『エイリアン アイソレーション』の〈エイリアン〉はゲーム史上最恐の敵

ホラー

エイリアン アイソレーション』は、その名のとおり、かの有名な凶悪異星人〈エイリアン〉が登場するホラー・アクションだ。〈エイリアン〉は、これまでもさまざまな作品で扱われ、もはや親しみのある存在になっている。しかし、生半可な気持ちで本作をプレイすると後悔する。そして、思い知らされる。まさに、ゲーム史上最恐の敵であることを。

そんな本作の魅力を語っていこう。

レトロ・フューチャーの肌ざわり

『エイリアン アイソレーション』画面

宇宙船のインテリアが映画とまったく同じ

本作は、SFホラーの古典的名作『エイリアン』をモチーフにしている。〈エイリアン〉が出てくるだけでなく、映画の“たたずまい”そのものを再現しているのが特徴だ。

例を挙げよう。

まず一目で気づくのは、宇宙船のインテリア。ゲームの舞台は、映画の〈ノストロモ号〉ではないが、コールドスリープの機械や医療器具、部屋と部屋をつなぐ通路やドアのデザイン、収納ボックスの形など、細部にいたるまで、そっくり同じ。

コンピューターを起動すれば、映画と同じ起動音が鳴り、モニターには同じ見た目の画面が表示される。ややネタバレになるが、“自爆装置”のデザインと起動手順も映画を踏襲している。

ステーションはCGではなく“ミニチュア”

以上の点はスクリーンショットを見れば、わかることではある。しかし、実際にプレイしなければ実感できないこともある。

たとえば、宇宙ステーションの外観。ふつうのゲームならCGで表現されるところだが、本作ではミニチュアで作られている──ように錯覚する(もちろん、実際はゲーム画面なのでCGである)。窓から覗く宇宙空間もマットペイントの絵のようだ。

映像が貧弱だから、そう感じるのではない。1970〜1980年代の特撮SF映画の“味わい”を再現しているのだ。これは高度な技術があるからこそ可能になったことだ。

そして、プレイ中は、まさに映画のセットの中を歩いているような錯覚に陥る。セットだから“本物”らしくないわけではない。むしろ逆。床を歩いたときに足に伝わる感触、壁を触ったときに感じる肌ざわりもわかる。そんな現実味があるのだ。

目的は戦闘ではなく“遺跡発掘”

『エイリアン アイソレーション』画面

考古学者のような知的好奇心を刺激

ステーションで生き残っている人はごくわずかになってしまったが、かつてここで人々がどのように暮らしていたのか、その痕跡はあちこちに残っている。それらを調査するうちに、ステーションは人々にとって決して楽園ではなく、狂気の空間、むしろ地獄であったことが判明する。

隠されていた真実が明らかになっていくのは、プレイヤーの知的好奇心を刺激する。だから、どんどん先に進みたいと思わせる。

いわば、考古学者のように“遺跡”を探索し、かつてここで生きていた人の息吹を“発掘”するゲームともいえるのだ。

恐怖より期待感が大きい

本作は、はっきり言って、〈エイリアン〉と戦うゲームではない。ステーションで起こるさまざまな問題を(生存のために)解決するのがプレイヤーの使命だ。

広大なステーションの中に作られた施設をめぐり、装置を作動させていく。ひとつの問題を解決するのに、別の障害を取り除く必要があったりする。

ゲームの主人公は(その世界に生きる人だから)装置の使い方や目的を知っている。だが、プレイヤーは知らない。扉の先に何が待ち受けるのか、装置を動かすと何が起こるのか……。そんな期待感・緊張感がプレイ中にわきあがる。ここでもやはり考古学者──いや、冒険者のような好奇心がプレイヤーの心に生まれるのだ。

〈エイリアン〉はゲーム史上最恐の敵

『エイリアン アイソレーション』画面

“ゴリ押し”を許さない

そう考えると、じつは〈エイリアン〉は本作の主役ではない。しかし、その存在感は圧倒的だ。

ステーションの探索──いや“発掘”をしている最中に〈エイリアン〉の気配を感じたら、身を隠さなければならない。姿を確認してから行動していては遅い。敵が見えた次の瞬間には殺されている。物陰に隠れてやり過ごしたり、ロッカーやダクトに入ったりして命をつないでいく。

ただ、こういった隠れ場所も磐石ではない。ヤツはダクトにまで入りこんでくるし、ロッカーに身を潜めているときは息を止めていないと発見される。

狡猾。そう。〈エイリアン〉はじつに狡猾なのだ。

敵の目をかいくぐり、隙を突いて行動する。そんな“かくれんぼ”ゲームは、『サイレン』『メタルギア』『サイコブレイク』など、これまでに何作も発売されている。しかし、本作と比べれば、ただの戯れでしかない。なぜなら、屍人や兵士、ホーンテッドは、強行突破、いわゆる“ゴリ押し”で出し抜けるからだ。だが、〈エイリアン〉は無理。ヤツは“ゴリ押し”を許さない。武器で撃退することもできない

*中盤以降、火炎放射機で一時的に追い払うことはできる。ただし、あくまでその場しのぎの処置。火炎放射機の燃料にも限りがある。

当ブログは、長年、さまざまなホラーゲームをプレイしているが、ここまで恐怖感と焦燥感を覚える敵に出会ったことがない。

そもそも生半可な相手ではないのだ、〈エイリアン〉は。そんなことは最初からわかっていた。けれど、これまで数多くのゲームでモチーフにされ、親近感すら覚えはじめていたから、その事実を忘れていた。今までの“借り”を本作で一気に返されるような思いだ。

敵の敵は友

〈エイリアン〉は単に「怖い」だけではない。プレイヤーの行く手を阻む敵として一筋縄では扱えない相手だ。

主人公に襲いかかる敵は、〈エイリアン〉のほかにも存在する。無法地帯と化したステーションには、強盗のような輩も徘徊している。〈エイリアン〉に銃は利かないが、人間なら撃退できる。しかし、敵とはいえ(そしてゲームとはいえ)生身の人間を撃つのは気がひける。

そんなとき、〈エイリアン〉の襲来を願ってしまう。みずから手を下すのは躊躇するが、自分以外の“誰か”が殺すのは大歓迎。そんな複雑な感情がわきあがる。

制御の働かなくなったアンドロイドも主人公の脅威だ。これも〈エイリアン〉に排除してもらえれば楽なのだが、ヤツは人間かそうでないかを見分けられるらしく、アンドロイドは襲わない。

じつに狡猾、じつに厄介な相手なのだ。

まさに〈エイリアン〉はゲーム史上最恐の敵。だからこそ、ゲーマーとして腕が鳴る。みなさんもぜひこの“好敵手”からの挑戦を受けてほしい。そして、悪夢にうなされてほしい。

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夜見野レイ

夜見野レイ

このサイトでは、ホラー作品のレビューを担当。幼いころ、テレビで最初に観た映画がホラー作品だったことから無類のホラー好きに。ガールズラブ&心霊学園ホラー小説『天使の街』シリーズをセルフパブリッシングで執筆。ライターとしては、清水崇・鶴田法男・一瀬隆重・落合正幸・木原浩勝の各氏にインタビュー経験を持つ(名義は「米田政行」)。

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コメント

    • みぞ
    • 2015.08.18 12:10pm

    お久しぶりにおじゃましました。
    これおもしろそう。
    買ってみよいかな‥‥‥って思ったらPS4か。
    残念。

    • おおっ! ご無沙汰です。
      そうですね。このゲームをやるために本体を買うのもアリかと思いますが、
      まあ、高価ですしね。
      あとは『サイコブレイク』もプレイすればモトはとれるかも。
      この度はコメントありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

    • シェンムーIIIを待つ者
    • 2018.01.16 11:05pm

    こんばんは。
    去年の12月に
    PS Storeでセールをしていて
    71%引きの2500円で売られていたので購入しました。
    昨日、難易度ノーマルでクリアしました。
    途中、進行不能バグに悩まされましたがそれも突破してなんとか。
    映画のファンというわけではありませんが、
    エイリアンのドカ!ドカ!という足跡が恐怖を感じました。
    名作です。

    • こんにちは。コメントありがとうございます。

      私も進行不能のバグに遭遇しました。PlayStation 4のゲームは、ときどきこういうことがありますね。

      本作のエイリアンは頭が良すぎて困りますね。たしかに足音はトラウマものです(笑)。

ぎゃふん工房(米田政行)

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〈ぎゃふん工房〉はフリーランス ライター・米田政行のユニット〈Gyahun工房〉のプライベートブランドです。このサイトでは、さまざまなジャンルの作品をレビューしていきます。

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