納谷悟朗さんのボクしか知らないハマリ役を3つ選びました

ジョジョ

3月5日、納谷悟朗さんが亡くなりました。ご本人は「声優」と呼ばれることを嫌っておられましたが、間違いなく声優界の大御所であり、その功績はあまりに大きい。

そして、失ったものも──。

納谷さんの演じた役は、それこそ膨大な数に上るわけですが、ここではボクしか知らない──というのは大げさだとしても、「そういえば、あれも納谷悟朗さんだったんだよなあ」という役が3つほど頭に浮かんだので、それをご紹介します。

[ハマリ役1]『アリーmyラブ』の芸術家シーモア・リトル

Allymcbeal

親子ほど歳の離れた若い女と結婚しようとしている芸術家シーモア・リトル。女は財産が目当てと疑う息子の反対によってそれが叶わない。結婚を認めてもらうために起こした裁判の弁護人としてアリーが雇われます(シーズン1「生涯に一度の恋」)。

“日本声優名鑑”の様相を呈している『アリーmyラブ』。“出ていない声優はいない”という作品ですから、必然的に納谷悟朗さんもご登場しています。

老芸術家はほんとうにその女と結婚したいわけじゃない。別の理由がある。物語途中、アリーはそのことに気がつきます。

その含みを持たせ、どこか哀愁の漂わせる役どころで、納谷悟朗さんの吹き替えがびしっと決まっています。

[ハマリ役2]『バタリアン』のグローバー大佐

Return of the living dead

……といっても、「そんな人出てきたっけ?」と思う人もいるかもしれません。っていうより、『バタリアン』(1985年)を知らない人のほうが多いかも。

グローバー大佐(じつは私もこの名前はググりました)は、冒頭とラストにちらっと出てくる“チョイ役”です。なぜそんな人物に納谷悟朗さんが? と疑問に思いましたが、そのほかのキャスティングを見れば納得できます。

  • バート → 小林修
  • フランク → 藤本譲
  • アーニー → 富田耕生
  • フレディ → 樋浦勉
  • ティーナ → 吉田美保
  • チャック → 塩沢兼人
  • ケーシー → 小山茉美
  • スパイダー → 二又一成
  • スクーズ → 堀内賢雄
  • トラッシュ → 勝生真沙子
  • スーサイド → 屋良有作

なんということでしょう! ほぼ全員が主役級、何人か故人が含まれるものの、今なお第一線で活躍する人たちばかりです(他にも大塚芳忠さん、谷口節さんの声も聞こえます)。

グローバー大佐は、チョイ役ではありますが、しかし最後に「命令」を下す大事な役どころ。この「命令」に、当時は度肝を抜かれました。そんな大役ですから、おいそれと声優をキャスティングするわけにはいかなかったのでしょう。

まさに、最後の最後で、作品に味わい深さを加える配役といえます。

[ハマリ役3]『ジョジョ』のジョセフ・ジョースター

Jojo cd book

え? って思う人もいるかもしれませんね。

ジョセフ・ジョースターといえば、今もっとも旬なのが、テレビアニメ版の杉田智和さんだと思います。これもなかなかのハマリ役ですが、納谷悟朗さんは、第3部の老人ジョセフを演じています。

納谷悟朗さんのジョセフが聴けるのは、CDドラマ版という、いささかマニアックなアイテムです。ここでは、ほかに内海賢二さんもジョセフを演じています。また、余談ですが、OVA版では大塚周夫さんがキャスティングされています。

個人的な感想では、もっとも原作のジョセフに近いのは大塚周夫さんで、内海賢二さんはちょっとアグレッシブ。納谷悟朗さんは、たまたまCDブックが「過去の回想」という形式をとっているため、やや落ち着きすぎている印象があり、どちらかというと第4部のジョセフに近い感じです。

といっても、いずれもイメージから外れているわけではなく、三者三様のジョセフが楽しめるという、幸福な時代に私たちは生きている。そのことに感謝したくなります。

“生涯現役”の貫録

ツイッターでもつぶやいたのですが、80歳を超えて、つい最近まで活躍されていました。まさに“生涯現役”を地でいく方でした。この点は、もっと注目されていいと思います。

私たちがその歳まで生きるとして、今やっている仕事をそれまで続けているだろうか? そんな思いを抱かざるを得ません。

長い間、たくさんの楽しみを与えてくださり、ありがとうございました。心よりご冥福をお祈りします。

ぎゃふん工房(米田政行)

ぎゃふん工房(米田政行)

フリーランスのライター・編集者。インタビューや取材を中心とした記事の執筆や書籍制作を手がけており、映画監督・ミュージシャン・声優・アイドル・アナウンサーなど、さまざまな分野の〈人〉へインタビュー経験を持つ。ゲーム・アニメ・映画・音楽など、いろいろ食い散らかしているレビュアー。中学生のころから、作品のレビューに励む。人生で最初につくったのはゲームの評論本。〈夜見野レイ〉〈赤根夕樹〉のペンネームでも活動。収益を目的とせず、趣味の活動を行なう際に〈ぎゃふん工房〉の名前を付けている。

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〈ぎゃふん工房〉はフリーランス ライター・米田政行のユニット〈Gyahun工房〉のプライベートブランドです。このサイトでは、さまざまなジャンルの作品をレビューしていきます。

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