに味わい深いものになるはずだ。

中島美嘉「恋をする」

〈赤〉は恋する女の情熱を表わす

中島美嘉の42枚目のシングル「恋をする」のミュージックビデオ。ここで中島美嘉は「恋をする」OLを演じている。

本作で目に飛びこんでくるのが〈〉だ。胸のリボン状の模様、テーブルに置かれた箱、ハイヒールの底……。一方で、そのほかの色は極端に彩度がおさえられている。

〈赤〉で彩られる部分はなにを表わしているのか? 〈女〉のココロが焦点をあてている部分。シーンごとにその部分が赤くなっているのでは?

リボンは胸のドキドキ、ハイヒールは彼のもとに早く向かいたいというココロ。そして、彩度がおさえられた場面は、〈女〉がはやるキモチをおさえながら目に映っている光景ではないか。

〈女〉の心情を想像しながら、この〈赤〉に着目して鑑賞すると、本作をより深く愉しめるだろう。

三代目 J Soul Brothers「リフレイン」

精鋭化された〈色〉がココロに直に届く

次に紹介するのは、三代目 J Soul Brothersの5枚目のシングル「リフレイン」のビデオ。

薄暗い空間を歩く〈男〉が、真っ黒な車に乗りこむ。その車内にもほとんど光は入っておらず、暗い。次のシーンも薄暗く、全編にわたり、ほとんど〈色〉は目に入ってこないいて言えば、〈黒〉と〈白〉、そして〈グレー〉の世界だ。

つまり、〈色〉という情報が極端にぎおとされている。これによって、世界観がストレートに観る者のココロに届く

楽曲で歌われているのは、情熱的な心情だ。これを直接的に表現するなら、映像は色鮮やかなほうがいいはず。だが、あえて〈色〉を削ることで、世界観が軽薄にならず、むしろ重厚感がもたらされているのだ。

中島美嘉「花束」

〈色〉のあるなしがココロのうつろいを表現する

中島美嘉の「花束」。タイトルのとおり〈花〉がビデオのモチーフになっている。先の2作品と比べれば、花々の華やかな〈色〉が印象的だ。

だが、一方で、彩度を落とし、モノトーンに近いカットも挿入される。色鮮やかなカットとモノトーンのカットが交互に展開していくうちに、主人公である〈女〉が植物たちと融合しはじめているのに気づく。

そう。〈女〉もまた花の一部なのだ。〈女〉の背中にクジャクのような羽が生えている幻想的な場面は、〈女〉がヒトというより自然の一部であることを表わしている。

では、シーンごとの〈色〉の有無はなにを表わしているか? それはやはり〈女〉の心情だ。〈色〉のあるとき、〈女〉のココロは高揚し、〈色〉がなければ、ココロは沈んでいる。

そんな観点から、あらためて映像を観なおしてみてほしい。

〈光〉が創る世界を味わう

ミュージックビデオにおいては、〈色〉とおなじように、〈光〉もまた、独自の世界を創り出す

それぞれの作品で、〈光〉がなにを表わしているのかを考えながら観ると、より深く映像美が堪能できるはずだ。

中島美嘉「Forget Me Not」

はかない〈光〉はココロを照らす

中島美嘉「Forget Me Not」は、映画『ボクの妻と結婚してください。』の主題歌だ。ビデオのなかでも、ときおり映画の一場面が挿入される。

ビデオのメインとなるのは、部屋のなかで歌を口ずさむ〈女〉を、窓から入ったやわらかい〈光〉がそっと包む映像だ。本作では、映画のカットと女が歌う映像の〈光〉のちがいに着目したい。

映画の〈光〉は太陽や照明器具が創る現実的なもの、〈女〉の部屋に入りこむ〈光〉は彼女のココロを照らす非現実的なもの。映画の力強い〈光〉に対して、部屋の〈光〉は、あまりにはかなげだ。

つまり、〈光〉は〈女〉のココロのはかなさを象徴している。〈女〉の物憂げな表情もそれを物語る。

〈光〉が明るくなったとき、〈女〉のココロも強くなっていく——そんな想像もできるわけだ。

HKT48「僕だけの白日夢」

少女たちの生命力をそのままとらえる

HKT48「僕だけの白日夢」のビデオを見てみよう。

舞台は学校。屋上や階段、教室が太陽の〈光〉で満たされている。それは、思わず目を細めてしまうほどまぶしい。この眩しさは、少女たちのエネルギッシュな生命力を象徴している

楽曲は、テンポが速く、躍動感あふれるものだ。ところが、意外にもカメラは静かに彼女たちの姿をとらえている。少女たちは、ご存じのとおりダンスグループだが、激しい踊りは披露しない。

カメラワークや特殊効果によって、少女たちの生命エネルギーをディフォルメすることもできただろう。だがあえて、そうしていない。それによって、等身大の彼女たちの姿が描き出されている

だからこそ、映像に説得力があり、真実味あふれるビデオに仕上がっているのだ。

〈異世界〉の魅力を知る

ミュージックビデオの最大の魅力は、〈異世界〉を創り出すところにある。

ともすれば非現実であったり、異様であったりする空間も、楽曲にのって描き出されれば、違和感は覚えない。むしろ観る者のココロに魅力的に響く。その好例をいくつか紹介してみよう。

カフカ「ニンゲンフシン」

手にしたスマホにみずからのココロが映る

カフカの「ニンゲンフシン」では、演奏するバンドの姿と、学校に行かずスマホゲームに興じる少女の姿が交互に描き出される。

本作で注目すべきは、ゲームの画面だ。

演奏シーンと、少女がゲームで遊ぶでシーンは、一見するとまるで無関係のように思える。しかし、少女自身がゲームの世界に登場しており、現実と虚構が融合しはじめている。いつしか歌詞の内容と、ゲームの画面とが奇妙なシンクロを見せていく。

ゲームのなかで少女が身にまとっている“ヨロイ”は、現実の世界で少女がみずからのココロにつけた“ヨロイ”だった。それが、少女を部屋のなかに閉じこめていたのだ。

さらに、スマホゲームの画面は、楽曲で歌われている「ニンゲンフシン」を象徴していることがわかる。

目に見えないはずの“ココロのヨロイ”が、ゲームの画面では目に見えるカタチで表現されているわけだ。

夢みるアドレセンス「おしえてシュレディンガー」

未来の世界は“ネコダンス”でノーテンキ

夢みるアドレセンス「おしえてシュレディンガー」では、建物の地下にある空間で、ネコ耳をつけたメンバーが歌って踊る。アイドルとしての可愛らしさが巧みに表現された作品だ。

一見するとこの「ネコ耳」は、コスプレのたぐいかと勘違いする。いや、実際そういう設定かもしれない。だが、冒頭で時代を表わす数字が表示され、ここが遠い未来の世界であることがわかる。

つまり、(少なくともこの場では)彼女たちは“未来人”なのだ。

そう考えると、なにが見えてくるか? ノーテンキに踊る彼女たちの姿に、愉快な未来の世界を見出すことはできないだろうか。

ビデオのラスト、彼女たちが地下から地上へ出ると、「数字」は現代へと戻っていく。そこは、現実世界の街の片隅。明るい未来を夢見ながら、今日を生きていく。ビデオが観おわったあと、そんな彼女たちの姿を想像すると楽しくなってくる。

ももいろクローバーZ「『Z』の誓い」

あの“必殺技”は力強いメッセージを繰り出す

本作が、かの有名な漫画のコラボレーション作品であることは一目瞭然だ(実際、劇場版の主題歌でもある)。

生身の人間が漫画の登場キャラクターにふんすれば、どうやっても“イロモノ”になりがち。本作もまずはそのおかしみを狙っている。

だが、もう少し映像を深堀りしてみよう。

本作の真髄は、おなじみの“必殺技”を繰り出すシーンであきらかになる。

そこでは、漫画と同様、“非現実的な力強さ”が表現されている。それはそのまま楽曲の力強さにもつながっている。つまり、メッセージがストレートに伝わってくるのだ。

よくよく耳を傾けてみれば、ハードロックの重厚なサウンドが聞こえてくる。これも、映像の貫録とあいまって、楽曲のパワーを補強する。

単なる“イロモノ”では片づけられない映像美を誇る作品といえる。

映像プロダクション「GRAVITAS」に注目

最後に、今回紹介したミュージックビデオを手がけた、映像プロダクション「GRAVITAS(グラヴィタス)」について述べておこう。

日本でもトップクラスのハイエンドマシンを駆使した映像美には定評があり、それは上のビデオでも確認できるだろう。

ただ、いうまでもなく、高価な機材を使えば、よい作品が出来るわけではない。映像が綺麗というだけで観る者の琴線に触れるわけではないからだ。

大切なのは最新技術を用いてなにを表現するかだ。

そもそも、楽曲で表現されている世界が目に見えるモノとは限らない。その点がミュージックビデオを鑑賞する際に重要なポイントになる。

ここで取りあげたビデオでは、主人公たちのココロやキモチ、心情といったものが描き出されていた。つまり、目に見えないモノだ。

「GRAVITAS(グラヴィタス)」の作品は、目に映る情景はもちろん、「目に見えないモノ」がどう表現されているか。そこに着目しながら鑑賞すると、より深く映像美が堪能できるだろう。

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