ゾンビ映画の初心者に贈る! いますぐ観たくなる名作10+α選[保存版]

ゾンビの出てくる映画はゴマンとある。怖いものから笑えるもの、おもしろいものからつまらないもの。まさに玉石混交だ。

「おもしろいゾンビ映画が知りたい」「最近ゾンビ映画に興味を持ったので、ほかの作品をぜひ観たい」。そんなあなたに向けて、ゾンビ映画の傑作をご紹介する。

くわしい人が見ると凡庸なラインナップだと思うかもしれない。でも、だからこそ盤石なものばかりがそろっている。ぜひ参考にしてほしい。

至高の傑作ゾンビ映画リスト

まずは、「ゾンビ映画といえばコレ」という定番の作品を紹介していこう。なお、各作品のテイストを以下の指標で表現している。

  • グロ度:描写がどのくらい残虐か。
  • 恐怖度:演出がどのくらい恐怖を与えるか。
  • 緊迫度:ストーリー展開がどのくらいハラハラさせるか。

【1】ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

[1968年/アメリカ/監督:ジョージ・A・ロメロ/原題:NIGHT OF THE LIVING DEAD]

〈ストーリー〉生きている死人が迫る

母親の墓参りにやってきた兄と妹。ふたりのもとへ、不気味な雰囲気を漂わせた男が近づいてくる。男は突然、兄に襲いかかる。命からがら逃げ出した妹は、近くの民家に逃げ込むが、建物のまわりは、まるで死人のような人々に取り囲まれていた。

〈見どころ〉ドキュメンタリーのような生々しさ

[グロ度:★★/恐怖度:★★/緊迫度:★★★]

〈ゾンビ映画〉の祖ジョージ・A・ロメロ監督による『ゾンビ』三部作の第1作目。巷にあふれる〈ゾンビ映画〉の原点となる作品だ。「死んだ人間が蘇り、ゾンビとなって、生きている人の肉を喰らう」「ゾンビに襲われた人もゾンビになる」──よく知られる〈ゾンビ〉の特徴は、本作品で確立された。

ただ、1960年代の古い映画だ。画面はモノクロだし、派手なバトルシーンはない。

しかし、だからこそ、実話のドキュメンタリーを観ているような生々しさがある。得体の知れない存在にジワジワと追い詰められる恐怖は、シンプルな映像だからこそ際立つ。

じつは、この作品で描かれるのは、〈ゾンビ〉の恐ろしさではない。「ゾンビの大量発生」という極限状況において、人間はどんなことを考え、どう行動するのか。そこで露わになる人間の本性だ。これは、ロメロ作品に共通するテーマとなっている。


【2】ゾンビ

[1978年/イタリア・アメリカ/監督:ジョージ・A・ロメロ/原題:ZOMBIE: DAWN OF THE DEAD]

〈ストーリー〉ショッピングモールで束の間の幸福を満喫

テレビ局に勤める主人公は、恋人のヘリコプターで街から逃げ出す。街はすでにゾンビであふれかえっていたからだ。ヘリには、友人の警察官も同乗。一行はやがて郊外のショッピングモールにたどりつく。そこに立てこもり、束の間の幸福を満喫するのだった。

〈見どころ〉ゾンビの脅威はないが希望もない

[グロ度:★★★/恐怖度:★/緊迫度:★]

ロメロ監督の『ゾンビ』三部作の第2作目。邦題はそのものズバリ『ゾンビ』で、〈ゾンビ映画〉の代表格ともいえる作品だ。

ただし、〈ゾンビ〉と激しい戦いを繰り広げる映画だと思って観ると肩透かしを食らう。

物語の序盤、主人公たちがショッピングモールに侵入すると、早々に安全を確保してしまう。〈ゾンビ〉はドアを開けて入ってこられないし、そのドアもトラックで防御。モールの中には銃砲店もあり、モール内の〈ゾンビ〉も一掃してしまう。

この映画で語られるのは、〈ゾンビ〉の脅威がほとんどない、彼らの平穏な生活だ。つまり、〈ゾンビ〉との攻防はあまり描かれないのだ。

生きていくのに必要なものは何でも手に入る。〈ゾンビ〉に襲われる心配もない。まるで天国にいるかのよう。一方で、未来への希望もない。彼らは果たして幸福なのか? そんな深いテーマが浮かび上がってくる映画なのだ。

とはいえ、終盤には激しいバトルシーンが用意されている。人間が生きたまま〈ゾンビ〉に食べられてしまうショッキングな場面もある。 過激な表現が苦手な人は目を背けたくなるだろう。

さまざまなバージョンの楽しみ方

本作は、いくつかのバージョンがソフト化されている。それぞれの違いを簡単に説明しよう。

『米国劇場公開版』はアメリカ本国で劇場公開されたもの。『ダリオ・アルジェント監修版』は、イタリアのホラー監督で、本作の音楽を監修しているアルジェントが手を加えたもの。全世界で公開されたのもこのバージョンだ。『ディレクターズカット版』は、映画祭に出品するためにロメロ監督が改変を施したものだ。

『米国劇場公開版』を基準にすれば、『ダリオ・アルジェント監修版』は、音楽が扇動的なものに付け替えられ、映画に躍動感が加わっている。『ディレクターズカット版』は、ショッピングモールのシーンなどが長くなっている。

現在、レンタルなどで入手できるのはこの3つだが、初心者はどれを観ればいいか迷ってしまうだろう。

どうしても決められないなら『ダリオ・アルジェント監修版』をオススメするが、当ブログは『ディレクターズカット版』のほうが好みだ。

バージョンが違うといっても作品としては同じものなので、観たいと思ったそのときに入手できるバージョンを選んでも問題ない。


【3】死霊のえじき

[1985年/アメリカ/監督:ジョージ・A・ロメロ/原題:DAY OF THE DEAD]

〈ストーリー〉生き残った者たちが反目しあう

生きている人間よりゾンビのほうが多くなってしまった世界。主人公は生き延びた数少ない人のひとり。彼女が身を寄せる地下施設では、科学者と兵士が同居していた。科学者は、ゾンビを数体捕獲し、その生態を探る研究に没頭するが、兵士たちはそれがおもしろくない。ちょっとしたきっかけで、この“楽園”は崩壊していく。

〈見どころ〉目の前にいる仲間のほうが恐怖

[グロ度:★★★/恐怖度:★★/緊迫度:★★★]

『ゾンビ』三部作の第3作目。〈ゾンビ〉との激しい攻防ではなく、極限状況に置かれた人間の本性を描く。この点は『ゾンビ』と同じ。異なるのは、登場人物たちが一触触発の状態にあることだ。そのため、映画全編につねに緊張感が漂っている。

〈ゾンビ〉の脅威がなくても、目の前の男が何をしでかすかわからない状況は恐怖だ。

もちろん、クライマックスには映画史に残る残虐な描写が展開する。特殊メイクアップの技術は格段に進歩しており、そこも見どころになるだろう。


【4】ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記

[1990年/アメリカ/監督:トム・サヴィーニ/原題:NIGHT OF THE LIVING DEAD]

〈ストーリー〉生きている死人に襲われる

母親の墓参りにやってきた兄と妹。まるで死人のように生気のない男に突然襲われる。兄は殺され、妹は近くの民家に逃げ込む。しかし、そこにも生きた死人のような男がいた。

〈見どころ〉死そのものが迫ってくるリアリティー

[グロ度:★★★/恐怖度:★★★/緊迫度:★★★]

ロメロ『ゾンビ』三部作の第1作目をリメイクした作品。『ゾンビ』『死霊のえじき』のほか『13日の金曜日』などの特殊メイクを手がけたトム・サヴィーニが監督を務めている。オリジナルの監督であるロメロが脚本を書いているので、正統なリメイクといえる。

ストーリーはオリジナルとほぼ同じ。極限状況に追い込まれた人間たちの本性を炙り出すコンセプトも踏襲している。

ただ、このリメイク版はオリジナルと異なる点が2つある。

ひとつは、ヒロインのキャラクター像。オリジナルは目の前で起こる事態にただオロオロするだけだったが、リメイク版は積極的に事態を切り開こうとする心の強い女性に変更されている。これにより、映画のたたずまいが活気あふれるものになった。

もうひとつは、特殊メイクのクォリティー。〈ゾンビ〉のリアルな存在感は、いま観てもまったく色褪せない。サヴィーニ監督は、ベトナム戦争に参加し、本物の死体を嫌というほど目にしてきたという。その経験が存分に生かされている。

本作の〈ゾンビ〉たちは、目が光ったり、口から長い舌が伸びたり、手から鋭い爪が生えたりはしない。つまり死体以外の何物でもない。死体とは、すなわち死の象徴だ。つまり、本作では、「ゾンビに殺される恐怖」と「死そのものが迫ってくる恐怖」を同時に味わうことになるのだ。

これがほかの〈ゾンビ映画〉にはない本作の特徴となっている。


【5】ドーン・オブ・ザ・デッド

[2004年/アメリカ/監督:ザック・スナイダー/原題:DAWN OF THE DEAD]

〈ストーリー〉人々が家族を襲いはじめる

[グロ度:★/恐怖度:★★/緊迫度:★★★]

ある日の夜。主人公の娘が突然、夫に襲いかかる。人とは思えぬ恐ろしい形相で……。首を食いちぎられた夫は絶命。しかし、すぐに起き上がり、今度は妻である主人公を襲う。彼女は間一髪で車に飛び乗り危機を脱するが、街はすでに地獄へと変わっていた。

〈見どころ〉逃げ場はどこにもない

タイトルが示すとおり『ゾンビ』(DAWN OF THE DEAD)のリメイク作品。ショッピングモールに立てこもるのも同じだ。ただし、モール内の安全は確保できず、つねに〈ゾンビ〉に襲われる恐怖がつきまとう。店内に逃げ込んだ人の数も多く、生きた人間同士の対立も脅威となる。

オリジナル版に外見は似ているものの、モール内で束の間の幸福を満喫する物語ではない。そのため、作品としての味わいは大きく異なっている。オリジナル版にあった“哲学”は失われてしまっているが、もちろん、アクション・ホラーとしての魅力は存分に堪能できる。


【6】ランド・オブ・ザ・デッド

[2005年/カナダ・アメリカ・フランス/監督:ジョージ・A・ロメロ/原題:LAND OF THE DEAD]

〈ストーリー〉生き残っても貧富の格差がある

ゾンビが街を徘徊するようになってから、永い年月が流れた。生き残った人々は、街の一角をバリケードで囲い、安住の地としている。そこでは、人々の間に貧富の差があり、金持ちが貧乏人を支配していた。

〈見どころ〉ゾンビ映画の父が娯楽作品に挑戦

[グロ度:★/恐怖度:★★/緊迫度:★★]

〈ゾンビ映画〉の父ロメロ監督の作品。往年の『ゾンビ』三部作と比べると、ストーリーが目まぐるしく展開し、アクションの見せ場も多い。〈ゾンビ〉をなぎ倒す装甲車が登場したり、ダリオ・アルジェントの愛娘アーシアが出演したりと、見どころも多数。ロメロ監督は、本作をあくまで娯楽作品に仕上げることに徹している。

『ゾンビ』三部作以後、数多くの〈ゾンビ映画〉が作られた。〈ゾンビ〉はもはや手垢のついた素材になってしまっている。しかし、そこは〈ゾンビ映画〉の開拓者。ロメロ監督は、〈ゾンビ〉の生態にオリジナリティーあふれる工夫をほどこしている。

人間vsゾンビの攻防ではなく、生きた人間の本性を描く。この“ロメロ哲学”は本作でも踏襲されている。


【7】28日後…

[2002年/イギリス/監督:ダニー・ボイル/原題:28 DAYS LATER…]

〈ストーリー〉病院で目覚めると世界は変わっていた

主人公の青年が目覚めると、そこは病院のベッドの上。しかし、医師や看護師の姿はない。建物の中を探しまわるが、もぬけの殻だ。外に出て街を歩いてみても、人の姿はない。目の前の教会に足を踏み入れると、無数の死体が折り重なるようにして積み上げられていた。しかし、それは死体ではなかった。物音に反応して、いっせいに目を開けたのだ。

〈見どころ〉和やかなシーンもある

[グロ度:★/恐怖度:★★/緊迫度:★★]

本作に登場する怪物が〈ゾンビ〉かどうかは、意見が分かれるかもしれない。「死んだ人間が蘇った」わけではないからだ。しかし、「怪物に襲われた者は怪物となり、人間を襲う」という〈ゾンビ〉の条件は満たしている(なお、劇中の人物たちは「感染者」と呼んでいる)。

本作の「感染者」が、ロメロ監督作品に登場する〈ゾンビ〉と大きく異なるのは、全速力で走ってくる点だ。そのため、「感染者」と遭遇した場合、直ちに危険な状況に陥ってしまう。簡単なバリケードなら突破されてしまうので、安全確保も容易ではない。

物語の序盤は、そんな「感染者」たちとの激しい攻防が描かれる。

主人公は、道中で父娘と出会い、街を脱出する。物語の中盤は、この父娘との和やかな交流シーンが展開する。

怪物たちとの攻防だけが描かれるわけではないので、『ゾンビ』三部作のような味わいも持った作品といえる。


【8】REC/レック

[2007年/スペイン/監督:ジャウマ・バラゲロ パコ・プラサ/原題:[REC]]

〈ストーリー〉アパートで起こる怪異をテレビカメラで記録する

主人公のテレビレポーターとカメラマンが消防隊の取材をしている。出動命令が下り、主人公たちも現場へ同行。通報のあったアパートに一行が足を踏み入れ、異常のあった部屋におもむくと、そこには半狂乱になった老婆がいる。警官が近づくと、老婆は彼の喉に食らいついた。

〈見どころ〉阿鼻叫喚の地獄絵図をリアルタイムに体験

[グロ度:★/恐怖度:★★★/緊迫度:★★★]

本作は、取材のテレビカメラがとらえた映像という体裁になっている。いわゆる「P.O.V」(point of view=主観視点)の映画だ。

「P.O.V」の最大の魅力は、観ている者も惨劇の渦中に放り込まれてしまうこと。自分自身も映画の登場人物になったような臨場感が味わえる。

また、本作のもうひとつの特徴として、リアルタイムで物語が進行する点が挙げられる。冒頭の消防署のシーン以外は、劇中に流れている時間と、作品の上映時間は同じ。なんの変哲もないアパートが阿鼻叫喚の地獄へと変わる様をまざまざと見せつけられるのだ。

ほかの〈ゾンビ映画〉とは一味違うホラー体験が満喫できる。


【9】バイオハザード

[2002年/アメリカ/監督:ポール・W・S・アンダーソン/原題:RESIDENT EVIL]

〈ストーリー〉地下の研究室でウィルスが漏れた

都市の地下に製薬会社の巨大な研究施設がある。ここでウィルスの漏出事故が発生する。特殊部隊が救助に向かうが、研究員たちは全員死亡──いや、正確には死んでいなかった。ウィルスの作用で蘇り、隊員たちを襲ってきたのだから。

〈見どころ〉傑作テレビゲームがダイナミズムに満ちた映画に

[グロ度:★/恐怖度:★/緊迫度:★★]

テレビゲーム『バイオハザード』をハリウッドで映画化した作品。とはいえ、一部のモンスター(ゾンビを含む)と設定が出てくるだけで、ストーリーや登場人物は映画独自のものになっている。

シリーズ化され、現在までに5作が製作されているが、あまり出来がよくない。唯一、この第1作目だけが楽しめる。

隊員たちが迫り来る〈ゾンビ〉を銃撃するシーン、地下施設に秘められた謎が明らかになる場面、記憶を失っている主人公が真相を思い出すクライマックス。これらはハリウッド映画ならではのダイナミズムに満ちている。

怖さというよりアクション映画の爽快感を味わいたい人にオススメしたい。


【10】バタリアン

[1985年/アメリカ/監督:ダン・オバノン/原題:THE RETURN OF THE LIVING DEAD]

〈ストーリー〉死人を蘇らせる薬品が漏れちゃった

物語の舞台は、人間や動物の標本を作っている会社。そこで残業をしている男ふたりが有名なゾンビ映画の話題で盛り上がる。「あの映画は実話だった。ゾンビの死体が手違いでこの会社の地下にある」。そのゾンビを閉じ込めてあるドラム缶に近づくふたり。軽い気持ちで缶を叩くと、中に詰まっていたガスが漏れ出してしまう。それは軍が開発した、死者を蘇らせる気体だったのだ。

〈見どころ〉コメディーなのに怖いところはしっかり怖い

[グロ度:★★★/恐怖度:★★/緊迫度:★★]

本作の原題は『THE RETURN OF THE LIVING DEAD』。そう。ロメロ監督『ゾンビ』三部作へのオマージュ作品だ。劇中では、ロメロの〈ゾンビ映画〉は実話だったことになっている。

標本会社に勤める男たちもマヌケだが、そこにチャラチャラした若者たちが絡み、映画全体に能天気な雰囲気が漂う。ジャンルとしてはコメディーに分類できる。

しかし、本作の監督は、SFホラーの傑作『エイリアン』の脚本などを手がけたダン・オバノン。ホラーの名手による作品だけに、怖い部分はかなり本格派だ。いや、どこかとぼけた映画だからこそ、ホラー部分のクォリティーの高さが際立つ。

なお、本作は登場人物たちのやりとりが楽しい映画なので、日本語吹き替え版での視聴をオススメする。

ゾンビ映画ではないけど観ておきたい傑作

〈ゾンビ映画〉には『死霊の◯◯◯』という邦題がつけられるケースが多い。ここで紹介する2作も一般的には〈ゾンビ映画〉とされている。しかし、当ブログは後に述べる理由でその分類には反対だ。ただ、〈ゾンビ映画〉好きが楽しめる作品であることはたしかなので、ぜひ紹介しておきたい。

【11】死霊のはらわた

[1981年/アメリカ/監督:サム・ライミ/原題:THE EVIL DEAD]

〈ストーリー〉おぞましい姿となった仲間に襲われる

山奥にある小屋に男女5人組がやってくる。地下室で見つけた不気味なテープを再生し、悪霊を呼び覚ましてしまう。悪霊に取り憑かれた者は、世にもおぞましい姿に変貌し、仲間に襲いかかる。

〈見どころ〉ブレーキの効かない残虐描写が魅力

[グロ度:★★★/恐怖度:★★★/緊迫度:★★★]

スプラッター映画の代名詞ともいえる作品。監督は『スパイダーマン』などのヒット作で知られるサム・ライミだ。

血が吹き出る、腕がちぎれ飛ぶといった、過剰なまでの残虐描写は圧巻。歯止めの効かない映像は、ギャグの領域に達しそうだが、ギリギリ踏みとどまっているため、ホラーとしての恐怖度は他の追随を許さない。

本作に登場するバケモノは、人間に悪霊が取り憑いたもので、死人が蘇ったわけではない。襲われた者が怪物になる場面はあるが、偶然そう見えるだけ。厳密に言えば〈ゾンビ〉の条件を満たしていない。

ただ、それを言ってしまえば、『28日後…』や『バタリアン』も〈ゾンビ映画〉ではなくなってしまう(よく誤解されているが、バタリアンに襲われただけではバタリアンにならない)。

本作で、悪霊をこの世に呼び寄せるのは『死者の書』だ。同書は、怪奇作家H・P・ラブクラフトの作品世界に登場するアイテム。〈ゾンビ〉とはまったく関係ない。当ブログが本作を〈ゾンビ映画〉と呼ばないのはそのためだ。

とはいえ、「ゾンビ映画じゃないから」という理由で本作をスルーしてしまうのは本末転倒だろう。〈ゾンビ映画〉好きなら間違いなく楽しめるので、ぜひチェックしてほしい。


【12】ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり

[1985年/アメリカ/監督:スチュアート・ゴードン/原題:RE-ANIMATOR]

〈ストーリー〉死者を蘇らせる薬品を発明する

ある医学部の学生が死者を蘇らせる薬品を発明した。ルームメイトとともに死体安置所で薬の効果を確かめようとする。その現場を学長に見咎められ、つかみ合いとなる。そのとき、薬品を注入した死体が起き上がり、学長を殺してしまう。学生はこれ幸いにと、学長を実験台にすることを決める。

〈見どころ〉薬品を注入する人間のほうが恐ろしい

[グロ度:★★★/恐怖度:★★/緊迫度:★★]

「死んだ人間が甦り、人を襲う」という意味で、本作に登場する異形は、紛れもない〈ゾンビ〉といえる。しかし、本作の原作はH・P・ラブクラフトだ。だから、〈ゾンビ映画〉に分類するのをためらってしまう。

体の一部が欠損した死体が蘇るのはそれなりに怖いが、ほかの映画に登場する〈ゾンビ〉ほどではない。

それよりも、なんのためらいもなく薬品を死体に注入する学生の精神のほうが怖い。いや、学生だけではない。ほかの登場人物もどこかネジがはずれている。

蘇る死体よりも、生きた人間同士の関係に着目すれば、本作をより深く味わえるはずだ。そして、ラストの主人公のふるまいにも、心が揺さぶられるだろう。

なお、本作は女性にはオススメしない。

〈あなたのホラー耐性は?〉オススメ観賞メニューをご提案

ここまで、〈ゾンビ映画〉の傑作を紹介してきた。心に響いたもの、まだ観ていないものから観賞していけばいい。

それでも「どれを選べばいいかわからない」「今日、観る1本が決まらない」という人のために、それぞれの嗜好に合った“観賞メニュー”を提案してみよう。

グロいのが苦手な人へ

  1. REC/レック
  2. ドーン・オブ・ザ・デッド(2004)
  3. 28日後…
  4. ランド・オブ・ザ・デッド

〈ゾンビ〉は、生きた人間の肉を食らうのが魅力であり特徴。だから、〈ゾンビ映画〉は基本的にグロいと思った方がいい。強いて挙げれば、上記の作品は、残虐な描写は控えめだ。

また、これらの作品はお互いにつながりはないが、この順番に観ていけば、あたかも時系列を追っているようにストーリーを楽しむことができる。

グロいのを見たい人へ

  1. 死霊のはらわた
  2. 死霊のえじき
  3. ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記
  4. バタリアン
  5. ゾンビ

残虐描写を味わいたいなら、トム・サヴィーニが関わっている作品を選べばいい。また、グロい表現はホラー映画の重要なエッセンスだ。その点を心得ている監督の作品は、過激さを求める人も満足できるだろう。なお、上記はグロい順に並べてある(感覚的なものではあるが)。

とにかく怖がりたい人へ

  1. ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記
  2. REC/レック
  3. 死霊のはらわた

じつは〈ゾンビ映画〉で心の底から恐怖を覚えるものは意外に少ない。〈ゾンビ〉そのものは、あまり脅威ではないからだ。

上記の作品は、全編に糸が張り詰めたように緊張感が漂っている。体調を万全にしたうえで観賞してほしい。

ハラハラドキドキしたい人へ

  1. REC/レック
  2. ドーン・オブ・ザ・デッド(2004)
  3. バタリアン
  4. 28日後…

心臓をバクバクさせながら観賞したいなら、〈ゾンビ〉が走ってくる映画を選ぼう。あてはまるのは上記の作品だ。上から順に、緊迫度の高いものを並べている。

何か心に残るものが観たい人へ

  1. ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記
  2. ゾンビ ディレクターズカット版
  3. 死霊のえじき

「せっかく貴重な時間を割いて観るのだから、何かが得られる映画がいい」。そんな人は、やはりロメロの『ゾンビ』三部作を観よう。

ただ、第1作目に関しては、オリジナル版のコンセプトを深めたリメイク版をオススメしたい。また、第2作目は、ショッピングモールの場面が長い『ディレクターズカット版』がベターだ(もちろん、ほかのバージョンでも問題ない)。

幸せな〈ゾンビ映画〉ライフのために

いかがだっただろうか? 最初に述べたように〈ゾンビ映画〉と言っても玉石混交だ。大切なのは「自分はどんな映画を楽しいと感じるか」を考えること、すなわち「自分を知る」ことだ。

好みに合った作品を選べば、楽しい〈ゾンビ映画〉ライフを堪能できるはずだ。

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〈ゾンビ映画〉は、『ランド・オブ・ザ・デッド』『ドーン・オブ・ザ・デッド(リメイク)』『ワールド・ウォーZ』『死霊のはらわた(リメイク)』『バイオハザードV リトリビューション』『バイオハザードIII』をレビューしています。

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