『バイオハザード7 レジデント イービル』は、ホラーゲームの代名詞ともいえる〈バイオハザード〉シリーズのナンバリングタイトル7作目。PlayStation VRに対応し、VRゲームとして楽しめるのが大きな特徴だ。
シリーズの“原点回帰”をうたっているが、人類史上、だれも味わったことのないホラー体験を提供する。その意味で“原点回帰”ではない。
そんな前人未到の領域に達した本作に、ホラー好きとして、またプレイヤーとしてどう向きあえばいいのか。
本作の魅力を探りながら、追求していこう。
もくじ
プレイヤーが虚構世界に入りこんで味わう【そこにいる、という恐怖】
『バイオハザード7』の魅力を読みとくのは、じつはそれほど難しくない。本作の魅力は、すなわちVRゲームのそれだからだ。
では、VRゲームの魅力とは? これは本作を少しでもプレイすればわかる。
話はごく単純なのだ。
まず、ふつうのゲーム(たとえば、前作までの〈バイオハザード〉シリーズ)の場合、どんなに恐ろしい敵が眼前に迫ろうと、しょせんはモニターのなかの存在。プレイヤーは画面から1~2メートルは離れているのだから、敵との距離は空いている。まったくセーフティー。恐怖はしても、一定の安心感がある。
次に、立体メガネなどをかけてプレイする3D立体視ゲームはどうか。たしかに画面から飛び出しているように見えるが、やはりプレイヤーからは離れている。ふつうのゲームより恐怖度は高いかもしれないが、まだまだ安全圏。
それでは、VRゲームはどうだろう?
プレイヤーはモニターのなかに入ってしまっている(ように感じる)。
だから――。
敵はプレイヤーの鼻先数センチのところまで接近する。あり得ない。「こんなことはあり得ないっ!」と脳が悲鳴をあげる。
本作で数多く出現する敵は〈モールデッド〉と呼ばれるバケモノだ。これがたとえばドラゴンのような、いかにもモンスター然としていれば、脳は敵を虚構のモノとして認識するだろう。
だが、〈モールデッド〉は、人が変わりはてた姿とおぼしい存在だ。ふつうの人とおなじように二本足で館のなかを闊歩している。こういった敵は「しょせんは虚構の存在」だと知っていても、脳はそう思わない。目の前の異形は実在すると認識してしまう。
現実のモノとしか思えない異形に襲われる。それはかつてだれも体験したことのなかった恐怖。脳が生命の危険信号を灯すほどの恐怖。
そんな恐怖を味わうゲームなど、これまでだれもプレイしたことはない。
▼ふつうのゲームは、敵が画面より手前に来ることはない。
▼3D立体視ゲームは、ふつうのゲームよりは敵がプレイヤーに近づくが、まだまだ距離は離れている。
▼VRゲームは、プレイヤーがモニターのなかに入っているような錯覚に陥り、敵がすぐ目の前まで迫る。その距離はわずか数センチ。
人のようなモノが殺意を持って向かってくる【それに殺(や)られる、という恐怖】
敵が鼻先数センチのところまで迫る――これが『バイオハザード7』の魅力だ。じつに単純で、だれでもわかる。
だが、このシンプルな「魅力」の向こう側には、本作の〈本質〉がある。「敵が鼻先数センチ先にいる」ほどの現実感を覚えることによって、なにがもたらされるか?
プレイヤーが本作の〈本質〉に最初に気づくのは、〈モールデッド〉のようなモンスターではなく、“人間”に襲われる場面だ。
人の姿をし、人の言葉をしゃべり(日本語版なら当然「日本語」を話す)、人とおなじようなふるまいをするキャラクター――つまり〈人〉としか思えない存在が、殺意を持って向かってくる。
脳が、目の前の人物を現実の人間だと錯覚しているために、「殺意」も虚構ではなく現実のものだと認識してしまう。
実際にだれかに殺されかけた経験のある人など、これを読んでいる人のなかにはいないと思うが、本作は「殺される」ことを疑似体験できる――いや、「疑似」ではない。脳にとっては現実としか思えないのだ。
まさにみずからに迫りくる生命への危機。そんな、命あるモノのだれもが抱える根源的な恐怖に襲われることになる。
これが本作の〈本質〉なのだ。
プレイヤーがみずからの倫理観に挑戦する【それを殺(や)る、という恐怖】
「それに殺られる、という恐怖」。これが『バイオハザード7』の〈本質〉であることがわかった。だが、じつはそれだけでは十分ではない。〈本質〉のさらに奥に本作の〈真髄〉と呼ぶべきものが隠されている。ほんとうの恐怖はそこにあるのだ。
では、本作の「ほんとうの恐怖」とは?
それは、目の前にいる〈人〉をみずからが攻撃しなければいけないことだ。
〈人〉を殺す――それはゲームがプレイヤーに求めていることだ。敵を倒さなければ先には進めない。そもそも目の前にいる人物は現実世界の人ではない。コンピューターが創り出した虚構の存在だ。だから、殺ってもいい。その行為を咎められることはない。法で裁かれることもない。現実ではないのだから。わかってる。そんなことは先刻承知。
だが、ダメ。できない。攻撃しようとしても、なにかが邪魔をする。その「なにか」はゲームの仕様にあるものではない。プレイヤーの内心にある道徳観とか倫理観といったもの。本作はそんなプレイヤーのココロに働きかけてくる。制作者がプレイヤーの良心を試しているかのように……。
そうはいっても、殺らなければゲームオーバーなのだから、殺る。殺らざるをえない。
苦痛。これまでプレイしてきたゲーム――いや、人生でこれほどまでの苦痛にさいなまれたことはない。
しかも――。
恐怖はそれだけでは終わらない。
ゲームを進めるうちに、〈人〉を攻撃することに躊躇しなくなっていく。相手をどう出しぬいて、亡きモノにしようかと考えている自分に気づく。それは攻略法を考え実践するというプレイヤーの本分をまっとうしているだけなのだが、さっきまで自分のなかにあった倫理観はどこに行ったのか? いつの間にか平気で人を殺れる人間になってしまったのか? そんな自己嫌悪に陥る。
恐ろしい。これがもっとも恐ろしい。本作の「ほんとうの恐怖」は、そこにある。
実際に本作をプレイするまでは、VRによってこれまで以上にリアリティーや臨場感が高まるのだろう――というぐらいのことは予想していた。
だが、ここまでプレイヤーの心の奥底に潜む恐怖を呼びおこすものだったとは、想像だにしなった。
とんでもないゲームを世に送り出してしまった。その事実に、本作の制作陣は気づいているのだろうか?
続編では仲間の実在感が鍵になる!?【そこにいる、という希望】
VRゲームのあらゆる可能性が盛りこまれている
〈バイオハザード〉は、ゲームの発展とともに、その時代ごとに新しいホラー体験を提供するシリーズといえる。今後はVRがスタンダードになっていくのだろう。
そうなると、続編はどうなるのかが気になるところ。ホラーのVRゲームとしては、この『バイオハザード7』ですべてやりつくしてしまっているからだ。
たとえば、部屋を歩いたときに床がきしんだり、窓ガラスが風でガタガタと震えたりする音を怖がる。扉に向こうに広がる未知の暗闇を想像しておびえる――。シリーズ第1作目のリメイク版でわれわれが味わった〈そこを歩く、という恐怖〉は当然のように本作でも表現されている(その部分は“原点回帰”といえよう)。
また、キーアイテムを探して仕掛けを解き活路を見出していく〈アドベンチャー〉、強力な武器を手に敵を射撃していく〈シューティング〉の要素も本作に盛りこまれている。
さらには、敵の持つ〈人〉としての悲哀、人間ドラマのようなものも、オマケコンテンツで補完できる。
これらの要素をマイナーチェンジし、登場人物を変えたり物語の舞台を別の場所に設定したりするだけでも、続編としては成立するだろう。だが、その場合、本作を超えることはない。
続編を本作以上のものに仕上げるには、プレイヤーに新しいホラー体験を提供しなければならない。
VRゲームの実在感を活かしたパートナーの登場
では、VRゲームとしての〈バイオハザード〉にはどんな可能性が残されているだろうか。
これまでのゲームとVRゲームの大きなちがいは、前述のとおり「キャラクターの実在感」だった。『バイオハザード7』では、これを敵の表現に用いて恐怖をあおることに成功していた。
ならば、敵ではなく仲間に実在感を持たせるのに使ってはどうだろう?
『バイオハザード4』のように、主人公が守るべきキャラクターに実在感があれば、よりいっそう愛おしくなるだろう。そんな人物が敵にさらわれるような事態になれば、焦燥感もひとしおだ。
また、『5』のように、ともに戦うパートナーの実在感が高まれば、さらに頼もしさを感じるはずだ。目の前にたしかに立っているという安心感、「そこにいる、という希望」を持てるのではないか。
VRによって、プレイヤーは〈恐怖〉だけでなく、これまでにない別の感情を持てる。そんな作品に仕上がれば、ホラーゲームにおける〈バイオハザード〉シリーズの地位は不動のものとなっていくだろう。
続編がもたらす新たなホラー体験におおいに期待したい。
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他のレビューもそうですが、
毎度素晴らしいレビューですね。
私は、
発売日に通常版を購入して一通りクリアして、
去年の10月19日にやっとPS VRが入荷して買えたので
VRモードで遊ぶと全然違いました。
まさにそこに居る感覚です。
VR酔いするから30分位しか遊べませんが。
ゴールドエディションと同じ日に配信されたDLCの
エンド オブ ゾイやNot a Heroは7の物語を締めくくる良い内容でした。
8はどうなるのか分かりませんが、期待しています。
何しろ、7のPVを観るまではバイオハザードは6で畳むべきだと思っていたくらいですから。
なぜかと言うと、6がゲームとしてクソゲーかつシリーズとしても駄作でしたから。
早速、記事をお読みいただきありがとうございます。
通常モードではプレイしていませんが、このゲームはやはりVRありきだと思いますね。私もVR酔いで、最初は15分が限界でしたが、今では1時間は余裕になりました。
『6』も個人的には好きですが、評価しない方がいるのは理解できます。
それにしても、
2のリメイクはもうすぐ発売みたいな話が去年からあるのに、
2の20周年を過ぎても何も発表が無いからなんなんだろうと思っています。
『2』のリメイクは噂では聞いたことありますが、真実なんでしょうかね。
いまは『2』よりも、早く『8』をプレイしたい心境ですけどね。
こんにちは。
2のリメイクがE3で発表されましたね。
東京ゲームショウで体験版を遊んできたのですが、
とても面白かったです。
試遊はレオン編(探索)とクレア編(ボス戦)がありまして、レオン編を選びました。
試遊時間は15分でした。
おそらく、E3と同じ内容で、欠損表現はCEROのDだからなのか内臓が飛び出すとかはありませんでした。
Z版はどうなるか分かりません。
15分しかありませんでしたので、家で遊ぶより集中して臨みました。
警察署の仕掛けを解いて、脱出経路を開けるようにということでした。
メダルが3つ必要でしたが、1つのメダルしか手に入れられませんでした。
操作方法は、
L2ボタンで銃を構えて、R2ボタンで発砲でした。
ゾンビも動くのですが、意外と落ち着いて狙って倒せました。
頭を3、4発撃つと倒せるようです。
ただ、オリジナルの2と比べると、やっぱり緊張感がありました。
移動は左アナログスティックで、
視点移動は右アナログスティックで、
ダッシュはL3ボタン(左アナログスティック押し込み)でした。
サバイバルナイフは、L1ボタンで構えて、R2ボタンで振るでした。
銃弾の補充は、昨今のTPSゲームと同じ感じで、□ボタンでした。
最初はどうなのかなあと思っていましたが、ストレス無く遊べました。
扉と扉の移動はシームレスで、扉に向かっていけばキャラが開ける動作をします。
ゾンビをかわして部屋の中に入って出た際に
かわしたゾンビが襲ってきた時はビックリしました。
丁度、サバイバルナイフを持っていたので、噛まれる前にL1ボタンを押すことでお腹辺りに刺して対処できるようです。
その後、銃で倒した後にナイフを回収できました。
総括すると、今までのバイオハザードシリーズの良いところと他のTPSゲームの良いところの集大成だろうなあと感じました。
とても楽しみです。
体験版を配信したら、好評の雨嵐じゃないかと。
それはそうと、そもそも、大人気で絶対試遊できないだろうなあと思っていたので意外で嬉しかったです。
試遊台は、PS4版とXbox One版の両方で45台位だったようです。
それだけの台数を用意するとはカプコンの意気込みが感じられます。
モンスターハンター:ワールドが、目標の1000万本を販売しましたけれど、
もしかしたら、
バイオハザード:RE2は、それを超える売り上げになるかもれしません。
それ位、内容が良いことが体験版から分かりました。
こんにちは。ゲームショウに行かれたのですね。
『バイオ2』リメイクは、なにがあっても購入することを決めているので情報をシャットダウンしているのですが、なるほど、良い出来栄えなんですね。これは楽しみです。
参考になるコメントありがとうございました。ぜひ本番を楽しみましょう。