日本のおすすめホラー映画をお探しの人へ最恐の10選

日本のホラー映画を厳選して紹介。

「ホラー映画を観たいけど、どれを選べばいいかわからない」「日本のホラーが一番怖いっていうけど、どんだけのものなの?」。そんなあなたのために、日本のホラー映画を厳選して紹介しよう。

ここでは、ジャパニーズ・ホラーの代名詞ともいえる〈呪怨〉シリーズを中心に、10~15年前の“古典”を紹介していく。どれも国内外で評価の高いものばかりだから、自信を持っておすすめできる。ぜひ参考にしてほしい。

1.〈呪怨〉シリーズ

〈呪怨〉は素人・玄人向けの2種類ある

日本のホラー映画で、世界的にもっとも知られているのがこの〈呪怨〉シリーズだ。

「伽椰子」と「俊雄」という2人の幽霊にまつわる物語が展開していく。

この作品の特徴は、ストーリーの時間軸がバラバラになっていること。たとえば、死体を発見する場面の直後に、その人物がどうやって死んだのかを描写する、といった具合だ。

〈呪怨〉は、「ビデオオリジナル版」「劇場版」「ハリウッド版」が制作されている。それぞれ「ホラー初心者向け」「ヘビーユーザー向け」の2種類がある点に注意したい。

たとえば、ホラー映画好きの人が「初心者向け」の作品を観ても満足できない恐れがある。逆に、ふだんホラーを観ない人が、いきなり「玄人向け」に手を出しても、ギャグとしか思えず、やはり楽しめない可能性があるのだ。

これは、のちに述べるように、「恐怖」と「笑い」の感情がつねに隣り合わせであることが原因だ。ホラー映画は、作品ごとにこの両者の境目を行ったり来たりしているわけだ。

〈呪怨〉シリーズの場合は、以下のように大別できる。

素人向け

玄人向け

幸運なことに、〈呪怨〉シリーズは、各作品でストーリー上のつながりがない(あっても希薄)。したがって、どれから見始めても物語が理解できなくなることはない。

まずは、自分の「ホラー耐性」を見極めたうえで、最初に観るべき作品を判断しよう。

『呪怨 ビデオオリジナル版』『呪怨2 ビデオオリジナル版』

呪怨 ビデオオリジナル版

©東映ビデオ

“心霊実話モノ”の原点

小学校の教師が、学校を長期にわたり欠席している児童の家を訪れる。そこは、強い怨みを抱いて死んだモノの呪い(呪怨)がかけられた家だった。

初っぱなから「映画」でなくビデオ作品をご紹介する。ホラー好きには必ず一度は観てほしい作品なので、お許しいただきたい。

フィルムではなく、ビデオカメラで撮影されているのが大きなポイント。ビデオカメラ独特のライブ感が「日常生活のすぐそばにある恐怖」を描き出している。

なお、『ビデオオリジナル版』には注意点がある。2つの作品は、前編・後編として物語がつながっているが、『2』の冒頭の約15分間は、前編の終盤と内容が重複している。元々別の商品だったためだが、非常にわかりにくい構成になっている。

〈恐怖〉と〈笑い〉は紙一重である

ジャパニーズ・ホラーの魅力を堪能するために、この『ビデオオリジナル版』を少し掘りさげて分析してみよう。

日本のホラーは観る人を選ぶ。先に述べたように、同じ作品を鑑賞しても、怖がる人と、まったく怖がらない人の両方が存在するのだ。これは、「恐怖と笑いは紙一重である」という法則に関係している。

清水崇監督は「ビデオ版はホラーマニアなら怖がってくれると思うけど、マニアでない人は笑ってしまうかもしれない」と語っている。つまり、「恐怖」とか「笑い」は、演出によっていくらでも操作できるのだ。

「恐怖はいつでも笑いに転化する」というのは、この『呪怨 ビデオオリジナル版』で確認できる。オーディオコメンタリーでは、「伽椰子が階段を這って下りてくる」という、もっとも怖い、あの有名なシーンで、清水監督と豊島圭介監督が大爆笑している。オーディオコメンタリーを聞きながら鑑賞すると、一転してコメディになってしまうのだ。

「恐怖は操作できる」ため、『ビデオオリジナル版』では思いっきり怖くし、のちに紹介する『呪怨 劇場版』では、より多くの人に楽しんでもらうために、少し恐怖を意図的に抑えているというわけだ。

〈呪怨〉の怖さは日常茶飯事的な恐怖

〈呪怨〉の怖さをもっとも感じることができるのは、じつはシリーズの原点である「片隅」「4444444444*1かもしれない。なぜ、それが起こったのか、そのあとどうなったのか、というのはまったく語られない(なにせ3分程度の短編だ)。なんの変哲もない、学校の日常的風景をビデオカメラで撮っていたら、まったく唐突に、脈略もなく、ふって湧いたように災難が映し出された。そんなある種のリアリティが『呪怨』シリーズの怖さだ。

*1:『THE JUON/呪怨』の映像特典に収録。

『ビデオオリジナル版』では、作品としての体裁を保つために、“呪い”の因果関係が少し語られる。しかし、時間軸がバラバラにされ、物語の流れは分断されることで、「日常生活の一部を切り取ったような」感覚は維持されている。

〈呪怨〉はジャパニーズ・ホラーの伝統に反している

〈呪怨〉はジャパニーズ・ホラーの流れのなかにありながら、伝統を受け継いでいる部分と、伝統に反している部分の両方を持つ。受け継いでいるのは、先に述べた「心霊実話モノ」としての「日常生活の一部を切り取ったような」リアリティ。いまもどこかで起こっている「心霊現象」のような感覚だ。

一方、伝統を壊しているのは、「幽霊を見せすぎている」こと。

画面の端にちらりと映る幽霊、暗闇にぼーっと浮かぶ顏、というのがこれまでのジャパニーズ・ホラーの幽霊だった。

しかし、〈呪怨〉では、血のりを塗りたくった白塗りの幽霊が、長時間画面に映し出される。これはジャパニーズ・ホラーにはなかったこと、というより「やってはいけないこと」であった。

それを臆面もなくやってのけ、成功しているのが〈呪怨〉なのである。

じつは、この手法は、かのサム=ライミ(ハリウッド版〈呪怨〉のプロデューサー)の名作『死霊のはらわた』でも使われており、〈呪怨〉がハリウッド映画になったのは、むしろ必然だったと言える。

*余談だが、『呪怨』と『死霊のはらわた』の類似性について、清水監督にお聞きしたことがある。自分ではまったく意識していなかったが、おそらく結果的に方法論が両者で共通していたのではないかとのことだった。

ホラー女優が競演するビデオ版の〈呪怨〉

さらに、『ビデオオリジナル版』で注目すべき点がある。往年のホラー女優がいっぱい出ていることだ。三輪ひとみ・明日美姉妹、栗山千明、洞口依子と、日本のホラーではおなじみの顏がそろっている。

ここでいう「ホラー女優」とは、「ホラー映画によく出ている女優」を言う。

ホラー女優には「怖がる女」と「怖がらせる女」の2種類ある。前者は怪物などに襲われるヒロイン、後者は主人公を襲う幽霊などを考えてもらえばいい。

「怖がる演技」というのは簡単ではない。〈呪怨〉を見ていればわかるが、「怖いモノ」があるから怖いのではく、「怖がる人がいる」から怖いのである。したがって、ホラー女優には、「怖がる」演技力が要求される。

もう一方の「怖がらせる」演技はさらに高度だ。普通の人が突然変異し、主人公を恐怖に陥れるという物語なら、正常と異常の二重性を演じなければならない。

このように、ホラー女優には高度な演技力が要求されるため、ホラーでないジャンルの映画にもお呼びがかかることも多い。その映画を観ようか迷っているときに「ホラー女優が出ているかどうか」が参考になる場合もあるのだ。

『呪怨 劇場版』

呪怨 劇場版

©「呪怨」製作委員会

〈呪怨〉の入門編として最適

女子大生が老人介護のボランティアでとある家庭を訪れる。そこは、おそるべき呪いのかけられたつきの家だった。

〈呪怨〉の魅力は、〈日常茶飯事的恐怖〉である。映像作品としては、ともすればチープになりがちなビデオカメラによる映像も、この日常性を表現する場合には真価を発揮する。

だから、この『劇場版』のようにフィルムカメラの映像では〈呪怨〉の持ち味が消えてしまうのはたしかだ。したがって、「これはもはや〈呪怨〉ではない」と片づけることもできるし、ファンのなかにはそう思う人もいるだろう。

しかし、劇場版やハリウッド版が作られてしまった現在、なにがほんとうの〈呪怨〉なのかという問題に答えるのは、なかなか難しい。

この『劇場版』第1作目はビデオ版と比べて怖くない。これは清水監督も認めている。だからといって、ホラー映画としての価値が低いと切り捨てるのではなく、本作ならではの魅力を見出すのが作品鑑賞というものだろう。

フィルムカメラになったことで、日本の伝統的な恐怖の表現に原点回帰したと見ることもできる。

たとえば、『リング』はテレビ版(つまりビデオカメラによる撮影)もあるが、やはり知られているのは、映画版すなわちフィルムの映像である。ここへきて〈呪怨〉は『リング』と肩を並べたということになる。

とはいうものの、のちに述べるように、『劇場版』の第2作が「世界で最も怖いホラー映画」になっていることを考えると、やはりこの第1作目は、多くの客を〈呪怨」〉の世界に呼びこむための入門編であることは否めない。ホラーマニアには不満は残るが、裏を返せば、ホラー初心者には受け入れやすい作品であるとも言えるわけだ。

『呪怨2 劇場版』

呪怨2 劇場版

©「呪怨2」製作委員会

ジャパニーズ・ホラーの頂点に立つ

「ホラー・クイーン」の異名を持つ女優が、テレビの心霊番組で“呪われた家”をレポートする。

「ジャパニーズ・ホラーの頂点に立つ」というのは誇張でも何でもない。ほんとうに、これまで観たホラー映画のなかでもっとも怖いのだ。

前作の『劇場版』は、『ビデオオリジナル版』に比べて、良くも悪くも普通のホラー映画という感じがした。『ビデオオリジナル版』からのホラー好きには不満が残った。

だが、本作では、前作で抑えられていたぶん、フラストレーションを一挙に放出。ハメをはずした恐怖演出が炸裂するのだ。

ビデオ版、前作の劇場版、そして本作と、この時点で3作の〈呪怨〉が作られているが、いっこうに〈恐怖度〉が低下しない、むしろパワーアップしているというのが凄い。

たとえば、「夜中の決まった時間になると壁を叩く音がする」という怪談をモチーフにしたエピソードがある。これは『新耳袋 第二夜』(メディアファクトリー)の「壁を叩く音」などでも紹介されているもので、ホラーファンならば途中で「ああ、あれか」と気づき、ある種の安心感を覚える部分だ。

ところが、ネタバレしていることはとっくに計算ずみであり、それを逆手にとった恐怖演出が展開する。

〈呪怨〉の特徴として、エピソードを分割し時間軸をずらして配置するという構成があるが、本作でも健在だ。こうした構成自体はほかの作品でも見られるが、この構成がもっとも活きるのはホラー映画ではないか。

かりに、通常の映画のように時間軸どおりに物語が進んでいくとしたら、「その人物がその後どうなったか」といった時間的・空間的な因果関係が問題になってくる。しかし、時間軸をバラバラにすることで、そんなことは気にせず、ただただ恐怖演出の必然性のみでシークエンスを演出できるのだ。

〈呪怨〉は、観ている者を怖がらせることだけを指向しており、登場人物の感情だとか、背景にある人生などはほとんど語られない。悪くいえば、登場人物に厚みは感じられない。もちろん、これは映画としての欠点というわけでなく、ホラー映画としては純度が高いとも言える。

言いかたを換えれば、これまで主人公と呼べるキャラクターは登場せず、登場人物は恐怖演出のための駒にすぎなかった。

だが、本作でははっきりと主人公と呼べる人物が存在する。主人公の人生を物語の主軸に据えることで、人間味が漂ってくるようになってきているのだ。

さすがに、〈呪怨〉も3つ目ともなると、変わりつつあるということだろう。もちろん、それによって恐怖度が低下しているわけではないのは、すでに述べたとおりだ。こうなると日本版の続編はどうなるのか気になってくる。

本作には続きが観たくなるようなラストシーンが用意されている。

『THE JUON/呪怨』

THE JUON/呪怨

©2004 GHP2-GRUDGE,LLC. All Rights Reserved.

ふつうのホラー映画として充分楽しめる

東京の大学で福祉を学ぶ留学生が、授業の一環として米国人ビジネスマンの母親を介護するため、ある民家を訪れる。そこはかつて惨劇のあった家だった。

そもそも〈呪怨〉は、ハリウッド映画に代表される“基本的な映画の手法”から解放されているところに特徴がある。そんな作品をハリウッドで作ってしまえば、もはや〈呪怨〉ではない、と「片隅」からこのシリーズを見守っている者としては考えてしまう。

オリジナルの監督である清水崇がみずから手がけている映画だから、純粋なハリウッド映画とは言えないし、〈呪怨〉らしさも残っているとは思う。だが、制作の動機からして、アメリカ人、つまり〈呪怨〉初心者向けに作られたとみるべきだろう。

「次はどんな手で怖がらせてくれるんだろう」というビックリ箱を開けるような感覚で見るのがこのシリーズの楽しみかただが、この作品はリメイクということもあって、シリーズを見続けている者には先の展開を簡単に予想することができるため、いまいち怖くない。

「ジャパニーズ・ホラーがハリウッドで評価された」というのは事実だとしても、「これは純粋な『呪怨』ではありませんよ」と言いたくなるような、シリーズのファンは複雑な心境に陥ってしまう作品だ。

といっても、それはあくまで“呪怨マニア”が見た場合の話であって、ホラー好きでなくても、映画が好きな人であれば、なかなか楽しめる作品になっている。その意味で、清水監督の演出は“誠実”である。むしろ、ホラーファン以外の人にオススメしたい作品でもあるのだ。

『呪怨 パンデミック』

呪怨 パンデミック

©2006 GHP4-GRUDGE 2,LLC. All Rights Reserved.

ハリウッド映画としてのたたずまいを楽しみたい

日本のインターナショナル・スクールに通う学生が、友人とともに「幽霊屋敷」と噂される一軒家を訪れる。彼女はそこに巣食う怨霊を呼び覚ましてしまう。

本作によって、日本版とハリウッド版の違いがはっきりした。日本版は、ひたすら恐怖の追究、ハリウッド版は映画としてのたたずまいの追究である。

日本版、とくに第2作目の恐怖演出は、かなり映画としてはトリッキーであり、それがそのまま、時空さえも操る伽椰子の恐るべき呪いの表現に直結している。

一方、ハリウッド版は、あくまで「万人向けホラー」という体裁だから、(日本版に比べれば)“普通”の演出である。しかし、映画としての重厚感はハリウッド映画ならではのもので、とくにスタジオに作られた「家」の存在感は、日本版を圧倒している。

本作でとくに注目すべきポイントとはなにか?

まずは、伽椰子の呪いの源泉ともいうべき「伽椰子の少女時代」のエピソード。呪いとは、人知を超えた、理屈のつかないところが怖いわけだから、呪いについてあれこれ因果関係が語られてしまうのは、(それほど明確なものでないにしても)恐怖が半減してしまうというパラドックスもある。

かといって、わけのわからないまま伽椰子の呪いを発動し続けるのは、作るほうも観るほうも退屈してしまうだろうから、これはこれで好ましいことであるはずだ。

もう1点は、「パンデミック」の部分である。アメリカ人がアメリカのアパートで遭遇する怪現象のシーンを、日本人の監督が日本の撮影スタジオで作ったというのは、やはり感慨を禁じえない。あの「片隅」「4444444444」がここまで〈拡大パンデミック〉するなど、だれが想像できただろうか。

ところで、“第3のキャラクター”が登場した日本版、“あの家に入った者が呪われる”という法則が早くも払拭されてしまったハリウッド版、いずれも続きが気になるラストになっているわけだが、さて、先にパート3が公開されるのは、どっちだ?

*ハリウッド版は第3作目が制作されているが、監督は清水崇ではない。

2.『女優霊』

『女優霊』

©バンダイビジュアル/WOWOW

個人的にはこれが最恐

映画の撮影所で次々と怪事件が起こる。

個人的に30年以上ホラー映画を観てきたが、これより怖い作品を知らない。『呪怨2 劇場版』と双璧をなす恐怖度だ。

中田秀夫&高橋洋コンビの作品は、下で挙げている『リング』のほうが有名。しかし、「不気味」「気持ち悪い」という点で、こちらの作品に軍配を上げる。

また、あまり注目されないが、劇中で撮影している「映画」や、現場の描写がすばらしい。白島靖代、石橋けいといった女優陣の演技も素敵。

ホラーというより一本の娯楽映画として充分に観られるのが特徴だ。

3.『リング』

『リング』

©1998「リング」「らせん」製作委員会

有名すぎる貞子が登場する

見ると死ぬと言われている「呪いのビデオ」にまつわる物語。

名実ともに日本のホラーの代表作。もはや説明不要だろう。「貞子」を知らない人はいないはずだ。

原作の『リング』はまったく怖くない(というより、怖さの種類がちがう)。でも、この映画版は、原作に忠実でないことで成功している。

ホラー初心者・ホラー好きを問わず恐怖感を覚える傑作だ。

4.『感染』

感染

©2004 「感染」製作委員会

実際にありそうなリアリティが怖い

経営危機に瀕した病院で医療事故が発生。医師たちはそれを隠蔽しようとする。そんななか、不可解な患者が運びこまれる。

──これは洒落にならない。

この作品を観終わった直後は「なんとも嫌なものを観てしまった」という感想を抱くはず。それはホラー映画としては正しい感覚だが、この後味の悪さはなんであろうか。

この映画のキモとなるのは、医療事故とその隠蔽工作だ。とくに救命措置を行う山場のシーンは、専門家による監修を受け、「実際に起こり得るものになっている」という。

そうはいっても、映画というのは、どこまでいってもフィクションだ。たとえ事実を基に作られているとしても、作品になった時点で虚構となる。まして本作はホラー映画。作り手の想像力が生み出した、荒唐無稽、嘘っぱちの世界なのだ。

登場人物たちが次々とおかしくなっていく(謎のウイルスのようなものに「感染」していく)部分は、ホラーとしては魅力的な設定であり、だから、一見、これがこの映画の核心のように思える。

だが、じつは違う。

本来われわれは、多かれ少なかれ、現実世界と断絶したいがために映画を観る。ところが、本作は断絶どころか、現実世界と地続きであるという違和感がずっと消えない。医療事故と隠蔽、医師不足、老人介護……。ふだんテレビや新聞のニュースで見聞きしている「嫌な感じ」がこの映画を観ている間、ずっとつきまとうのだ。

皮肉なことに、「感染」というホラー映画的な設定によって、「現実感」が緩和され、娯楽作品として観賞に耐えられるものなっているのだ。

5.『予言』

予言

©2004 「予言」製作委員会

幽霊以上に怖いものがあることを知る

大学講師が自分の娘の死亡記事の書かれた新聞を発見する。すると、目の前にいた娘が本当に事故にあってしまう。

本作の監督である鶴田法男といえば、「とにかく幽霊が怖い」という作風で知られる一方、「心が温まる」作品も数多く手がけている。

本作は、それら相反する2つの要素をひとつの作品に入れ込んだ意欲作である。

ただし、もしかすると「ホラー映画としては中途半端だ」という違和感を抱く人もいるかもしれない。一方で単なる〈駄作〉として切り捨てられないという想いも持つだろう。

なるほど、〈恐怖演出〉は、ジャパニーズ・ホラーの第一人者だけあって、押さえるべきところは押さえている。主演の2人を始めとする役者陣もうまいし、音楽も良い仕事をしている。ようするに、映画として欠点らしい欠点は見つからないのだ。

では、なぜ鑑賞直後に物足りなさを感じるのか?

それはおそらく、本作が「幽霊怖い」ではなく「新聞怖い」をテーマにしていることが原因だろう。「幽霊以上に怖いものは存在しない」というジャパニーズ・ホラーの原理原則がここでも確認できるわけだ。

鶴田監督の過去の作品で本作より「怖い」ものはゴマンとあるわけで、「怖い・怖くない」という単純な(しかし決して軽視できない)基準だけで言えば、この『予言』は過去の作品より劣ることになる。

だが――。

鶴田監督ならば、「幽霊怖い」というテーマでいくらでも「怖い」作品は作れただろう。そこをあえて新境地に挑戦した制作姿勢をまず評価したい。

そして、「新聞怖い」という新しいタイプの恐怖の創出に失敗しているかと言えば、じつはそういうわけではない。怖さの種類は従来のものとは少し異なるけれども、やっぱり「怖い」のだ。

さらに、鶴田監督のもう一方の作風である「少し不思議だが心温まる」という観点から観れば、〈家族愛〉の物語として芯が通っていることがわかる。

「ホラー映画とはなにか?」。それを本作は観る側に考えさせているのでないだろうか。

6.『輪廻』

輪廻

©2005 「輪廻」製作委員会

とんでもない前世の持ち主を描く

かつてホテルで起こった大量殺人。その事件を元にした映画の制作現場で恐怖が巻き起こる。

もしかしたら、途中まで「こりゃダメかな」と思うかもしれない。「ダメかな」というのは、「つまらない」「駄作」「失敗作」ということではない。『呪怨 劇場版』やハリウッド・リメイク版のように「ホラー初心者向け」「より多くの人が楽しめるエンターテインメント作品」のこと。すなわち、“ホラーマニア”には不満の残る作品のことだ。

しかし、クライマックスにおいて、その思いは見事に打ち砕かれる。怖かった。“マニア”の当ブログでさえビビったのだから、“フツー”の客人の恐怖度は相当なものだったろう(公開当時、なぜか年齢層が低めだった劇場内は一時騒然となった)。

このクライマックスは、まさに清水崇の真骨頂、〈呪怨〉的と言っていいだろう。個人的には、恐怖半分、嬉しさ半分で、心のなかでニヤリとしてしまった。

ただし、終盤は怖いが、途中までは(少なくともホラー好きにとっては)怖くないのだから、作品全体の完成度は低い、と評価しなければならないことになる。順当に考えれば、だ。

しかし、「途中まで怖くない」理由を分析してみると、それは“積み上げている”からだとわかる(しつこいようだが、“フツー”の人には途中も十分に怖い)。

よく考えてみると、〈呪怨〉の恐怖は、その場しのぎ、刹那的なものだ。「並列的」といってもいい。恐怖シーンと恐怖シーンの間には何の関連性もなく、単発的に恐怖演出が炸裂していく。それが監督の狙いであり、同シリーズを特徴づけている点である。「時系列にストーリーが進行しない」という独自の構成もそれを象徴していると言える。

しかし、『輪廻』は、クライマックにいたるまで、ストーリー・設定を丹念に積み上げている。“フツー”の人を驚かすような恐怖演出をはさみつつ、“ホラーマニア”向けのミスリーディングも織り込まれているのだ。だから、“フツー”の人、“マニア”の人を問わず、クライマックスの恐怖演出に舌を巻く。

つまり、これまでの清水作品が〈並列的恐怖〉だったのに対し、今回は〈直列的恐怖〉を提示したというわけだ。

ここまで紹介してきた作品は、いずれも決して大衆に迎合してはいなかった。「フツーの人はそっぽを向いてしまうかもしれない」というリスクを背負いながらも、ホラーの巨匠たちが全力で、妥協することなく、それぞれの新境地を切り拓いていた。

そこに思い至っていれば、「こりゃダメかな」なんて思考に流れないはずなのだ。

余談ながら、本作で一番恐ろしいのが、やはり“伽椰子”のシーンだったというのが、〈呪怨〉シリーズのファンには嬉しいところ(もちろん、劇中にほんとうに“伽椰子”が出てくるわけではない)

7.『ノロイ』

ノロイ

©2005 EF/OZ/GENEON/XANADEUX/PPM

ドキュメンタリータッチの嘘っぱちホラー

怪奇実話作家が恐るべき「ノロイ」の真相に迫っていく。

ホラー映画は、「演出」がキモだ。つまり観ている人は、あくまで嘘、作りものとしてこれらの映画を楽しんでいる。

しかし、本来ジャパニーズ・ホラーといえば、「心霊実話モノ」という言葉に象徴されるように、虚構と現実の狭間を巧みに行き来しているところにその趣があった。観客は「え? これって本物なの?」「嘘に決まってる」「映像は再現だけど出来事はホンモノなんだよね?」というなんとも煮え切らない感覚を逆に楽しんでいたのだ。

だから、ジャパニーズ・ホラーを代表する『リング』『呪怨』のほうがむしろ異端であったと考えることもできるわけだ。

本作は、ドキュメンタリーということになっているから、『リング』『呪怨』とは異なり、前述のジャパニーズ・ホラーの伝統を継承している作品ということになる。とくに“ホラーマニア”でなくても、日本人の多くが心霊写真とか心霊番組などに親しんできていることを考えると、『リング』『呪怨』よりも、受け入れられる土壌が出来ている映画かもしれない。

ジャパニーズ・ホラーの伝統を継承をするのは、ある一面では結構なことだし、それによって映画がヒットすれば成功と言える。

問題は、ホラー好きは「古臭い」「今さら」「過去の作品の繰り返し」などと思ってしまう危険性があることだ。

この映画で重きを置いているのは、「人間」という存在そのものの怖さだ。はっきりいって、幽霊らしきものは、ほとんど出てこない。でも「怖い人」はいっぱい登場する。

映画の中では、呪いの背景としておぞましい「祭り」が浮かび上がってくるが、「祭り」も結局は人間が作り出したものであり、怖いとすれば、人間の精神が怖いのだ。

ドキュメンタリー風の物語に、人間存在の恐怖を加味していくというホラーの方向性は、たとえば『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズなどで行なわれているが、それが映画まで拡大した(よりお金をかけて仕掛けられるようになった)、というのが本作の注目ポイントだろう。

結論としては、多くの人に受け入れ体勢が出来ている、本来のジャパニー・ズホラーの方向性(=ドキュメンタリータッチ)を継承しつつ、“ホラーマニア”も満足できる「人間存在の恐怖」を描いた、古くて新しい映画ということになる。

8.『CURE』

『CURE』

©1997 角川映画

最後まで不安が解消されない

首を十文字に切り裂く連続殺人事件が発生。主人公の刑事が事件の解決のため奮闘する。

容疑者はすぐに逮捕される。けれど、動機は不明。どうやら誰かから催眠を受けているらしい。同じような事件が連続して起こっていく。やがて、催眠をかけている張本人は捕まる。しかし、謎は解けない……。

というように、いつまで経っても、腑に落ちることがない物語だ。もちろん、映画の完成度が低いからではない。人間の心に空いた穴。それが埋まらないことが原因なのだ。

その薄ら寒い感覚を存分に味わってほしい。

9.『回路』

『回路』

©角川大映映画/日本テレビ/博報堂/IMAGICA 2001

幽霊の侵略を描く

主人公のOLのまわりで人々が謎の失踪をとげていく。一方、大学生がインターネットにアクセスすると「幽霊に会いたいですか」という謎のメッセージを受け取ってしまう。

まわりの人々が“黒いしみ”となって消えていき、やがて社会が崩壊していく様子を描く。

映画を見ただけでは理解できないが、じつは「幽霊が侵略してくる」物語なのだ。

インターネットを通じて、現実世界にあふれ出てくる幽霊たち。この突拍子もない設定の不気味さは尋常ではない。

10.『オーディション』

『オーディション』

©1999 Omega Project Inc.

サイコ女には十分注意したい

自分の再婚相手を探すため、映画のオーディションを開催。選んだ女はサイコだった。

傑作を量産している三池崇史監督のホラー。リミッターを捨て去った残虐描写が秀逸の作品だ。

「怖い」というより「痛い」映画という意見もある。けれど、怖いのは「女の情念」であり、単なる残虐描写がウリの作品ではないのだ。

そして最新の日本のホラーをチェック(随時更新)

当ブログでは、上記以外の日本のホラー作品をレビューしている。傑作・駄作が入り混じっているが、ざっと紹介していこう。

『貞子3D』

『リング』シリーズでおなじみの異形・貞子が登場するが、『リング』と直接のつながりはない。あまり出来栄えが良くないのが残念。主演の石原さとみのプロモーションビデオとして観るのがよさそう。

『悪の教典』

『オーディション』の三池崇史監督作品。貴志祐介の原作小説をうまく映像化していると思う。

『バイオハザード ダムネーション』

有名ホラーゲームのCG映画版の第2弾。前作はイマイチだったが、これは悪くない。

『カルト』

『ノロイ』の白石晃士監督作品。『ノロイ』と同様、フェイク・ドキュメンタリーのホラー。監督の得意分野だけに、傑作に仕上がっている。

『クロユリ団地』

『リング』『女優霊』の中田秀夫監督作品……なのに、なぜか振るわない。主演の前田敦子のプロモーションビデオとして愉しみたい。

〈戦慄怪奇ファイル コワすぎ!〉シリーズ

『ノロイ』『カルト』の白石晃士監督作品。厳密にいえば、映画ではなくDVDシリーズだが、近年、日本のホラーはこの分野で真価を発揮しているので、ここで紹介しておきたい(一部は劇場公開もされている)。

『劇場版 零~ゼロ~』

傑作ホラーゲームシリーズの映画版。あまり芳しくない出来栄えになってしまった。

〈封印映像〉シリーズ

こちらもDVDシリーズ(一部は劇場公開)。“心霊実話モノ”として、新たなジャパニーズ・ホラーの可能性を広げている。

『貞子vs伽椰子』

『リング』の貞子と『呪怨』の伽椰子が対決……まるで色モノの企画だが、白石晃士監督が見事、本格派のホラー作品に仕上げている。傑作。

『Zアイランド』

タレントの品川祐が映画監督「品川ヒロシ」として手がけた作品。じつはホラーマニアから見ても、ゾンビ映画として傑作の部類に入る。初心者にもなじみやすいオーソドックスな作りが好感触だ。

〈闇動画〉シリーズ

こちらも“心霊動画”のDVDシリーズ。〈封印映像〉よりも本格派・シリアスなテイストが特徴。ジャパニーズ・ホラーの新たな境地が堪能できる。

〈ほんとにあった!呪いのビデオ〉シリーズ

“心霊動画”の老舗。「もしかしたらホンモノかもしれない」というほどよいリアリティが魅力だ。

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『バイオハザード6』を買おうか迷っている人に伝えたい本作の評価ポイント

映画『バイオハザードV』がなぜか傑作に思えてくる3つの着眼点

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コメント

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  • コメント (6)

    • 匿名
    • 2015年 5月 24日

    ただの呪怨推しじゃねえか。おまえ監督だろ

  1. 今は〈コワすぎ!〉推しです。

    • 匿名
    • 2016年 4月 28日

    監督ならこんな程度の素人レベルのレビュー書かないだろ。

    • こんな「素人レベルのレビュー」がなぜかアクセス数を稼いでいます。検索でも上位です。

    • 匿名
    • 2016年 10月 19日

    もっと人に知られてない物紹介してください

    • コメントありがとうございます。

      そうですね。そのほうがブログの記事にする意義があるかと思うのですが、なかなかマイナーな作品を観る時間が取れないという事情もありまして(笑)。

      コワすぎ!」「封印映像」「闇動画」あたりは「人に知られていない物」になるかな?とは思うのですが、これもメジャーですかね?

      これからもよろしくお願いします。

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