〈ファーストインパクト〉と〈セカンドインパクト〉の真相はおおよそつかめたとしよう。今度は〈セカンドインパクト〉の次に起こった〈ニアサードインパクト〉について考察していこう。

〈ニアサードインパクト〉で〈インパクト〉失敗の原因がわかった

ニアサードインパクト〉は、〈ゼーレ〉の計画していた〈サードインパクト〉に先んじてゲンドウが起こした〈インパクト〉のことだ。もちろん、〈ゼーレ〉の意に沿ったものではない。したがって、〈インパクト〉の本来の目的である〈インフィニティ〉の創造とは無関係だと考えられる。これまで述べてきたように、ゲンドウはむしろ〈インフィニティ〉の創造を阻止しようとしている。

ゲンドウの目的は〈トリガー〉の実験

では、ゲンドウはなにを目的として〈ニアサードインパクト〉を起こしたのか。過去の考察で次のように述べた。

ここでは、〈初号機〉を覚醒させることだけが目的だったのだろう。

なぜ〈初号機〉を覚醒させる必要があったかといえば、〈初号機〉で〈インパクト〉を起こせるかどうかを試したかったのだろう。

ここで重要なのは、〈初号機〉が〈ニアサードインパクト〉の〈トリガー〉となったこと。やはり過去の考察で結論づけたとおり、〈インパクト〉には〈トリガー〉が必要なのだ。

ところで、ゲンドウはエヴァの「覚醒」にやたらとこだわりを見せている。

 icon-arrow-circle-down 『破』では〈初号機〉を「覚醒」させようと企む。

ああ
初号機の覚醒を急がねばならん

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

 icon-arrow-circle-down 『Q』では〈エヴァンゲリオン第13号機〉の「覚醒」が大きな成果だとしている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

だが ゼーレの少年を排除し
第13号機も覚醒へと導いた

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

おそらくエヴァの「覚醒」が、〈トリガー〉のしくみに大きく関係しているのだろう。

ここで想像を飛躍させてみる。

〈インパクト〉に〈トリガー〉が必要であることを、この時点まで〈ゼーレ〉は知らなかった

のではないか。だからこそ、〈セカンドインパクト〉は失敗したのだ。先に述べた「失敗の原因として考慮に入れておきたい要素」とはこのことを指している。

〈ゼーレ〉は知らなかった真実をゲンドウは知っていた。その理由は不明だが、形而上生物学を専攻していた(とおぼしい〉冬月が発見したのかもしれない。あるいはユイのアドバイスだった可能性もある。

いずれにせよ、ゲンドウも〈ゼーレ〉も、この先〈インパクト〉を起こす際は、本体(=〈リリス〉)のほかに〈トリガー〉を用意することになる。

〈ニアサードインパクト〉は〈サードインパクト〉ではない

当ブログは、『破』のクライマックスで起こったのが〈ニアサードインパクト〉、『破』と『Q』の間に起こり劇中で描写されていないのが〈サードインパクト〉であり、〈ニアサードインパクト〉と〈サードインパクト〉は別であると解釈している。

ところが、これらをおなじであると考える人もいる。その根拠はカヲルが発したセリフだろう。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

一度 覚醒し
ガフの扉を開いたエヴァ初号機は
サードインパクトの
トリガーとなってしまった
リリンの言う
ニアサードインパクト

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

カヲルは「シンジくん、本来〈サードインパクト〉というべきモノをリリンは〈ニアサードインパクト〉と呼んでいるよ、やれやれだね」と言っているようにも見える。

〈ニアサードインパクト〉=〈サードインパクト〉と考えると、『Q』において、ミサトをはじめとするヴィレのメンバーがシンジに冷ややかな目を向けるのは、この「リリンの言うニアサードインパクト」が原因ということになる。

しかし、『破』のエンドクレジットのあと、〈Mark.06〉に搭乗するカヲルが〈カシウス〉を〈初号機〉に投げつけ、〈インパクト〉を中断させる描写がある。これは『Q』で描かれた世界の惨状と矛盾する。また、それこそミサトがシンジに対する態度を変えたのも腑に落ちない。さまざまな点に説明がつかなくなるわけだ。

そこで〈パラレルワールド説〉が提唱されたり、乱暴な人は『Q』そのものをなかったことにしているわけだが、これらは〈ニアサードインパクト〉=〈サードインパクト〉とする考えかたに限界があるのだろう。

ちなみに、当ブログは過去の持論をあらため、「ミサトたちヴィレのメンバーはシンジに冷ややかな目を向けているわけではない」と考えることにした。〈インパクト〉の話からはずれてしまうので、くわしくは別の機会に論じてみたい。

さて、カヲルのセリフの真意はこういうことだと当ブログは解釈する。

〈セカンドインパクト〉の次に起こったという意味で『破』の〈インパクト〉は〈サード〉であるが、〈ゼーレ〉が行なう本来の〈インパクト〉ではない人類リリンが勝手に起こした)から〈ニア〉である。

そもそも、『破』の〈インパクト〉では『Q』のような状態にはならない。その根拠を説明しよう。

〈インパクト〉に必要なものはなにかを思い出していただきたい。

  1. リリス
  2. アダムス
  3. ロンギヌス
  4. カシウス
  5. トリガー

『破』の〈インパクト〉においては、〈アダムス〉〈ロンギヌス〉〈カシウス〉が欠けている。過去の考察で〈リリス〉が関与している(というより〈インパクト〉を起こした主体)と述べたが、この時点では〈ロンギヌス〉が刺さったままであり、本来の能力は発揮できないと考えられる。

加持も次のようにつぶやいている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

数が揃わぬうちに
初号機をトリガーとするとは…
碇指令…
ゼーレが黙っちゃいませんよ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

この時点で「数」はそろっていない。〈インパクト〉の材料はそろっていないのだ。

もっと決定的なのは、〈リリス〉に融合していた〈Mark.06〉を指してカヲルが「自律型に改造」と言っている点だ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

(シンジ)
ん? あれはエヴァ?

(カヲル)
自律型に改造され
リリンに利用された機体の
成れの果てさ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
©カラー

『破』のラストで降下してきた〈Mark.06〉がそのままセントラルドグマへ降りていき、〈インパクト〉を起こしたとすれば、〈Mark.06〉は最初から「自律型に改造され」ていたことになる。

最初から自律型だったものを「改造」というのは不自然だろう(「自律型に建造」ならわかるが)。過去の考察で述べたとおり、もともとは自律型ではなく、あとでゲンドウが自律型に改造したと考えるほうが合理的だ。

しかも『破』ではカヲル自身が〈Mark.06〉に乗って操作していたのだから、「自律型」は変だし、「リリンに利用された」「成れの果て」という言い草もひどすぎる。

もっといえば、かりに『破』のラストでカヲルが〈インパクト〉を止めなかったとしても、中断していた可能性が高い(あるていど影響はあっただろうが)

実際、ゲンドウも次のように言っている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

ああ 我々の計画に
たどりつくまで あと少しだ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

この時点の〈インパクト〉は本来のモノではなく、したがって世界が終わるようなことはない。そのことをゲンドウは知っていたのだ。本来の〈インパクト〉が起これば人類は滅亡するのだから、もっとゲンドウはあわてたはずだ。

ちなみに、このときリツコは目の前で起こっている現象について、先に見たように

そう
セカンドインパクトの続き…
サードインパクトが始まる

と言っている。これは、コトバのとおり「セカンドインパクトの続き」(3番目の〈インパクト〉)という意味で「サードインパクト」と表現しているに過ぎない(「ニアサード」はあとから付けられた名称である)。したがって、これまでの考察とは矛盾しない*6

*6:このときリツコは本来の〈インパクト〉が発生していると思っていたようだ。

〈ゼーレ〉は〈サードインパクト〉発動の寸前だった

『破』の〈ニアサードインパクト〉はゲンドウの仕業だったわけだが、じつはほぼ同時に〈ゼーレ〉による〈インパクト〉、すなわち本来の〈サードインパクト〉も発動寸前だったと考えられる。

その根拠となるのが次の描写だ。カヲルがプラグスーツを身につけ、〈Mark.06〉に乗りこもうとする様子が描かれている。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

時が来たね

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

ここでいう「時」は、まさに〈サードインパクト〉の発動を指しているのだろう。

ただ、カヲルが〈ゼーレ〉の〈インパクト〉をそのまま実行しようとしていたかどうか疑問は残る。過去の考察でも述べたとおり、〈ゼーレ〉にしたがうフリをして、ギリギリのところで裏切る腹積もりであった可能性も高い。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

今度こそ君だけは
幸せにしてみせるよ

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
©カラー

〈サードインパクト〉を起こせば、シンジを幸せにすることにはならないだろう。

いずれにしても、〈ゼーレ〉はゲンドウが〈インパクト〉を起こすのを阻止しなければならない。

覚醒した〈初号機〉に〈カシウス〉を投げたのは〈ゼーレ〉の命令だったかもしれないし、もしかするとカヲルの独断だったかもしれない。

〈カシウス〉を使ってしまった時点で、〈サードインパクト〉をやり直さなければならなくなった。

〈ニアサードインパクト〉は(結果的に)ゲンドウのもくろみ通りになってしまったわけだ。

こうして、またしても〈インフィティ〉の創造は、次の〈インパクト〉に持ち越された。

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ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

フリーランスのライター・編集者。インタビューや取材を中心とした記事の執筆や書籍制作を手がけており、映画監督・ミュージシャン・声優・アイドル・アナウンサーなど、さまざまな分野の〈人〉へインタビュー経験を持つ。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。収益を目的とせず、趣味の活動を行なう際に〈ぎゃふん工房〉の名前を付けている。

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コメント

    • 匿名
    • 2019.08.19 5:00pm

    0706においてマリの足が赤くなっているのはエヴァ4444Cの攻撃を受けたためです。エヴァ本体の足は赤くなってません。
    またコア化については接触によりコア化する、ではなく侵食の方が良いと思います。
    また、エヴァのプラグスーツを着ている場合はコア化されません。復元オペにおいてもオペレーター達はプラグスーツ同様の服装です。

    • おっしゃるとおり、「〈コア〉に触れると〈コア化〉する」については、再検証の必要がありそうですね。今後の参考にします。

      ありがとうございました!

    • かおり
    • 2019.10.04 4:21am

    このブログにたどり着けて
    本当に良かった!
    目からウロコが取れたような
    読んでいて
    とても気持ちの良い考察でした!

    気付いたら朝になっていましたよ(笑)

    本当に楽しかったです、
    ありがとう!

    • 匿名
    • 2019.10.04 4:23am

    気付いたら朝になっていました!
    一気読みです。

    楽しかった、ありがとう!

    • こちらこそ、お読みいただきありがとうございました。

      エヴァの考察って、書くのも読むもの楽しいですよね(私もいろいろな人の考察を見たりします)。

      これからもお互いエヴァを堪能していきましょう!

        • 伊勢雲
        • 2020.07.13 1:31am

        虚構から現実へとあがく物語としてゼーガペイン(2006)は外せません。またこの物語はループからの脱出劇でもあります。
        カヲルが今度はと呟くのはループのなかでのソゴルキョウたちの想いにもつながります。
        このサイトの考察に照らせばゲンドウたちは全てミサキシズノで、ユイが唯一の量子化人類、ゼーレがナーガ、インフィニティは復元者とガルズオルムと言うことになるでしょうか。
        エヴァンゲリヲン序(2007)からエヴァンゲリオンの蛍光部分が輝くようになったのは、ホロニックアーマーへのオマージュとも思えます。

        • 『ゼーガペイン』は未見ですが、なるほど、『エヴァ』の理解にもつながりそうですね。

          dアニメストアでも配信されているようなので、いま観ているアニメシリーズが終わったら、ぜひ拝見したいと思います。

          参考になる情報をありがとうございました。

    • 匿名希望
    • 2020.07.06 8:49pm

    旧エヴァのシンジの「自慰行為」など、意図的に性的な表現がされている。
    そしてこのブログを読んで、次のように感じました。
    生命の誕生(卵子と精子の出会い)→ファーストインパクト
    生殖器の発達→セカンドインパクト(女性『卵子』がリリン、男性『精子』がアダム)
    性行為→サードインパクト、フォースインパクト
    生命の誕生(卵子と精子の出会い)→ファイナルインパクト=ファーストインパクト=ループ→虚空Aもしくはリアルの世界。
    自分の中で、エヴァへの理解がひと段落したような、そんな感じです。

    • なるほど。〈世界の創造〉を〈生命の誕生〉になぞらえる。なかなか興味深い視点ですね。

      旧劇場版では〈生と死〉がモチーフになっていて、とくに〈死〉に重きが置かれていた観がありましたが、新劇場版では逆に〈生〉に重きを置いているのかもしれませんね。

      このたびはとても参考になるコメントをいただきありがとうございました。

    • ミキ・プルーン
    • 2020.07.08 7:41pm

    4ページ目の
    >『Q』のエンドクレジットのあと、〈Mark.06〉に搭乗するカヲルが〈カシウス〉を〈初号機〉に投げつけ、〈インパクト〉を中断させる描写がある。

    これはだと思うのですが(._.)

    • ご指摘ありがとうございます!
      修正しました。
      今後ともよろしくお願いします。

    • 匿名
    • 2020.08.14 3:42am

    クソみたいな考察でガッカリしました。
    拙い文章で読み辛いです。
    わざわざこんなもの載せるなんて
    よほどの暇人ですか?

    • 「ごめん。これは君の望む“考察”ではなかった」
      「君が心配することはない」
      「君は、安らぎと自分の場所を見つければいい」
      「縁が君を導くだろう」
      「そんな顔をしないで」
      「希望は残っているよ。どんな時にもね」

    • いのり
    • 2020.08.28 9:26pm

    初めまして。
    私自身はアスカのプラグスーツの破損状況から「二つの世界があったら面白いな」派なのですが、インフィニティの考察がとても面白くて読み込んでしまいました。
    考察を巡るのは自分では出せない想像や気付きに出会えて良いですね。
    掲載してくださってありがとうございます。
    (くだらないコメントへの返しもエヴァ愛に溢れていてとてもGoodでした(笑))

    • こちらこそ、お読みいただきありがとうございます。

      他人の解釈や考察も楽しめるのがエヴァのいいところですよね。

      これからも一緒に作品を堪能していきましょう!

    • 1番マリが好き
    • 2020.08.29 1:38pm

    序盤のある程度は読ませていただきました。これは煽りをしようしてコメントしているのでは全くありません。”(-“”-;)”うーん 率直に言うと途中から考察に矛盾が生じて読むのを辞めました。申し訳ないです ただ指摘したい部分があり今回コメントさせていただきます。不快な気持ちにさせてしまうと思うと申し訳ないです。すみません
    1つ目は、旧劇場版と新劇場版とはそもそも設定が違うと書かれてるのですが途中から旧劇場版等の描写を使用している時点でおかしいなと感じました。
    2つ目は、槍の件です。使徒と槍は一緒に揃っていたはずです。そうすると、初めにアダムが地球へ到達し、アダムとカシウスは共にあるはず。次にリリスが地球へ到達するとこでセカンドインパクトが起きた場面でロンギヌスの槍が2本登場する。リリスと一緒にあるはずのロンギヌスが1本。流れ的にはカシウス→ロンギヌス→ロンギヌス→ロンギヌスの順になるはずと思いました。
    3つ目はカシウスの槍を抜いた初号機についてです。ヱヴァンゲリオン 新劇場版:破で第10使徒から綾波レイを救い出し取り込んだ初号機。1度カシウスの槍で貫かれた事により初号機は活動停止になります。しかしこれの初号機は後にヴンダーへと変わるのはご存じですよね?ヴンダーは初号機の無限のエネルギーを活用して起動しています。この無限のエネルギーが初号機にあるならばカシウスの槍を抜いた時点で初号機が覚醒した時と変わらないため再び活動を再会するはずです。
    4つ目は薄いですが、コア化したMrk.06を槍で貫け無かったはずのになぜリリスを槍で封じたらMrk.06を槍で封じる事ができるのか疑問に思いました。
    5つ目は槍の件です。Mrk.06→アダムの(肉体)渚カヲル→アダムの(魂)でアダム本体といっても偽りはない。アダム本体と似ているためカシウスの槍が使えたとなるなら真のヱヴァンゲリオンを待たずともインパクトを起こすことができる。←この理論でいくと2号機→アダムの(肉体)アスカ→リリスの(肉体と魂)となる。アダム、リリスどちらの本物でもないためインパクトを起こす可能性は低いと思いました。ただし、主さんが書かれていた初号機もしくは零号機なら可能性はあるかもと思いました。
    続いて6つ目です。6つ目は初号機の桶を用意し、宇宙へと運んだとありますが、アスカ、Mrk.07がリリスの結界から脱出できたのだとすると、閉じた結界を再度開け一体誰が初号機に桶まで用意し宇宙へまで運んだのか疑問に思いました。
    長文大変失礼しましたm(_ _)m 主さんの考察が気になったので読ませていただきました。まだまだ分からないこともたくさんあるのでシン・ヱヴァンゲリオンを楽しみに待ちましょう!待ち遠しいです
    ありがとうございました✨

    • コメントありがとうございます。

      矛盾点の指摘や反論はもちろん大歓迎ですので、どうぞ恐縮なさらずに。

      【1.旧劇場版と新劇場版の設定について】

      正確には「旧劇場版と新劇場版では、一部の設定に異なった部分がある」という意味で、当然、共通している設定も多くあると思われます。

      馬鹿馬鹿しい例を挙げるなら、旧も新も主人公のパイロットは碇シンジで、モノゴトを裏で操っているとおぼしき組織は、旧も新もゼーレですよね。

      問題は、旧と新の設定は、何が同じで何が異なるのかを見極めることだと思います。記事では、いくつかの根拠をもとに、それを明らかにしているつもりです(十分でない部分もあるかもしれませんが)。

      【2.槍について】

      ・使徒と槍は一緒に揃っていた
      ・初めにアダムが地球へ到達
      といった設定は、劇中に描写がないことから、旧劇場版・新劇場版のいずれにおいても確定したものではないかと思います。

      ただ、劇中にないからといって、そのように考えてはいけない、ということにはならないでしょう(そうしないと、ヱヴァの考察そのものが成り立たないですからね)。

      槍の出自については、少なくとも現時点では観る側の解釈に委ねられているといったところでしょうか。

      【3.カシウスの槍を抜いた初号機】

      初号機がヴンダーに変わったというよりも、もともとヴンダーと呼ばれる存在があり、そこに「主機」として組み込んで飛べるようにした、と表現するほうが正確かもしれません(『Q』で初号機を奪還するまでは、ヴンダーは飛べなかったのでしょう)。

      「初号機の無限のエネルギーを活用して起動して」いるというのも、劇中には説明がなく、確定した設定ではないかと思います。

      したがって、「カシウスの槍を抜いた時点で初号機が覚醒した時と変わらないため再び活動を再会」したかどうかは未確定といえます(当然、実際にそうなった可能性は否定できませんが)。

      もちろん、どういう理屈でヴンダーが空中を飛んでいるのか想像がつかないため、おっしゃるとおり、「初号機の無限のエネルギーを活用して」飛んでいると解釈する余地は十分にあるでしょう。

      【4.Mark.06と槍】

      「コア化したMrk.06を槍で貫け無かった」。これもそのような描写は劇中にないし、記事でそのように説明もしてないかと思います(私の勘違いでしたらすみません)。

      【5.槍と魂】

      私の読解が間違っていたら申し訳ないのですが、ここでご指摘いただいていることは、私の考えとは異なります。

      「カヲルがアダムの肉体を持っている」「アダムの魂がカヲルに入っている」とは私は考えていないのです(というより、新劇場版では設定が異なると記事では主張しています)。

      私が「ホンモノ」「ニセモノ」といっているのは、アダムスやリリスではなく2本の槍のことです。

      【6.初号機の桶】

      初号機の桶はサードインパクト時には、セントラルドグマにあったわけではないと私は思っています。では、どこにあったのか? という疑問はありますが、それは今度の課題としています。

      劇中の表現を信用するなら、リリスの結界を開けることは誰にもできないし、実際開けることはできなかったのだと解釈しています。


      こちらも重箱の隅をつつくようなお返事になってしまいましたが、今後のヱヴァ考察にお役に立てれば幸いです。

      今後ともよろしくお願いします。

    • あきらつかさ
    • 2020.08.29 8:22pm

    はじめまして。
    面白く拝読させていただきました。
    コメント欄も拝見して、そういえば「LCL=羊水」というのが過去にあったことを思い出しました。
    <生命の誕生>とするなら、これも見方のひとつかも知れません。

    拝読して、提唱されている説にあわせて思ったのは、ユイは「仮想世界内にアバターで直接介入できる」権限のあるシステム管理者(ゼーレの一員)では、ということです。その中でゲンドウに惚れてしまったために(裏切り、とすると矛盾が生じないかと)正体を(冬月にも)明かし、自らを犠牲にしてこの(仮想)世界を去った。そのユイのもとへ行くためゲンドウは「虚構世界の突破」を図っている――という流れ。あるいは、自分が無理でも息子(シンジ)を母の元へ送る――
    虚構であることを知っている者そのものがいない上にこの「世界(線)を超越する」というのはカヲルでも想定していないことで、まして他の誰にも理解されないしそもそも知らせていない(ゲンドウの目的がゼーレにバレるのを防ぐためもあるかと)、そのため「インパクトの続きを起こそうとしている世界破壊者」に見せている。

    ただ、やはり視聴者の多くが期待しているのは「シンジ(とアスカやミサト)の幸せ」だとも思っています。
    そうなると展開としては「虚構世界の再構築(再誕)」とも。TV版であったような「可能性の一つ」としての明るい世界がまた現れるのか、「消されず存続を『許された』世界、そして使徒やその他の戦いがなくなりはしたものの現状のまま」となるのか……(過去作と同じことはしない、と思っていますので「(現実の)観客席を映したシーン」はないと思っています)
    また、シンジには「主人公として」成長することで「テーマ」を視聴者に伝える、という「シナリオの大原則」としての役割もあると思っています。今作再三言われている「大人になる」がここで出てくるとも。

    なんにぜよ、実のところ数多の考察や予測を覆した意外(かつ納得感のある)次作になることを期待しています(笑)

    ありがとうございます。

    • コメントありがとうございます。なかなか興味深い視点で、私の考察でもそこまで踏み込んでいないので、とても参考になります。

      コメントを拝見して思いついたのですが、〈ゼーレ〉というのはじつは存在せず——というより、複数の人格を装っているけども、すべてユイが操作しているのではないか、という仮説を思いつきました。

      旧劇場版では、ユイの罪について追究されていないのですが、人類補完計画の首謀者ともいえるわけで、新劇場版でははっきりと悪の親玉、すべての元凶として登場するのかもしれません(そこが観客の意表を突くポイントというわけです)。

      となると、シンジはユイを選ぶのか、ゲンドウを選ぶのかという選択を迫られ、旧劇場版のように「父にありがとう、母にさようなら」となるのでは? などと考えてみました(いや「母にありがとう、父にさようなら」でしょうか)。

      また、「虚構世界の再構築(再誕)」というお話がありましたが、『序』『破』『Q』が虚構世界だとして、ミサトたちが「現状維持」もしくは「原状回復」をめざしているとすると、虚構世界を維持することになり、やや違和感がありました。そこで、別の方のコメントで教えていただいた『ゼーガペイン』のように、ミサトたちはじつはすでに(『Q』の時点では)ここが虚構世界であることを知っていて、現実世界を自分たちの手に取り戻すために奮闘していると考えると、ヴィレの行動原理に正当性が出てくるかなと思っています。

      その場合、なぜミサトたちはその真実をシンジに告げないのか、あるいはカヲルあたりが説明してもよさそうだが、といった疑問が生じますが、それは今後の考察に活かしたいと思います。

      新たな考察のきっかけをいただき、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

    • すー
    • 2020.08.29 10:48pm

    考察楽しく拝見させていただきました。
    エヴァは難しくて近寄り難かったのですが、こちらの考察を読んで楽しみ方を見つけることができました。

    こちらで展開されているメタフィクション説ですが、SAOのアリシゼーション編に酷似していますね。そちらも思い浮かべていたら分かりやすさが増しました。

    また、素人の勝手な思いつきですが、世界がコア化するとのことですが、コアというとやはり使徒のコアを思い浮かびます。使徒がどのように発生するのかわかりませんが、インパクトが成功すると使徒のコアになるなんて思ったり。そして生まれた使徒は作中で登場した使徒で、シンジたちが戦うとすると、フラクタル図形のようで面白いなと思いました。(妄想)

    シンエヴァが公開される前にエヴァの魅力に気づけてよかったです。公開が楽しみです。

    • おっしゃるとおり、世界のコア化と使徒のコアは何か関係がありそうですよね。ただ、劇中で「コア化」という表現が一度も出てこない点が気になっています(「L結界」というのが正式な言い方なのかもしれません)。

      『シン・エヴァ』において、使徒がどのくらい重要なのかも注目したいですね(使徒は全部倒したはずなので、本来ならもう使徒は出てこないはずですが……)。

      コメントありがとうございました。

    • おたつむり
    • 2020.09.09 2:04am

    大変面白く、ご提唱の仮説の通りであってもなくても、理解や想像が一層深まり、感謝しかありません。

    コメントまでは全て目を通していないので既出かもしれませんが、ファーストインパクトとは即ち現世におけるジャイアントインパクト説、月の誕生に由来していると考えるのが自然かなと捉えています。
    そうであれば飛躍するとミクロの量子力学が宇宙の解明に繋がるように、現世の我々やあらゆる存在がまた大きな生命体を構成する分子や元素のようなもの、或いは大きな存在が産み出した仮想現実であるというような世界観の示唆、テーマであるように感じました。

    • ジャイアントインパクト説は考察に組み込んではいないのですが、おっしゃるとおり、さまざまな理論を導入することで、エヴァの世界のみならず、私たちのいるこの現実世界の解明にもつながり、知的好奇心が満たされますね。

      ただ、私はその「理論」に関する知識が乏しいので、なかなか難しいところではありますが(笑)。今後も幅広い勉強の必要がありそうです。

      記事をお役立ていただいたようで、こちらこそありがとうございました。

      • ここの考察を読ませていただきました。とても興味深い話で一気に読み上げてしまいました。ありがとうございます!そこでいくつか気になるところがありましたので送らせていただきます。どこかの考察でネルフ型のエヴァはしょごう

        • ごめんなさい途中で送ってしまいました。前の続きですが、これらの考察の中でチルドレン達がエヴァの脳となって動かすといったニュアンスの文があったかと思います。そこで思い出したのが人間の神経と脳の関係です。人間の場合脳から出ている神経には二つあります。具体的には運動神経と感覚神経です。人間は、体を動かす際には運動神経を経由して体を動かしています。エヴァでは、お馴染みの神経接続では、感覚神経だけでなく、運動神経も接続しているのではないでしょうか。具体例として、新世紀エヴァンゲリオンでシンジが初号機に初めて乗ったとき、動け、といっただけなのに初号機が動いたこと。同じく新世紀エヴァンゲリオンよりシンジが初号機を操作する前リツコが考えることだけに集中してと言っていたこと。これらのことから神経接続の際、運動神経も接続しエヴァを動かしいるのでは?と思います。一見私の考えはなにも関係ないように見えますが、ここで書かれていた考察であるネルフ型のエヴァが乗る人つまりチルドレンが脳となっているため、シンジの負の感情が初号機に現れ、動いたのではないかと言う考察一つの根拠としてあげられるのではないでしょうか。

  1. 自分で読み返すと言いたいことが多すぎて文が支離滅裂になっています。すみません。なにか質問がありましたら返信いただけると幸いです。

    • 別の記事でも同じ内容のコメントを頂戴しましたでしょうか? そのこと自体は問題ないのですが、当ブログのコメントは承認制なので、しっかり投稿されていても気づかずに何度も投稿されているかもしれません(たまにそういう方がいらっしゃいます)。

      さて、運動神経については、別のコメントのほうでもお返事しましたが、たしかに面白い視点ですね。

      問題は(これは自分の考察の問題なのですが)、ネルフ型とゼーレ型のエヴァは違うと仮定した場合、ゼーレ型は運動神経はつながっていないことになります。ですが、一見すると両者は「建造方法」は違っても、エントリープラグからなんらかの信号なり情報なりをエヴァに伝える方式は、両者に違いはないように見えます。

      制作陣はそこまで細かく設定していないのでしょうが、今後の考察に影響が出そうなので、おざなりにするわけにもいきません。

      今後の考察の参考にさせていただきつつも、問題がさらに膨れ上がってしまいましたね(笑)。

      でも、新しい視点を提示していただいたことは感謝しております。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

      • すみませんいろんなところで出してます。
        気づかずに何回かやってしまいました。本当にすみません。

        • ちょっとわかりにくいシステムですよね。

          どうぞ気になさらずに。

  2. すみません!すごいことを思い出したので送ります。エヴァンゲリオンanimaってご存じですか?この話では、ストーリー編集

    EVA弐号機がEVA量産機との戦いに敗れ、同機を中心とした補完計画の儀式が今まさに完成しようとしていたその時、シンジのEVA初号機F型装備が、本部に侵攻していた戦略自衛隊などの勢力を全て撃退して現れた。シンジは量産機を全て破壊し尽くして補完計画を妨害するも、地下のリリスはゲンドウらを呑み込む形で謎の黒い結界を展開、NERV本部は主要施設や重要人物を失うという結末を迎えた。

    その後、NERV本部は各国支部との連携が取れにくくなるものの、補完計画の再発防止・ゼーレの活動妨害のために量産機の鹵獲と解体、衛星軌道上にエヴァ零号機試製II式改・領域制圧機「0・0EVA」3機を配備するなどの後処理を進める。しかし、鹵獲した量産機のいくつかが行方不明になった、0・0EVAの配備に関して各国の承認を経なかったなどの件で疑義を抱かれ、ついにはNERV全体が新たな脅威として見られてしまう。それでも、ゼーレが壊滅した保証もない今、NERVが解体されるわけにはいかなかった。ミサトを初めとする旧NERV本部職員一同はその武力を背景にして世界各国と軋轢を重ねながらも、NERV本部を各国支部から切り離し、独立した組織 ネルフジャパン (NERV Japan)として新たに立ち上げる。物語はその3年後、ゼーレの再侵攻は無いであろうと誰もが思っていた頃から幕を開ける。  こんな話なのですがこの中で、アルマロスというエヴァがでてきます。そいつは、人類保管計画の要となるキューブのようなものを持っています!あなたの記事であったコンピューターのなかで…といった趣旨の話とかなりにて畏怖と思いますが偶然でしょうか?

    • 通りすがりの人
    • 2021.01.20 8:49pm

    https://www.youtube.com/watch?v=T3XkH4J9nss

    突然ですが、私はこの動画が今までで一番しっくりきました…

    • ありがとうございます!

      のちほどチェックして今後の考察の参考にさせていただきます。

      また情報がありましたら、ぜひお寄せくださいませ。

ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

〈ぎゃふん工房〉はフリーランス ライター・米田政行のユニット〈Gyahun工房〉のプライベートブランドです。このサイトでは、さまざまなジャンルの作品をレビューしていきます。

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