ここからは、『シン・エヴァ』の内容をもとに、これまで当ブログがおこなってきた考察について検証する。

といっても、現時点で当ブログはまだ1回しか作品を鑑賞していない。ウロ覚えの描写を根拠にしているため、あくまで「暫定的」なものになる。本格的な検証は、描写やセリフを正確に確認できるBlu-rayの発売後になるだろう。

ここからは『シン・エヴァ』の具体的な内容には触れています。ぜひ作品をご覧になったあとにお読みください。

ハズレてしまった予想

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

まずは、当ブログの予想と異なっていた事柄を挙げてみよう。ただし、解釈によっては正解もあるかもしれない。

『エヴァ新劇場版』は〈仮想現実〉なのか?

当ブログの考察では、「『序』『破』『Q』で描かれた世界がまるごと〈仮想現実〉であったことが『シン・エヴァ』であきらかになる」と主張していた。

実際は、そう断言できる描写はなかったため、厳密にはハズれたことになる。

では、世界が〈仮想現実〉でなかったかといえば、明確に否定することもできない気がしている。

ゼーレ(=神?)の視点から見れば、やはり世界は〈仮想現実〉であり、使徒や人類は出来損ないのバグと解釈できる余地は残されているように思う。

当ブログの考察の出発点となった「虚構と現実の禁じられた融合」が主題になっていたことは事実で、今後の考察課題としておきたい。

ミサトはゲンドウと共闘しなかった

当ブログは、「ミサトとゲンドウが手を組み、ゼーレと戦う」と予想していたが、これはハズレ。

一方で、「〈インパクト〉を起こしてガフの扉の向こう側に行き、世界をなんとかする」というゲンドウのふるまいについては予想どおりとなった(多くの人が考えていたことだとは思うが)。

槍はニセモノではなかった

セントラルドグマにあった槍はニセモノだったため、形状が変わり、カヲルは抜くのをためらった。当ブログはそのように考えたが、実際はニセモノどころか、きわめて重要なアイテムとして使われた。

そうすると、なぜカヲルが「僕らの槍じゃない」と言ったのか、謎解きは振り出しに戻ったことになる。

「希望の槍」「絶望の槍」という新たな概念が提示されたので、これがヒントになるのかもしれない。

なお、2本の槍がゲンドウのキーアイテムになる、という予想については当たっていた(この槍でゼーレと戦うと思っていたのだが)。

マリはゲンドウと同世代の人だった

マリはゲンドウと同世代ではない」と結論づけたのだが、これもはっきりと否定する描写が劇中に存在した。

とはいえ、そうするといろいろ問題点も生じ、マリの正体についてはさらに考察する必要がありそうだ。

当たっていた予想

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』©カラー

次に、的中した予想を挙げてみる。こちらも、今後の検証によってはハズレになるかもしれない。

ゼーレの目的は〈インフィニティ〉の創造

当ブログの考察では、「人類はもちろん、海や川、あらゆる存在が融合され、〈インフィニティ〉になる」とした。Blu-rayなどで綿密に検証する必要はあるものの、発想は正しかったように思う。

一方で、〈インパクト〉は、それぞれ前回のやり直しと考えていたが、個別に目的があったらしい。そこは少し予想がハズれたといえる。

ゲンドウは〈ネブカドネザルの鍵〉で神に近い力を手に入れた

〈ネブカドネザルの鍵〉は、ゼーレの部品であり、システムに干渉できる装置。『シン・エヴァ』でゲンドウがそれを使う、という予想は、本質的に正解といえるだろう。

ただ、いつ使ったか、という問題が残る。使用した時期によって、それぞれの事象がゲンドウによるものかそうでないかが変わってくる。今後の検討課題となるだろう。

“現実世界”は実写で表現された

虚構と現実の違いを表現するため、現実世界は実写になると予想した。人によって解釈が分かれそうだが、本質的にはこれは当たりといっていいのではないか。

綾波レイが復活した

『Q』で「いない」とされた綾波レイは、予想どおり再登場した。

アヤナミレイの処遇をどうするのかと思っていたのだが、予想外の退場のさせかたとなった。ただ、これは予想できてもよかったように思う。

『シン・エヴァ』はシンジが大人になる物語

『Q』で「バカガキ」と言われたシンジが、『シン・エヴァ』で大人になる。これも予想どおりの展開といってよいだろう。

大人になるとはどういうことか? 当ブログは「みずからの行動の意味を理解し、その結果にも責任を負うこと」と述べた。これをさらに敷延するなら、大人になるには「コミュニケーションをとること」が必要といえる。

『序』『破』『Q』のシンジはコミュニケーションをずっと拒否していたわけだ。

カヲルとシンジも、きちんとコミュニケーションをとっていたとはいえない。それが〈フォースインパクト〉を招いたと見ることもできる。

そして、コミュニケーションの問題はゲンドウにもそのままあてはまり、コミュニケーション不全があらゆることの元凶になっている。

ゲンドウの究極の目的は、コミュニケーションを拒否すること(コミュニケーションしなくてよい世界を創ること)にあったとも解釈できる。

旧劇場版は〈自分〉との対話によって決着した。新劇場版(『シン・エヴァ』)は、〈他人〉との対話が解決に導いた。

『シン・エヴァ』の〈真実〉を読み解く鍵は、「コミュニケーションとは何か」を考えることにありそうだ。


ほかにも、ハズれたもの、的中したものがあると思うが、現時点で思いつくものを挙げてみた。今後も、できるかぎり追加していきたい。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の謎解き記事一覧

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ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

フリーランスのライター・編集者。インタビューや取材を中心とした記事の執筆や書籍制作を手がけており、映画監督・ミュージシャン・声優・アイドル・アナウンサーなど、さまざまな分野の〈人〉へインタビュー経験を持つ。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。収益を目的とせず、趣味の活動を行なう際に〈ぎゃふん工房〉の名前を付けている。

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コメント

  1. 2020年8月に序破Qで初めてエヴァンゲリオンを観た新参者です。
    シン・エヴァを観た感想を上のURLの記事に書きました。
    ネタバレはネタバレタグで隠してあります。
    そこにも書いたように、
    「庵野秀明スペシャル」 – プロフェッショナル 仕事の流儀 – 3月22日19時30分からNHK総合
    が放映されます。楽しみです。

    長年のファンの方々にはシン・エヴァは感銘深かったことでしょう。
    私は新参者ゆえ、シン・エヴァは最高に感動するといったほどでは無かったですが、結末が観れて、ネタバレ耐性も付き、いろいろな感想や考察を読んだりして楽しんでいます。
    自分の印象としては最後の最後の場面でメタフィクション的な解釈が浮かびました。
    やはり、いろいろな解釈・考察を可能にするようなシン・エヴァでした。

    • コメントありがとうございます!

      リンク先も拝見して、とても参考になりました。

      「プロフェッショナル 仕事の流儀」も楽しみです。

      『シン・エヴァ』も考察の余地を残してくれて、制作陣には感謝したいですね。

      今後ともよろしくお願いします。

    • 匿名
    • 2022.05.18 4:23pm

    シンエヴァで描かれてるとされる真実とは何ですかい

    • コメントありがとうございます。自分の頭のなかでは答えが出ているのですが、まだ言語化はできていません。ご要望があるようでしたら、記事を書きたいと思っています。

ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

〈ぎゃふん工房〉はフリーランス ライター・米田政行のユニット〈Gyahun工房〉のプライベートブランドです。このサイトでは、さまざまなジャンルの作品をレビューしていきます。

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