人気ゲームの悪役ラルフが嫌われ役を演じることに嫌気がさし、自分のゲームから逃げ出してしまうお話。『スーパーマリオ』のクッパや『ストリートファイター』のベガ、ザンギエフ、『ソニック』シリーズのドクター・エッグマンなど、日本のゲームの悪役もゲスト出演する。だから、ボクたちゲーマーが見るべき作品かと思っていたら、そこはさすがディズニー。ゲーマー以外にもオススメできる超一級娯楽作品になっておりました。
今回はこの『シュガー・ラッシュ』の見どころを探っていこう。
王道ストーリーをちょっとだけひとひねり
ゲームの悪役が「もうやだ!」って逃げ出す話と聞いて、まず思うのは「悪役だけど本当はいいやつ」「裏では主役と仲がいい」という設定だろう。いかにもディズニーって感じのファミリー向け“教育的”物語なんじゃないかと想像していた。
だから、“汚れちまった”オレたちが、そんな“ご清潔”なストーリーに食指が動くかい! って思っていた。
『シュガー・ラッシュ』の主人公(悪役)ラルフもそんなヤツだし、はい、はい、ありがとう、王道ですね、ごちそうさま、って思った、最初は。
しかし──。
やはりそこもディズニーというべきか、王道ストーリーにひとひねり加えてあった。
ゲームの主役・フェリックスとの友情物語と見せかけながら、じつはヒロイン・ヴァネロペとの“親子愛”が展開。ついでに恋愛物語も加味されるが、こっちはフェリックがその役目を負う。
誰もが期待し見たいと思っている物語をきちんとつくりながら、少し肩透かしを加える。そんな高度な作品づくりが行われているのだ。
キャラクターたちの愛すべき立ち振る舞いとしゃべり
この作品で特筆すべきは、異様なまでのキャラクターの愛らしさだ。とくにヒロインのヴァネロペは、絵に描いたような“お転婆”“じゃじゃ馬”のこれまた王道の人物造形。
主人公を翻弄し、物語をかき回し、いわゆる“おいしいところ”を全部持っていく。
もちろん、動画としてのアニメーションをつくりあげる技術力の高さもあるが、やはり日本語吹き替え版の声優たちの功績は、どの作品より大きい。
主人公ラルフの山ちゃん(山寺宏一)がいいのは当然として、ヴァネロペの諸星すみれも恐るべき演技力で魅せる。当初、貴家堂子さんあたりの超ベテランかと思いながら観ていたが、なんだかちがう感じがしたので、あとで確認すると、1999年生まれの14歳なのであった。
『シュガー・ラッシュ』成功の半分は、このふたりの功績ではなかろうか。
とくに、レースカーの運転を特訓するシークエンスは、『フルハウス』で自転車の乗り方を練習するミシェルとジョーイおじさんを彷彿させ、胸が熱くなる。
いや〜やっぱりゲームって、いいもんですね
ここまでだと、「ゲーム」という要素がじつはあまり関係ないように見える。実際は「ゲーム」じゃなくてもいいんじゃない? なんだよ、ボクたちゲーマーを釣るエサだったのか? まんまとディズニーの撒き餌、ブービートラップに引っかかってしまったのだろうか?
もちろん、そんなことはない。きちんと「テレビゲーム愛」にあふれた作品になっており、頭に血が上ることはない。
ラルフやフェリックスは2Dゲームのキャラクターなので、ゲーム中は二次元だが、ゲームセンターの稼働時間外は3Dとなる。ところが、キャラクターたちの動きは“2D”のままなのだ。主人公フェリックスがトンカチを一振りすれば、壊れたものが一瞬で直る(だから「直らない」ときの「あれ?」が生きる)。
また、それぞれのゲームは電源ケーブルでつながっており、ラルフたちのいる“ほのぼのアクション”から、FPSの戦争ゲーム、ヴァネロペたちの住む“スイーツ・カーレース”まで、物語の舞台がバリエーションに富んでいる。これも「ゲーム」を題材にした作品ならではの魅力だ。
そして、カーレースをこの作品の主体に定めたのもいい。レースの疾走感と物語のテンポが見事に合致し、観ている者を飽きさせない。まさに“ジェットコースタームービー”、“ヴァネロペ無双映画”ってわけだ。
最近は『バイオハザード』ばっかりやってたから忘れていたけど、本来「ゲーム」って、いろいろな楽しさがあるものだよな。そんなことを押しつけがましくなく、ちらっと思い起こさせてくれる。
©Disney
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