乱暴にまとめるなら、本作は、前半で軍事的に、後半で非軍事的に対処する話になっている。

前半で、ありとあらゆる攻撃が試みられるが、軍事的手段は一切通じない様子が描かれる(核兵器すら有効でないことが示唆される)。

中盤のクライマックスで、すべての軍事的手段が無効化され、国家機関は完膚なきまでに叩きのめされる。前半に登場する政府の首脳陣はゴジラによって一掃されてしまう(政府の人々には名優たちがキャスティングされているが、ほぼ全員がこの中盤で退場する)。

後半は、生き残った者たちが、限られたリソースを最大限使ってゴジラを倒す展開となる。道路や通信設備、工場、交通機関など、日常的なインフラに焦点が当てられる。前半とは対照的に、チームの団結力、交渉力、コミュニケーション力といった、個人の持つ力が強力な“武器”として描かれる。

9条にまつわる議論では往々にして、コトが起こったときに軍事的に対処するべきか否か、あるいはそのための手段を持つべきかどうかが問題となる。

9条の非信者は「非軍事的な手段で対処できるはずがない」と信者を批判する。しかし、非信者の多くは、本作で描かれるように「軍事的な措置が失敗した場合」を想定していない。

一方、9条信者は、軍事的に対処することを否定しつつも、その代替案となる非軍事的な手段について、具体的な内容まで詰めきれていない。

「怪獣の襲来」という荒唐無稽な想定ではあるが、本作の描写は、9条信者・非信者を問わず、それぞれの理論構築に役立つのではないか。

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