『アウトレイジ ビヨンド』を名作にした前作とのただひとつの違い

アウトレイジ ビヨンド』は、やっていることは前作とほとんど同じ。しかし、たった1点の相違点があるために、この続編を大傑作に仕立てている。

では、その「相違点」とは?

[類似点]ヤクザのたたずまい

Outrage2 02

まずは、以前ブログに掲載したレビューと重複するが、前作『アウトレイジ』について述べよう。

北野武監督のヤクザものと言えば、『ソナチネ』が最高峰で、『HANA-BI』はギリギリ許容範囲だが、以降はマンネリ化が進み、完成度が下がり続けている印象があった。

で、満を持しての新作ヤクザものである。 一見して「これまでとはちがう!」と思わせるのは、セリフまわしと、論理的なストーリー展開だ。

まずはセリフまわしについて。セリフの多さはよく指摘されているところだ。

「殺すぞ、この野郎!」と凄んだりする場面が頻繁に登場するわけだが、どこか白々しさが漂っている。こういったセリフまわしが、もはやコメディにしかならないことに監督は気づいているのではないだろうか。コメディが悪いわけではなく、これまでのような張りつめた空気を維持するのが難しいということだ。

次に、ストーリー展開だが、論理的というより単純明快で、このあと何が起こるかが簡単に予想できてしまう。これまでの北野映画ではあり得ない点だ。

しかし、それが観る気を殺ぐわけではなく、「わかっているからこそワクワクする」という観る側の心理をうまく突いているのだ。

このように、セリフとストーリーは明らかにこれまでの作品と大きく異なるのだが、それでも「紛れもなくこれは北野映画だ」という雰囲気も漂っている。

それが何かはしばらく考えてもわからず、今も当たっているか自信がないのだが、おそらく登場人物の存在感、ヤクザらしさ、人間としてのたたずまいがそれではないか、と思っている。

大杉漣さんとか寺島進さんとかが出ていれば、正真正銘の北野映画と見なせるが、それではこれまでの作品の焼き直しになってしまうし、それこそ白々しさが全開となるだろう。

そこで、北野映画ではなじみのない、なおかつ世間で有名な役者をキャスティング。 これがうまく効いている。

「ヤクザの世界のことはよく知らないけど、きっとこんな感じなんだろう」というサジ加減のリアリティは、これまでの北野映画から踏襲されているものであり、われわれ観る側も「そうそう、おれたちが観たかったのはこれだよ」という作風になっている。

皮肉なことに、白々しさが漂うセリフまわしも、「こんなセリフ、ギャグにしかならねぇんだよ、バカ野郎!」という監督の冷酷な視線そのものが、映画全体に凄みを与えているのだ。

以上は前作『アウトレイジ』のレビューだが、ここで述べたことはそのままこの続編にあてはまる。

とくに「ヤクザとしてのたたずまい」は、絶妙なキャスティングで実現されている。

西田敏行と塩見三省コンビのスチールを見たとき、個人的には震え上がった。人によってはそう感じないかもしれないが、劇中でも、とてつもない凄みを見せる。

[相違点]すべてを失った者の強み

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では、前作との「相違点」はなんだろうか。

それは、北野武演じる大友のキャラクター設定だ。

大友は、前作で自分の組が壊滅させられ、今作の序盤では刑に服している。つまり、失うものを何も持たない男だ。

しかし、そういう男こそが、この世でもっともタチが悪い。

たとえば、西田敏行と塩見三省が全力で恫喝するシーン。あげくのはてには道具(拳銃)すら取り出されるが、そんな脅しがまったく通用しない。

これではどんな凄腕のヤクザもお手上げだ。

北野武は、怖い演技をしているわけではない。意図的なものかどうかわからないが、セリフまわしもたどたどしい。一見、冴えない男だ。

しかし、だからこそ、この大友の恐ろしさが際立つ。淡々と拷問をしたりしているが、その残虐性たるや尋常でない。

これが前作にはなかった要素であり、今作を前作以上の傑作に仕立てている原因なのだ。

[期待]またヤクザものの新作を

監督はヤクザ映画の魅力を知り尽くしている。そのうえで、時代に合った新要素を取り入れている。

『アウトレイジ』シリーズは完結かもしれないが、また別のヤクザものを期待したい。

[2016年12月3日追記]続編の公開が決定しました!

©2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会

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