『新劇場版』の謎解きも、いよいよ最終段階……いや「概括の段階」に入った。
いまだに解いていない大きな謎は、『破』から『Q』に至る14年の間になにがあったか、そして『シン・エヴァンゲリオン劇場版』はどういう内容になるか、ということだ。
とはいうものの、これらの謎を解くための材料はほとんどなく、解明するといっても妄想に近いものになる。
『ヱヴァ』においては、謎解きは必ずしも“正解”である必要はない。それぞれの心のなかにある〈真実〉に近づければいいのだ。
では、始めよう。『ヱヴァ』をより深く味わうための最後の考察を。
[2019年1月27日更新]「『Q』には〈メタフィクション〉を踏まえた描写がある」を追加しました。
[2019年7月6日更新]『シン・エヴァ』アバンについてはこちらで考察しています。
[2019年7月20日更新]『シン・エヴァ』特報2についてはこちらで考察。
本記事は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開前に書かれたもので、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序/破/Q』のネタバレが含まれています。また、コメント欄にて『シン・エヴァ』の内容に触れている場合がありますので、あらかじめご了承ください。本編鑑賞後の感想はこちら→『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[レビュー編]なるべくネタバレなし感想と暫定的答え合わせ
もくじ
空白の14年間の謎を解く
『破』から『Q』に至る間に14年が経過している。その事実は自明であるが、念のため確認しておこう。
事情がわからず困惑する碇シンジに対し、式波・アスカ・ラングレーはこう説明する。
あれから
14年たってるってことよ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
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〈サードインパクト〉はゲンドウの実験だった
では、14年の間になにがあったのかを探るために、『破』のラストで起こったことを検証してみよう。
碇ゲンドウの目的は虚構世界からの脱出であり、そのために必要なのが〈インパクト〉であった。
ただし、『破』の段階では、ゲンドウは計画を最後まで進めるつもりはなかったようだ。
ああ 我々の計画に
たどりつくまで あと少しだ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
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ここでは、〈初号機〉を覚醒させることだけが目的だったのだろう。ネルフ型のエヴァは搭乗者の意志を読みとる機能を持っている。その機能を使って〈ガフの扉〉を開けるかどうか。ゲンドウはそれを試したのではないか。その試行錯誤が『Q』におけるゲンドウの企みにつながっていると考えられる*1。
*1:[2018年9月8日追記]ただ、ゲンドウがどうやって意図的に初号機を覚醒させたのかは、検証の必要があるだろう。
[2019年1月7日追記]『序』において、ゲンドウと冬月が次のような会話を交わしている。
(冬月)お前の息子は予定通りの行動をとったな
(ゲンドウ)ああ、次はもう少しレイに接近させる
初号機の覚醒は、シンジとレイの関係性が鍵となっていた。じつは、その関係性さえも、ゲンドウによって仕組まれたものではないか。もちろん、ふつうはそんなことは不可能だが、システムに多少なりともアクセスできるなら可能なように思える。なお、鶴巻和哉監督はこのやりとりについて「庵野さんはおそらく深くは考えていないはずですよ」と語っている(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 全記録集』)。
〈ゼーレ〉は先手を打ってカヲル遣わした
『破』の終盤、カヲルがプラグスーツを身につけ、〈エヴァンゲリオンMark.06〉に乗りこもうとする様子が描かれている。
時が来たね
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
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このとき、いよいよ〈ゼーレ〉の計画が発動したと考えられる。注意すべきなのは、これは〈初号機〉の覚醒する前ということだ。
〈ゼーレ〉はゲンドウたちの企みに気づいていた。だから、あらかじめ手を打ち、カヲルを遣わしたわけだ。
さて、〈ゼーレ〉の計画とはすなわち〈人類補完計画〉だが、その手順はどんなものだったのか?
〈カシウス〉を手にした〈Mark.06〉がセントラルドグマに降下し、〈リリス〉の〈ロンギヌス〉を抜く。〈ロンギヌス〉と〈カシウス〉で〈人類補完計画〉を発動。そんな段取りだったのでは?
ただ、〈ゼーレ〉にも誤算があった。予想より早く、〈初号機〉が覚醒してしまったのだ。〈ゼーレ〉の望まない〈サードインパクト〉が発生したため、それを阻止するために、〈カシウス〉を使わざるをえなくなってしまったわけだ。
[2020年4月11日追記]さすがの〈ゼーレ〉も、ゲンドウがどのタイミングでコトを起こすかまでは予知できなかったのではないか。その観点から最新の考察では別の可能性を挙げている。くわしくは「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その4]13番目の使徒に堕とされる」を参照。
カヲルはゲンドウに協力するつもりだった
『Q』において、カヲルはいつの間にかネルフ本部にいた。これも小さい疑問だ。
『破』の終盤、〈Mark.06〉に搭乗していたとき、おそらくカヲルは〈ゼーレ〉の意向に逆らうつもりだった可能性が高い。
根拠となるセリフを見てみよう。
今度こそ君だけは
幸せにしてみせるよ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
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〈ゼーレ〉の意向に従って計画を実行すれば人類は滅亡するのだから、シンジを幸せにすることにはならないだろう。
では、具体的になにをしようとしていたのか。まったくの不明で想像するしかないが、もしかしてカヲルはネルフ(ゲンドウ)に協力するつもりだったのかもしれない。あるいは、協力するフリをして、チャンスを待つつもりだったか。そう考えると、『Q』でカヲルがネルフ本部にいたことの説明がつけやすい。
そもそも〈カシウス〉を〈初号機〉の覚醒を止めるために使った時点で、〈ゼーレ〉の計画は中止せざるをえなかっただろう。そうなると、カヲルが〈Mark.06〉に乗っている理由も、とりあえずは失われたはずだ。だから、カヲルはいったんは〈Mark.06〉から降りたのではないか。
カヲルの存在は、ゲンドウでさえこのときまで知らなかったはずだ。あまつさえ、ネルフにとってカヲルは意味不明の存在にちがいない。
しかし、なんらかの方法でカヲルが〈使徒〉であることがわかった。そこで、安全のために〈DSSチョーカー〉を首に付けたのではないだろうか。
〈DSSチョーカー〉について、カヲルはこう語る。
もともとは僕を恐れたリリンが
作ったモノだからね『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
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〈Mark.06〉はゲンドウが改造した
さて、セントラルドグマには「リリスの結界」が張られ、14年前の状態がそのまま保存されていたらしい。
もうすぐリリスの結界だ
メインシャフトを
完全にふさいでいて
この14年間
誰の侵入も許していない『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
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セントラルドグマが『破』の直後の様子をそのまま留めているのであれば、14年前になにがあったのかを探る大きなヒントになる。
セントラルドグマには〈Mark.06〉の残骸が保存されていた。この点についてカヲルは次のように説明している。
(シンジ)
ん? あれはエヴァ?(カヲル)
自律型に改造され
リリンに利用された機体の
成れの果てさ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
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さて、「自律型に改造」は、いつ行なわれたのだろうか。ゲンドウですら直前までその存在を知らなかった〈Mark.06〉を、ネルフのスタッフがわずかな時間で改造できたとは考えにくい。『破』のラストでカヲルが月から降下してきたときから、短く見積もって数日、普通に考えれば数か月はかかるのではないだろうか。
ということは、〈Mark.06〉を「自律型に改造」した目的は、使徒襲来などの切迫した状況に対応するためではないと考えられる。事前に準備された計画を実行するために行なわれたはずだ。
ところで、カヲルの「リリンに利用され」「成れの果て」という表現には、揶揄的なニュアンスが含まれているように思う。つまり、〈Mark.06〉の使われかたはカヲルの望むものではなかったということだ。
カヲルの望まない使われたかたとは?
『Q』でカヲルはネルフの〈フォースインパクト〉を防ごうとしていたことから推理すると、〈Mark.06〉が〈サードインパクト〉を起こすために使われることは望んでいなかっただろう。逆に、〈Mark.06〉が〈サードインパクト〉を阻止するために使われたのなら、「〈サードインパクト〉を止めるために奮闘した機体さ」などと表現するのではないだろうか。
ようするに、結果的には
〈Mark.06〉は〈サードインパクト〉を起こすために使われた
ということになる。
では、〈サードインパクト〉を起こしたのはだれか? これはもうゲンドウしかあり得ない(ゲンドウの目的は〈インパクト〉を起こすことである)。したがって、「自律型に改造」したのもゲンドウ(ネルフ)ということになる。
ちなみに、〈ゼーレ〉が〈Mark.06〉を改造した可能性はあるだろうか? そもそも〈Mark.06〉は〈ゼーレ〉の造った機体なのだから、わざわざ「改造」する必要はない。最初から「自律型」で造っておけばよいからだ。やはりゲンドウが改造したと考えるほうが自然だ。カヲルの「リリンに利用された」という表現にも符合する。
槍はアスカが刺した
〈Mark.06〉には2本の槍が刺さっていた。これも確認しよう。
シンジとカヲルがセントラルドグマに降りていくと、〈Mark.06〉に槍が刺さっているのが見える。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
この槍はだれが刺したのだろうか? 〈Mark.06〉がみずから刺しているようにも、何者かに刺された槍を抜こうとしているようにも見える。
シンジが〈エヴァンゲリオン第13号機〉で槍を抜いたとき、〈Mark.06〉が活動を始めている。その様子を見てアスカはこう叫ぶ。
まずいっ!
第12の使徒がまだ生き残ってる『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
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このセリフから〈Mark.06〉は14年前にすでに〈使徒〉だったと考えられる。また、〈Mark.06〉が動き出した直後に「生きている」と判断していることから、アスカはすでに〈使徒〉と化した〈Mark.06〉と戦った経験があると思われる。
となると、〈Mark.06〉に槍を刺したのはアスカである可能性が高い。もしかすると、このとき真希波・マリ・イラストリアスも参戦していたかもしれない。アスカが〈Mark.06〉に、マリが〈リリス〉にそれぞれ槍を刺したと考えても矛盾は生じない。
『破』のラストの時点では稼動できるエヴァは存在しなかったが、数か月もあれば、機体を修復することはできただろう。もちろん、アスカも復活したわけだ。
ただし、〈リリスの結界〉の存在は気になるところだ。〈結界〉がいつ張られたのかは不明だが、おそらく槍が刺さった直後だろう。遠距離から槍を投擲すれば、〈結界〉のなかにアスカたちが閉じこめられることはないはずだ。
〈Mark.06〉が使徒になったのはバグ
〈Mark.06〉が第12の使徒になっていたのは、だれかの意図によるものだろうか?
〈Mark.06〉が〈使徒〉になることで得をする人物や組織は存在するだろうか。
もっとも可能性のありそうなのはゲンドウだが、さすがにエヴァを〈使徒〉にするような芸当は無理だと思われる(カヲルを〈使徒〉にするのとは意味が異なる)。
〈使徒〉とはコンピューターのバグであり、〈Mark.06〉が〈使徒〉になったのも想定外だったと考えられる。3号機と同様に、気づいたら〈使徒〉と化していたのではないだろうか。
[2019年4月13日追記]ただ、意図的に〈使徒〉にすることは無理でも、「意図的にシステムをバグらせる」のはゲンドウなら可能なように思える。〈初号機〉や〈第13号機〉が覚醒したのも、いわばバグといえないだろうか。
[2019年8月18日追記]〈Mark.06〉が第12の使徒になった点については、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト」であらためて考察している。
槍が2本とも〈ロンギヌス〉だったのは勘違い
セントラルドグマにあった槍は2本とも〈ロンギヌス〉だった。そのため、カヲルの思惑ははずれることになった。
では、いつすり替わったのだろうか?
セントラルドグマは〈リリスの結界〉によって封印されていた。『破』から『Q』の14年の間に、だれかがすり替えたとは考えにくい。さすがのゲンドウもそこまでは無理だろう*2。
*2:[2017年11月26日追記]ただ、カヲルが「おかしい 2本とも形状が変化して そろっている」と言っているのはいささか気になる。たしかに〈ロンギヌス〉も〈カシウス〉も状況に応じて形状が変化する様子が劇中にも描かれている。もしかすると、両者はもともとはおなじ槍で、形状が変化することで〈ロンギヌス〉になったり〈カシウス〉になったりするのではないか。だとすると、ゲンドウがすり替える(〈カシウス〉を〈ロンギヌス〉に変化させる)のも可能のように思える。
[2019年1月21日追記]コメント欄にて「『破』のエンドロールのあとカヲルが初号機に向かって投げた槍は、〈カシウス〉に擬態した〈ロンギヌス〉である」という説を教えていただきました。
[2019年4月13日追記]のちに述べるように、〈リリスの結界〉を張ったのが〈ゼーレ〉だとすると、槍を変化させたのも〈ゼーレ〉の可能性がある。ただ、〈ゼーレ〉がそうする理由は検証の必要があるだろう。
となると、最初から槍は2本とも〈ロンギヌス〉だったと考えられる。
だから、問題は「いつすり替わったのか?」ではなく、「なぜカヲルはセントラルドグマの槍が〈カシウス〉と〈ロンギヌス〉だと誤解していたのか?」ということになる。
あらためてこの問題を解いていこう。
ヒントとなるのは、先に見たカヲルのセリフだ。〈Mark.06〉についてこう説明している。
自律型に改造され
なぜ、これが謎を解く鍵となるのか?
ここで、〈カシウス〉と〈ロンギヌス〉の使われかたをおさらいしよう。
〈カシウス〉は、〈初号機〉の活動を止めるために使われている。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー
一方、〈ロンギヌス〉は〈リリス〉の活動を止めている。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
©カラー・GAINAX
また〈第13号機〉の活動を停止させるのにも〈ロンギヌス〉は使われている。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
〈カシウス〉も〈ロンギヌス〉も、エヴァなどの活動を停止させる働きを持つが、両者には微妙にちがいがある。
それはなにか?
〈Mark.06〉は、ゼーレ型のエヴァだ。〈リリス〉はエヴァではないが、システムの創造者たる〈ゼーレ〉と関係の深い存在といってよいだろう。〈第13号機〉は、ゼーレ・ネルフのハイブリッド型。そして、〈初号機〉はネルフ型のエヴァだと結論づけた。
以上をふまえると、
〈カシウス〉はネルフ型エヴァに有効
〈ロンギヌス〉はゼーレ型エヴァに有効
と考えられるのだ。
もうおわかりだろう。
〈Mark.06〉は、本来はゼーレ型だから、その活動を止めるためには〈ロンギヌス〉が使われるはずだった。しかし、「自律型に改造され」たことでネルフ型になった。だから、〈ロンギヌス〉ではなく〈カシウス〉を刺したにちがいない——と、カヲルは誤解したのではないだろうか?
〈Mark.06〉がほんとうにネルフ型になっているかは不明だが、いずれにしても実際に使われたのは〈ロンギヌス〉だった。その事実をカヲルは知らなかったのだ(ゲンドウが嘘の事実をカヲルに告げていた可能性もある)。
だから、『Q』の悲劇が起こってしまったわけだ。
[2019年8月18日追記]〈槍〉がどうやってすり替わったのか、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト」において徹底的に追究している。
セントラルドグマで〈インフィニティ〉が生み出された
『Q』では、エヴァの形をした巨大な物体の残骸が街のあちこちに見られた。シンジたちがネルフ本部からセントラルドグマに降りてゆく際、シャフトに群がるようにしてへばりつく“エヴァの形”をしたモノが描かれた。これをカヲルは次のように表現している。
ああ 全て
インフィニティのなり損ないたちだ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
街にある残骸も「なり損ない」なのか、それともいちおうは〈インフィニティ〉の完成形であるのかは不明だ。いずれにせよ、〈サードインパクト〉が起こったときに〈インフィニティ〉が発生したと思われる。
14年前、この〈インフィニティ〉と人類の壮絶な戦いが行なわれた。ネルフ本部に残る破壊の跡がそれを物語っている。
では、〈インフィニティ〉と交戦したのはだれか? 〈ネルフ〉以外に武力を持つ組織として国連軍が考えられる。セントラルドグマの〈リリスの結界〉のなかに、国連軍の兵器の残骸が確認できる。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
では、鈴原トウジや相田ケンスケ、洞木ヒカルなど、一般の人々はどうなったのだろうか。
先に考察したように、『破』のラストに起きた〈ニアサードインパクト〉から〈サードインパクト〉まで数か月の猶予がある。トウジたちは、街の人たちとともに避難した可能性もある(余談だが、旧劇場版では〈サードインパクト〉の前にシンジのクラスメイトは疎開している。フィルムではカットされているが、画コンテにその描写がある)。
[2019年8月18日追記]〈インフィニティ〉については、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト」にて、さらにくわしく考察している。
14年前、シンジは負の感情を増幅した
空白の14年間でもっとも重要な問題は、シンジはなにをしたのか、ということだ。
ヴィレのメンバーたちがシンジに冷たく接するのも、14年前のシンジのふるまいに原因があると思われるからだ。
カヲルの言葉を信じるなら、『破』のラストの〈ニアサードインパクト〉から、『Q』の冒頭で回収されるまで、シンジは〈初号機〉のなかに取りこまれていたらしい。ふつうに考えれば、シンジは14年もの間、なにもしていない(なにもできなかった)ことになる。
カヲルのセリフはそのことを裏づけている。
君が初号機と
同化している間に起こった——
サードインパクトの結果だよ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
しかしながら、ヴィレのメンバーが強く非難せざるを得ないような“行動”をシンジはした——そう考えなければつじつまが合わない。
「〈初号機〉と同化」した状態でシンジはなにができたのか。〈初号機〉を動かしてなにかしたのか? おそらくちがうだろう。
ここで思い出したいのが〈初号機〉の機能だ。搭乗者の想いを読みとることができる。この「想い」とは、本人が自覚しているものとは限らない。意識していないもの、深層心理にあるようなものまで読みとってしまうのではないか。
『破』のラスト、〈初号機〉が覚醒する直前にシンジは何と言っていたか。
僕がどうなったっていい
世界がどうなったっていい
だけど綾波は…
せめて綾波だけは
絶対 助ける!『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
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もちろん、シンジの本意は「綾波を助ける」ことであって、ほんとうに「世界がどうなったっていい」とは思っていなかっただろう。
だが、〈初号機〉はその負の感情ともいうべき想いも読みとってしまった。
この点は、おそらくヴィレのメンバーたちには周知の事実なのだろう。赤城リツコはシンジの首に付けた〈DSSチョーカー〉についてこう説明する。
エヴァの搭乗時
自己の感情に飲み込まれ
覚醒リスクを抑えられない事態に
達した場合
あなたの一命をもって
せき止めるということです『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
シンジが「自己の感情に飲み込まれる」ことで〈初号機〉は「覚醒」し、〈インパクト〉が起こってしまうわけだ。
以上をふまえると、〈サードインパクト〉がどのように起こったか。次のような想像もできる。
ゲンドウによって自律型に改造された〈Mark.06〉がセントラルドグマに降下していく。
青葉「〈エヴァMark.06〉の起動を確認!」
ミサト「なんですって!? いったいだれが……まさか……碇指令?」
リツコ「おそらく目標は〈リリス〉ね」
ミサト「碇指令は〈サードインパクト〉を起こすつもりなの?」
リツコ「だけど、〈サードインパクト〉には〈トリガー〉が必要。〈初号機〉が……」
ミサト「シンジくん……?」
リツコ「でも、彼……止めようとするかしら? 世界の破滅を……」
〈カシウス〉が刺さり、行動を停止している〈初号機〉。その前にゲンドウが立っている。
ゲンドウ「さあ、シンジ。約束の時だ。ともにユイのもとにゆこう」
〈初号機〉が再び覚醒。胸に刺さった〈カシウス〉を抜こうとする。
マヤ「やめて! シンジくん! あなたはこんなこと望んでいないはずよ!」
〈ガフの扉〉が開き、世界が崩壊しはじめる。〈サードインパクト〉の続きが始まったのだ。
アスカ「バカガキ……」
ミサト「いいアスカ、必ず〈Mark.06〉を阻止するのよ!」
アスカ「ミサトも病みあがりに軽く言ってくれちゃって……コネメガネ! 援護射撃たのむわよっ!」
マリ「合点、承知!」
こうして、アスカやマリが行動を始めるのと同時に、ネルフ(ゲンドウ)と国連軍との戦闘も展開していったのだろう。
このときミサトたちは、すでにヴィレあるいはその前身の組織に身を置き、国連軍と共闘したと考えられる。
国連軍やミサトたちが戦った相手は、ゲンドウというより〈インフィニティ〉だったというべきだろう。
ところで、『Q』において、槍を抜こうとしたシンジに対し、アスカがこう叫ぶ。
ガキシンジ また
サードインパクトを起こすつもり?『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
〈リリス〉に刺さった槍を抜くことで〈インパクト〉が起こるということは、〈リリス〉に〈ロンギヌス〉を刺したことで、〈サードインパクト〉が中断したと考えられる。同時に〈インフィニティ〉も活動を停止したのだろう。〈使徒〉と化した〈Mark.06〉も〈ロンギヌス〉によって仕留められた(実際は殲滅していなかったわけだが)。
最終的に、アスカやマリによって〈リリス〉の首は切り落とされ、〈リリス〉は活動を一時停止。
〈インパクト〉の〈トリガー〉になりうる〈初号機〉は封印され、ミサトたちの手によって宇宙に放出された*3。
空白の14年間に、そんな出来事があったと想像できる。
*3:[2019年4月13日追記]コメント欄にて、「〈初号機〉を宇宙に放出したのは〈ゼーレ〉ではないか」とのご指摘をいただきました。たしかに、「〈ゼーレ〉はインパクトを望んでいない」という当ブログの説と、『Q』の序盤の描写をふまえると、その可能性のほうが高いかもしれません。なお、〈初号機〉を宇宙に放出する動機は、【〈ゼーレ〉+ネルフ(ゲンドウ)】、【ヴィレ+国連軍】の両方にあると考えられます。
[2019年8月18日追記]〈サードインパクト〉時にセントラルドグマでなにが起こったのか、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト」にて、さらに深く追究している。
『シン・エヴァ』で〈ファイナルインパクト〉が起こる
ここで、完結編となる『シン・エヴァ』の内容がどうなるか……いや、どうあるべきかを検討してみよう。
アヤナミレイの争奪戦が起こる?
『Q』のラストに流れる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の予告では〈ファイナルインパクト〉という言葉が登場することから、ゲンドウが〈インパクト〉を起こすのはほぼ確実だろう*4。
*4:[2019年4月13日追記]余談だが、「ファイナルインパクト」は「これでインパクトは最後になる」のを知っていないと不可能な表現だ。劇中の人物なら「フィフスインパクト(5回目のインパクト)」と言うだろう。したがって、予告でナレーションをしている人物(ミサト)は、メタフィクションの世界の人間である、という想像もできる。そもそもナレーションをしているのがミサトという保証もない(「サービス! サービス!」のセリフはとてもフィクションのなかにいる人物が発するものとは思えない)。
ただ、どうやって起こすのかは想像できない。
〈インパクト〉には、それを起こすもの(システムを制御できるもの)と〈トリガー〉が必要だ。ゲンドウは、いずれも持っていないように思われる。
新しいエヴァ〈14号機〉が造られ、それが〈インパクト〉を起こすのかもしれないが、それでは『Q』と同じ展開でおもしろくない。
また、〈インパクト〉には〈魂〉を持つ者が必要だが、ゲンドウのもとにはその資格のある人物がいない(ように思える)。『Q』で「魂の場所」が変わりつつあるアヤナミレイがその役目を果たすのかもしれない。もしかしたら、『シン・エヴァ』はこのアヤナミレイの争奪戦が展開されるのではないか……。
さらに想像を膨らませれば、『Q』で〈リリス〉が失われているため、〈トリガー〉や〈魂〉は不要で、ゲンドウの持つ〈ネブカドネザルの鍵〉だけでシステムを制御できる可能性もある。その場合、ゲンドウは手持ちの道具だけで〈ファイナルインパクト〉を発動することができるのかもしれない*5。
*5:[2019年1月27日追記]『序』『破』で活躍した綾波レイが『シン・エヴァ』で登場する可能性がある(「綾波レイは『シン・エヴァ』で復活する」)。綾波レイが〈ファイナルインパクト〉に関わるのかもしれない。ただ、当ブログの考察では、綾波レイが復活するのは〈ファイナルインパクト〉が成功したあとになる。
[2019年8月18日追記]〈ファイナルインパクト〉におけるゲンドウのふるまいについては、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト」で、さらに深い考察を行なっている。
ミサトvsゲンドウの戦いが描かれる
『Q』の展開をふまえると、ヴィレ(ミサト)vsネルフ(ゲンドウ)の戦いが展開することはまちがいない。
そもそもミサトたちはなにを目指しているかといえば、〈インパクト〉を阻止しようとしているのは確実。世界は『序』『破』とくらべて一変してしまったが、いまの世界を維持しようとしているのだ。
ここで『破』において、アスカが3号機に乗る前にミサトがかけた言葉に注目したい。
この世界は
あなたの知らない面白いことで——
満ち満ちているわよ
たのしみなさい『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー
ミサトは、「自分だけでなく、世界に目を向け、それがどんなものであっても肯定する・受け入れる」という価値観を持っているのだろう。これは制作陣の世界観・人生観を表わしているようにも思える。変わり果てた世界を安易に変えようとしたシンジとは対照的だ。
ミサトの考えかたやふるまいは、『新劇場版』のテーマにつながるものといってよい。
ミサトとゲンドウが手を組み〈ゼーレ〉と戦う
ところで、ここで視点を変えてみたい。
ミサトは、この世界を破滅させようとしているゲンドウや〈ゼーレ〉の企みはなんとしても阻止しなければならない。これは容易に想像できる。
しかしながら――。
「『新劇場版』で描かれている世界はすべてコンピューターによるシミュレーション」だが、『Q』の時点でも、この“真実”をミサトたちは知らない可能性が高いのだ。〈ゼーレ〉がメタフィクションの存在であることは知るよしもないだろう。
さらに、ゲンドウが〈ゼーレ〉と対立していることも把握していないと思われる。劇中の人物でゲンドウの真意を知っているのは、おそらく冬月だけだからだ。
ゲンドウは〈ゼーレ〉の計画を止めようとしているのだから、その部分において、じつはゲンドウとミサトたちは利害が一致しているのだ。
これが『シン・エヴァ』でどう消化されていくのか、注目したいところだ。
さらに、『Q』においては、ミサトの「神殺し」という表現にも注意したい。
神殺しの力
見極めるだけよ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
「神殺し」とは、〈ゼーレ〉がこの世界に手出しができないようにすることで、これはゲンドウの目的そのものだ。ここでも「じつはミサトたちと利害は一致している」ことがわかる。
興味深いのは、『Q』においてゲンドウと冬月が交わした会話だ。
(ゲンドウ)
ゼーレのシナリオを
我々で書き換える
あらゆる存在は
そのための道具にすぎん(冬月)
お前の生き様を見せても
息子のためにはならんとするか
私はそうは思わんがな『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
このやりとりを深読みすると、「ゲンドウがシンジに自分の真意を打ちあければ理解を得られるはずだ」と冬月は考えているように思える。つまり、ゲンドウの目的はシンジの利益にもかなっているということだ。
シンジの利益とは、つまり元凶を取り除くこと=〈ゼーレ〉の排除だと考えても不自然ではない。
そう考えると、『シン・エヴァ』は、前半でネルフ(ゲンドウ)vsヴィレ(ミサト)の対立が描かれるが、後半はネルフとヴィレが共闘、共通の敵である〈ゼーレ〉を倒す――ここまでくると妄想そのものだが、そんな展開もありえるのではないかと期待してしまう。
『シン・エヴァ』でゲンドウは虚構から脱出する
〈インパクト〉とは、システムのシミュレーション世界(=『序』『破』『Q』)から脱出するために〈ガフの扉〉を開くことだ。〈インパクト〉が成功すれば、ゲンドウは〈ゼーレ〉のいる世界に行くことになる。
『シン・エヴァ』でこのゲンドウの企みが成功するかどうかは不明だが、もし成功したとしたらどういう展開になるのだろうか? やはりまったくの妄想になるが、興味本位で考察してみよう。
参考にしたいのが、考察の[その2]でも取りあげた『宇宙船レッド・ドワーフ号』だ。
シリーズ9「地球にもどって もっと変!?」三部作では、主人公たちは虚構世界から現実世界への突破を試みる。
現実世界への道を開いているところ。『ヱヴァ』で言う〈ガフの扉〉だ。
『宇宙船レッド・ドワーフ号』
©UK Gold Service 2012
現実世界にやってくると、自分たちはフィクションの世界の住人だったことがわかる。
主人公たちの活躍はDVDにおさめられていた。
『宇宙船レッド・ドワーフ号』
©UK Gold Service 2012
主人公たちのふるまいは、すべて脚本家のシナリオどおりだった。
物語はタイプライターで創られていた。『ヱヴァ』の〈死海文書〉もこういったものかもしれない。
『宇宙船レッド・ドワーフ号』
©UK Gold Service 2012
〈ファイナルインパクト〉が成功し、登場人物たちが現実世界にやってくると、『序』『破』『Q』がまるごと虚構の世界だったことを知る——『シン・エヴァ』はそんなストーリーになるのではないか?
ただ、『宇宙船レッド・ドワーフ号』のように、シンジが『序』『破』『Q』のDVDを手に取り「なんだよこれ!?」のような展開だと、コメディになってしまう。それはそれでアリだとは思うものの、『ヱヴァ』のテイストとは大きく異なるし、われわれの期待するものではない。
『序』『破』『Q』をシミュレーションしている巨大なコンピューターをシンジが発見する――といった描写になるのかもしれない*6。
*6:[2019年1月31日追記]旧劇場版では、〈サードインパクト〉が始まると人類が液体になって消える(LCLに還る)という描写がある。『シン・エヴァ』でもこの表現が踏襲され、やはり人々が液体になっていくが、今回はただ消えるのではなく、みんなが「現実世界」で目を覚ます、といった展開になるのかもしれない。あるいは、液体ではなく、人類の存在が“データ”であることを反映して、デジタル画像の“ブロックノイズ”のように消えていく可能性もあるだろう。ただし、その場合、ゲンドウとゼーレの対立軸、ゲンドウとミサトたちの利害の一致がわかりづらくなるので、あくまで可能性のひとつとして頭にとどめておきたい。
さて、『宇宙船レッド・ドワーフ号』の場合、虚構は300万年後の世界、現実は21世紀の世界になっている。つまり、両者はまったく次元の異なる世界として描かれている。
『シン・エヴァ』が『序』『破』『Q』と「次元の異なる世界」だとすると、『シン・エヴァ』はどのように表現されるのだろうか? いくつかの仮説を立ててみた。
【仮説1】『シン・エヴァ』は『シン・ゴジラ』のような実写
『序』『破』『Q』がアニメ、『シン・エヴァ』が実写となれば、両者が「次元の異なる世界」であることを端的に表現できる。もちろん、全編が実写の映像なのではなく、一部分が実写になっている。そんな想像をしている。
今回の考察が『シン・ゴジラ』と『ヱヴァ新劇場版』との関連性を探るところから始まったことを考えると、このような展開も導き出せる。
アニメ作品のなかに実写が登場するのは、旧劇場版へのセルフ・オマージュのような意味合いも持つ。だから、十分にありうる。
【仮説2】『シン・エヴァ』は『序』『破』『Q』と異なるスタッフで創られるアニメ
『シン・エヴァ』はやはりアニメではあるが、『序』『破』『Q』と「次元の異なる世界」であることを表現するために、これまでとは別のスタッフで制作される可能性もある。つまり作風を変えるということだ。
スタッフといっても、監督陣までは変えなくても、キャラクターデザインやアニメーターなどが異なれば、別のテイストのアニメになり、次元のちがいが表わせるだろう。
『Q』の冒頭は、『破』のラストから14年間も経っていた、という展開でわれわれの意表を突いた。『シン・エヴァ』でも、なにかしらびっくりするような表現がなされることは期待できるだろう。
〈人類補完計画〉もうひとつの仮説
さて、ここからは、謎解きとして成り立っていないことを自覚したうえで、あえて持論を述べてみたい。ここで提唱するのは、次の仮説だ。
〈リリス〉はユイのアバター(分身)である
白い巨人〈アダムス〉は〈ゼーレ〉のアバターだ。〈ゼーレ〉のメンバーが『ヱヴァ』の世界(システム)で活動するためのもの――この点はすでに考察した。
〈リリス〉も〈アダムス〉と同じように「白い巨人」であり、人智を超えた存在といえる。だとすると、〈リリス〉も〈ゼーレ〉のアバターではないかと想像する。
そこで――。
〈リリス〉はユイのアバターである
と、大胆な仮説を立ててみたい。
ただし、この仮説は誤りであることがすでに明白だ。『Q』の画コンテでは、発令所にある〈リリス〉のものとおぼしき首は「巨大な白色化したレイ」となっている。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』
(株式会社カラー)
しかし、画コンテは制作の初期段階でつくられるものだ。「巨大な白色化したレイ」というのは、あくまで暫定的な設定かもしれない。
実際、ゲンドウは〈リリス〉の首に対して「ユイ」への想いをつぶやいている*7。
最後の契約の時が来る
もうすぐ会えるな… ユイ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
*7:[2019年1月26日追記]この直前のカットでは、冬月が「ユイ君。これでいいんだな」とつぶやいている。
また、『ヱヴァ』の世界においては、ユイとレイの顔は同じと考えても問題ないはずだ。
そもそも「巨大なレイ」がどこからわいてきたのか想像もできない*8。
*8:[2019年1月29日追記]画コンテの「レイ」は、『破』で初号機に取り込まれたとおぼしい綾波レイのことだと思っていたのだが、〈綾波シリーズ〉のひとつが〈リリス〉と融合した可能性があることに気がついた。
旧劇場版では、綾波レイのなかにあった〈リリス〉の魂がみずからの肉体に還ることで、外見も綾波レイのそれに変化した。その設定が(劇中には描かれていないものの)新劇場版に踏襲されていると考えることは十分に可能であろう。
Mark.06は「自律型」に改造されたわけだが、具体的にはダミーシステムが搭載されたのだろう。旧劇場版のダミーシステムにレイが使われていたことをふまえると、新劇場版のダミーシステムにも(やはり描写はないが)レイが利用されていると想定してもよかろう。〈綾波シリーズ〉に入っている情報は綾波ユイのものだから、ユイの情報が〈リリス〉に取り込まれたと考えられる。つまり、発令所にある首はレイでもユイでも正しく、当ブログの説とは矛盾しない。
[2019年3月30日追記]ちなみに、「〈リリス〉のものとおぼしき首」がほんとうに〈リリス〉の首なのか、じつは確証はない(画コンテでは〈リリス〉のものであると明記されてはいない)。セントラルドグマの〈リリス〉に首がないのはたしかだし、旧劇場版は〈リリス〉がレイの姿に変化したので、そのように想像しがちだが、制作陣による大いなるミスリーディングの可能性もあるのだ。
いささか苦しいのは承知のうえで論を進めていきたい。
では、「〈リリス〉=ユイのアバター」と考えると、なにが見えてくるか。
まず、『ヱヴァ』の世界にアバターがあるということは、〈ゼーレ〉と同様、ユイは虚構の外の人間ということになる(余談ながら、旧劇場版では、ユイは〈ゼーレ〉の一員である)。
そして、〈リリス〉は『ヱヴァ』の世界を制御している(していた)存在だ。ということは、ユイこそがこの世界を制御している人物だと考えられる。
といっても、大げさなものではなく、世界(システム)の外の世界ではコンピューターを操作しているオペレーターのようなものだろう。『ヱヴァ』の世界では、伊吹マヤのポジションだ。ただ、マヤよりはもうちょっと地位は高く、ユイはシステムを設計・開発した人物かもしれない(マヤというより、リツコの立場というべきか)。
ここで、疑問に思うかたもいるかもしれない。
――ユイはシンジの母親なのだから、ゲンドウなどと同じ、シミュレーションのなかの人間のはず。
劇中の描写を確認しよう。
『ヱヴァ』の世界の人間と一緒に写真に写っている。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
『破』で、ゲンドウとレイが食事をしているシーンで、レイの姿にユイが重なる。ユイとゲンドウが『ヱヴァ』の世界で会話を交わしていたことを示している(ように思える)。
↓
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー
ユイはみずからが実験台となって初号機のなかに取りこまれていく。これも『ヱヴァ』の世界で起こった出来事だと思われる。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
以上の描写から、ユイが『ヱヴァ』の世界、つまりシミュレーションのなかの人間として存在していたことはまちがいない。
そう。つまり、ユイはシステムの内と外の両方に肉体が存在している、ただひとりの人物なのだ(ただし、厳密にいえば、『ヱヴァ』の世界の肉体はあくまでデータ上の存在だが)。
先に見たゲンドウの「もうすぐ会える」というセリフは、「(シミュレーションではなく)現実世界のユイに会える」という意味なのではないだろうか。
では、ユイは『ヱヴァ』の世界(シミュレーションのなか)でなにをしているのだろうか?
〈ゼーレ〉はシステムの復旧のため、ゲンドウを中心とする〈ネルフ〉を道具として使っている。この点はすでに考察した。
かりにユイも〈ゼーレ〉の一員だとすると、ユイはシステムの内部で〈ゼーレ〉の計画を実行していることになる。
ただ、この考えかたを採るのはやや抵抗がある。ユイは、本質的にミサトやシンジたちと真っ向から利益が対立する人物になってしまうからだ。言わば、ゲンドウよりも“悪人”ということになる。これは、『エヴァ』の世界観にそぐわない気がする。
ユイは〈ゼーレ〉のメンバーではない、もしくは〈ゼーレ〉のメンバーではあるが、主流派とは意見を異にしている――そんなふうに無理矢理こじつければ、問題はいちおう解決する。
もともとありえない想定をしているので真偽をはっきりさせることは不可能だ。ならば、ここではより受けいれやすい考えかたを採用しよう。
[2019年2月2日追記]『破』の3号機戦で流れる「♪今日の日はさようなら」、ラストの「♪翼をください」を歌うのは林原めぐみ氏だが、これは〈メタフィクション〉の世界でユイが歌っていると解釈することもできる(そうなると、ユイがとてつもなく悪趣味な人物になってしまうが)。
[2019年4月13日追記]ただし、旧劇場版において、ユイのふるまいは批判的には描かれていないものの、やっていることは“真の黒幕”のそれである。『新劇場版』において制作者がユイをどう位置づけているか検討の余地はあるが、純粋に“善人”だと信じるわけにもいかない。
[2019年8月18日追記]〈リリスの首〉の謎は、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト」で解明を試みている。
虚構の外の世界はすでに描かれていた
『新劇場版』の虚構構造の図を三たび掲げてみる。
先の考察では、上図の〈虚構B〉の世界は「まだ登場していない」と述べた。
だが、じつはもうすでにわれわれはBの世界を目にしているとしたら……? そんな仮定のもと妄想を膨らませてみよう。
いつ、どこでBの世界が描かれていただろうか?
勘のよいかたはお気づきかもしれない。そう。『Q』と同時に公開され、DVD/Blu-rayにも一緒に収録されている『巨神兵東京に現わる 劇場版』だ。
もちろん、これが『ヱヴァ』とはまるで関係ない作品であることは承知している。だから、これから述べることが妄想であることも自覚している。あくまで「こう考えたら楽しい」という遊びだ。
話を続ける。
〈巨神兵〉は「人の形をした巨体」という意味でエヴァに似ている。これはだれしも思うところだろう。
『Q』の前に上映されるため、嫌でも『ヱヴァ』との関連を連想してしまう。
『巨神兵東京に現わる 劇場版』
©2012二馬力・G
『新劇場版』において、エヴァに似た「人の形をした巨体」をわれわれは目にしたはずだ。
そう。〈インフィニティ〉だ。
『巨神兵』において、あの巨人がいつ、どこから、どのように出現したかは描かれていない。
『新劇場版』の虚構Aの世界で生み出された〈インフィニティ〉が、虚構Bの世界で〈巨神兵〉となって現れた――そう考えられないだろうか。
〈ゼーレ〉は、みずからの世界(虚構B)を破滅させるために、『ヱヴァ』の世界(虚構A)で〈インフィニティ〉を創り出したのではないか。
〈人類補完計画〉とは、虚構Bの人類を滅亡させることなのだ。
と言いたいところだが――。
これだと、ユイが世界の破壊に手を貸していることになる。その可能性はゼロでないにしても、先に述べたように、ユイの人物像にそぐわない(もちろん、ユイは〈ゼーレ〉には与しないと考えれば、この問題は解決するが)。
では、じつは〈インフィニティ〉は〈巨神兵〉ではなく、〈巨神兵〉に対抗するための武力と考えればどうだろう?
〈ゼーレ〉は、自分たちの住む世界が〈巨神兵〉によって壊されるのを阻止するために、『ヱヴァ』の世界で必死になって〈インフィニティ〉を創り出した――そう想像することもできる。
ここで、思い出したいのは『巨神兵』のモノローグだ。あの声にみなさんは聞きおぼえはないだろうか?
あれは、ユイの声ではなかったか……?
モノローグの女性の年齢や職業は不明だが、20代前半の、たとえば学生ではないかと想像する。だとすると、『ヱヴァ』のユイと『巨神兵』の女性とで、人物像はかなり異なる。
もちろん、虚構Aと虚構Bは文字どおり次元がちがうのだから、人物像が異なるのはむしろ当然かもしれないが、『巨神兵』の女性が「世界の破滅を阻止するために」奮闘するような女性には思えない。
そこで――。
今回の『ヱヴァ』の謎解きは、巷にあふれる〈パラレルワールド〉説、〈マルチエンディング〉説の検証と否定から始まったことを思い出したい。
ここで、あえて〈パラレルワールド〉説や〈マルチエンディング〉説を採用することにしたい。それは虚構Aではなく、虚構Bの世界においてだ。
すなわち――。
『巨神兵』で描かれるのは、世界の破滅。つまり、バッドエンディグだ。しかし、『シン・エヴァ』では、真のエンディング(虚構Bの世界が〈巨神兵〉に滅ぼされない結末)が展開する――そんな想像ができるのだ。
遊び感覚でパラレルワールドを創る藤子・F・不二雄「創世日記」
ここで参考になるSF作品を紹介しよう。藤子・F・不二雄先生による「創世日記」だ。
主人公は謎めいた男から、「天地創造システム」と呼ばれる玩具を手に入れる。それは、宇宙を創造するシミュレーションゲームだった。主人公が玩具を起動すると、銀河系が創られ、地球が誕生。大気や大地も生み出されていく。
藤子・F・不二雄「創世日記」(『藤子・F・不二雄 SF全短篇 第2巻 みどりの守り神』所収)
以下、「創世日記」のネタバレがあります(青字の部分)。
宇宙に生命が誕生するのは、無に等しい確率。偶然に頼っていては、宇宙が終わるまで生命が生まれる見込みはない。そこで、無数のパラレルワールドを作り、ばらまいた。主人公が手にした玩具はそのひとつだった。それはシミュレーションではなく、主人公が暮らすこの宇宙の現実そのものだったのだ。
『ヱヴァ』というシミュレーションの世界は、「創世日記」の玩具と同じようなものだった。ユイは遊び感覚とか、あるいは学生の自由研究で『ヱヴァ』の世界をいじっている――そう考えると、ユイが『巨神兵』の世界で何の知識も持たないウブな学生だとしても、「世界の破滅を阻止する」といった大それたことをやってのけても不思議ではないわけだ。
『Q』には〈メタフィクション〉を踏まえた描写がある
ここまで、〈メタフィクション〉説について述べてきた。ただし、あくまで「〈メタフィクション〉説を導入すると、謎めいた描写の意味がわかる。それによって、作品が味わい深くなる」ということであって、直接的にその説を証明するものはない(だからこそ、論争になっているわけだ)。
カヲルあたりが「ここはじつはコンピュータによってつくられた仮想の世界なのさ」などと語ってくれれば決定的なのだが、そのような場面はない。
この点はいわゆる〈ループ〉説も同様だ。「ぼくは別の時間軸でこの出来事を経験しているんだ。だから、なんでも知っているのさ。キミよりもね」といったセリフがあれば論争の余地はなくなる。
決定打となる描写がないのは、制作者は観る側の解釈を一方的に固定するつもりは毛頭ないからだろう。さまざまな見方ができるところが本シリーズの魅力であることは、十分に心得ているはずだ。
とはいえ、制作者の頭のなかに〈メタフィクション〉が想定されているとすれば、劇中のどこかに「制作陣の頭のなか」を具現化した描写が存在しているのではないか? そんな観点からあらためて作品を観直すと、次の表現が気になる。
〈リリスの結界〉は“この世のモノ”ではない
『Q』において、エヴァ第13号機がセントラルドグマへ向かって降りていくと、〈リリスの結界〉と呼ばれるものが行く手を阻む。
カヲルによれば、いままでだれもこの〈結界〉を壊していない(壊せなかった)という。
この14年間
誰の侵入も許していない『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
しかし、第13号機だけはこの〈結界〉を突破できるらしい。
これを突破するための
13号機だからね『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
カヲルのコトバどおり、第13号機が〈リリスの結界〉を破壊する。
さて、気になるのは、この〈リリスの結界〉の壊れかただ。
エヴァの脚が〈結界〉に触れていないのに、なぜか凹んでいく。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
この〈結界〉がどんな材料でつくられているのか、観る者は想像もできないが、どことなく違和感を覚えないだろうか?
まるで、ひと昔前のゲームに使われている低質なポリゴンのようだ。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
しかも、〈結界〉の瓦礫は、下まで落ちることなく途中で消えてしまう。
画コンテでは、はっきり「消えていく」と書かれている。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』
発行:株式会社カラー
いくらこの世界がコンピューターによるシミュレーションだとしても、すべてのモノは物理法則に従うはず(そうプログラムされているはず)だ。だから、コップは下に向かって落ち、エヴァは空を自由には浮遊できない*9。
*9:[2019年1月31日追記]ただし、ゼーレのエヴァ(Mark.06、Mark.09、第13号機)は、あるていど物理法則に逆らうことが可能なので、空を飛べる。
しかし、この〈結界〉は「物理法則」に反しているように思える。物理法則に拘束されないようにするには、コンピューターの外からプログラムを操作するしかない。
そう。〈リリスの結界〉はこの世界にいる存在がつくったのではなく、ゼーレが「コンピューターの外からプログラムを操作」してこしらえたものだと考えられる。“この世のモノ”ではない。だから、この世界の物理法則には左右されないわけだ。
ゼーレが〈メタフィクション〉の人間であり、〈リリス〉がゼーレのアバターなら、不自然なことではない。
それを踏まえると、第13号機でしか突破できないのも納得できる。そんな芸当ができるのは、〈アダムス〉が入ったエヴァだけというわけだ。
なぜゼーレは〈リリスの結界〉をつくったのか? ゼーレがもっとも憂慮すべきだったのは、先に考察したようにゲンドウが〈インパクト〉を起こすことだ。となると、〈リリスの結界〉も〈インパクト〉を防ぐ(または中断させる)のが目的だったと想像できる*10。
*10:順当に考えれば、ゼーレは〈リリスの結界〉が壊されることを望んでいないことになる。しかし、〈人類補完計画〉を完遂するために(正確にはゲンドウに完遂してもらうために)ゼーレもエヴァに〈槍〉を抜いてもらう必要があり、やむを得なかったのだろう。なんとも複雑な事情が絡んでいるようだ。
ヴンダーは〈メタフィクション〉の乗り物である
『Q』の描写のなかでは、ヴンダーから上方に伸びている〈光〉にも注目したい。
ヴンダーの機体のあちこちから“ピアノ線”のようなものが伸びている。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
これはいったいなんなのか? ふつうなら「そういうデザインになっている」だけだろうから、気にする必要はないのだが……。
〈メタフィクション〉説を前提とすると、軽視できない描写のように思う。
そもそもヴンダーとはなんなのか? もちろん、その詳細は語られていないわけだが、そのヒントはリツコがわずかながら説明している。
ヴンダーは本来〈アダムスの器〉の乗り物だという。
アダムスの器はヴンダー本来の主
初号機から本艦の制御を
奪い返すつもりだわ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
〈アダムスの器〉とは、「Mark.○○」と称されるエヴァのことで、ゼーレのアバターだ。
つまり、ヴンダーは本来はゼーレの操る機体ということになる(もちろん、ゼーレ自身がこれに乗るのではなく、アダムスと同様、この世界で活動するためのもの)。
ということは、ヴンダーは〈メタフィクション〉の世界にきわめて近い存在、この『序』『破』『Q』の世界と『シン・エヴァ』の世界の狭間にいるような存在なのではないだろうか。
もしかすると、見た目のとおり、ヴンダーはゼーレのいる世界から“ピアノ線”によって吊り下げられ操作されるべきものなのかもしれない。
ゼーレの乗り物だからこそ、ゼーレの世界に関与することができる。ミサトの言う「神殺しの力」とはそれを表わしていると考えられる。
さらに、ヴィレの戦闘シーンでは、〈リリスの結界〉とおなじような違和感を覚える表現があちこちに見られる。
やはり安っぽいCGのように見える。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
この何十年前も前の映画に出てくるコンピューター・グラフィックスのような表現は、まさに“コンピューター”のなかの世界であることを示しているのではないだろうか。
『Q』こそは、虚構世界(シンジたちの世界)と現実世界(ゼーレの世界)をつなぐ物語だったと解釈できるだろう。
カヲルはこの世界がシミュレーションだとほのめかす
『Q』において、カヲルはこんな“遺言”を残していく。
魂が消えても
願いと呪いはこの世界に残る意思は情報として
世界を伝い変えていくいつか自分自身のことも
書き換えていくんだ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
またしてもカヲルはあいまいな表現をするばかりで、「カヲル君が何を言っているのかわからないよ」と文句を言いたくなる。
だが、カヲルは「ここがシミュレーションの世界である」という真実をシンジに(いや観る者に)伝えようとしていた、としたらどうだろう?
「意思は情報」とは、人間の意思は“データ”である。「自分自身のことも書き換えていく」とは、人間という存在は“プログラム”によって書かれている。ようするに「この世界はコンピューターによるシミュレーションである」。そんな示唆が含まれているようにも思えるのだが。
この謎だけはどうしても解けない
ここまで、些末なことはともかく、『新劇場版』の本質的な謎については無理矢理にでも決着をつけてきたつもりだ。
しかし、どんなに考えをめぐらせても、何のアイディアも浮かばない“謎”がある。それらを挙げてみよう。
『Q』に登場する謎の2つの物体
以下の物体の正体については、ヒントすらなく、当ブログにはお手上げだ。
まず、シンジが変わり果てた世界を目撃した際、宙に浮かんでいた球体。〈サードインパクト〉においてなんらかの役割を果たしたことはまちがいないが……。
ここから〈インフィニティ〉が生み出されたのだろうか?
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
画コンテには「穴だらけで中身がコア状になっている月」とある。上空に浮かんでいた月なのか、それとは別のものなのか……。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』
(株式会社カラー)
そして、〈フォースインパクト〉の際、地下からせり上がってきた物体。これも大きな謎。
この物体について、だれも説明してくれない。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
画コンテ集では、「黒き月」となっている。ここから〈インフィニティ〉が放出されているらしい(上の「月」からではなかったようだ)。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 画コンテ集』
(株式会社カラー)
いずれも、〈サードインパクト〉や〈フォースインパクト〉でなんらかの役割を果たした物体であることを考えると、『シン・エヴァ』で描かれるはずの〈ファイナルインパクト〉においても、なにかしらの動きを見せるのではないかと予想する。
ただ、その詳細までが語られるかどうはわからない(なにも説明されない可能性もかなり高い)。
[2019年8月18日追記]この2つの物体については、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト」にて、もう少しだけ謎が解明している。
ゲンドウと冬月が語る〈使徒〉の正体
『序』において、劇場公開時には存在しなかったセリフが、DVD/Blu-rayの1.11バージョンで追加されている。 第4の使徒が襲来したとき、ゲンドウと冬月が交わした会話だ。
(冬月)
第4の使徒
たいした自己復元能力だな(ゲンドウ)
単独で完結している準完全生物だ
当然だよ(冬月)
生命の実を食べたモノたちか(ゲンドウ)
ああ 知恵の実を食べた我々を
滅ぼすための存在だ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
©カラー・GAINAX
「生命の実」という表現はカヲルも口にする。
だから 自らを人工的に
進化させるための儀式を起こした
生命の実を与えた新たな生命体を
作り出すためにね『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
また、「知恵の実」という表現は、ゲンドウが〈ゼーレ〉に向かって言うセリフに登場する。
あなた方も魂の形を変えたとはいえ
知恵の実を与えられた生命体だ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー
ここでは、「知恵の実を与えられた生命体」とは〈ゼーレ〉のことだ。
以上をふまえると、次のことがわかる。
〈生命の実〉を与えられたモノ → 〈使徒〉 〈インフィニティ〉
〈知恵の実〉を与えられたモノ → リリン(人類) 〈ゼーレ〉
〈使徒〉とはコンピューターのバグのことだが、もしかすると、〈インフィニティ〉を造ろうとして失敗し、その結果として生み出されたのが〈使徒〉なのかもしれない。
〈使徒〉のこの設定が、『シン・エヴァ』にどこまで生かされるか不明だ。おそらくは顧みられることもないだろうが、いちおう淡い希望は持っておこう。
[2019年8月18日追記]〈使徒〉の正体について、「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の謎を徹底的に解明する[準備編 その3]インフィニティとインパクト」であらためて考察を行なっている。
『破』で加持が口にする言葉
『破』において、シンジが加持の畑仕事を手伝っているとき、加持が非常に気になるセリフを残している。
葛城を 守ってくれ
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー
漫然と観ていると、聴きのがしてしまいそうな些細なセリフだが、よくよく考えると、かなり謎めいた言葉だ。
ミサトはシンジの上官であり保護者なのだから、単純に考えれば、むしろシンジのほうがミサトに守られる立場だ。
シンジが〈使徒〉を倒すことで世界の破滅は免れるから、結果的にミサトを守ることにはなる。そのことを加持は言っているのだろうか?
その可能性もある。だが、『新劇場版』は、シンジが大人になり、ミサトとの関係性が変わっていく様子を描く作品であることを考えると、加持のこのセリフは、もっと深い意味を持っているように感じる。
もしかすると、シンジが「ガキ」のままでいることで世界が破滅してしまうことを予言しているのかもしれない。だから「大人になれ」と。あるいは、ひょっとして、じつは加持こそがメタフィクションの人物である、などといったこともありうるのだ。
『新劇場版』は『Q』で完結してもよい
じつは『新劇場版』の物語は『Q』で一段落している。〈ゼーレ〉はこの世界を放棄し、ゲンドウの企みも表向きは打ちくだかれている。ミサトたちの希望は現状維持だから、〈ゼーレ〉やゲンドウがコトを起こさないのであれば、それに対抗する必要はない。
ようするに、極論を言えば、『新劇場版』は『序』『破』『Q』で終わっても問題ないということだ。かりになんらかの事情で『シン・エヴァン』が制作中止に陥ったとしても、『新劇場版』の作品として価値が損なわれることはない。
しかし、朗報がある。現在、『シン・エヴァ』の制作が進められているという。
『シン・エヴァ』の打ち合わせ。鋭意制作中です! pic.twitter.com/u2qcUlKZH0
— 株式会社カラー (@khara_inc) 2017年4月5日
いま、制作プロセスのどのあたりなのかは不明。よって公開もいつになるかはわからない(追記あり)。だが、いつかは完結編を拝める日が来ることは、ほぼまちがいない。
今回おこなった謎解きの答え合わせができるのを楽しみに待ちながら、ここでいったん考察を終えることにしよう。
[2020年5月2日追記]「エヴァ」アプリ内で配信された『Q』のオーディオコメンタリーで、カラー2号機氏が次のような発言をしている。
『Q』って、もともと『シン・エヴァ』部分に合体して1本になる予定の作品だったから、そこが切れちゃったわけなんで、いろいろ説明はもちろん足りてないんですよ。後半でされるのかはさておき。『意味わかんない』という声が多く見受けられるので、何がわかったら『わかった』っていう感想になるのかなあっていうのがちょっと不思議。
多くの人は、『序』『破』『Q』3本に『シン・エヴァ』1本が加わるイメージを抱いており、当ブログもそれを前提に考察を行なってきた。しかし、じつは【『序』『破』】+【『Q』『シン・エヴァ』】というふうにとらえるべきなのかもしれない。つまり、区切りは『Q』と『シン・エヴァ』の間ではなく、『破』と『Q』の間にあるのだ。そう考えると、『破』と『Q』の間が14年間空いているのも納得できる。旧劇場版にたとえるなら、『Q』が『Air』、『シン・エヴァ』が『まごころを、君に』といったところだろうか。
ちなみに、カラー2号機氏も、「最悪『Q』で終わっても(物語として)納得はする」と発言している。
『シン・エヴァ』の制作が正式に決定
『シン・エヴァ』の情報が少しずつ公になっています。
『シン・エヴァ』2020年公開(2018.7.21追記)
『シン・エヴァ』が2020年に公開されることが正式に発表されました。
『シン・エヴァ』の〈打ち入り〉開催(2019.2.1追記)
エヴァの公式Twitterが1月31日に『シン・エヴァ』の「打ち入り」を行なったというツイートを投稿しました。「打ち入り」はアフレコが始まったときに催される懇親会。
伊瀬茉莉也さん(北上ミドリ役)のような『Q』にしか登場しないキャラクターの声優さんも参加していることから、『シン・エヴァ』のストーリーは素直に『Q』の続きである可能性が高まりました。また、岩男潤子さん(洞木ヒカリ役)も写真に写っているので、当ブログの想像どおり、シンジのクラスメイトは生きているものと思われます(回想で登場するのかもしれませんが)。
さらに、高橋洋子さん(旧劇場版の主題歌のボーカル)の姿もあることから、『シン・エヴァ』の主題歌は高橋洋子さんが手がけるのでは? などと妄想できます。
もしかすると、『シン・エヴァ』は旧劇場版のように二部構成で、一部の主題歌を宇多田ヒカル、二部を高橋洋子が歌う、ということなのかもしれません。
シン・エヴァンゲリオン劇場版の打ち入りをおこないました。来てくださった皆様、キャストの皆様、本当にありがとうございます。頑張ってつくります! pic.twitter.com/Pvm2QcEHOB
— evangelion_official (@evangelion_co) January 31, 2019
『シン・エヴァ』のアフレコ開始(2019.3.20追記)
公式Twitterアカウントが『シン・エヴァ』のアフレコが始まったことをツイートしています。思ったより早かったですね。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』アフレコも始まりました。
(写真は庵野監督の台本です)#EVANGELION2020 pic.twitter.com/oNZBvFd56l— evangelion_official (@evangelion_co) March 20, 2019
『シン・エヴァ』冒頭10分40秒が7月6日に世界同時公開(2019.6.24追記)
『「シン・エヴァンゲリオン劇場版」0706作戦』と題し、7月6日『シン・エヴァ』のAVANT 1(冒頭10分40秒00コマ)が公開されるという情報が入ってきました。フランス・パリで行なわれる『JAPAN EXPO』内のステージ「Yoko TAKAHASHI×EVANGELION STAGE」や、アメリカ・ロサンゼルスで行なわれる『ANIME EXPO』ほか、中国・上海、日本などで世界同時上映されるそうです。
10分とはかなりの長尺といえます。出来栄えに相当の自信があるものとお見受けします。
先に公開されていたアフレコ台本に「AVANT 1」「AVANT 2」とあり、なぜアバンが2つあるのか不思議でしたが、これで謎が解けました。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』0706作戦、始動
7月6日に最新映像公開。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT 1(冒頭10分40秒00コマ) 0706版』をパリ・JAPAN EXPOステージから、日本各地、ロサンゼルス、上海へ世界同時上映。
また、7月1日に公式アプリ「EVA-EXTRA」リリース。#0706作戦 pic.twitter.com/s1vpjhCW3x— evangelion_official (@evangelion_co) June 24, 2019
『シン・エヴァ』アバンについてはこちら。
『シン・エヴァ』2020年6月公開(2019.7.19追記)
東京オリンピック・パラリンピックが落ち着く、秋から年末あたりを想像していました。特報2の映像は、エヴァアプリで視聴可能。明日(20日)にYouTubeでも公開されるとのことです(2019年7月20日追記:公開されました)。
2020年6月公開『シン・エヴァンゲリオン劇場版』特報2公開中 https://t.co/tDcYfUCk4q#エヴァンゲリオン #エヴァ #シンエヴァ #Evangelion
— エヴァンゲリオン_official (@evangelion_co) July 19, 2019
『シン・エヴァ』特報2についてはこちらで考察。
第1回目の考察はこちら。
この通りならナウシカに似てる
なるほど。ほんとに巨神兵が出てきて、そのシーンを庵野監督が作画している、と。そうなったら楽しいですね。
コメントありがとうございました。
はじめまして。興味深く拝見しました。
限られた情報からここまで可能性を膨らませられるとは…
感服しております。
エヴァ以外の記事も機知に富んでおり、物事の捉え方を
勉強させていただいております。
ありがとうございます。
ありがとうございます。最高のお褒めの言葉です。
これからもよろしくお願いします。
素晴らしい考察です。エヴァのためのゴジラであり、巨神兵だったとか考えたとき、シンエヴァまでの空白の時間が説明されることになる気がします。
コメントありがとうございます。
もともとの想定ではそれぞれ別の作品なのかもしれませんが、無理矢理にでも関連させてしまう可能性は十分に考えられますね。
黒き月は、使徒を生み出す存在アダムの、卵です。一方、白き月は、人を生み出す存在リリスの卵であり、現在の月であります。
コメントありがとうございます。
旧劇場版では、黒き月はリリスの卵とされていますね(冬月のセリフより)。白き月がアダムの卵というのは俗説で、たしか劇中では言及されていなかったと記憶していますが、まあそのように解釈することは十分に可能でしょう。
これらの設定が新劇場版にも導入されているかは不明です。そう思わせておいて、まったく異なる設定が採用されているのかもしれません。新劇場版には「アダムス」という言葉(だけ)は出てきますが、「アダム」は登場していないはずですし。
いずれにしても2020年公開の完結編に期待したいところです(といいつつ、たぶん謎は明かされずに終わると思っていますけどね)。
他にない独特な考察でとても面白かったです。
ロンギヌスの槍、カシウスの槍辺りの考察なのですが私自身とても気になっていて色々な考察を調べました。私なりに納得した考察なのですが、まずロンギヌスの槍とは絶望、死の象徴(デストルドー)であり、カシウスの槍はその逆の生の欲求(ルビドー)の象徴であり、破の最後でシンジはレイを助けたい(生の欲求)を願った。
であるならばそれを打ち消し覚醒を止めるには対となるロンギヌスの槍でなければならない。では、何故劇中ではカシウスの槍で止めれたのか。
その答えは、主さんの考察にもあったように槍の変形機能でロンギヌスの槍がカシウスに擬態していたからである。という結論に至りました。また、この考察から更に”槍でやり直す”発言にも理解が生まれ、ロンギヌスの槍でまず世界を洗いざらいリセットしカシウスで再構築するのではないかと考えられます。またこれであれば魂が2ついる理由も納得できます(世界を壊す願いと再構築する願い)
正直この考察は、複数の考察サイトを要約しただけのようなものですが個人的に気に入ったのでもしも主さんの考察の助けになればと思い投稿させて頂きました。 長文失礼しましたm(_ _)m
「〈ロンギヌス〉=死、〈カシウス〉=生」とする考え方は私も知っていたのですが、劇中でそれを示唆する描写はなく、考察には反映させていませんでした。どちらの槍もエヴァの活動を停止させるためにしか使っていませんからね。
しかし、本記事を書いたときは「形状変化」にはあまり注目していませんでしたが、「擬態」という表現をなさっているのを見て、そういえば、旧劇場版で量産型エヴァの持っていたのがじつは武器に擬態させた〈ロンギヌスの槍〉だったのを思い出しました(正確には〈ロンギヌスの槍〉のコピーですが)。
つまり、劇中で使われた槍はいずれも〈ロンギヌス〉であって(『破』のラストでカヲルが投げた槍もじつは〈ロンギヌス〉を擬態させたもの)、私たちはまだ本物の〈カシウス〉を目にしていないのかもしれません。
そうすると、ゲンドウの狡猾さと、カヲルの絶望感がより際立つことになりますから、物語としてはこちらのほうがより魅力的といえますね。
〈ロンギヌス〉と〈カシウス〉は同時に使うものとイメージしていたのですが、ご指摘のとおり、一方を使ってからもう一方を……というのは十分あり得ますね。
あと、「〈ロンギヌス〉はゲンドウにとって無用の長物」と書いたのですが、第13号機は〈ロンギヌス〉を最後まで手放しておらず、虚構世界からの突破、もしくは突破したあとの「神殺し」に必要だったのかもしれません。
このたびは興味深いコメントをいただき、ありがとうございました。今後もこの問題を考え続けたいと思います。
あとからもう少し考えてみました。
【1】『破』の槍
●『破』のラストの槍は、〈カシウス〉に擬態した〈ロンギヌス〉である。
●カヲルはその槍を本物の〈カシウス〉であると思い込んでいた。
と仮定します。
初号機に槍が刺さり〈サードインパクト〉が止まるわけですが(のちに「ニア・サードインパクト」と呼称)、これを見てカヲルが驚いたり動揺したりしている様子はありません。
ということは、「初号機に〈カシウス〉が刺さり〈サードインパクト〉が止まる」ことはカヲルの意図どおり、ということになります(厳密にはゼーレの意図かもしれませんが)。
したがって、「エヴァの活動を停止させる」のは〈カシウス〉の本来の機能と考えられます。
また、誰が何の目的で〈カシウス〉を〈ロンギヌス〉に擬態させたのか? という疑問も残ります。
【2】『Q』の2本の槍
カヲルは
●Mark.06とリリスに刺さっている2本の槍は、それぞれ〈カシウス〉と〈ロンギヌス〉である。
と思い込んでいましたが、
●Mark.06とリリスに刺さっている2本の槍は、同じものである(当ブログの考察では2本とも〈ロンギヌス〉)。
という事実が判明します。
カヲルがこの事実に気づくのは槍にかなり接近したときで、セントラルドグマに降下しながらMark.06やリリスに刺さっている槍を眺めているときは、違和感を覚えていません。
ということは、カヲルがMark.06とリリスのどちらに〈カシウス〉が刺さっていると誤解していたのかは不明ですが、いずれにしても、
●〈カシウス〉がMark.06またはリリスの活動を停止させる(停止させている)
という機能については疑っていないことになります。
つまり、〈カシウス〉と〈ロンギヌス〉は、機能面においてはほとんど違いはなく、両者の大きな相違点は「形状」のみである可能性が高いのです(当ブログは、それに加えて「活動を止める対象」が違うという説を唱えています)。
【3】〈生〉と〈死〉というモチーフ
●〈カシウス〉は〈生〉をもたらす
●〈ロンギヌス〉は〈死〉をもたらす
という設定は洗練されていてとても魅力的です。
しかし、〈生〉と〈死〉は、たしかに旧劇場版ではモチーフのひとつになっていたのですが、新劇場版ではほとんど強調されていないように思えます。
むしろ新劇場場のモチーフは「〈私〉と〈世界〉」という対比関係だと当ブログは考えています。
とはいうものの、〈世界〉を新劇場版の重要なキーワードと考えると、劇中の具体的な描写はともかく、制作陣の頭の中では
●〈カシウス〉 → 世界を〈再生〉
●〈ロンギヌス〉 → 世界を〈破壊〉
という設定になっている可能性は十分にあり、今後も検討する必要はありそうです。
初めまして。
昨日今日で新劇場版3作品をイッキ見した者です。
意味深な言い回しや、疑問を抱いた描写などがあったので気になり検索していたところ、こちらの考察に辿り着きました。
納得できる部分が多く、楽しく読ませていただきました。
素晴らしい観察力と優れた推理力、あっぱれです。
素敵な考察をありがとうございました。
2020年が楽しみです。^^
こちらこそ、ありがとうございます。
作品をより深く味わうために役立てていただければ嬉しいです。
『シン・エヴァ』も一緒に楽しみましょう!
大変興味深く深い考察に思わず一気読みしちゃいました
メタフィクションの存在とゼーレ・ネルフ・ヴィレの立ち位置と目的の違いや槍の使用法など説得力があり感銘を受けました
その中でひとつだけ気になったのは「〈インパクト〉の〈トリガー〉になりうる〈初号機〉は封印され、ミサトたちの手によって宇宙に放出された。」の部分ですが〈初号機〉を軌道衛星上に放出したのはゼーレではないでしょうか?
ミサトたちが放出したならアスカが回収する際にその防御システムについて知らなかったのはおかしいですし防御システムの正体がBD・DVD特典ブックレットで「エヴァンゲリオンMark.04」である事が判明してます
インパクトをおそれたゼーレがやったと考えると回収後のシンジに対するヴィレやネルフの動きが理解しやすいと愚考しますがいかがでしょう?
ともあれ今だに考察の余地を提供してくれるエヴァシリーズと素晴らしい考察者に感謝すると共に来年のシリーズ最終作の公開が楽しみでなりません
「だれが〈初号機〉を宇宙に放出したか」については、正直いえば私も確証を得られていないのです。おっしゃるとおり論理的に考えると、ミサトたち(ヴィレ)の行動を阻止している存在が「〈初号機〉を宇宙に放出した」と考えるのは自然ですし、その可能性がもっとも高いと私も考えています。
しかし、あえて「ヴィレの行動を阻止している存在」と「〈初号機〉を宇宙に放出した(存在)」は別ではないかとの仮説を立てています。
つまり、「ヴィレはいったん〈初号機〉を宇宙に放出し時機を待った。その時機がきたので〈初号機〉を回収しようとしたところ、ゼーレ(ゲンドウ)に阻止された」のではないか。
話がややこしいのは、ヴィレとゼーレはインパクトを望んでいない、という点で(結果的に)利害が一致しているところです。ヴィレとゼーレの両方に〈初号機〉を宇宙に放出する動機があるわけです。
ポイントは、〈初号機〉の宇宙放出がヴィレの結成前なのか後なのかですが、現時点では考察する材料が不足していますね。
とはいえ、この問題に関する私の考察も不十分であるのはたしかなので、今後も検証していきたいと思っています。
このたびはコメントありがとうございます。来年はいっしょに完結編を楽しみましょう!
あまりにも薄っぺらで草。旧劇場版から見直して、月と地球に注目してください。
たしかに、最近NetFlixでも配信が始まったので、この機会に見直そうと思います。あらたな発見があるかも!?
旧劇から月と地球が二つに分かれているというやつですね。
映像見る限りほぼ確定でしょうけど、それを劇中で一切明らかにしない庵野監督は意地悪だ。
「旧劇から月と地球が二つに分かれている」というのは、「ひとりよがり日記」さんの説のことでしょうか?(ちがってたら申し訳ありません) 当ブログでも一部を参考にさせていただきましたが、あくまで独自の解釈であって、公式な設定ではないかと思います。
アスカの眼帯は左目につけられているが、旧劇場版で量産型相手に「殺してやる」って連呼しているシーンでアスカが自分の左目を隠しているのと何か繋がりがあるのかな? Qに出てくるアスカは惣流説っていうのをいろんなところで聞いた気が…
「旧劇場版と新劇場版の世界がつながっている」という説をとると、アスカの眼帯も意味深ですが、私自身は旧劇場版と新劇場版は別だと思っています。とくに『Q』のアスカが惣流というのは、なかなか納得しがたいのが個人的な印象です。ただ、いずれも完全に否定できる材料はないわけですが……。『シン・エヴァ』でも解決はしなそうですしね。
コメントありがとうございました!
はじめまして。
とても良く考察されており、感心いたしました。
読んでいるうちに思いついたことを書き残しておきます。
さて、本題ですが、やりの部分について読んでいるときに思ったのですが、
ネルフ型、ゼーレ型、という解釈ではなく、リリスベース、アダムスベースという分け方の方が
カシウスの槍、ロンギヌスの槍の効力の関係性としてしっくり来るように思えます。
ここまで書いておいてなんですが、そう解釈したところで何かが解決するわけでは無いとは思いますが、
読んだ印としてひとつ・・・
おっしゃるとおり、カシウスとロンギヌスが人工物でないとすれば、同じように人知を超えた存在(と思われる)リリスやアダムスと関連づけたほうが、よりエヴァの世界を理解することにつながるのかもしれませんね。今後の検討課題としたいと思います。
リリスとアダムスの関係性について、これまでの考察ではほとんど触れていないのですが、もっと注目したほうがよさそうです。
とても示唆に富んだコメントをいただき、ありがとうございました!
大変興味深く読ませて頂きました。
一つ突飛な事を思ったのですがこの作品がタイムリープ的な可能性はあると思いますでしょうか?
カヲル君の「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」というセリフ。
次の作品のさらば、全てのエヴァンゲリオンという謳い文句から連想したのですが如何でしょうか。
私の持論の〈メタフィクション〉説は、タイプリープ説も内包するので、可能性としては十分にあると思います(シミュレーション世界なら、パラレルワールドもタイムリープもタイムトラベルも可能と考えます)。
ただ「さらば、全てのエヴァンゲリオン」は、「本作でエヴァは完結」と言いたいだけで、劇中の設定に触れたものではないようにも思えます。いずれにしても『シン・エヴァ』の公開が待たれますね。
このたびはコメントありがとうございました。
こんちにわ。
エヴァ新劇場版=「メタフィクション」説、大変面白く拝読いたしました。
個人的には「新劇」はコンピュータの世界というより、現実=製作者の世界(庵野監督とアニメ制作者)≒エヴァの世界=フィクション(TV版の世界>旧劇の世界>新劇の世界~※これが3番目)という多層構造というマトリックス的な感じ…と思います。いずれにしろ、新劇の世界の外側に何か別の世界が存在して、それが干渉や影響を及ぼしているのでは…。ひょっとしたら、「エヴァに取り込まれたユイが現実にサルベージされるまでの夢話」というオチになるかもしれませんが笑
おっしゃるとおり、仮想現実の世界が必ずしもコンピュータでつくられている必要はありませんね。紙の上にペンで書かれた世界である可能性も十分にあるわけですから。
旧劇場版の世界が新劇場版に内包されていると考えると、カヲルのセリフに説明がつくのでスッキリするんですよね。あとはそれらしい根拠が劇中に見つかればいいのですが。
『Q』でにわかに綾波ユイがクローズアップされたのは、『シン・エヴァ』で重要人物として登場することの伏線かもしれませんね。
コメントありがとうございました。これからも『シン・エヴァ』に対する期待を高めていきましょう。