『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト

ファイナルインパクト(フィフスインパクト)〉は、『シン・エヴァ』で描かれると予想される〈インパクト〉だ。ここでは、まだ起こっていない事象を考察するという無謀な試みを行なう。

『シン・エヴァ』は公開前の映画ではあるが、「アバン」や「特報2」で一部を垣間見ることができる。それらの映像とこれまでの考察を頼りに、“無謀な試み”に取り組んでみよう。

〈ゼーレ〉は本腰を入れて人類の殲滅にかかる

劇中でくわしく描かれた〈インパクト〉だけ数えても〈ニアサード〉〈フォース〉につづいて3回目。ふだん仕事や家庭でストレスをためていたら「何回おなじことをやってるんだ! いい加減にしろ!」と腹を立ててしまうかもしれない。

その気持ちは、おそらく制作陣にとってもおなじだろう。創作活動がルーチンワークになってしまっては作品づくりは楽しめない。『エヴァ』の送り手・受け手の両方が不幸になるだけだ。

したがって、これまでとは異なる図式で〈インパクト〉は展開すると予想される。

〈ゼーレ〉がエヴァの大群を送ってくる

では、〈ファイナルインパクト〉における「これまでとは異なる図式」とはなにか?

先の〈フォースインパクト〉の考察でも述べたとおり、〈ゼーレ〉がタテマエではなくホンネの〈人類補完計画〉を実行するということだ。

ここへきて、いよいよ〈ゼーレ〉が本気を出す。「本気を出すのが遅すぎない?」と思うかも知れないが、〈ゼーレ〉の時間感覚について思い出していただきたい。〈ファーストインパクト〉から〈ファイナルインパクト〉まで、数百万年の時が流れているように思えるが、それは〈虚構A〉の主観的な時間だ。〈ゼーレ〉の世界では、まだ1時間ほどしか経っていないことも十分ありえる。

先述のとおり、おそらくは〈フォースインパクト〉の際も、〈ゼーレ〉は本気を出そうとしていたのだと思う。しかし、またしても中断してしまった。だから、〈ファイナルインパクト〉はやはりそのつづきを行なうわけだ。

〈フォースインパクト〉では、〈ゼーレ〉も〈ガフの扉〉を開く必要があった。なぜか? それは“ひみつの行動”を起こすため。

“ひみつの行動”とは

〈ゼーレ〉が〈虚構A〉に直接介入して実力を行使する

ことだと想像できる。では、「直接介入」とはどういうことか? 2つの可能性が考えられる。

ひとつは、むくろになって用をなさない〈リリス〉の代わりに、世界を制御・管理する新しい“アバター”を投入する。それを使って世界を〈コア化〉し〈人類補完計画〉を遂行する。

もうひとつは、〈ゼーレ〉が軍事力を投入する。『Q』のラストに流れる『シン・エヴァ』の予告では、8号機がエヴァの大群らしきモノと戦っているが、このエヴァらしきモノが〈ゼーレ〉が投入した軍事力なのかもしれない。本来の〈コア化〉による人類の消滅ではなく、軍事力で人類を抹殺してしまおうというわけだ。

〈ゼーレ〉は依然としてネルフに助力する

先にネルフが軍事力を保持しているのは、〈ゼーレ〉が助けているためだと述べた。『シン・エヴァ』においては、〈ゼーレ〉はネルフへの援助を止めているのだろうか?

〈ゼーレ〉とネルフの対立がはっきりした段になっても、依然として〈ゼーレ〉はネルフを助けざるをえないのだと思われる。その理由は、ヴィレの活動を阻止しなければならないからだ。

ヴィレはヴンダーを有している。過去にも考察したように、ヴンダーは“神殺しの力”であり、〈ゼーレ〉に対抗できる唯一の兵器だ。〈ゼーレ〉から見れば最大の脅威といってよい。

〈ゼーレ〉としては、ゲンドウとヴィレの両方を警戒しなければならないわけだ。

先日公開された「アバン」では、ネルフがヴィレに対し、さまざまな“敵”を送りこんでくる様子が描かれている。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT 1(冒頭10分40秒00コマ) 0706版』
©カラー

「ネルフの豪勢な兵器 vs ヴィレの貧相な兵器」という『Q』で描かれた対比が、より鮮明になっている点に注目したい。〈ゼーレ〉はヴィレを阻止するために、“敵”の建造に手を貸していると考えられる。

ゲンドウは究極の目的を実行する

ゲンドウ(ネルフ)も当然ながら、本来の目的である「虚構世界からの突破」を試みるものと想像できる——というより、それ以外のことはゲンドウの頭にはないだろう。

〈第13号機〉をリサイクル利用する

過去の考察で次のように述べた。

『Q』のラストに流れる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の予告では〈ファイナルインパクト〉という言葉が登場することから、ゲンドウが〈インパクト〉を起こすのはほぼ確実だろう。

ただ、どうやって起こすのかは想像できない。

〈インパクト〉には、それを起こすもの(システムを制御できるもの)と〈トリガー〉が必要だ。ゲンドウは、いずれも持っていないように思われる。

たしかにゲンドウの手元には〈インパクト〉を起こす材料がない。しかし、それはあくまで本来の(=〈ゼーレ〉の計画の)〈インパクト〉だ。虚構世界から突破するのは、〈ガフの扉〉を開くだけでいい

〈ガフの扉〉をどうやって開けばいいか? 先に考察したように〈トリガー〉があれば十分。〈トリガー〉とは「エヴァ+パイロット」の組み合わせだ。

「特報2」では、ゲンドウが〈第13号機〉の前に立つカットがある。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』特報2
©カラー

ゲンドウは〈第13号機〉を〈ファイナルインパクト〉に利用することは確実だ。新しいエヴァではなく、〈第13号機〉をリサイクルして利用するのは、もはや〈ゼーレ〉が新しいエヴァを造ることを許さないからだろう。

ゲンドウは〈トリガー〉の半分(エヴァ)は手にしていることになる。あとの半分(パイロット)はどうするのだろう?

ゲンドウが使えるパイロットといえば、アヤナミレイ(『Q』に登場し、シンジたちと行動をともにしているレイとは別)が挙げられる。もしかすると、「特報2」にあった冬月とレイとおぼしき女のカットは、冬月が「時が来たらエヴァに乗れ。話は終わりだ」すごんでいる場面なのかもしれない。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』特報2
©カラー

とはいえ、〈第13号機〉にアヤナミレイが乗るのは可能性が低いと思われる。ひとつは、〈第13号機〉がダブルエントリーシステムである点。パイロットは2人必要のはずだ。もっとも、アヤナミレイをもうひとり用意することはできそうだし、そもそも「2人必要」ということ自体がまんかもしれないが。

もうひとつは、アヤナミレイは、カヲルいわく「魂の場所が違う」から。かりに2人のアヤナミレイが乗っても〈第13号機〉を満足に動かすことはできないのではないだろうか。

もしかして、ゲンドウと冬月がパイロットとして搭乗するのだろうか? ゲンドウたちのプラグスーツ姿というのもなかなか興味深いが、そもそもオトナがエヴァを動かせるのかは疑問だ*9

*9:30歳前後のアスカやマリも乗っていることを考えると、意外にオトナでもOKなのかもしれない。

ゲンドウは“あの世”でユイに会う

となると、やはり「準備編その2」で考察したとおりゲンドウがエントリープラグを使わず(プラグスーツを着ずに)、コアにダイレクトエントリーをする可能性がもっとも高い。

先に、「コアは“あの世”とつながっているのかもしれない」と述べた。ユイも〈初号機〉のコアにダイレクトエントリーをしている。ゲンドウ自身がおなじ行為をすることで、“あの世”でユイとを再会を果たす。それがゲンドウの究極の目的なのかもしれない。

 icon-arrow-circle-down ユイを再会することがゲンドウの目的のひとつであるのはまちがいない。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

最後の契約の時が来る
もうすぐ会えるな… ユイ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

〈ゼーレ〉vsヴィレの死闘が描かれる

〈ファイナルインパクト〉では、〈ゼーレ〉軍の投入が予想されるわけだが、ゲンドウはこれにどう対抗するのか? 

準備編その2」でこう述べた。

ゲンドウが意図的に自分と〈ゼーレ〉を区別させないようにしているのだ。なぜか? 「神殺しの力」(ヴンダー)を持つヴィレに自分たちを攻撃させるため。それによって自分自身とともに〈ゼーレ〉を倒してもらうためである。

ゲンドウは、〈ガフの扉〉の向こうからやってくる“敵”はヴンダーや〈改2号機〉〈改8号機〉で倒してもらおうとしているのだろう。

じつはゲンドウのこの企みは、〈フォースインパクト〉においてすでに実行されていたとも想像できる。

『Q』の描写を確認してみよう。

覚醒した〈第13号機〉は、〈ガフの扉〉が開いたあともその場に留まってグズグズしていた。その理由は、ヴィレに〈第13号機〉を攻撃させるためだろう。みずから標的となって、うまくヴンダーを誘導しながら、ヴンダーに〈扉〉を突破させようとしたのだ。

 icon-arrow-circle-down もたもたしていた隙を突かれヴンダーに特攻される〈第13号機〉。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

ミサトたちの行動は、ゲンドウの計算のうちだったわけだ。

葛城大佐の動きも計算内だ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

ご存じのとおり、〈ゼーレ〉の操る〈Mark.09〉によって、ゲンドウの企みは阻止されてしまったが……。

「アバン」で描かれたのは“戦闘もどき”

ところで、「アバン」で描かれた戦闘に、どこか“軽薄さ”が漂っているのをお感じになっただろうか? マリやヴィレの若い連中に「生命の危機が迫っている」という気迫が足りない感じがする。

画面に向かって「いいから、口の前に手を動かせ!」と言いたくならないだろうか? それとも観ているこちらの感性がおかしいのだろうか……?

失礼ながら、ヴィレのヤツらはいまいち信用できないので、もっと信頼できそうな人たちに目を向けてみよう。それはだれか? 『エヴァ』の制作陣だ。

一連のシーンのバックには、まさしく“軽薄”な音楽が流れている。これまでの戦闘シーンで使われていたものとはあきらかにおもむきが異なる。つまり「ここは“軽薄”なシーンですよ」という演出であり、制作陣から私たちへ向けられたメッセージなのだ。

では、なぜ“軽薄”なのか? 「アバン」の戦闘は、まさしく命を懸けた戦いではないからだ。

先に述べたとおり、ネルフは本気でヴィレを倒そうとは思っていない。そう簡単に倒れてしまっては逆に困るのだ。

一方では、ゲンドウたちは〈ゼーレ〉に対して、「安心してください。ちゃんとやってますよ」という態度を見せなければならない。

リツコはこう語る。

冬月副司令に試されているわね

『シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT 1(冒頭10分40秒00コマ) 0706版』
©カラー

「アバン」の戦闘は、冬月先生が学生に課した“試験”のようなもの。だから、“軽薄”な印象を受けたわけだ*10

*10:ただ、なぜリツコがゲンドウのたちの真意まで把握しているのか、あらためて検証の必要があるだろう。

この戦闘は、ヴィレの連中や、作品を観る私たちにとっても“小手調べ”。先述のとおり、本格的な戦闘はこのあとの〈ゼーレ〉戦で展開する

なお、“軽薄”といっても、それは「戦闘の意義」においてであり、劇場の大画面で観れば、『エヴァ』ならではのダイナミズムを堪能できるはずだ。

〈ゼーレ〉は〈ロンギヌス〉と〈カシウス〉で倒す

〈ゼーレ〉軍の相手はヴィレにやってもらうとして、ゲンドウ自身はどうするのか?

まさか、〈ガフの扉〉を開きヴィレを誘導すれば自分の“仕事”はおわりだから、「後はセルフサービスでよろしく~っ」と言って退場するわけではあるまい。

やはりゲンドウもみずから〈ゼーレ〉に対抗すると考えるのが自然だろう。それを前提に話を進めよう。

ゲンドウのもとには、〈第13号機〉と自分自身しか材料がない、と先に述べた。しかし、これは少し誤りで、それ以外に有力なアイテムをゲンドウは持っている

ひとつは〈ネブカドネザルの鍵〉。これによって、〈第13号機〉のコアにダイレクトエントリーしたあと、複雑な手順をふまなくても再び覚醒させたりできるのかもしれない。

そして、もうひとつ——いや、もう2つ、きわめて重要なアイテムがゲンドウの手元にあるのにお気づきだろうか? これまでわざとそのアイテムに言及してこなかった。それこそが〈ファイナルインパクト〉において、ゲンドウの切り札となるのだ。

それは……?

そう。〈サードインパクト〉でニセモノとすり替えたホンモノの〈ロンギヌス〉と〈カシウス〉だ。

〈ロンギヌス〉と〈カシウス〉は、合体させて“なにか”を活性化させる働きをするが、単独で使えばエヴァや〈ゼーレ〉のアバターの活動を停止させることができる。この点は過去の考察でも述べたとおり。

〈ロンギヌス〉や〈カシウス〉に〈ゼーレ〉と対等にわたりあえる力、すなわち“神殺しの力”があるかはわからない。しかし、通常のエヴァの武器よりは役に立ちそうだ。

〈サードインパクト〉や〈フォースインパクト〉において、ゲンドウの企みが実現しなかったのはすでに見てきたとおり。もしかしたら、いずれに場合もエヴァにホンモノの〈槍〉を持たせて〈ガフの扉〉から虚構世界を突破し、〈ゼーレ〉に戦いを挑ませようとしていたのかもしれない。

〈ファイナルインパクト〉では、ヴンダーや〈改2号機〉〈改8号機〉に〈ゼーレ〉の軍隊と戦ってもらい、今度はゲンドウ自身が〈ゼーレ〉本体の打倒をめざしているのではないだろうか。

それによってゲンドウの究極の目的はついに達成される。ただ、ゲンドウ自身がどうなるのかは不明だが……。


以上、長々と『新劇場版』で描かれた〈インパクト〉について考察してきた。老人の趣味に付き合ってくれて、礼を言う。

『Q』で描かれたシンジとカヲルによるピアノ連弾はうまくいった。だが、おなじように2人でやれば成功するはずの“世界の修復”は実現しなかった。

(シンジ)
うん 君になら出来るよ

(カヲル)
君となら だよ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

〈ゼーレ〉にとっての〈人類補完計画〉は、もともとはゲンドウとともに行なう“ピアノの連弾”のようなものだったはず。しかし、シンジとカヲルの“世界の修復”とおなじように、やはり〈ゼーレ〉の〈人類補完計画〉は実現しないでおわるだろう

くりかえす。〈ゼーレ〉の〈人類補完計画〉はすべて失敗におわる

それが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の終着点になる。

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『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その2]特報2

〈高畑勲展〉で“観念”を現実化し仕事に活かす方法がわかった

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コメント

  1. アバター
    • 匿名
    • 2019年 8月 19日

    0706においてマリの足が赤くなっているのはエヴァ4444Cの攻撃を受けたためです。エヴァ本体の足は赤くなってません。
    またコア化については接触によりコア化する、ではなく侵食の方が良いと思います。
    また、エヴァのプラグスーツを着ている場合はコア化されません。復元オペにおいてもオペレーター達はプラグスーツ同様の服装です。

    • おっしゃるとおり、「〈コア〉に触れると〈コア化〉する」については、再検証の必要がありそうですね。今後の参考にします。

      ありがとうございました!

  2. アバター
    • かおり
    • 2019年 10月 04日

    このブログにたどり着けて
    本当に良かった!
    目からウロコが取れたような
    読んでいて
    とても気持ちの良い考察でした!

    気付いたら朝になっていましたよ(笑)

    本当に楽しかったです、
    ありがとう!

  3. アバター
    • 匿名
    • 2019年 10月 04日

    気付いたら朝になっていました!
    一気読みです。

    楽しかった、ありがとう!

    • ぎゃふん工房

      こちらこそ、お読みいただきありがとうございました。

      エヴァの考察って、書くのも読むもの楽しいですよね(私もいろいろな人の考察を見たりします)。

      これからもお互いエヴァを堪能していきましょう!

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