この春、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』(第4部)のアニメがスタート。別の記事でも取り上げたように、この作品にはボクたちの人生に役立つ名言が満載だ。
社会が変革し、ボクたち勤め人の置かれている状況も大きく変わった。仕事で成果を上げられないヤツはどんどん切り捨てられていく。そんな時代がやってきているのだ。
今回は、『ジョジョ』(第4部)の原作のマンガから仕事に役立ちそうなセリフを集めてみる。なんとか生き残る方法を模索しよう。
*『ジョジョ』を知らない人にも役立つように、セリフが登場するシーンの状況を簡単に説明している。また、「スタンド」とは、超能力のようなものだと思えばいい。
パート1 ふだんから心がけておきたいセリフ
まずは、日々のビジネスシーンで使いたい名言を挙げてみる。セリフのひとつひとつはたいしたことを言っていないかもしれない。だが、仕事場では小さいことの積み重ねがモノをいうはずだ。
①呪われた魂になるぜェッ!
追い詰められた敵が東方仗助にトドメを刺されそうになり、逆ギレ気味に放ったセリフ。
もしおれを殺したらオメーもおれと同じ呪われた魂になるぜェッ! ヒヒ! ヒヒヒ!
恨みは人ではなく状況にぶつける
『ジョジョ』の第4部にはそれまでにはない特徴がある。主人公たちが敵を殺さないこと。それを象徴するのが、このセリフなのだ。
人に対して恨み、怒り、妬みといった負の感情を抱いても、なんのプラスにもならない。お金が得られるわけでも、幸せな気分になるわけでもない。むしろ、どこかでヘマをしたり、嫌な気持ちになったりする。自分で自分に呪いをかけるようなものだ。そうならないよう「呪われた魂になるぜェッ!」と、自分に注意を促したい。
とはいえ、人間である以上、そんな感情を持つなというのも無理な話だ。
そこで、発想を変え、そういった負の感情は人に向けず、目の前にある状況や自分の置かれた環境にぶつけるのはどうだろう。
自力ではどうすることもできないケースもあるが、働きかけ次第で変えられる場合もあるはずだ。というより、どうすれば不快な状況をなくせるか。そっちのほうに思いをめぐらせることが重要だ。
たとえば、人手が足りず忙しい。プライベートの時間がどんどん削られていく。だが、スキルアップを図り、仕事のやりかたを工夫すれば、単位時間あたりの生産量はやがて上がっていくはず。そうすれば、いまより少しは気持ちが楽になるのではないか。
状況にマイナスの感情をぶつけてプラスに転化する。そう頭を切り替えてみよう。
②キチョーメンな性格でね
敵が広瀬康一に向かって〈矢〉を放つ。そして、それをわざわざ回収しようと近づきながら言う。
キチョーメンな性格でね おまえを殺す前にちゃんと「矢」をぬいてキチッとしまっておきたいんだ……
場違いでも地道に取り組む
敵はこのあと「一枚のCDを聞き終わったらキチッとケースにしまってから次のCDを聞くだろう?」などと尋ねる。ようは神経質な性格。だから、〈矢〉なんて放っておいてもいいのに、戦いの最中にもかかわらず康一から〈矢〉を引き抜こうとしたのだ。
この敵のふるまいはあきらかに場違い。間が抜けている。迂闊に近づけば反撃される可能性があるのだから。だが、そこから学べることもある。
それは、他人から見れば些細だったり、一見その場にふさわしくなかったりしても、自分が必要だと信じるなら、地道に着実に取り組むべきだということだ。
たとえば、エクセルでマクロを組んで処理すれば? そうアドバイスされる。たしかに作業時間は短くなるかもしれない。だが、マクロの組み方で下手を打つこともある。急がば回れ。紙とペンを使ったほうが質を担保できる。そんなケースもあるはずだ。
その仕事については誰よりも自分がくわしい。どうすべきかを適切に判断できるのは自分である──。そんな状況なら、「キチョーメンな性格でね」などとつぶやき、まわりの茶々に耳を貸さないようにしたい。
③「切り札を持ってるぞ」って感じなのよねえ
康一に好意を抱く山岸由花子が、あまりに強い想いから、康一を人里離れた家に監禁してしまう。康一は激しくうろたえるが、由花子は康一の内面にあるものを見透かしていた。
あなた自分で人間として最低といっておきながら その瞳の奥にキラリと光る…なんていうか──サワヤカな物があたしには見えるのよ……何か…「切り札を持ってるぞ」って感じなのよねえ………
自分の〈切り札〉を見極める
康一はスタンド使いだが、その事実を由花子は知らない。持ち前の洞察力、あるいは“女の勘”で、康一の秘密を見抜いたわけだ。
由花子の言う「切り札」とは、康一のスタンド能力を指している。マンガを読んでいる者は誰もがそう思っていた。いや、この時点では作者もそう考えていたはずだ。
ところが、のちのエピソードを見ると、必ずしもそうではないことがわかる。じつは康一は見かけによらず逆境に負けない不屈の精神の持ち主であった。さらに、他人の好意に誠実に応える包容力も持ち合わせていた。
由花子は、そんな康一の本質まで見抜いていたのだ。
ボクたちも康一と同じように自分なりの〈切り札〉を持っておきたい。ふだんは他人からわからない技能。ここぞというときに発揮される特技。そういったものだ。
たとえば、書類のほんの小さな間違いも見逃さない。どんな嫌いな相手でもイヤな顔ひとつせずコミュニケーションがとれる。会議で煮詰まったとき画期的なアイディアを思いつく──。
誰もがそんな〈切り札〉を内に秘めているはず。いや、秘めていると思い込むことが重要だ。「切り札を持ってるぞ」と胸を張れるものはないか? あらためて自分を見つめ直してみよう。
④おれは反省すると強いぜ
いきがっていた敵が慢心から大きなダメージを食らう。態勢を立て直しながら口にしたセリフ。
おれは……反省すると強いぜ…
同じ過ちを犯す可能性を小さくする
手痛い失敗や痛恨のミスをすることは誰にもある。その結果、精神的に落ち込んでしまうこともあろう。しかし、“デキる”ビジネスパーソンとそうでない人を分けるのは、ヘマをやったあとのふるまいだ。
敵のこのセリフは、一見すると相手に対する威嚇だ。いい気になるなと釘を刺している。一方で、「反省すると強いはずだ」という自己暗示にもなっているのではないか。
実際、自分のミスに焦点を当てればそれは汚点となるが、前向きに考えれば状況を改善するチャンスでもある。失敗の原因を冷静に分析すれば、同じ過ちを犯す可能性を小さくできる。それは大きなアドバンテージだ。災い転じて福となす、というわけだ。
たとえば、はっきりと担当者を決めていなかったために進捗管理がおろそかになってしまった。それでプロジェクトの進行に支障が出た。ならば、次から担当者をきちんと決めればいい。
ビジネスシーンにおける反省とは、自分を責めることではない。「おれは反省すると強いぜ」と心の中で唱えながら、あくまで未来の行動を軌道修正することなのだ。
⑤運命は読めない
岸辺露伴は、他人の記憶や秘めたる想いを、まるで本を読むように知ることができる。しかし、自分の運命だけは予測できないのだった。
ぼくの「スタンド」『ヘブンズ・ドアー』……自分の『遠い記憶』と『「運命は読めない』…………か
行動を変えれば運命は書き換わる
運命など誰にもわからない。当たり前だ。わざわざ教えられるまでもない。だが、『ジョジョ』の世界ではちがう。露伴は他人の運命の内容を書き換えることができるのだ。
もちろん、スタンド使いでないボクたちは、そんなマネはできない、他人に対しては。
そう。自分の“本”なら書き換えられる。すなわち自分の行動を変えるということだ。
「運命は読めない」。たしかにそうだ。でも想像することはできる。それも複数の成り行きをシミュレーションできる。ならば備えればいい。最悪の事態を想定して。穴があるならあらかじめ塞いでおけばいい。
たとえば、締め切りから逆算して作業のスケジュールをきっちり立てる。不測の事態が起こるのも織り込んで予定を組んでいく。
そんなふうに心がけていれば、運命は変えられるのだ。
⑥暗い美人より明るいブス
辻彩は、人の顔のパーツを取り替えることができる。顔が変わると性格も変わる。整形手術を終えた“ブス”の客が感激しながら店を出ていく。その様子を見て彩がつぶやく。
『暗い美人より明るいブス』………のほうがましってことね~~『女の青春』は……
あらゆるものは心の持ちよう
彩はエステティシャンなので、「美人」「ブス」は文字どおり容姿のことを言っている。だが、もう少し視野を広げれば、見た目だけでなくあらゆるものが心の持ちようではなかろうか。
たとえば、給料が安い。いい上司に恵まれない。やりがいを感じられない──。自分の置かれている境遇が酷いと感じても、まわりの人は羨むものかもしれない。他人から見れば十分に恵まれていることもある。
下を見て歩けというのではない。せっかくの“幸せ”を見逃してしまうことが問題なのだ。いまある幸福に満足しなければ、際限なくそれを追い求めることになる。それでは結果的に不幸になる。
〈幸せ〉とは、〈幸せを感じられる心を持つこと〉だ。つまり、「暗い美人より明るいブス」と心を切り替えれば、「ブス」でも明るくなれるというわけだ。
⑦見るんじゃあなくて観ることだ
康一と空条承太郎がスタンドに襲われる。敵の姿はすでになく、康一は追いかけようと提案するが、承太郎はこのセリフを言いながら部屋にとどまるよう命令する。
観察しろというのは……見るんじゃあなくて観ることだ…聞くんじゃあなく聴くことだ
もう一歩だけ踏み込んで考える
承太郎によれば、「観る」とは「つぶさに観察する」こと。また、「しっかり耳を傾ける」という意味で「聞く」ではなく「聴く」ことが重要だともいう。見た気、聞いた気になったままコトを進めるのを戒めているわけだ。
承太郎の読みどおりスタンドは同じ室内に潜んでいたが、命令を無視した康一は窮地に陥る。
「観る」「聴く」を当ブログなりに言い換えれば、「もう一歩だけ踏み込んで考える」ということだ。
たとえば、上司やクライアントから依頼を受ける。話を聞き仕事に着手。できあがったものを提出すると、相手は「なんかイメージがちがう」。やり直しになってしまう。
このような事態を防ぐにはどうすればいいか。依頼を受けた段階で、相手の最終イメージを聞き出す、つまり「聴く」ことだ。その場で簡単なスケッチを描いてお互いのイメージが食い違っていないか確認するのもいい。つまり「観る」のだ。
「見るんじゃあなくて観ることだ」と、ほんのちょっと心がけるだけで、のちの結果が大きく変わるのは、仕事の現場でよくあることなのだ。
⑧逆にオレの自信でヤツがブッこわれそうだぜ
承太郎のスタンドは強大なパワーを持つが、敵のスタンドは承太郎の攻撃をはねのけるほど頑丈だった。その様子を見て口にした言葉。
やれやれだ 初めて出会ったぜ こんなガンジョーな『スタンド』は…逆にオレの『自信』でやつがブッこわれそうだぜ………
必ず勝てるという自信を持つ
承太郎はあきらかにピンチだ。自分の攻撃が通用しないのだから。不利な状況であるのは明白。でも、うろたえたり、あがいたり。そんな醜態は見せない。
前回の記事でも述べたとおり、承太郎はどんな危機的な状況に陥ろうと勝利を確信している。なおかつその自信があると言葉にして表現する。そうすることで勝利が導かれることを知っているからだ。
承太郎の心意気を仕事の現場で応用するなら、「成功体験を重ねる」ことだ。「どんなに高い壁も俺は乗り越えてきた」という自信が持てれば困難に立ち向かえる。「逆におれの自信でヤツ(=危機的状況)がブッこわれそうだぜ」と、トラブルにも動じず的確に行動できる。
成功体験を得るには、ちょっとだけハードルの高い課題に挑戦するのがいい。110%の実力を出せばクリアできるような、そんな課題。たとえば、カロリーが高くメンバーの誰もが敬遠するタスクの処理をあえて買って出るとか。
日ごろのふるまいがピンチのときにモノをいうはずだ。
⑨こいつは自分の長所や短所を人前に出さない男なんだ
取り逃がした殺人鬼の自宅を探索する承太郎たち。少年時代のアルバムや通知表などを調べながら、殺人鬼の人物像を承太郎はこう表現する。
大学も2流…会社でも目立たない…しかし落ちこぼれでもない 仕事は そつなくこなす 他人からはネタまれずバカにされず こいつは自分の長所や短所を人前に出さない男なんだ…もちろんワザとだ…「高い知能と能力を隠す」……それが最もトラブルに出くわさないことだと知っている………
いたずらに虚勢を張らない
殺人鬼はスタンド使いだが、数々の凶行を重ねながら逃げおおせているのは、スタンドの能力だけでは説明がつかない。
この男は、殺人鬼が裏の顔だとすれば表はビジネスパーソン。愚鈍な人間ではない。本気を出せば、バリバリ成果を上げられる力量は持っている。でも、そうしない。犯行が明るみに出ることがないよう、なるべく目立たないようにしている。承太郎の言うとおり「能ある鷹は爪を隠す」を地で行く男なのだ。
では、殺人鬼でも犯罪者でもないボクたちが、この男から学べることは何か?
それは「虚勢を張らない」ということ。自分がデキる人間であることを声高にアピールするのは愚かな行為だ。
ビジネスの現場で起こりがちなのは、自分の実力を超える量の仕事を頼まれているのに、「できます」「やります」と安請け合いしてしまうケース。その結果、締め切りに間に合わなくなったりする。
自分の長所をわざわざ口に出して宣伝する必要はない。「(おれは)自分の長所や短所を人前に出さない男なんだ」と、やるべき仕事をきっちりこなして結果を出しさえすればいい。仕事の現場ではそれがすべてだ。
⑩思い込むというのは何より恐ろしいことだ
敵のスタンド能力を見極めて反撃する仗助。しかし、敵のスタンドには意外な攻撃方法があった。戦況が有利になり心に余裕の生まれた敵がつぶやく。
「思い込む」という事は何よりも「恐ろしい」事だ………しかも自分の能力や才能を優れたものと過信している時はさらに始末が悪い
まわりからフィードバックしてもらう
仗助が戦いの最中に犯した過ち。これをボクたちの教訓にするなら、仕事の「能力や才能を過信」しないことだ。
とはいえ、能力や才能を自分自身で見極めるのは難しい。一方で、他人のことはよくわかる。だから、自分の仕事ぶりを他人からフィードバック(評価)してもらうのが効果的だ。
上司やリーダーが“デキる人”なら、そのことを心得ていて、こちらから求めなくても適切なアドバイスをしてくれるはずだ。そうでない場合は「今日のプレゼン、どうでしたか?」などと、自分から働きかけるのがいい。
仗助がこの敵のスタンド能力を見誤ったように、仕事の現場でも、いつ落とし穴にはまるかわからない。「思い込むというのは何より恐ろしいことだ」と、何事にも謙虚でいるようにしたい。
パート2 ピンチを乗り切るのに使えそうなセリフ
ここからは、仕事でゴタゴタが起こった、頭がパニックになってしまった、精神状態が悪くなってしまった──。そんな急場をしのぐための名言を挙げていこう。
⑪お前の能力はこの世のどんなことよりもやさしい
仗助のスタンド能力で人やモノを直せる。ケガの治療もできる。だが、死んだ者を甦らせることはできない。祖父が敵に殺され哀しみにくれる仗助を承太郎が慰める。
人間は何かを破壊して生きているといってもいい生物だ その中でおまえの能力はこの世のどんなことよりもやさしい
自分が無力だと思うときこそ能力を肯定する
その人の真価は、ピンチのときにこそ発揮される。とはいえ、仗助は祖父の死に対して何かできたわけではない。
自分は無力。そんな想いにとらわれたときこそ、逆に自分の能力を積極的に肯定する必要がある。「自分は何もできない」。そんな悲観的な気持ちになれば余計に何もできなくなる。
危機的状況で自分ができることは何か。たとえば、情報処理の能力に長けているなら、事態を好転させる情報を集める。ふだん交渉を得意としているなら、クライアントに事情を誠実に説明し事態の悪化を防ぐ。自分がとるべき行動が見えてくるはずだ。
仗助の場合は、承太郎が能力を肯定してくれた。自分のまわりに承太郎のような人物がいない場合は、「お前の能力はこの世のどんなことよりもやさしい」と、自分で自分を評価すればいい。
⑫おれはバカだからよぉ~
虹村億泰は、誤って兄のスタンド攻撃を受け負傷してしまう。敵であるはずの仗助がその傷をスタンドで治療。億泰は困惑したまま逆に仗助を助けるような行動をとる。訝る仗助に億泰が言う。
おれはバカだからよぉ~~~心の中に思ったことだけをする
深く考えずにとった行動が結果的に正しい
億泰のこの考え方は、仕事の現場で有効な行動原理のひとつだ。
つまり、ごちゃごちゃ考えても結果は出ないということ。「下手な考え休むに似たり」ということわざもある。
億泰は自分をバカと卑下するが、いち早く決断し行動を起こしている。なおかつ、その行動は理にかなっていた(仗助たちにとって、ではあるが)。この姿勢はおおいに見習いたい。
たとえば、何か仕事を頼まれたとき、まずは手を動かしてみる。締め切りまでのスケジュール、今後必要となるタスク。それらを書き出す。そうすることで、全体像が見え、次にとるべきアクションがわかるはずだ。
「考えている」と「迷っている」を混同してはいけない。手が動いていないのは、迷っているだけなのだ。「おれはバカだからよぉ~」と言いながら、とにかく何かしら行動を起こそう。
⑬必ずぶちのめすがな
木の人形に触れると、本人の意思と無関係に人形と同じ動作をするようになる。仗助は、そんなスタンド能力の術にはまってしまう。
こ…こいつのスタンド…ま…まじにや…やばいぜ……必ずブチのめすがな…
勝機が見えないときこそ成功を確信する
仗助が「まじにやばいぜ」とピンチを認めているように、この時点で勝機は見えていない。だが、「必ずブチのめす」と予告している。ちなみに、これはそばにいる康一に対して言った言葉か、あるいはひとりごとだ。敵に向けたものではない。
つまり、「必ずブチのめせ」と自分に発破をかけている。そうすることで、最後に「ブチのめす」という結果が得られる。そう確信しているのだ。
仕事で危機に陥ったときも、「やばい」状況を認めながら「必ず(ピンチを)ブチのめすがな」と自分を鼓舞するようにしたい。
ピンチに陥ったとき、自分を救うのは自分自身でしかありえない。「誰かがなんとかしてくれるだろう」と他人を頼るのは、ビジネスパーソンのとるべき態度ではない。自分が行動を起こさなければ、事態は好転しないのだ。
とんでもないミスをやらかしたとき。その穴埋めをするのは自分だ。もちろん、ひとりの手に負えないこともある。その場合、上司や先輩に相談すればいい。それも「穴埋め」の行動のひとつだ。
⑭2人ともブン殴るつもりだったんだよ
敵が船員に化けている。どちらがニセモノかわからない。億泰が片方を殴りつけると、はたしてそれは敵だった。どうやって見破ったのかと尋ねられ、億泰が答える。
2人ともブン殴るつもりだったんだよ おれ頭ワリイからよ~~
まちがってもいいから選択する
億泰の行動は無謀そのもの。敵でない方を攻撃していた可能性は十分にあった。まさに一か八か。捨て身の賭けだった。
ただ、億泰の場合、どちらかが敵であることはたしかで、なおかつ行動を起こさなければ生命の危険もあった。だから、億泰の行動を一方的に責めるわけにはいかない。
「まちがってもいいから、とにかくどちらかに決める」のは、ボクたちも真似したいところ。ビジネスシーンなら、たとえ選択をまちがっても、人に怪我を負わせるような事態にはならない。結果的に功を奏することもある。
たとえば、速攻で資料を作成することを求められたとする。こういう場合は、時間をかけて質を上げようとせず、「2人ともブン殴るつもり」の精神ですばやく決断し、叩き台を作ってしまう。そして、チームで検討して修正していく。アウトプットの質は取り組んだ時間に比例すると思いがちだが、実際の現場では、時間の短さが依頼主への信頼につながることもある。
仕事の現場では「頭ワリイ」ほうが結果が出る場合も多いのだ。
⑮やれやれ
仗助の首に敵のスタンドが放った針が刺さる。その瞬間、承太郎がスタンド能力で時を止める。停止した時間の中で承太郎がつぶやく。
やれやれ なんとか1秒止めるのが精一杯ってとこか
危機的状況でも安心だと自分に言い聞かせる
このとき承太郎は──いや、仗助はかなりの危機的状況だ。一歩間違えば敗北する。ふつうの精神の持ち主なら、まだまだ安心できない状況なのだ。しかし、例によって承太郎は冷静に対処している。
こんなふうに心に余裕をボクたちも持ちたい。つまり、ピンチのときも「やれやれ」と言って心を落ち着かせる。「安心だ」と自分に言い聞かせるのだ。
そもそも危機的状況だからといって、あわてふためいても問題が解決するわけではない。むしろ泥沼にはまってしまう。
たとえば、クライアントに送った書類にミスが見つかったからといってあわてて電話をしない。「やれやれ」と一呼吸おいて、ほかに同じようなミスをしていないか洗い出す。そして、善後策を練ったうえではじめて相談の連絡をする。
いったん冷静になり思考が前向きになれば、困難突破の妙案も浮かぶはず。そのためのおまじないのような一言が「やれやれ」なのだ。
⑯ポパイにホーレン草
仗助は敵の攻撃によって危機に陥るが、承太郎のすばやい判断とスタンド能力でことなきを得る。これから強敵と戦わなければならず「気合を入れろ」という承太郎の言葉に仗助が答える。
承太郎さんが気合い入れりゃあポパイにホーレン草 楽勝っスよ~~~
やる気の出るものをふだんから用意しておく
ポパイにホーレン草。このたとえがわかる人がどのくらいいるだろう? アメリカのコミック『ポパイ』の主人公がホーレン草を食べると強くなる。元ネタはそれだ。のちに往年のファミコンソフト『ポパイ』でも、主人公のパワーアップアイテムとして登場する。むしろ仗助はゲーマーだから、このゲームのほうが頭にあったのかもしれない(仗助の年齢で知っているのはいささか不自然ではあるが)。
この仗助のセリフのように、ボクたちビジネスパーソンも自分なりのパワーアップアイテムを活用したい。心理学的にも、ここぞというときに気合いの入るアイテムを持っておくとよいらしい。
お気に入りの音楽を聞く、お菓子を食べる、愛読書を開く。そんな自分の“ポパイにホーレン草”を見つけておく。急いで資料を作らなければならないとか、こなさなければいけないタスクが大量にあるとか、そんなときにさっと取り出せるようにふだんから用意しておくのだ。
ポパイはホーレン草で悪者を撃退する。ボクたちも自分なりの“ホーレン草”で、危機的状況をやっつけよう。
⑰真の後悔はこのあとやって来たんだ
承太郎の忠告を無視した康一は窮地に陥る。しかし、承太郎が機転を利かせたために康一は命拾いをする。その代わり、承太郎が深手を負ってしまうのだった。
だが真の『後悔』はこのあとやって来たんだ
いまはまだ最悪の状況ではない
康一は生命の危機に陥った。まさに最悪の事態。一瞬、死を覚悟したはず。だが助かった。つまり、そのとき「最悪」に見えても、あとでもっと悪い状況が起こりうるということ。
仕事場でも、ピンチと思っても「いまはまだ最悪の状況ではない」ことがある。というより、事態を悪化させているのはパニックになっている自分自身。そんなケースすらあるのだ。
想定外の作業が発生した。体調が悪くなってしまった──。そんな危機的状況が起こったとしても、「まだ最悪の状況ではない」と頭を切り替えれば、突破口は見つかる。納期を延ばしてもらう、助っ人を頼む、などだ。
ピンチに陥った自分自身を軽く責めるのはいい。だが、あとで「真の後悔はこのあとやって来たんだ」とさいなむような事態は避けるようにしよう。
⑱もっともむずかしい事は自分を乗り越える事さ
ジャンケンに負けるたび、自分のスタンド能力が吸い取られてしまう。そんな勝負に負け越している露伴が秘策を思いつきながら言ったセリフ。
いいかい! もっとも『むずかしい事』は! 『自分を乗り越える事』さ!
自分というライバルに勝利する
露伴によれば、敗北とは敵に負けることではなく、自分を乗り越えられないこと。この考え方はなかなか示唆に富んでいる。
敗北は、自分と他人を競わせてはじめて生じるもの。最初から戦わなければ勝敗そのものが存在しない。
たとえば、同じ時期に入社し同じように仕事をしてきた同僚なのに、なぜか実力に差がついてしまっている。けっしてサボっていたわけではないのに、同じ年代の人と比べて収入が低い。これらは負けを意味するのだろうか。
そもそもビジネスにおいて、はっきりと勝ち負けがわかる例は少ない。たしかに売り上げ額のように具体的な数値で勝敗があきらかになることはある。でもそれは偶然の結果かもしれない。つまり、実力の差ではない。
現実から目を背けろというのではない。露伴が言うように、自分が勝負をしかけるのはあくまで自分自身に対してだ。自分のライバルは自分自身でなければならない。
売り上げ額にしても収入にしても、自分をライバルにする──すなわち、「もっともむずかしい事は自分を乗り越える事さ」と、過去の自分に勝つことを目標にすればいい。達成すれば励みになるし、そうでなくても嫉妬や挫折からは無縁でいられる。
⑲なら問題はねーじゃあねーか
仗助がオートバイで敵の攻撃から逃げのびようとするが、なぜか速度が下がっていく。敵が燃料タンクに穴を空けていたからだ。仗助は一瞬うろたえるが、すぐに平常心を取り戻す。
な~~~んだ……! ビックリさせるぜ…ガソリンがないだけか………なら問題はねーじゃあねーか
問題を細分化してから対処する
オートバイの速度が落ちれば仗助は敵に攻撃される。まさしくピンチ。だが仗助はあわてない。仗助にとってガソリンがないことは問題ではない。故障して走行不能になることが問題なのだ。
このように、トラブルが発生したときは、問題を細分化してみることだ。
仗助の場合、ガス欠も致命傷にはちがいなかった。手をこまぬいているわけにはいかなかった。だから口では「問題なし」と言いつつ、実際は手を打っていたのだ。
たとえば、誰かがやっているだろうとメンバー全員が思い込み、重要なタスクが手つかずのままだった。それが納期の直前に発覚。そんなときも、問題を小分けにしてみる。いまから数時間かければ半分だけ仕上げられる。クライアントに率直に相談すれば納品は半分でいいはずだから、とりあえずはそれでしのぐ。残り半分は数日かかりそうなので、その旨を連絡したあと、別のメンバーに手伝ってもらい完成させる。そんなふうに有効な対策が講じられるはずだ。
問題のない部分を「問題なし」として状況から切り離していけば、本当の問題はどんどん小さくなっていく。小さくなれば対策も立てやすい。
問題があっても「なら(自分が何とかするから)問題ねーじゃあねーか」といって事態に対処する。これを心がけたい。
⑳だが断る
露伴が敵の術中にはまってしまう。そばを通りかかった仗助に声をかけ、うまく誘い込めば逃がしてやると敵は言う。露伴はいったんその言葉に乗るそぶりを見せるが、敵の思惑ははずれる。
だが断る この岸辺露伴が最も好きな事のひとつは自分で強いと思っているやつに「NO」と断ってやる事だ…
ピンチから得られるものを考える
この露伴の言葉は、『ジョジョ』でもっとも有名なセリフかもしれない。
露伴にとって仗助は仲間というわけではないから助ける義理はなく、敵の申し出を受け入れるほうが得になる。それなのに、逆に自分を窮地に追い込む言動をとっている。つまり、ピンチを脱するより優先度の高いこと(相手の鼻をあかす)が露伴にはあるわけだ。
窮地から逃れることが最優先課題、すなわち目下の〈目的〉であったとしても、広い視野を持てば〈手段〉にできる。つまり、仕事の危機を乗り切ることで何かを得られないかと考えるのだ。
何かとは? 自分の行動力や精神力に対する自信。トラブルに対応するノウハウ。そして、まわりからの信頼。苦い経験をすることで、そういったものが自分の血肉になるのではないか。
ルーチンワークの作業に従事しているなら、失敗をせずコトを進めるのは当然だ。トラブルは失点になる。けれども実際は「過去に前例のない仕事」「やり方も到達点も見えない案件」に関わるケースも多い。そうなると、問題の起こらないプロジェクトなどないといえる。絶対にゴタゴタは発生するのだ。
自分の会社やクライアントに大きな実害を出さないのであれば、ピンチに陥るのもじつは悪くない。もちろん、渦中にいるときはとてもそんな心境になれないけども、明けない夜はない。いつか笑えるときがくるはずだ。
ピンチに飲まれるのではなく、逆に利用してやる。そんな気概を持つ。訪れた危機に「だが断る」とNOを突きつけてやろう。
スタンド使いは結果を出せる精神力の持ち主
「なんだ、精神論ばかりではないか。もっと具体的なノウハウはないのか」。この記事を読んでそう思われたかたもいるかもしれない。
だが、『ジョジョ』のセリフから読み取れるものが、心構えとか心の持ちようになるのは当然。なぜなら、スタンドとは持ち主の精神力を“見える化”したものだからだ。
『ジョジョ』で描かれるのはスタンドという特殊能力による応酬だ。ところが、勝敗の決め手になるのは、スタンド能力の優劣よりも、それを操る者の判断力や行動力なのだ。
彼らの心のありようはボクたちもビジネスシーンで応用できる。それは仕事で成果を上げて社会で生きる残ることに役立つはず。
今回は厳選して20個に絞ったが、まだまだ仕事に使えるセリフが『ジョジョ』にはある。そんな観点からマンガを読み直したり、アニメを楽しんだりしてはいかがだろうか。
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