『はじめての憲法教室』で“知ってるつもり”をただそう

“汚れちまった”大人が気づかない、若者ならではの視点が示されている。

憲法の本というと、どうしても小難しいイメージがあり、まあ専門書ともなればたしかに難解であるわけですが、この本は違います。

私が初めて読んだ水島朝穂先生の本は『きみはサンダーバードを知っているか』です。日本国憲法とかPKO法とか、小難しい話をいかにわかりやすく読者に伝えるか、という点で、まさに目からウロコの一冊。自分の人生を変えるほどの衝撃を与えれてくれました。

そんな水島先生の本ですから、この『はじめての憲法教室』も、じつにわかりやすい。大学の先生とゼミ生の問答という形式になっており、憲法とか法律のことを知らない人でも、スイスイ読み進めていけると思います。

憲法を「わかってるつもり」の人こそ必見

では、「オレ法学部出身だから、憲法のことはとっくに知ってるモン」という、私みたいな人は手に取る価値はないのか。

そんなことはありません。「知ってるモン」などと、「知ってるつもり」になっている人こそ必読といえます。

たしかに、この本で述べられている基本的な概念は、一度は学校で習ったことでしょう。しかし、ふだんその知識を現実の社会現象にあてはめて考えているかといえば、疑問もあるわけです。大学卒業後、〈知識〉という“刃”を研ぎ続けなければ、やがて切れ味は悪くなっていくでしょう。

また、憲法のことを「知ってるつもり」になっていても、新たな発見があります。たとえば、ゼミ生のひとりが『ジョニーは戦場へ行った』という映画の話をする場面。

ジョニーの子どもの頃の回想シーンで、お父さんに「民主主義ってなに?」と訊くんです。すると、お父さんは「若者に殺し合いをさせるためのものだ」と答えます。この映画を見て考えたのは、まず「もし、戦争が起きたら、自分は戦場に駆り出される当事者になる」ということ。[中略]そう考えると、憲法九条というのは少数派を守るためにあるんじゃないかと思いました。

水島先生が「いや、驚いた」と発言しているとおり、“汚れちまった”大人が気づかない、若者ならではの視点が示されているのもこの本の大きな魅力なのです。

いま「立憲主義」がブームの兆し

改憲・護憲というと、少し前まで「第9条」の問題でした。これは私の物心がついたときからずっとそうです。

しかし、近年、首相の安倍さんが「第96条」のことを持ち出したため、〈立憲主義〉がにわかに注目されることになりました。

この本のサブタイトルは「立憲主義の基本から考える」。まさに〈立憲主義〉に重きをおいた内容で、じつにタイムリーです。

〈立憲主義〉は、憲法の勉強をしていれば、まさにイロハのイなので「知ってるつもり」なのですが、前述のように、あらためて自分の知識を確認するために、一読する価値があります。

あえて単純化すれば、民主主義は「民意だから」、立憲主義は「民意にもかかわらず」ということになる。

このあたりの記述は、「知ってるつもり」の私でも「おおっ」と思いました。

もちろん「〈立憲主義〉とはいうけれど、ほんとはなんだかよくわからない」という人も、この本を読めば、すんなり理解できるはずです。

*立憲主義に関するぎゃふん工房のブログ記事です。

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