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〈ムカデ人間〉シリーズをひとことで言えば“クソッたれ”映画

ホラー

記事のタイトルを見て「まあ、お下品!」と思った方は、ちょっと待っていただきたい。これは作品を罵倒しているのではなく、あらすじを端的に表わしているのだ。

説明しよう。

ある人のお尻と、別の人のお口を縫い合わせてくっつける。立ち上がって移動できないよう、足の腱は切断しておく。この処置を3人ほどの人間に行なえば、あたかもムカデが這っているように見える。だから「ムカデ人間」。そして、この状態では、前の人の排泄物がそのまま後ろの人の食糧となる。だから「クソったれ」。

これで記事のタイトルの真意がおわかりいただけたはず。

それでも「やっぱりお下品ざます」とお思いの方は、お帰りいただいて結構だ。一方、ここまで読んで興味を持たれた方。そんな選ばれし人たちに向けて、本シリーズの見どころを紹介していこう。

シリーズ1作目は“ファンタジー”

本シリーズを一般的な解釈でジャンル分けすれば「ホラー」であろう。だが、「みんなの夢や空想を具体化した物語」をファンタジーと呼ぶなら、本作は紛れもない“ファンタジー”だ。

もちろん、誰もが「お尻とお口をくっつけたい」と夢想しているわけじゃない(そういう人がいてもかまわないが)。

ムカデ人間の材料(つまり生きた人間)をどうやって調達するのか。材料が逃げないよう、どのような工夫を施すのか。警察からの追求をどうかわすのか。捕えられた材料の運命は?

本作は、「もしもそんな狂気じみた妄想をし、実行に移したら?」という仮説を映画にしたものだと思えばいい。

べつにムカデ人間を作ることに興味がわかなくても、狂人の蛮行がどのように行なわれ、そしてどう破滅していくのか。それをシミュレーションすることには食指が動く。そういう人は、大いに楽しめるはずだ。

シリーズ2作目は“ドキュメンタリー”

シリーズ2作目でも、「もしも人のお尻とお口をくっつけてつなげたら?」というコンセプトは踏襲される。ただ、2回目ともなれば、この発想そのもののインパクトは弱い。

そこで本作では描写を過激にしている。前作でなんとなく誤魔化していた“部分”もしっかり描き出す。いや「ひねり出す」のほうが適切か(お尻から出るものだから)。

この「描写の過激さ」はよく指摘されることだ。制作者の意図したものではあると思う。しかし、過激さだけに着目するのは、もったいない。

2作目のポイントは登場人物がみんなおかしいことだ。主人公が常軌を逸しているのは誰でもわかるが、程度の差はあっても、被害者さえもどこか狂っている。だから、ムカデ人間にされてもあまり同情しない。観ている者は、淡々と事態の推移を見守るだけだ。

1作目と違って、ストーリーらしいものはない。だから、殺人をひたすら記録したスナッフ・フィルムを見せられている感覚を覚える。

ただただ醜悪でしかない作品だが、醜悪さを徹底的に追究している。その創作姿勢に目を向けてみると、本作をより堪能できるはずだ。

『1』と『2』のどちらを観るべきか?

私個人の話をすれば、じつは2作目のほうを先に鑑賞した。「1作目は描写が生ぬるい」という評価を目にしていたからだ。真剣に観るようなシロモノではないが、どちらか一方を選ぶとすれば、2作目だろうと判断した。

しかし、2作目を観たあと、1作目も観たくなった。2作目は全編に狂気が漂うのは魅力だが、冷静に考えると「知性が感じられない主人公にこんな犯行は可能なのか?」「職場で材料を調達しているのに露見しないのはなぜか?(主人公は地下駐車場のガードマンをしている)」などの疑問が頭をよぎる。つまり、リアル志向の2作目もけっこうツッコミどころが多いのだ。

2作目のほうが1作目よりもクォリティが高いわけではなく、“ドキュメンタリー”と“ファンタジー”というジャンルの違いでしかない。その点をふまえて観る作品を選べばよいだろう。みずからの「グロ耐性」を判断基準にしてもいい。

もちろん、両方を鑑賞するのが理想であることは言うまでもない。

©2009 SIX ENTERTAINMENT

夜見野レイ

夜見野レイ

このサイトでは、ホラー作品のレビューを担当。幼いころ、テレビで最初に観た映画がホラー作品だったことから無類のホラー好きに。ガールズラブ&心霊学園ホラー小説『天使の街』シリーズをセルフパブリッシングで執筆。ライターとしては、清水崇・鶴田法男・一瀬隆重・落合正幸・木原浩勝の各氏にインタビュー経験を持つ(名義は「米田政行」)。

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コメント

    • ぜろなみ
    • 2017.03.02 9:00pm

    あけましておめでとうございます!!!!!
    2017年最初のコメントとなります!ぜろなみです!!

    いきなりですが、ひとつ質問が!ぎゃふん工房さんではバイオ7のレビューを楽しみにしていたのですが!
    まだプレイされてないのでしょうか!?
    どうか!バイオ7の考察をして欲しいと思っております^^

    さて!『ムカデ人間』!!
    博士が若本さん吹き替えな事もあってかなり楽しめた作品です!w

    そーだ!私は変態だ~~~!!のインパクトもすごいw
    唯一の日本人キャストがなかなか頑張っているのですが、なぜ最後あんな事になってしまったのか
    ツッコミ所はかなりある、お馬鹿映画として楽しめました!
    グロそうという事で嫌厭されてる方もいるかもしれませんが、グロはあまりなく
    ただただマッドでサイコな発想の気持ち悪さ、というのが主題な作品だと思いますね!

    博士がなぜあそこまでムカデ形態にこだわるのか、とか掘り下げがあればもっと良かったです。

    2はまだ観てないのです!

    でも、こういう作品はあっても良いと思う派ですので応援していきたいと思っています!

    • ぜろなみさん、こんばんは!

      おっしゃるとおり、PlayStationVRが未だに入手できていないのです。4月ごろにはもう少し購入しやすくなると聞きましたが、どうなんでしょう?

      『バイオ7』は必ずプレイしますし、レビューもするつもりですから、気長にお待ちいただけると嬉しいです。

      『ムカデ人間』はたしかにそこまでグロくないですね。日本人ヤクザが、観ているこちらの予想通りに活躍したら、それはそれで違うような気もするので、あの展開は納得できる気がします。

      『2』もまた第1作目とはテイストが違うので、きっと楽しめるはずですよ。

      それでは、今年も引き続きよろしくお願いします。

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ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

〈ぎゃふん工房〉は瑞乃書房株式会社 代表取締役 米田政行のプライベートブランドです。このサイトでは、さまざまなジャンルの作品をレビューしていきます。

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