ネットワークオーディオで音楽人生を変えた話

音楽

「ここらでいっちょ音楽人生を変えたい」。そう思ったワシが選んだ方法は〈ネットワークオーディオ〉の構築だった。今回は、その顛末をだらだら書きつらねていくことにする。御用とお急ぎでない方はお付きあいください。

〈ネットワークオーディオ〉環境を構築する

ネットワークオーディオのイメージ03

本題に入る前に、ひとことお断りをしておこう。ワシは音楽マニアでも、オーディオ狂いでもない。「好き」であることはまちがいないが、くわしい人から見れば「まだそんなステージにいるのか。トーシローめ」と鼻で笑われるかもしれない。その点を頭の片隅に置いてほしい。

音楽への向きあい方を変えたい

かねてから、音楽への向きあい方を変えたいと思っていた。「我が人生、このままではいけない」。そんな問題意識があった。でも、具体的にどうすれば……? たとえば、いままで手を出したことのないジャンルの音楽を聴いてみる。これもひとつの方法だ。個人的に好んで聴くのはもっぱらポップスだが、ジャズとかクラシックなどに移ってみてはどうだろう?

しかし、これでは「和食のお店が混んでいたから、今日は中華にしよう」と、“平行”に移動しただけのこと。いま望んでいるのは、根底からの大改革、レボリューションだ。

そもそも音楽を聴くことは、ワシにとっては「ポップスを聴くこと」と同義だ。ジャンルそのものを変えるのは本末転倒。意味がない。

音楽を聴く環境を変えたい

そこで思い立ったのが、「音楽を聴く環境を見直したらどうだろう」ということだ。

当工房の環境はこうだ。オーディオ&ビジュアルの“母艦”となるアンプ(DENON AVR-1912)にCDプレイヤー(DENON DCD-755RE)がつながっている。音を鳴らすのはフロントスピーカー(DENON SC-777SA)のほか、センター(DENON SC-C33SG)、リア(DENON SC-A33SG)の各スピーカーと、サブウーハ(DENON DSW-33SG)だ。

また、アンプにはブルーレイレコーダー(Panasonic DIGA DMR-BW690)やビデオデッキ(Panasonic NV-H120)、Xbox 360、PlayStation4、Windowsのノートパソコン(NEC Lavie LS150/L)も接続されている。映像はアンプを通して42インチのプラズマテレビ(Panasonic VIERA TH-P42ST3)に映し出される。

音楽、映画、ゲーム、ウェブサイト(ニコニコ動画、YouTube)の映像と音は、すべてこのシステムで鑑賞している。

環境を変えるなら、これらをもっとグレードの高い機器に買い換える手がある。

ただ、現状のシステムはけっして貧相なものではない。上を見ればキリがないけども、どこの家庭に転がっているようなシロモノではない。費用もそれなりにかかっている。音楽好きを気どるには十分すぎるほどの体裁は整っている。

将来的にはステップアップしたい。でも、いまじゃない。できるだけお金と手間をかけずに最大の効果をあげたい。そう考えてたどりついたのが〈ネットワークオーディオ〉だったのだ。

ネットワークオーディオとは?

〈ネットワークオーディオ〉をきちんと定義しようと思うと面倒なことになる。人によって解釈も異なる。ここでは、大雑把な説明でご勘弁いただく。

音楽データをサーバーに置き、家庭内のネットワークを通じて再生する。音楽データは、CDから吸い出す(リッピングする)のが基本だが、最近では音楽配信サイトからダウンロードする場合もある。再生はプレイヤーで行なうが、操作はスマートフォンやタブレットを使う。これが〈ネットワークオーディオ〉の基本的な概念だ。

〈ネットワークオーディオ〉の特徴は、音楽のデータが保存された〈サーバー〉と、そのデータを再生する〈プレイヤー〉、アルバムや曲の選択を行なう〈コントローラー〉が別の機器に分かれていて、なおかつそれらがネットワークでつながっている、ということだ。

〈ネットワークオーディオ〉のメリットは、CDを入れ替える手間がなくなることだ。アルバムのデータは、サーバーにある。スマートフォンやタブレットを手に取り、タイトルやアーティストの名前で検索すれば、聴きたい曲が簡単に見つかり、すぐに再生することができる。

AirPlayじゃダメなの?

AppleのiTunesに「AirPlay」という機能がある。音楽データをネットワークを介して再生するもので、〈ネットワークオーディオ〉の一種と考えることもできる。ワシも、いくつかのアルバムは、AirPlayで再生することがある。しかし、あくまでサブ的な使い方にとどまっている。何か作業をしながらBGMとして流すだけだ。

それは、なぜか。音質がよくないからだ(*注)。言い方を変えよう。〈ネットワークオーディオ〉の概念に、音質の良し悪しは含まれていないのだ。

*注 AirPlayも理論上は音質が劣化しないはずだが、実際に聴き比べてみたら、あきらかに音が良くなかった。リッピングする際の設定がまちがっていたのかもしれない。原因を追究してもよいのだが、音質の問題が解決しても、今度は音楽データの保存が課題になる。iTunesはiPhoneやiPad miniと同期させているため、容量がすぐにいっぱいになってしまう。CDを何十枚、何百枚とリッピングすることはできないのだ。だから、今回はAirPlayを検討材料からはずした。

「良い音」とは何かを追究する

ネットワークオーディオのイメージ02

5.1チャンネルの“音場”

ここで少し脇道にそれ、「良い音」とは何かについて考えてみよう。

先に述べたように、工房の音響環境は、5.1チャンネルだ(厳密には、左右のフロントに2チャンネルずつ使った7.1チャンネル)。これで、映画やゲームを楽しんでいると書いた。ようするに、音楽も5.1チャンネルで聴いていたのだ。

ご存知のとおり、CDに録音されているのはステレオ、つまり2チャンネルだ。その音楽データをアンプが5.1チャンネルに増幅して再生している(蛇足だが、Dolby Prologic IIという技術が使われている)。

Dolby Prologic IIでCDを再生すると、四方八方から音が飛んでくる。たとえば、バックコーラスは実際に自分の後ろから聞こえる。部屋中が音楽で満たされ、音のシャワーに身を委ねる。これはなかなか心地よい感覚だ。

しかし、これにはひとつ落とし穴がある。2チャンネルの信号を5.1チャンネルに振りわけているので、音の厚みがなくなる。問題は、これを「音質が悪い」と見なすかどうかだ。

J-POPの魅力とは?

先に、ワシにとって「音楽を聴く=ポップスを聴く」だと述べた。最近、洋楽も聴くようになったが、まあ、好んでたしなむのはJ-POPだ。

J-POPの魅力はどこにあるか。メロディーの展開のしかた、音色の選び方、ボーカルの声色、ボーカリスト自身のキャラクター。そんなところではないだろうか。もちろん、人によって意見は分かれるだろう。偏見かもしれないが、J-POPを聞く人は、クラシックやジャズを愛好する人とはちがい、「音の厚み」は気にしないのではないか。つまり、Dolby Prologic IIでJ-OOPを聞いても問題ない(むしろ最適)ということになる。少なくとも「音質が悪い」とは思わない。

2チャンネルの“音の厚み”

音楽環境を見直す過程で、ひとつのアルバム(もちろんJ-POP)を再生した。ただし、いつものようなDolby Prologic IIではない。「PURE DIRECT」というモードだ。これはCDの音楽データをなんの加工もせずに出力するというもの。もちろん、音は2.1チャンネルで再生される。

するとどうだろう。ボーカルが持つ音の圧力、伴奏の力強さ、音場の広がりがじつに心地よいではないか。

これは僥倖だった。ワシが好んで聴くような売れ筋のJ-POPの多くは、ここまで凝った作りをしていない。もし、別のアーティストのアルバムをこのとき再生していたなら、「PURE DIRECT」の価値がわからなかったかもしれない。じつに幸運だったわけだ。

これまでは、前述の「メロディーの展開のしかた」などを聴いていた。しかし、音そのものを楽しむ。これが文字どおり「音楽」であることを初めて知ったのだ。

これからは、音そのものにこだわった楽曲を探すことが課題になる。J-POPなら、メロディーやボーカルの魅力も堪能できる。そこに音そのものを味わうという楽しみが加わるわけだ。

極上の音楽体験を得られる環境が完成

ネットワークオーディオのイメージ04

かかった費用は0円

かくして、我が音楽環境の改革は完了した。

音楽データは、サーバーに保存する必要があるが、これはWindowsのPCで代用することにした。そのため、Universal Media Serverというソフトを導入している。PCのハードディスクはいずれいっぱいになるだろうが、専用のサーバーを買うのはまだ先でいいだろう。また、CDのリッピングには、MediaMonkeyというソフトを使っている。さらに、コントロール用ソフトとして、KinskyをiPhone、iPad miniにインストールした。これらのソフトはいずれも無料だ。

音質のアップグレードは、単に再生モードを切り替えるだけなので、新たな投資は必要ない。つまり、まったくお金をかけずに、「レボリューション」を成し遂げたのだ。

バラ色の音楽人生が始まった

工房の照明を薄暗くし、リクライニングチェアにゆったりと身を沈める。かたわらに置いたiPad miniを手にとり、アプリを起動して、自分の音楽ライブラリを眺める。いまの気分に合った一曲を選び出しリストに追加。画面をタップすれば、お気に入りの楽曲が再生される。まさに至福の時間だ。

素晴らしき音楽人生の始まり。くわしい人からすれば「なにをいまさら」かもしれないが、この記事に興味を持っていただいた方がひとりでもいれば幸いだ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

*〈ネットワークオーディオ〉についてはこちらのブログを参考にしました。とても勉強になりました。

赤根夕樹

赤根夕樹

ミュージックビデオ評論家(自称)。このサイトでは音楽系のレビューを担当。洋楽・邦楽・アニソンと、さまざまなジャンルの音楽をつまみ食いしている。名前の由来は夜見野レイの小説『天使のしるし』の主人公・赤根夕子から。

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