【庵野秀明展】庵野秀明になれない俺たちが学べること

「庵野秀明展」から人生のヒントを見つける

当ブログは、『エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』などは堪能したが、庵野作品を網羅的に鑑賞しているわけではない。

特撮もアニメも好きだが、庵野作品を歴史的・体系的に語れるほど知識があるわけでもない。

いわば「庵野秀明」の素人。

だから、この「庵野秀明展」について、なにかを語る資格はないのかもしれない。これをお読みのあなたに、新しい知見・教養・知識を提供する自信はないからだ。

一方で、素人だからこそ書ける、素人にしか書けない感想文もあるはずだ。

そんな当ブログが、「庵野秀明展」でなにを思ったのか。ほかの誰かというより、未来への自分のために、人生の記録として書きのこしておきたい。

つくるときはアナログで考える

展覧会では、庵野氏の仕事の成果が展示されているわけだが、それらのほとんどが〈手書き〉されたもの。まずはその点に注目した。

少し不思議な感じがする。

庵野氏の仕事のゴールは、アニメや実写の映画だ。『エヴァ』や『シン・ゴジラ』に象徴されるように、われわれが目にするシーンの多くは、デジタル技術でつくられている。

ということは、その制作過程でもデジタル技術が多用されているのだろう——と、勝手に思い込んでいた。

もちろん、映画づくりにはデジタルの作業を行なうスタッフも多く関わってはいる。でも、庵野氏が担う部分にはアナログな方法が用いられている。これが意外だったのだ。

たとえば、パソコンでつくられた映像のサムネイルをわざわざプリントアウトし、そこに付箋を貼ってスタッフに指示を出したりしている。映像もサムネイルもパソコンのなかにあるのだから、庵野氏もパソコンで作業すればよさそうなのに、そうしていない。

庵野氏の世代は、パソコンを自分の手足のように使えるほど操作に習熟していない、といった理由も少しはあるだろう。だが、パソコン(デジタル)より、アナログ的な方法をとるほうが、作品制作においては合理的である、と判断したのではないか。

映像に使うわけではないのに手間ひまをかけてミニチュアセットをつくる。アニメなのに生身の役者に演技をさせてカメラで撮る。素人目には“無駄”に映る作業も作品づくりには必要だった。

これを我田引水的に敷延するなら、「創造性(クリエイティビティ)は、アナログ的な道具でないと発揮できない」のだ。

ならば、われわれも創造的な仕事をしたいなら、仕事のなかに創造的な部分をつくりたいなら、パソコンから離れて紙やペンを用いる「アナログ的な作業」を導入してみるのがいい。

そんな〈真実〉を見つけた気がした。

マネジャーになっても手を動かす

「映画監督は選択する人のことだ」と聞いたことがある。芝居をするのは役者、それを撮るのはカメラマン、衣装を準備するのはスタイリスト。監督は役者やスタッフの提案する演技を選び、画を選び、服を選ぶ。みずからがなにかをつくり出しているわけではない。

映画づくりは共同作業だ。監督ひとりで映画はつくれない。庵野氏も例外ではないはず。スタッフが出してきたアイディアから、優れたものを選ぶのが仕事。そんなイメージを持っていた。

しかしながら展覧会では、「ふつうの監督ならスタッフに任せるはず」と想像される作業もみずから行なっているケースが多いことに気がついた。

『エヴァ』の設定画などは、「これも庵野監督なのか!?」と驚かされた。

監督として映画の方向性や質をコントロールするだけでなく、多くの局面でみずからも手を動かしているわけだ。

ビジネス用語っぽくまとめるなら、庵野氏はまさに「プレイングマネジャー」。

「人手が足りず自分も手を動かさないと納期までに作品が完成しない」「スタッフがつくるものの質が低いから自分がやらないといけない」といった事情があるのではなく、庵野氏は根っから「手を動かすの好き」だからではないか、とこれも勝手に想像している。

みずからが主体性・能動性・積極性を持って仕事に臨むことで、悦び・至福・幸福が得られる。

この〈真実〉はわれわれの人生にも応用できそうだ。

好きなことだけをやっていればいい

展覧会では、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」など、多くの人に永く愛好されている名作の数々にも焦点をあてている。庵野氏が幼少のころから堪能し、表現の源泉となっているものだ。

だが、当ブログは逆に「展示されていないもの」に注目した。たとえば、小説の類いは展示されていない。特撮を用いない“ふつう”の実写映画についても触れられていない。

庵野氏はこれらのジャンルの作品を一切観たことがない——そんなことはないにしても、特撮やアニメほどはみずからの血や肉になっていないのはまちがいない。

よりよい表現を生み出すためには、あらゆるジャンルの作品に触れるべし。そんな思い込みがある。いわば「広く浅く」インプットする。だが、庵野氏はあくまで「狭く深く」。

いささか失礼な言いかたかもしれないが、庵野氏は「好きなものしか好きじゃない」「好きじゃないものは観ていない」のだ。それでも、興業収入100億円の作品に結実したのだから、その生き方は“正解”だったことになる。

ただし、庵野氏の類い稀な才能や技術、センス、そして幸運があったからこその“正解”と考えることもできる。

実際は誰もが庵野秀明になれるわけじゃない。同じことをして同じ結果が出せるとは限らない。

けれども、「いまよりほんの少しだけ幸せになりたい」。そう願うならば、「庵野秀明展」から得られた〈真実〉をヒントに、これからの人生を生きるのも悪いことではない。

庵野秀明展
会場……国立新美術館 企画展示室1E(東京都港区)
開催日時……2021年10月1日(金)~12月19日(日) 10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日……毎週火曜日 *ただし11月23日(火・祝)は開館
料金(当日券)……一般2,100円 大学生1,400円 高校生1,000円 *事前予約制
〈庵野秀明展〉公式サイト annohideakiten.jp
*巡回展あり
©HIDEAKI ANNO EXHIBITION

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